ヨハネ

ヨハネの福音書

1章

初めに言葉1あり、言葉は神と共にあり、言葉は神であった。
2 この方は、初めに神と共におられた。
3 すべての物は、この方によって造られた。そして、この方によらずに造られた物は、何一つなかった。
4 この方に命があり、その命は人間の光であった。
5 また、その光は暗やみの中に輝いておられる。そして、暗やみは光を理解しなかった。
6 神から派遣された人がいた。彼の名前はヨハネであった。
7 この人は、光について証をするための証人として来た。それは、すべての人がこの光を通して、信じるようになるためである。
8 彼はその光ではなかったが、その光について証するために派遣されたのである。
9 それは、この世に来るすべての人を照らす真の光である。
10 光はこの世におられ、世はこの方によって造られたのに、世は彼を知らなかった。
11 この方はご自分の民の中へ入って来られたのに、ご自分の民は彼を受け入れなかった。
12 しかし、この方を受け入れた一人一人、すなわち、彼の御名を信じた人々には、神の子どもとなる権利を、この方は与えられた。
13 その人々は、血から生まれたのではなく、肉の意志や、人の意志からでもなく、神によって生まれたのである。
14 そして、言葉は肉体となり、私たちの中に宿られた。私たちは、その方の栄光を見た。それは、父の唯一の生まれた御子息としての栄光であり、恵みと真理に満ちておられた。
15 ヨハネはこの方について証をし、大声で言った。「『私の後においでになる方は、私に勝る方である。私より先におられたからである。』と、私が言ったのは、この方のことです。」
16 そして、私たちは皆、この方の満ちあふれている中から、恵みの上に恵みを受けた。
17 というのは、律法はモーセを通して与えられたが、恵みと真理はイエス・キリストを通して生まれたのである。
18 人は、未だかつて神を見た者は一人もいない。父のふところにおられる唯一の生まれた御子息が、父のことを明らかに話されたのである。
19 さて、ユダヤ人たちがエルサレム2から、「あなたは誰ですか。」と問うため、祭司たちとレビ人たちとをヨハネの所に、派遣した時であった。次のことは、その時のヨハネの証である。
20 そして、彼は否定せずに、「私自身は、キリストではありません。」と言い表した。
21 そこで、彼らはヨハネに尋ねた。「では、何ですか。あなたはエリヤですか。」しかし、彼は言った。「そうではありません。」「あの預言者ですか。」しかし、彼は答えた。「違います。」
22 そこで、彼らはヨハネに言った。「あなたは誰ですか。私たちを遣わした人たちに答えを持ち帰らなければなりません。あなたは自分を何だと言っているのですか。」
23 彼は続けて言った。「私は預言者イザヤが言ったように、『主の道をまっすぐにしなさい。』と、荒野で叫び続けている者の声です。」
24 派遣された者たちは、パリサイ派に属している者たちであった。
25 彼らはまたヨハネに尋ねて言った。「では、もしあなたがキリストでも、エリヤでも、あの預言者でもないのなら、なぜ浸礼を授けているのですか。」
26 ヨハネは彼らに答えて言った。「私は、水の中で浸礼3を授けているが、あなたがたの中に、あなたがたの知らない方が立っておられます。
27 その方こそ、私の後においでになっているのに、私より前に存在しておられた方です。私自身は、この方の履き物のひもを解く価値もありません。」
28 これらのことは、ヨハネが浸礼を授けていたヨルダン川の対岸のベタバラで起こった。
29 その翌日、ヨハネは自分の方に来られるイエスを見て言った。「見よ、世の罪を取り去る、神の子羊を!
30 『私の後においでになる方は、私に勝る方です。私より先におられたからです。』と、私が言ったのは、この方のことです。
31 私はこの方を知らなかったが、この方がこれを通してイスラエルに明らかにされるために、私自身が来て、水の中で浸礼を授けているのです。」
32 ヨハネは、また証をして言った。「私は、御霊が鳩のように天からおりてきて、この方の上におとまりになるのを見ました。
33 私は、この方を知りませんでした。しかし、水の中に浸礼を授けるようにと私を遣わされた方が、私に言われました。『御霊がおりてその方の上にとまるのをあなたは見る。その人こそ、聖霊によって浸礼を授ける方である。』と。
34 私はそれを見ました。それで、この方こそが、神の御子息であられると証をしたのです。」
35 その翌日、ヨハネはまた、自分の弟子の二人と共に立っていた。
36 そして、イエスが歩いておられるのを見て、言った。「見よ、神の子羊を!」
37 そこで、ヨハネの二人の弟子は、彼が話しているのを聞いて、イエスについて行った。
38 すると、イエスは振り向き、彼らがついて来るのを見て、彼らに言われた。「何を求めているのですか。」彼らはイエスに言った。「ラビ(訳すると、先生)、あなたはどちらにお泊まりですか。」
39 イエスは彼らに言われた。「来て、見なさい。」彼らは行って、イエスの泊まっておられる所を見た。そして、その日は、イエスと共に泊まった。第十時間目ごろ4であった。
40 ヨハネの話しを聞いて、イエスについて行った二人のうちの一人は、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。
41 この人はまず、自分の兄弟シモンを探し出して彼に言った。「私たちはメサイア5(訳すると、キリスト)を見つけた。」
42 そして、シモンをイエスの所に連れて行った。そして、イエスは彼に目を注いで言われた。「あなたはヨナの息子、シモンです。あなたは、ケパ6(訳すると、石)と呼ばれます。」
43 翌日イエスはガリラヤへ行こうとし、ピリポを探し出して、彼に言われた。「わたしについて従いなさい。」
44 さて、ピリポは、アンデレとペテロの町、ベツサイダ出身であった。
45 ピリポは、ナタナエルを探し出して彼に言った。「私たちは、モーセが律法の中に書き、また、預言者たちも書き記した方に出会った。ヨセフの息子で、ナザレ出身のイエスだ。」
46 すると、ナタナエルは彼に言った。「ナザレから、どんなよいものが出ることがあり得るだろうか。」ピリポは彼に言った。「来て見なさい。」
47 イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた。「見よ。真のイスラエル人です。彼の中には、いつわりがありません。」
48 ナタナエルはイエスに言った。「どうして私のことを知っておられるのですか。」イエスは答えて彼に言われた。「ピリポがあなたを呼ぶ前に、わたしはあなたがイチジクの木の下にいるのを見ました。」
49 ナタナエルは、イエスに答えて言った。「ラビ、あなたは神の御子息です。あなたはイスラエルの王です。」
50 イエスは彼に答えて言われた。「わたしがイチジクの木の下にいたあなたを見たと言ったので、あなたは信じますか。あなたは、これよりもっと偉大なことを見ます。」
51 イエスは、また彼に言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。これからあなたがたは、天が開いて、神の御使いたちが人の子の上を昇り下りするのを見ることになります。」

2章

さて、三日目にガリラヤのカナで結婚式があった。イエスの母がそこにいた。
2 そして、イエスと彼の弟子たちも、結婚式に招かれた。
3 ところで、葡萄液7が不足してきたので、イエスの母は彼に、「彼らは葡萄液がありません。」と言った。
4 イエスは彼女に言われた。「婦人、わたしは、あなたに何のかかわりがあるでしょうか。わたしの時はまだです。」
5 イエスの母は、使用人たちに言った。「この方があなたがたに言われることは、何でもしてください。」
6 さて、そこにユダヤ人の清め8のために、石の水瓶が六個置かれてあった。それぞれ二か三メトレテス9入りであった。
7 イエスは彼らに言われた。「水瓶に水を満たしなさい。」そこで、彼らは縁まで満たした。
8 そして、イエスは彼らに言われた。「さあ、汲み出し、宴会長の所に持って行きなさい。」そこで、彼らは持って行った。
9 宴会長は葡萄液になった水を味見した時、それがどこから来たのか知らなかった。しかし、水を汲んだ使用人たちは知っていた。宴会長は花婿を呼び、
10 彼に言った。「人は皆、よい葡萄液を最初に出すものです。そして、皆が十分飲んだ頃に、劣る方を出します。あなたはよい葡萄液を今までとっておいたのですね。」
11 イエスは、この最初の奇蹟をガリラヤのカナで行ない、ご自分の栄光を現された。それで、彼の弟子たちはイエスを信じた。
12 この後、イエスは、母、兄弟たち、弟子たちと、カペナウムに下り、多くの日ではないが、そこに泊まられた。
13 さて、ユダヤ人の過越祭10が近かったので、イエスはエルサレムに上られた。
14 そして、イエスは牛、羊、鳩を売る者たちや両替する者たちが、神殿の敷地に座り込んでいるのを見つけられた。
15 そしてなわでむちを作り、彼はすべてを、羊や牛も神殿の敷地から追い出された。そしてイエスは両替人の金を散らし、その台をひっくり返された。
16 そして、鳩を売る者たちに言われた。「これらの物をここから持って出て行け。わたしの父の家を、商売の家にするな。」
17 そこで、イエスの弟子たちは、「あなたの家への熱意が、わたしを食い尽くした。」と書いてあるのを思い出した。
18 そこで、ユダヤ人たちは答えてイエスに言った。「あなたが、これらのことをするからには、どんなしるしを私たちに見せてくれるのか。」
19 イエスは答えて彼らに言われた。「この神殿を壊してみなさい。わたしは三日で、建て直します。」
20 そうすると、ユダヤ人たちは言った。「この神殿は四十六年間かけて建てられたのに、それを三日であなたは建てると言うのか。」
21 しかし、イエスは神殿すなわちご自分の体のことを言われたのである。
22 それゆえ、イエスが死者の中から復活させられた時、イエスの弟子たちは、イエスが彼らに言われたこのことを思い出し、聖書とイエスの言われた言葉を信じた。
23 さて、イエスが過越祭と過越祭を祝う食事に参加して、エルサレムにおられた時、多くの人はイエスのなさっておられた奇蹟を見て、イエスの御名を信じた。
24 しかし、イエスご自身は、ご自分を彼らに任せられなかった。すべての人を知っておられたからであり、
25 また、イエスは、人について誰も証言することを必要とされなかったからである。それは、イエスが人の内に何があるかを知っておられたからである。

3章

さて、パリサイ派の一員で、ニコデモという名前で、ユダヤ人の支配者の一人がいた。
2 この人が夜イエスの所に来て、彼に言った。「ラビ11、私たちはあなたが、神のみもとから教師として来られたことを知っています。神が共におられなければ、誰もあなたがなさるこれらの奇蹟を行なうことができないからです。」
3 イエスは答えて彼に言われた。「まことに、まことに、あなたに言います。人は新しく生まれるのでなければ、神の王国を見ることができないのです。」
4 ニコデモはイエスに言った。「年老いた人が、どのようにして生まれることができるのですか。人は再び自分の母の胎内に入って、生まれることなどできるのですか。」
5 イエスは答えられた。「まことに、まことに、あなたに言います。人は水と霊によって生まれるのでなければ、神の王国に入ることができないのです。
6 肉によって生まれた者は肉であり、御霊によって生まれた者は霊なのです。
7 『あなたがたは、新しく生まれなければならない。』とわたしがあなたに言ったことを、不思議に思ってはいけません。
8 風は思うままの所に吹き、あなたはその音を聞きますが、それがどこから来て、どこへ行くのかわかりません。御霊によって生まれた人も皆、これと同じです。」
9 ニコデモは答えてイエスに言った。「どうしてそんなことが、起こりえますか。」
10 イエスは答えて彼に言われた。「あなたこそイスラエルの教師でありながら、これらのことを知らないのですか。
11 まことに、まことに、あなたに言います。わたしたちは知っていることを話し、わたしたちは見たことを証言しているのです。それなのに、あなたがたはわたしたちの証言を受け入れません。
12 わたしがあなたがたに地上のことを話しても信じないのなら、ましてわたしが天上のことを話すとしても、どうしてあなたがたは信じることがありましょうか。
13 そして、天国から降りて来た者、すなわち天国にいる人の子以外は、誰一人、天国に昇った人はいません。
14 そして、モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子も上げられなければなりません。
15 それはすべて、彼を信じる人が滅びることなく、永遠の命を持つためです。
16 なぜなら、ご自分の唯一お生みになった御子息を与えられたほどに、神はこうしてこの世を愛された。それは、すべて御子息を信じる人が、滅びることなく、永遠の命を持つためなのである。
17 神がご自分の御子息を世に派遣された理由は、この世を裁くためではなく、御子息を通してこの世が救われるためなのである。
18 御子息を信じる人は裁かれることはない。しかし、信じない者はもうすでに裁かれている。その人は神の唯一お生みになった御子息の名を信じなかったからである。
19 その裁きとは、これである。すなわち、光がこの世に来られたのに、人たちは光よりも暗やみを愛した。彼らの行為が悪かったからである。
20 なぜなら、悪を行なっているすべての者は、光を憎む。また、自分の行為が責められないように、光の所に来ない。
21 しかし、真理を行なう者は、光の所に来る。それは、彼の行ないが神にあって行なわれていることを、明らかにされるためである。」
22 その後、イエスは彼の弟子たちとユダヤの地に行き、そこで彼らと共に滞在し、浸礼を授けられた。
23 ヨハネもサリムに近いアイノン12で浸礼を授けていた。なぜなら、そこには水が多かったからである。人々はやって来て、浸礼を受けていた。
24 それは、ヨハネはまだ投獄されていなかったからである。
25 そこで、ヨハネの弟子たちとユダヤ人たちの間で、清めについての議論が始まった。
26 そして、彼らはヨハネの所に来て、彼に言った。「ラビ、見てください。ヨルダン川の向こうで、あなたといっしょにいた方で、あなたが証をしたあの人のことですが、あの方が浸礼を授けています。そして、みんなは彼の方に行っています。」
27 ヨハネは答えて言った。「もしそれが天から与えられたものでなければ、人は何も受け取ることができません。
28 『私はキリストではなく、かえってあの方の先に派遣されたのです。』と私が言ったことを、あなたがた自身が証をしています。
29 花嫁を持つ者は、花婿です。しかし立って、花婿の話に耳を傾ける花婿の友人は、彼の声を大いに喜んでいます。それゆえ、私のこの喜びも満たされています。
30 あの方は盛んにならなければなりませんが、私は衰えなければなりません。
31 上から来られる方は、すべてのものの上におられます。地から出る者は、地からであり、地からのことを話します。天国から来られる方は、すべての物事の上におられます。
32 そして、その方は見たことと聞いたこと、このことを証していますが、誰もその方の証を受け入れません。
33 彼の証を受け入れる人は、神が真実であると、証印を押したのです。
34 というのは、神が派遣された方は、神の御言葉を話されます。神は測り知れないほどに御霊を与えられるからです。
35 御父は御子息を愛し、御子息の手にすべての物事を委ねられたのです。
36 御子息を信じる人は、永遠の命を持っていますが、御子息を信頼しない者は命を見ません。かえって、神の怒りがその人の上にとどまっています。」

4章

さて、パリサイ派の人たちは、イエスがヨハネよりも多く弟子をつくり、浸礼を授けておられると聞いた。そのことを主が知られた時、
2 (実は浸礼を授けていたのはイエスご自身ではなく、イエスの弟子たちであった。)
3 主はユダヤを去り、再びガリラヤに入って行かれた。
4 しかし、主はどうしても、サマリヤを通って行かなければならなかった。
5 そこで、ヤコブがその息子ヨセフに与えた土地の近くにある、スカルと呼ばれるサマリヤの町に、彼は入られた。
6 そして、そこにはヤコブの井戸があった。それで、イエスは旅で疲れていたので、そのまま井戸の上に腰をかけておられた。時は第六時間目13であった。
7 一人のサマリヤの女は、水を汲みにやってきた。イエスは女に、「わたしに水を飲ませてください。」と言われた。
8 (なぜなら、彼の弟子たちは食べ物を買いに町に行っていたのである。)
9 そこで、サマリヤの女はイエスに言った。「どうしてあなたはユダヤ人でありながら、サマリヤの女である私に、飲み水を求めるのですか。」これは、ユダヤ人がサマリヤ人と交際がないからである。
10 イエスは女に答えて言われた。「もしあなたが神の賜物と、『わたしに水を飲ませてください。』と言う人が、誰であるかを知っていたなら、あなたはその人に願い求め、そしてその人は、あなたに生ける水を与えただろうに。」
11 女はイエスに言った。「主よ、あなたは汲む物を何も持っていません。しかも、この井戸は深いのです。あなたはその生ける水をどこからお持ちになるのですか。
12 私たちにこの井戸を与えた私たちの先祖ヤコブよりも、あなたは偉大ですか。ヤコブはこれより飲み、また彼の息子たちも、家畜も飲んだのです。」
13 イエスは女に答えて言われた。「誰であろうがこの水を飲む人は、また渇きます。
14 しかし、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも絶対に渇くことがありません。わたしが与える水は、その人の内で泉となり、永遠の命に至る水が湧き出るのです。」
15 女はイエスに言った。「主よ、私が渇くことがなく、またここに汲みに来なくてもよいように、その水を私にください。」
16 イエスは女に言われた。「行って、あなたの夫をここに呼んで来なさい。」
17 女は答えて言った。「私には夫はいません。」イエスは女に言われた。「『私には夫はいません。』と言ったのは、もっともです。
18 あなたには五人の夫がいたが、今いっしょにいる男は、あなたの夫ではありません。あなたの言ったことは、本当です。」
19 女はイエスに言った。「主よ、私はあなたは預言者だということが、よくわかりました。
20 私たちの父祖たちは、この山で礼拝しました。しかしあなたがたは、礼拝すべき場所はエルサレムだと言います。」
21 イエスは女に言われた。「婦人よ、わたしを信じなさい。あなたがたがこの山でも、エルサレムでもない所で、父を礼拝する時が来ています。
22 あなたがたは知らないものを礼拝しているが、わたしたちが礼拝している方は誰であるのかを、わたしたちは知っています。救いはユダヤ人から来るからです。
23 しかし、真の礼拝者たちが、霊と真理において、父を礼拝する時が来ます。今がその時です。なぜなら、父はご自分を礼拝するそのような者を求めておられるからです。
24 神は霊です。そして、神を礼拝する人たちは、霊と真理において礼拝しなければなりません。」
25 女はイエスに言った。「私はキリストと呼ばれるメサイアが来られることを知っています。その方が来られた時、私たちにすべてのことを教えてくださるのです。」
26 イエスは女に言われた。「あなたと話しているわたしこそ、その者です。」
27 さて、ちょうどこの時、イエスの弟子たちが戻って来て、イエスがこの女と話しをされているのを不思議に思った。それにもかかわらず、誰も、「何を求めておられますか。」とか、「なぜその女と話しておられるのですか。」とも言わなかった。
28 やがて、その女は水瓶を置いたまま町の中に入って行き、男たちに言った。
29 「私のしてきたすべてのことを、私に言われた方をどうぞ見に来てください。この方がキリストではないでしょうか。」
30 そこで、人たちは町を出て、イエスの所に来た。
31 その間に弟子たちはイエスに、「ラビ、14召し上がってください。」と勧めて言ったが、
32 イエスは彼らに言われた。「わたしには、あなたがたの知らない食べ物があります。」
33 そこで、弟子たちは互いに言った。「誰かが主に食べ物を持ってきたはずはないのだが。」
34 イエスは彼らに言われた。「わたしの食べ物とは、わたしを遣わされた方のご意志を実行し、その方の働きを完成することです。
35 あなたがたは、『収穫の刈入れが来るまで、まだ後四ヵ月ある』と言っているではありませんか。見よ、わたしはあなたがたに告げます。さあ、目を上げて、畑をよく見なさい。なぜなら、すでに色づいていて収穫の時です。
36 そして、刈る人は報酬を受け、永遠の命に至る実を集めます。こうして蒔く人も収穫する人も、ともに喜ぶことができるためです。
37 だから、これで、『ある者が蒔き、別の者が刈り取る。』ということわざは真実です。
38 私は、あなたがた自身が労苦しなかったものを、あなたがたが収穫するために派遣しました。他の人々が先に労苦し、それからあなたがたが、彼らの働きに加わったのです。」
39 そこで、その町の多くのサマリヤ人は、「この方が、私のしてきたすべてのことを、私に言われました。」と女の証した言葉によって、イエスを信じた。
40 そこで、サマリヤ人たちはイエスのもとに来て、彼らと共に泊まってくださるように、イエスに頼んだ。それで、イエスは二日間そこに泊まられた。
41 そして、さらに多くの人が、イエスご自身の言葉によって信じた。
42 そして、サマリヤ人たちはその女に言った。「もう私たちは、お前の話しによって信じているのではない。この方こそまことに世の救い主で、キリストであることを、われら自らが聞き、知ったからだ。」
43 さて、二日後、イエスはその地を離れて、ガリラヤに入られた。
44 ところで、イエスご自身は、「預言者は自分の故郷では敬意をはらわれない。」と証言しておられた。
45 それでも、彼がガリラヤに行かれた時、ガリラヤ人たちはイエスを受け入れた。それは、彼らも祭に行って来たので、その時、イエスがエルサレムでの祭でなさったすべてのことを見ていたからである。
46 それで、イエスは再びガリラヤのカナに行かれた。そこは、イエスが水を葡萄液にされた所である。さて、王の側近がいて、その息子はカペナウムで病気であった。
47 この人は、イエスがユダヤを出て、ガリラヤにおられると聞いて、イエスのもとに来た。そこで、彼はイエスに、下って来て自分の息子を治してくださるように懇願した。息子は、今にも死にかかっていたからである。
48 そこで、イエスは彼に言われた。「しるしや不思議な業を見なければ、あなたがたは決して信じようとしない。」
49 王の側近はイエスに言った。「主よ、私の子どもが死なないうちに、来てください。」
50 イエスは彼に言われた。「行きなさい。あなたの息子は生きるのです。」そこで、その男はイエスが彼に言われた言葉を信じて、行った。
51 そこで、彼が下って行く途中で、彼の僕たちは彼に出会い、「お子様は、生きておられます。」と言って彼に告げた。
52 そこで、彼は僕たちに、息子が良くなった時刻を尋ねると、彼らは、「きのう第七時間目15ごろ、息子さんの熱が引きました。」と彼に答えて言った。
53 そこで、ちょうどイエスが、「あなたの息子は生きるのです。」と彼に言われたのと同じ時刻であることを、父親は知った。そして、彼自身と彼の家全員は信じた。
54 これはまた、ユダヤ地方を出てガリラヤ地方に入られてから、イエスが行なわれた第二の奇蹟である。

5章

この後、ユダヤ人の祭があった。それでイエスはエルサレムに上られた。
2 さて、エルサレムには、羊の門のほとりに、ヘブライ語でベテスダと呼ばれる、五つの柱廊が付属している池がある。
3 この柱廊の中に、体の不自由な人たち、つまり目が不自由な人たち、歩けない者たち、弱り果てた者たちがとても大勢、体を横たえて水の動きを待っていた。
4 なぜなら、折々、御使いが下ってきて、池に入り、水を動かすことがあった。それで、水が動いてから一番先に入った者は、その者に取り付いていた病気が治ったからである。
5 さて、三十八年間、病気であったある男がそこにいた。
6 イエスはこの男が横たわっているのを見、もう長い間この状態であるのを知って、彼に言われた。「健康になりたいのですか。」
7 体の不自由な人はイエスに答えた。「主よ、水が動く時に、私を池に入れてくれる人がいません。ですから、私自身が行く前に、私より早く他の人が下って行きます。」
8 イエスは彼に言われた。「起き上がりなさい。あなたの寝床を手に取り上げ、そして歩きなさい。」
9 そうすると、その男はたちどころに不自由な所が健康になり、彼の寝床を取り上げて歩いた。ところで、その日は安息日であった。
10 それで、ユダヤ人たちは治された人に言った。「今日は安息日だ。お前が寝床を運んだことは、不法だ。」
11 その男は彼らに答えた。「私を治してくださったあの方が、私に言いました。『あなたの寝床を取り上げて、歩きなさい。』」
12 それで、「お前に、『あなたの寝床を取り上げて歩きなさい。』と言った男は、誰か。」と彼らは男に尋ねた。
13 しかし、治された男は、イエスが誰なのか知らなかった。大勢の人がその場所にいたので、イエスはすでに立ち去られたからである。
14 この後、イエスはその男を神殿の敷地で見つけ、彼に言われた。「見よ。あなたは健康になりました。もう罪を犯してはなりません。それは何かもっと悪いことがあなたに起こらないためです。」
15 その男はそこを去り、ユダヤ人たちに、自分を健康にしてくださった方はイエスであると告げた。
16 そして、イエスがこれらのことを安息日になされたので、ユダヤ人たちはイエスを迫害し、殺そうとイエスを捜していた。
17 しかし、イエスは彼らに答えられた。「わたしの父も今にいたるまで働いておられ、わたしも働いています。」
18 ゆえに、ユダヤ人たちはそのため、ますますイエスを殺そうとつけ狙った。安息日を破っただけでなく、神をご自分の父と言い、ご自身を神と等しい者とされたからである。
19 それゆえイエスは答えて、彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。子は父のなすことを見なければ、子自身で何も行なうことができません。なぜなら、何であれ、父のなすことは、子も同じように行なうからです。
20 父は子を愛し、子にご自分がなすことをことごとく示されるからです。また、あなたがたが驚くように、父はこれらよりさらに大きなことを子に示されるのです。
21 なぜなら、ちょうど父が死人を復活させ、命を与えられるように、子もまたその与えたい者に命を与えます。
22 なぜなら、父は誰をも裁くことなく、子にすべての裁きを委ねられているのです。
23 これはすべての人が父に敬意をはらうように、子に敬意をはらうためです。子に敬意をはらわない者は、子を遣わされた父に敬意をはらいません。
24 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしの言葉を聞いて、わたしを遣わされた方を信じる者は、永遠の命を持ち、また裁きに入ることはなく、死から命に移っているのです。
25 まことに、まことに、あなたがたに言います。死人が神の子の声を聞き、聞いた人は生きる時が来ます。今がその時です。
26 なぜなら、父がご自身のうちに命を持っておられるように、子にもそのとおり、自身のうちに命を持つようにして下さったからです。
27 そして、彼は人の子だから、父は彼にも裁きを行なう権威をも与えられたのです。
28 このことに驚いてはいけません。というのは、墓にいる者たちが皆、人の子の声を聞く時が来るのです。
29 そして、彼らは出て来ます。善を行なった者たちは命の復活に、そして悪を行ない続けた者たちは裁きの復活に至るのです。
30 わたしは、自分自身からは何も行なうことができません。わたしは聞くとおりに裁きます。そしてわたしの裁きは正しいのです。それは、自分の意志を求めず、わたしを遣わされた方、すなわち父のご意志を求めるからです。
31 もしわたしが自分自身について証をすれば、わたしの証は真実ではありません。
32 わたしについて証する人がほかにいます。そして、わたしについて証する人の証が、真実であることをわたしは知っています。
33 あなたがたはヨハネのもとに人を遣わしました。そして、ヨハネは真理について証をしました。
34 しかし、わたし自身は人からの証を受けませんが、これらのことを言うのは、あなたがたが救われるためです。
35 その人は燃えて輝く灯火でした。それであなたがたはしばらくの間、彼の光の中で自ら喜びに満ちあふれました。
36 しかしわたしには、ヨハネよりも大きな証があります。それは、わたしが成し遂げるために、父がわたしに与えられた業、すなわちわたしが行なっている業こそが、父がわたしのことに関して、わたしを遣わされたことを証しているからです。
37 またわたしを遣わした方、すなわち父は自らわたしについて証をされました。あなたがたは、まだ一度もその御声を聞いたことがなく、その御姿を見たこともありません。
38 また、あなたがたは、父の御言葉を内にとどめてもいません。遣わされたその者を、あなたがたは信じていないからです。
39 聖書をよく調べてみなさい。あなたがたはその中に永遠の命があると思っているからです。しかし、聖書はわたしについて証しているものです。
40 しかも、あなたがたは、命を持つために、わたしの所に来ようとしません。
41 わたしは人から栄光を受けません。
42 しかし、あなたがた自身のうちに、神の愛がないことをわたしは知っています。
43 わたしはわたしの父の御名によって来たのに、あなたがたはわたしを受け入れません。もし別の者がその者自身の名によって来れば、あなたがたはその者を受け入れるでしょう。
44 互いに相手からの栄光を受けながら、唯一の神からの栄光を求めないので、あなたがたは、どうして信じることができましょうか。
45 わたしがあなたがたを父に訴えると思ってはいけません。あなたがたを訴える者がいます。あなたがたが頼りにしているモーセです。
46 なぜなら、もしあなたがたが、モーセを信じていたならば、わたしを信じていたでしょう。なぜなら、モーセはわたしのことを書きしるしたからです。
47 しかし、もしモーセの書物を信じないなら、あなたがたはどうしたらわたしの言葉を信じるのですか。」

6章

これらのことの後、イエスはガリラヤの海、すなわち、テベリヤの海の向こう岸へ渡られた。
2 すると、大勢の群衆がイエスについて行った。それは彼が病人たちになさっていた奇蹟を見たからである。
3 さて、イエスは山に登り、弟子たちと共にそこに座られた。
4 ちなみに、過越というユダヤ人の祭が、間近であった。
5 イエスは目を上げて、大勢の群衆がご自分の方に来るのを見た時、ピリポに言われた。「あの人々が食事ができるように、わたしたちはどこからパンを買うのですか。」
6 イエスはピリポを試すためにこう言われた。なぜなら、ご自分は何をしようとしているのかご存じであったからである。
7 ピリポは答えた、「皆がほんのわずかずつ食べるにしても、二百デナリ16のパンでは足りません。」
8 弟子の一人で、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った。
9 「ここに、大麦のパン五個と、小さな魚二匹を持っている少年がいます。しかし、これほど多くの人では、それが何になりましょう。」
10 それでイエスは、「皆を座らせなさい。」と言われた。ところで、その場所には草が多くあったので、人々は座った。男の数は、約五千人であった。
11 イエスはパンを手に取り、感謝を捧げてから、弟子たちに分け与えられた。そして弟子たちは座っていた人たちに分け与え、また小さい魚も同様にして、彼らに欲しいだけ与えられた。
12 彼らが満腹になった時、イエスはご自分の弟子たちに言われた。「何もむだにならないように、残り物を集めなさい。」
13 そこで、彼らは集めた。そして、大麦のパン五個を食べた人々が残したパン切れが、十二かごを満たした。
14 それで、イエスのなさったこの奇蹟を見た人々は、「確かにこの方は、世に来られるべきあの預言者です。」と言った。
15 さて、イエスは、人たちがやって来て、力ずくでご自分を捕らえ、王にしようとするのを知っておられた。そのために、再び一人で山に退かれた。
16 それで、夕方になると、弟子たちは海へ下り、
17 船に乗ってカペナウムへ海を渡る途中であった。すでに暗くなっていたが、イエスはまだ弟子たちの所に着いていなかった。
18 そして、強風が吹いてきたので、海は荒れていた。
19 それで、二五か三十スタディオン17ほどこぎ出した時、弟子たちはイエスが海の上を歩き、船に近づいて来られるのを見て恐怖に陥った。
20 しかし、イエスは彼らに言われた、「わたしです。恐れてはいけません。」
21 そこで弟子たちは喜んでイエスを船に迎え入れた。すると、船はすぐに彼らが行こうとしていた地に着いた。
22 次の日、海の向こう岸に立っていた群衆は、そこにはイエスの弟子たちが乗った小舟のほかに、一そうの小舟もないことに気がついた。また、イエスは弟子たちと共に小舟に乗らず、ただ弟子たちだけで出て行ったことに気がついた。
23 (しかし、主が感謝を捧げられた後、人々が食事をした場所の近くに、ほかの小舟が数そうテベリアから来たのである。)
24 それで、群衆はイエスも彼の弟子たちもそこにいないのが分かった時、自分たちもそれぞれの船に乗り、イエスを探してカペナウムに行ったのである。
25 そして、海の向こう側でイエスを探し出すと、彼らはイエスに言った。「ラビ18、いつこちらにおいでになったのですか。」
26 イエスは彼らに答えて言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたがわたしを探しているのは、奇蹟を見たからではなく、パンを食べて満たされたからです。
27 腐る食べ物のために働くのではなく、永遠の命に至る食べ物のために働きなさい。それは人の子があなたがたに与えるものです。彼こそ父なる神が承認の印を押されたからです。」
28 そこで彼らはイエスに言った。「私たちは神の御業を行なうために、何をしたらよいのでしょうか。」
29 イエスは彼らに答えて言われた。「神が遣わされた者を信じることが、神の御業です。」
30 従って、彼らはイエスに言った。「では、私たちが見て、あなたを信じるために、あなたはどんなしるしを示してくださいますか。何をなさいますか。
31 私たちの父祖たちは荒野でマナを食べました。『神は彼らに天国からのパンを食べるために与えてくださった。』と書いてあるとおりです。」
32 するとイエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、わたしはあなたがたに言います。モーセはあなたがたに天国からそのパンを与えたのではありません。しかし、わたしの父は、天国からまことのパンを、あなたがたに与えてくださいます。
33 というのは、神のパンは、天国から下って来て、世に命を与える者です。」
34 すると彼らはイエスに言った。「主よ、いつも私たちにこのパンを与えてください。」
35 しかし、イエスは彼らに言われた。「わたし自身が命のパンです。わたしに来る者は決して飢えることはなく、わたしを信じる者は決して渇くことがありません。
36 しかし、あなたがたもわたしを見たのに信じないと、わたしはあなたがたに言いました。
37 父がわたしに与えられる人は皆、わたしの所に来ます。またわたしは、わたしの所に来る人を決して追い出しはしません。
38 なぜなら、わたしが天国から下って来たのは、わたし自身の意志を行なうためでなく、わたしを遣わされた方のご意志を実行するためだからです。
39 そして、これがわたしを遣わされた父のご意志です。すなわち、父がわたしに与えてくださったすべての人の中から、わたしは一人も失うことはなく、最後の日にその人を復活させることです。
40 また、これがわたしを遣わされた父のご意志です。つまり、子を見て彼を信じる人が皆、永遠の命を持つことです。また、わたし自身は最後の日にその人を復活させます。」
41 すると、ユダヤ人たちはイエスが、「わたしは天国から下って来たパンです。」と言われたので、イエスについてぶつぶつ言っていた。
42 そして彼らは続けて言った。「これはヨセフの息子で、私たちは彼の父と母を知っている、そのイエスではないか。では、何でこの男は、『わたしは天国から下って来ました。』と言うのか。」
43 それで、イエスは彼らに答えて言われた。「仲間内でぶつぶつ言うのは止めなさい。
44 もしわたしを遣わした父が引き寄せなければ、誰もわたしの所に来ることができません。そして、わたし自身は最後の日にその人を復活させます。
45 『そして、彼らは皆神によって教えられる。』と預言者たちの書に書いてあります。だから、父から聞き学んだすべての者は、わたしの所に来ます。
46 神から来た者の他に、誰も父を見た者はいません。この者は父を見たことがあります。
47 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしを信じる者は永遠の命を持つのです。
48 わたしはその命のパンです。
49 あなたがたの父祖たちは、荒野でマナを食べたが死にました。
50 これは、誰でもこれを食べて死ぬことがないように、天国から下って来たパンです。
51 わたしこそが、天国から下って来た生けるパンです。誰でもこのパンを食べれば、永遠に生きます。またわたしが与えるパンは、世の命のために与えるわたし自身の肉です。」
52 そこで、「どういうふうにして、この男は、自分の肉を私たちが食べることができるようにして、与えるのか。」とユダヤ人たちは互いに議論して、言った。
53 すると、イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。もしあなたがたは人の子の肉を食べ、また彼の血を飲まなければ、命はあなたがたの内にありません。
54 誰でもわたしの肉を食べ、またわたしの血を飲む者は永遠の命を持っています。そして、わたしは最後の日にその人を復活させます。
55 と言うのは、わたしの肉は真実の食物であり、わたしの血は真実の飲み物だからです。
56 わたしの肉を食べ、またわたしの血を飲む者は、わたしのうちにとどまり、またわたしは彼のうちにとどまります。
57 生ける父がわたしを遣わし、また父によってわたしが生きるように、わたしを食べる人こそがわたしによって生きるのです。
58 これが天国から下って来たそのパンです。あなたがたの父祖たちは、マナ19を食べても死んでしまいました。そのような者ではなく、このパンを食べる者は永遠に生きるのです。」
59 イエスはカペナウムで教えておられた間に、シナゴーグ20でこれらのことを言われた。
60 そこで、イエスの弟子たちの多くは、これを聞いた時にこう言った。「これは耐え難い言葉です。誰が聞いておられようか。」
61 しかしイエスは、ご自分の弟子たちが、これについてぶつぶつ言っているのをご自身のうちで知った時、彼らに言われた。「このことがあなたがたをつまずかせるのですか。
62 ましてや、もしあなたがたは人の子が以前いた所に昇るのを見るとすればどうでしょうか。
63 生かすのは霊です。肉は何の益にもなりません。わたしがあなたがたに話すこの言葉は霊であり、命なのです。
64 しかし、あなたがたのうちに信じない者たちがいます。」イエスは初めから、信じない者たちは誰か、また誰がイエスご自身を裏切るのかを知っておられたからである。
65 またイエスは言われた。「こういうわけで、『もしわたしの父から与えられていなければ、誰もわたしの所に来ることができません。』とわたしはあなたがたに言ったからです。」
66 それ以来、弟子たちの多くは離れ去って、もはやイエスと共に歩まなかった。
67 そこで、イエスは十二人に言われた。「あなたがたも立ち去るつもりですか。」
68 すると、シモン・ペテロはイエスに答えて言った。「主よ、私たちは誰の所に行きましょう。あなたが永遠の命の言葉をお持ちなのです。
69 また、あなたこそ生ける神の御子息であるキリストですと、私たちは信じ、確信しているのです。」
70 イエスは彼らに答えられた。「あなたがた十二人を選んだのは、わたしではありませんか。そしてそのうちの一人は悪魔です。」
71 彼は、シモンの息子ユダ・イスカリオテについてこれを言われた。ユダは十二人の一人でありながら、イエスを正に裏切ろうとする者であった。

7章

これらの後、イエスはガリラヤ地方を歩いておられた。ユダヤ人がイエスを探し出し、殺そうとしていたから、ユダヤ地方を歩こうとされなかった。
2 さて、ユダヤ人の仮庵の祭が近づいていた。
3 それで、イエスの兄弟たちは彼に言った。「弟子たちも、あなたの行なう業を見るように、ここを離れてユダヤに行きなさい。
4 というのは、公に人自ら知られることを求めているのに、秘密裏にことをする者はいない。これらのことをしているのなら、あなた自身を世に示しなさい。」
5 こう言ったのは、ご自分の兄弟たちも、イエスを信じなかったからである。
6 それからイエスは彼らに言われた。「わたしの時はまだ訪れていませんが、あなたがたの時はいつでも準備ができています。
7 世はあなたがたを憎むことができませんが、わたしを憎んでいます。なぜなら、世の行ないが悪だと、わたしが証言するからです。
8 あなたがたは、この祭に上って行きなさい。わたしはまだこの祭に上りません。わたしの時がまだ満ちていないからです。」
9 イエスは、彼らにこのことを言い、ガリラヤに泊られた。
10 しかし、実際には、兄弟たちがその祭に上った後、イエスご自身も公にではなく、秘密裏に祭に上って行かれたのであった。
11 それで、ユダヤ人たちは、祭でイエスを探し、「あの人はどこにいますか。」と言った。
12 群衆の間でイエスのことが、大いにささやかれていた。「彼は善い人です。」と言う者もいれば、「違う、イエスは群衆を惑わしているのです。」と言う者もいた。
13 しかしながら、ユダヤ人を恐れて、誰もイエスについてはっきり意見を言う者はいなかった。
14 しかし祭が半ばほど過ぎた時、イエスは神殿の敷地に入って教えられた。
15 そうすると、ユダヤ人たちは驚いて言った。「この人は、師事したこともないのに、どうして学問があるでしょうか。」
16 イエスは、彼らに答えて言われた。「わたしの教えは、わたし自身のものではなく、わたしを遣わされた方の教えです。
17 もしこの方のご意志を行なおうとすれば、誰であれ、この教えが神から出たのか、それともわたし自身から出たものを話すのか、その者はわかります。
18 自分自身から話す者は、自分の栄光を求めています。しかし、自分を遣わした方の栄光を求めるこの者は真実な者であり、その者の中には不義がありません。
19 モーセはあなたがたに律法を与えたではありませんか。それなのに、あなたがたは誰も、律法を守っていません。なぜわたしを殺そうとしているのですか。」
20 群衆は答えて言った。「あなたは悪霊を所有している。誰があなたを殺そうとしているのか。」
21 イエスは答えて彼らに言われた。「わたしが一つの業を行なったというので、あなたがたはみんな驚いています。
22 このために、モーセがあなたがたに割礼を与えました。なぜなら、割礼はモーセからではなく、父祖たちから来たのです。そして、あなたがたは安息日にも人に割礼をしています。
23 モーセの律法が破られないようにと安息日に人は割礼を受けるのなら、安息日にわたしが人を完全に治したというので、あなたがたはわたしに腹を立てるというのですか。
24 外見で人を裁いてはいけません。正しい裁きで裁きなさい。」
25 そこで、エルサレム出身のある人たちが、「これはあの人たちが殺そうとしている人ではないですか。
26 しかし、見よ。彼は恐れることなく話しているが、人たちは彼に何も言いません。支配者たちにも、この人がほんとうにキリストであることが分かったのでしょうか。
27 ところが、この人がどこから来たかは、私たちは知っています。しかし、キリストが来られる時は、どこから来られるのか、誰も知りません。」
28 すると、神殿の敷地で教えておられたイエスが叫んで言われた。「あなたがたはわたしを知っています。また、わたしがどこの出身かも知っています。しかし、わたしは自分で勝手に来たのではありません。わたしを遣わした方は真実です。あなたがたは、その方を知りません。
29 しかし、わたしはその方を知っています。なぜなら、わたしがその方から来たのであり、その方がわたしを遣わされたからです。」
30 それから、彼らはイエスを捕らえたかったが、彼に手をかけた者は誰もいなかった。なぜなら、イエスの時はまだ来ていなかったからである。
31 しかし、群衆の中から大勢の者たちがイエスを信じた。そして、「キリストが来られる時、この方がなさったより多くの奇蹟をなさいますか。」と言った。
32 群衆がイエスについて、このようなことをつぶやいているのが、パリサイ派の人たちの耳に入った。それで、パリサイ派の人たちや祭司長たちが、イエスを逮捕するために、役人たちを派遣した。
33 それで、イエスは彼らに言われた。「今しばらく、わたしはあなたがたと共にいますが、その後、遣わされた方のみもとへわたしは帰ります。
34 あなたがたはわたしを捜しますが見つかりません。わたしがいる所にあなたがたは来ることができません。」
35 それで、ユダヤ人たちは互いに言った。「私たちが見つけることはないように、この人はどこかへ行くつもりなのか。まさかギリシャ人のディアスポラ21の間に散らされたユダヤ人たちの所に行き、ギリシャ人を教えるつもりはないと思うが。
36 『あなたがたはわたしを捜すが見つからない。わたしがいる所にあなたがたは来ることができない。』と彼が言ったこの言葉は、どういう意味なのだろうか。」
37 祭の最後の日、大いなる日に、イエスは立って大声で言われた。「渇く者がいれば、誰でもわたしの所へ来て飲みなさい。
38 わたしを信じる者は、聖書が言っているとおり、『その人の腹22の底から生ける水が川となって流れ出る。』」
39 しかし、イエスは、ご自分を信じる人々が受けることになっている御霊について、このことを話された。なぜなら、イエスはまだ栄光をお受けになっていなかったので、聖霊はまだ与えられていなかった。
40 それで、この言葉を聞いた群衆の多くの者は、「この方は確かに、あの預言者だ。」と言った。
41 他の者たちは、「この方はキリストでいらっしゃる。」と言った。しかし、「ガリラヤからキリストが出るとでも言うのか。」と言う者もいた。
42 「聖書は、『キリストがダビデの種から、またダビデの住んでいた町ベツレヘムから来る。』と言っているではないか。」
43 そこで、イエスのことで、群衆の中で分裂が起こった。
44 そして、彼らの中から、イエスを捕まえようと思った者たちもいたが、自ら手をかけた者は誰もいなかった。
45 神殿の役人たちは大祭司たちとパリサイ派の人たちの所へ帰って行った。そうして彼らは役人たちに言った。「なぜあの人を連れて来なかったのか。」
46 役人たちは答えた。「あの方のように話した男は、未だかつて誰もいませんでした。」
47 すると、パリサイ派の人たちは彼らに答えた。「お前たちまでもだまされたのではないだろうね。
48 支配者たちやパリサイ派の人たちの中の誰か、彼を信じたと言うのか。
49 しかし、律法を知らないこの群衆どもは呪われているのだ。」
50 彼らの中の一人で、夜中にイエスの所に行ったニコデモが彼らに言った。
51 「我々の律法は、まず本人から聞き、彼の行なったことを知った上でなければ、判決を下さないこととされているではありませんか。」
52 彼らはニコデモに答えて言った。「あなたも、ガリラヤ出身ですか。なぜなら、ガリラヤから預言者は出ないことをよく調べてみなさい。」
53 そして彼らは一人一人、それぞれの家に帰って行った。

8章

さて、イエスはオリーブ山に行かれた。
2 そして、朝早く、イエスはまた神殿の敷地に来られた。そして、民衆のみんなはイエスの所に来た。イエスは座り、彼らを教えられた。
3 そして、律法学者たちとパリサイ派の人たちは、姦淫の現場で捕らえられた女をイエスの所に連れて来た。そして、彼女を真ん中に立たせ、
4 彼らはイエスに言った。「先生、この女は姦淫している現場で捕らえられました。
5 それで、モーセは私たちに律法で、そういう人は石投げの刑にせよと命じました。ですが、あなたは何とおっしゃるのですか。」
6 これは、彼らはイエスを試みて訴える理由を得ようとしてこう言ったのである。しかし、イエスは、聞いていないふりをしてしゃがんで、指で地面に書かれた。
7 それで、彼らは問い続けると、イエスは身を起こし、彼らに言われた。「あなたがたの中で罪のない者は、まずこの女性に石を投げつけなさい。」
8 そして、イエスはもう一度身を屈めて、地面に書かれた。
9 そして、それを聞いた者たちは、自分たちの良心に罪を認めさせられ、最年長の者たちから始めて一人ずつ、最後の一人まで去ってしまった。それでイエスは一人残され、女は真ん中に立っていた。
10 イエスは自ら身を起こし、女以外に誰もいないのを見て、彼女に言われた。「婦人よ、あなたを訴えるあの者たちは、どこにいますか。誰もあなたを罪に定めなかったのですか。」
11 彼女は言った。「主よ、誰もいません。」イエスは彼女に言われた。「わたしもあなたを罪に定めません。行きなさい。そして、もう罪を犯さないでいなさい。」
12 それで、イエスはまた彼らに話しかけて言われた。「わたしは世の光です。わたしに従う者は決して暗やみを歩まず、命の光を持つのです。」
13 それで、パリサイ派の人たちはイエスに言った。「あなたはあなた自身について証言をしています。あなたの証言は、真実ではありません。」
14 イエスは彼らに答えて言われた。「わたしはわたし自身について証言をしても、わたしの証言は真実です。わたしは自分がどこから来たのか、そしてどこへ行くのかを、知っているからです。しかし、あなたがたは、わたしがどこから来るのか、そしてどこへ行くのかを知りません。
15 あなたがたは、肉に従って裁いています。わたしは自ら誰も裁きません。
16 しかし、もしわたしも自ら裁けば、わたしの裁きは真実です。わたしは一人ではなく、わたしはわたしを遣わした父と一つだからです。
17 また、二人の証言は真実である、とあなたがたの律法に書いてあります。
18 わたしが、わたしのことを証言している本人であるし、わたしを遣わした父もわたしについて証言をしています。」
19 それから、彼らはイエスに言った。「あなたの父はどこにいますか。」イエスは答えられた。「あなたがたは、わたしをもわたしの父をも知りません。もしわたしを知っていたなら、わたしの父をも知っていたに違いありません。」
20 イエスは、神殿の敷地で教えた時に、献金箱のある所でこれらの言葉を言われた。そして、イエスの時はまだ来ていなかったため、誰も彼を捕らえなかった。
21 それで、イエスはまた彼らに言われた。「わたしは行きます。しかしあなたがたはわたしを捜しますが、自分たちの罪のままに死んでしまいます。あなたがたは、わたしの行く所には来ることはできません。」
22 そこで、イエスは、「あなたがたはわたしの行く所には来ることはできません。」と言われたので、「あの人は、自殺をするつもりなのでしょうか。」とユダヤ人たちは言った。
23 それで、イエスは彼らに言われた。「あなたがたは下から出て、わたしは上から出てきました。あなたがたはこの世からの者です。わたしはこの世からの者ではありません。
24 だから、わたしはあなたがたに言いました。『あなたがたは、自分たちの罪のままに死んでしまいます。』もしあなたがたはわたしが、『わたしはある』23ということを信じなければ、あなたがたは、自分たちの罪のままに死んでしまいます。」
25 それで、彼らはイエスに言った。「あなたは誰ですか。」そしてイエスは彼らに言われた。「最初からあなたがたに話していることです。
26 わたしは、あなたがたについて多くのことを言ったりさばいたりすることがあります。しかし、わたしを遣わした方は真実です。そしてわたしは、その方から聞いたことを世に話しています。」
27 彼らは、イエスが御父のことを彼らに言われたことが分からなかった。
28 それから、イエスは彼らに言われた。「あなたがたは人の子を高く上げてしまった時、あなたがたはその時、『わたしはある』ということ、そして自分勝手にわたしは何もしないということが分かります。ただわたしの父がわたしに教えたように、わたしは話しています。
29 そして、わたしを遣わした方は、わたしと共におられます。父はわたしを一人にされませんでした。なぜなら、わたしはいつも父が喜ぶことを行なっているからです。」
30 イエスがこれらのことを言われた時、大勢の人はイエスを信じた。
31 それから、イエスはご自分を信じたユダヤ人たちに言われた。「もしあなたがたが、わたしの言葉にとどまれば、あなたがたは本当にわたしの弟子です。
32 そして、あなたがたは真理を知り、また、真理はあなたがたを自由にします。」
33 彼らはイエスに答えた。「私たちはアブラハムの種で、決して誰かの奴隷にされたことはありません。『あなたがたは自由になる。』と、いったいどうやって言えるのでしょうか。」
34 イエスは彼らに答えられた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。すべて罪を犯す者は、罪の奴隷なのです。
35 そして、奴隷はいつまでも家に住むのではありません。子はいつまでも住んでいます。
36 だから、もし子があなたがたを自由にすれば、あなたがたは間違いなく自由になります。
37 あなたがたはアブラハムの種であることをわたしは知っていますが、わたしの言葉は、あなたがたの中に居場所がないので、あなたがたはわたしを殺そうとしています。
38 わたしは、わたしの父のもとで見たことを話しています。ところがあなたがたは、自分たちの父のもとで見たことを行なっています。」
39 彼らは答えて、イエスに言った。「私たちの父はアブラハムです。」イエスは彼らに言われた。「アブラハムの子どもなら、あなたがたはアブラハムの業を行なうはずです。
40 しかし、あなたがたは今、あなたがたに神から聞いた真理を教えた人であるわたしを殺そうとしています。アブラハムは、こんなことはしませんでした。
41 あなたがたは、あなたがたの父の業を行なっています。」そのために、彼らはイエスに言った。「私たちは性的な罪によって生まれたのではありません。私たちは神である唯一の父を持っています。」
42 それで、イエスは彼らに言われた。「もし神があなたがたの父なら、あなたがたはわたしを愛しているはずです。なぜなら、わたしは神から出て来て、そしてここに来ました。わたしは自分から来たのではなく、神がわたしを遣わされたからです。
43 あなたがたは、どうしてわたしの話を理解していないのですか。あなたがたは、わたしの言葉が聞こえないからです。
44 あなたがたは、あなたがたの父、つまり悪魔から出たのであり、その父の欲望を実行しようとしています。悪魔は初めから人殺しであり、その内には真理がないので、真理に立たなかったのです。悪魔が嘘を言う時、自分自身から出たことを言っています。なぜなら、悪魔は嘘つきであり、嘘そのものの父親だからです。
45 しかしわたしは真理を言うから、あなたがたはわたしを信じません。
46 あなたがたのうちの誰が、わたしを罪に定めますか。もしわたしが真理を言っているなら、わたしを信じない理由は何ですか。
47 神からの人は、神の言葉を聞きます。だから、あなたがたは聞き従わないのは、あなたがたは神からの者ではないからです。」
48 それで、ユダヤ人たちは答えて、イエスに言った。「あなたはサマリヤ人で、悪霊を持っていると、私たちは正にそう言っているではないか。」
49 イエスは答えられた。「わたしは悪霊を持っていませんが、わたしは自分の父を尊ぶのです。しかし、あなたがたは、わたしを尊びません。
50 そして、わたし自身は、自分の栄光を求めていません。それを求め、裁かれる方がおられます。
51 まことに、まことに、あなたがたに言います。誰であれわたしの言葉を守れば、その人は決して永遠に死を見ることがありません。」
52 そのために、ユダヤ人たちは彼に言った。「あなたは悪霊を持っていることが今、分かった。アブラハムや預言者たちは死んだのに、あなたは、『誰であれわたしの言葉を守れば、その人は決して永遠に死を味わうことはありません。』と言っている。
53 あなたは、すでに死んでしまった私たちの父祖アブラハムより偉いのか。預言者たちも死んでしまった。あなたは、何様になろうとしているのか。」
54 イエスは答えられた。「もしわたしが栄光を自分のものとすれば、わたしの栄光はむなしいものです。わたしに栄光を下さる方は、あなたがたが自分たちの神だと言っている、わたしの父です。
55 しかし、あなたがたは、その方を知りませんでしたが、わたしはその方を知っています。そして、もしわたしがその方を知らないと言えば、あなたがたのように嘘つきになってしまいます。しかし、わたしはその方を知っており、その御言葉を守っているのです。
56 あなたがたの父アブラハムは、わたしの日を見るのを大いに楽しみにし、そして、彼は見て、喜んだのです。」
57 それで、ユダヤ人たちはイエスに言った。「あなたはまだ五十歳にもなっていないのに、アブラハムを見たのか。」
58 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。アブラハムが存在する前から、わたしはいます。」
59 それで、ユダヤ人たちは、イエスに投げつけるために、石を取り上げた。しかし、イエスは姿を隠し、群衆の中を通りぬけて神殿の敷地を出られた。このようにして立ち去って行かれた。

9章

さて、イエスは道を過ぎ行く時、生まれつきの盲人の男に目を留められた。
2 そこで、イエスの弟子たちは、イエスに尋ねて言った。「ラビ24よ、生まれつき盲目ということは、誰が罪を犯したのでしょうか、この男でしょうか、それともこの男の両親でしょうか。」
3 イエスは答えられた。「この人も、両親も罪を犯さなかったのです。しかし、これは神の御業が、彼に表わされるためです。
4 わたしは、わたしを遣わした方の御業を、昼の間に行なわなければなりません。誰も働くことのできない夜が来ます。
5 わたしは世にいる間は、世の光です。」
6 イエスはこれらのことを言われてから、地面につばを吐き、つばきで泥を作り、盲人の両目にその泥を塗られた。
7 そして、イエスは彼に言われた。「シロアムの池に行って、洗いなさい。」(シロアムとは、訳すると、「遣わされた」である。)ゆえに、彼は行って、洗い、目が見えるようになり、帰って来た。
8 そこで、近所の人たちと、以前その人が盲目であったのを見た人たちは言った。「これは、座って物乞いをしていた人ではありませんか。」
9 「これがあの男だ。」と言う人もいたし、「あの男に似ている人だ。」と言う人もいたが、本人は「ぼくです。」と言った。
10 それで、近所の人たちは彼に言った。「あなたの目は、どういうふうに開かれましたか。」
11 彼は答えて言った。「イエスという人が、泥を作って、ぼくの目に塗り、『シロアムの池に行って、洗いなさい』とぼくに言いました。それで、ぼくが行って洗ったら、見えるようになったのです。」
12 それから、彼らはその人に言った。「その人はどこにいますか。」彼は言った。「知りません。」
13 彼らは、以前盲目であった人を、パリサイ派の人たちの所へ連れて行った。
14 ところで、イエスが泥を作り、その人の目を開けられた日は、安息日であった。
15 それで、パリサイ派の人たちも、もう一度その人にどういうふうに目が見えるようになったか、と尋ねた。その人は彼らに言った。「イエスはぼくの目に泥を塗りました。そしてぼくは洗いました。そして、見えているのです。」
16 すると、パリサイ派の中には、「安息日を守らないから、この者は神から来たのではありません。」と言う者たちもいたし、また「罪人である者が、どうしてこんな奇蹟ができるでしょうか。」と言う者たちもいた。そして、パリサイ派の人たちの間に、分裂が起こった。
17 彼らはまた盲人に言った。「お前は、あの人があなたの目を開けてくれたことに関して、あの人について何を言うか。」彼は言った。「あの方は預言者です。」
18 それで、ユダヤ人たちは、視力を回復した男の両親を呼ぶまで、盲目であったことと、見えるようになったことをこの人に関して信じなかった。
19 そこで、ユダヤ人たちは両親に尋ねて言った。「あなたがたが生まれつきの盲目であると言っているこの人は、あなたがたの息子ですか。では、彼はどうやって今見ているのですか。」
20 その人の両親は彼らに答えて言った。「これは私たちの息子で、生まれつきの盲目だったと知っています。
21 しかし、息子がどうやって今見えるのか、分かりません。また、誰が彼の目を開けたのかも、私たちは分かりません。息子は成人ですから、本人に尋ねてください。自分で自分のことは話します。」
22 彼の両親は、ユダヤ人たちを恐れていたから、このように言ったのである。なぜなら、ユダヤ人たちはもう既に、誰であれ、イエスはキリストであると言い表すならば、その者をシナゴーグから破門すると決定していたのである。
23 であるから、彼の両親は、「息子は成人ですから、本人に尋ねてください。」と言ったのである。
24 ゆえに、ユダヤ人たちは再び、盲目であった男を呼び、彼に言った。「神に栄光を帰しなさい。この男は罪人であることを、私たちは知っています。」
25 したがって、彼は答えて言った。「あの方が罪人かどうか、ぼくは知りません。一つだけ知っています。ぼくは盲目だったが、今は見えます。」
26 そこで、ユダヤ人たちはまた彼に言った。「あの者はお前に何をしたのか。あの者はどうやってお前の目を開けたのか。」
27 彼はユダヤ人たちに答えた。「ぼくはもう既にあなたがたに話したが、聞き入れませんでした。何でもう一度聞きたいのですか。あなたがたもあの方の弟子になりたいのではないでしょうね。」
28 ゆえに、ユダヤ人たちは彼をののしって言った。「お前はあの者の弟子だが、私たちはモーセの弟子だ。
29 我々は、神がモーセにお話しになったと知っているが、この者がどこの者か知らない。」
30 その男は彼らに答えて言った。「どうやら、これにはすごいことがあります。あの方はぼくの目を開けてくださったのに、あの方がどこの方か、あなたがたは知らないということです。
31 しかし、ぼくたちは神が罪人たちに耳を傾けてくださらないことを知っています。しかし、もし誰でも神を礼拝する者であり、神のご意志を行なえば、神はその人に耳を傾けてくださいます。
32 この世が始まって以来、人が生まれつきの盲人の目を開けたなどということは、耳にしたことがありません。
33 もしこの方が神からでなかったのなら、何事も行なえなかったでしょう。」
34 ユダヤ人たちは彼に答えて言った。「お前はまったく罪そのものから生まれたのに、私たちを教えるのか。」そして、彼を追放した。
35 イエスは、ユダヤ人たちは彼を追放したことを聞かれた。そして、イエスは彼を探し出し、彼に言われた。「あなたは神の子を信じますか。」
36 彼は答えて言った。「その方はどなたですか。主よ、ぼくはその方を信じることができますように。」
37 そして、イエスは彼に言われた。「あなたはもう彼が見えました。そしてあなたと話しているのが、その人です。」
38 それで、彼は言い出した。「主よ、私は信じます。」そして、彼はイエスを礼拝した。
39 それからイエスは言われた。「わたしは裁きのためにこの世に来ました。それは、見えない者は見、見える者が盲人になるためです。」
40 そして、イエスと共にいたパリサイ派の何人かは、この言葉を聞き、イエスに言った。「私たちも、盲目ではないでしょうね。」
41 イエスは彼らに言われた。「もしあなたがたが盲目であったなら、あなたがたには罪がなかったでしょう。しかし、今あなたがたは自分が見えると言っています。したがって、あなたがたの罪は残るのです。」

10章

「まことに、まことに、わたしはあなたがたに言います。羊の囲いに門を通って入らずに、門以外の所から登って侵入する者は、どろぼうであり、強盗です。
2 しかし、門を通って入る者は、羊たちの牧者です。
3 牧者のために門番は門を開け、羊たちは牧者の声を聞きます。そして彼は自分の羊たちを名前で呼び、羊たちを連れて出かけます。
4 そして牧者は自分の羊たちを連れ出す時、羊の前を行きます。そして羊たちは彼の声を知っているので、牧者について行きます。
5 しかし、羊たちは決して門の外の者について行かないで、むしろその者から逃げます。なぜなら、羊たちは門の外の者の声を知らないからです。」
6 イエスはこのたとえを彼らに話されたが、彼らはイエスの言われていることが理解できなかった。
7 であるから、イエスはもう一度彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしは羊たちの門です。
8 わたしの前に来たすべての者は、泥棒で強盗です。しかし、羊たちは彼らに聞き従わなかったのです。
9 わたしは門です。もし誰であれわたしを通して入れば、その者は救われます。そして、その者は出たり入ったりして、牧草を見つけます。
10 泥棒が来るのは、盗み、虐殺、破壊のためにほかならないのです。わたしは羊たちに命を持たせ、しかも羊たちがその命を溢れるばかりに持つために来たのです。
11 わたしこそが善い牧者なのです。善い牧者は、羊のために自らの命を与えます。
12 しかし、牧者ではなく、雇人である者、つまり羊の持ち主ではない者は、狼が来るのを見ると羊を置いて逃げてしまいます。それで、狼は羊たちを奪い去り、羊たちを散らしてしまいます。
13 雇人は、雇人であって、羊たちのことを気にとめないから、逃げてしまいます。
14 わたしこそが善い牧者なので、自分の羊たちを知り、また自分の羊たちに知られています。
15 父がわたしを知っていると同じように、わたしも父を知っています。そして、わたしは自分の命を羊たちのために与えます。
16 そして、わたしはこの囲いの羊でないほかの羊たちを持っています。わたしは彼らをも連れて来なければなりません。そこで、彼らはわたしの声を聞きます。そして、一つの群れ、一人の牧者となります。
17 それゆえに、父はわたしを愛しています。なぜなら、わたしは、再び命を取り戻すことができるように、自分の命を与えるからです。
18 わたしから命を取る者は誰もいませんが、わたしは自ら命を投げ出しています。わたしは、投げ出す権威がありますし、再びそれを取り戻す権威もあります。わたしはこの命令をわたしの父からいただきました。」
19 それで、これらの言葉のゆえに、またユダヤ人の間に分裂が起こった。
20 それで、彼らの多くは言った。「彼の中に悪霊がいて彼は狂っている。何でやつの話を聞くのか。」
21 他の者たちは言った。「この言葉は、悪霊に占領された者の言葉ではない。悪霊は盲人の目を開けることができるか。」
22 さて、エルサレムの神殿の奉献の祭25があり、季節は冬であった。
23 そして、イエスは神殿の敷地内にあるソロモンの柱廊を歩いておられた。
24 そこで、ユダヤ人たちはイエスを囲み、彼に言った。「あなたはいつまで私たちを疑わせるのですか。もしあなたがキリストなら、私たちにはっきりと言ってください。」
25 イエスは彼らに答えられた。「わたしはあなたがたに言いましたが、あなたがたは信じなかったのです。わたしが父の名によって行なう業は、わたしのことを証言しています。
26 しかし、あなたがたに言ったように、あなたがたはわたしの羊ではないから、信じません。
27 わたしの羊たちはわたしの声を聞きます。そして、わたしは彼らを知っています。それで、羊たちはわたしについて来ます。
28 そして、わたしは羊たちに永遠の命を与えます。そして、彼らは決して滅びず、誰もわたしの手から彼らを奪い去ることはありません。
29 わたしに羊たちを与えてくださったわたしの父は、何ものよりも偉大です。そして、誰もわたしの父の手から奪い去ることができません。
30 わたしと父とは、一つなのです。」
31 そこで、ユダヤ人たちは、イエスを投石刑にしようと、再び石を取り上げた。
32 イエスは彼らに答えられた。「わたしはわたしの父からの多くの良い業を、あなたがたに見せました。これらの業のどれのために、わたしを投石刑にしようとするのですか。」
33 ユダヤ人たちはイエスに答えて言った。「私たちは良い業のためにあなたを投石刑にしようとしているのではなく、冒涜のためだ。そして、あなたは人でありながら、自らを神にしているからだ。」
34 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたの律法に、『わたしは言った。あなたがたは神々である。』と書いてはいないのですか。
35 あの方が、神の御言葉が与えられた人たちを、『神々』と呼んだなら、(そして、聖書は破棄されることは不可能である)、
36 そして、父が聖別し、世に遣わされた者が、『わたしは神の子です。』と言ったからと言って、『お前は冒涜をしている。』とあなたがたは言うのですか。
37 もしわたしが自分の父の業を行なっていないなら、わたしを信じてはいけません。
38 しかし、もしわたしが行なっているなら、わたしを信じなくても、その業を信じなさい。それは、父がわたしの中におられ、わたしが父の中にいることをあなたがたが理解し、信じるためです。」
39 それで彼らはもう一度イエスを捕らえようとしたが、イエスは彼らの手から去って行かれた。
40 そして、イエスはまたヨハネが初めて浸礼を授けた所、ヨルダン川の対岸に行かれ、そこに滞在された。
41 そして、大勢の人たちはイエスの所へ行って、言った。「ヨハネは何の奇蹟をも行なわなかったが、ヨハネがこの方について言ったことは、すべて、本当でした。」
42 そして、この地で大勢の人々はイエスを信じた。

11章

さて、マリヤと彼女の姉妹マルタの村ベタニヤの出身で、ラザロという一人の病人がいた。
2 マリヤは主に香油を塗り、主の足を自分の髪の毛で拭いたその女であり、病気のラザロはこの女の兄弟であった。
3 それで、ラザロの姉妹たちは、「主よ、見てください。あなたの大事な人が病気です。」と言うようにイエスに人を送った。
4 しかし、イエスはこれを聞いて彼に言われた。「この病気は死に至るのではなく、神の栄光のためであり、また神の子がそれを通して栄光を受けるためです。」
5 さて、イエスはマルタとその姉妹とラザロを愛しておられた。
6 しかしながら、ラザロが病気であると聞いた時、イエスはご自分が滞在していた所にさらに二日間とどまられた。
7 それからその後、彼は弟子たちに言われた。「もう一度ユダヤに行きましょう。」
8 弟子たちは彼に言った。「ラビ26よ、ユダヤ人たちは、つい最近あなたを投石刑にしようとしていたのに、あなたはもう一度あそこに行かれるのですか。」
9 イエスは答えられた。「昼間は十二時間でないのですか。だれでも、昼間歩けば、その人はこの世の光を見ているから、つまずきません。
10 しかし、人は夜中に歩けば、彼の中に光がないため、その人はつまずきます。」
11 イエスはこれらのことを話された後、弟子たちに言われた。「わたしたちの友人ラザロは眠っていますが、わたしは彼を起こしに行きます。」
12 それで、イエスの弟子たちは主に言った。「主よ、もし彼が眠っているなら、全快します。」
13 しかし、イエスはラザロの死について話しておられたのであるが、弟子たちは、イエスは、休息のための眠りについて言っていると思った。
14 そこで、その時イエスは彼らにはっきりと言われた。「ラザロは死んだのです。
15 そして、わたしがそこにいなかったことを、あなたがたのために喜んでいます。あなたがたが信じるためです。ともかく彼の所に行きましょう。」
16 そうしたら、デドモ27と呼ばれるトマスは、仲間の弟子たちに言った。「イエスといっしょに死ぬために、私たちも行きましょう。」
17 さて、イエスが来てみると、ラザロはすでに四日間、墓の中に横たわっていたことを知らされた。
18 それで、ベタニヤはエルサレムに近く、十五スタディオン28ほど離れていた。
19 そして、ユダヤ人は大勢、その兄弟のことでマルタとマリヤを慰めるために、彼女たちの回りにいる人たちの所に来ていた。
20 それでマルタは、イエスが来られると聞いてすぐ彼を出迎えに行った。しかし、マリヤは家の中で座っていた。
21 その時、マルタはイエスに言った。「主よ、あなたがここにおられたなら、私の兄弟は死にはしませんでしたのに。
22 しかし、あなたが神に願えば、何であれ神があなたになして下さることを、私は今でも知っています。」
23 イエスは彼女に言われた。「あなたの兄弟は復活します。」
24 マルタは彼に言った。「最後の日の復活の時に、彼が復活することを、私は知っています。」
25 イエスは彼女に言われた。「わたしは復活であり、命です。わたしを信じる者は、死んだとしても生きます。
26 そして、誰であれ生きていて、わたしを信じる者は、決して永遠に死ぬことはありません。あなたはこのことを信じますか。」
27 彼女はイエスに言った。「はい、主よ、あなたが唯一のキリストであり、世に来られることになっている神の御子息であられることを信じています。」
28 マルタはこれらのことを言ってから、帰って、自分の姉妹マリヤを、目立たないように呼んで言った。「先生は近くまでいらしていて、あなたを呼んでいらっしゃいます。」
29 マリヤはそれを聞くとすぐ、すばやく立ち上がり、イエスの所に行った。
30 しかし、イエスはまだ村に入っておられず、マルタが迎えに来た場所におられた。
31 さて、マリヤと共に家にいて、彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急に立ち上がり、家を出たのを見て、「墓の所で泣くために、墓に向かった。」と言いながら、彼女について行った。
32 それから、マリヤはイエスがおられる所に行き、イエスを見ると、イエスの足元に平伏して、彼に言った。「主よ、あなたがここにおられたら、私の兄弟は死ななかったでしょう。」
33 それで、イエスは泣き悲しんでいるマリヤと、共に泣き悲しんでいるユダヤ人たちを見ると、霊の中でうなり、心を乱された。
34 そして言われた。「彼をどこにねかしましたか。」彼らはイエスに言った。「主よ、来てご覧ください。」
35 イエスは涙を流された。
36 それから、ユダヤ人たちは言った。「イエスはラザロをどんなに愛していたかをご覧なさい。」
37 そして、ユダヤ人の中には、「盲目の人の目を開けたこの方が、この男が死なないように、何かできなかったのでしょうか。」と言う者たちがいた。
38 それから、イエスはまた、ご自分の中でうなりながら墓に行かれた。墓は洞窟であり、石がそれに立てかけてあった。
39 イエスは言われた。「石を取りなさい。」故人の姉妹マルタは彼に言った。「主よ、四日目ですから、もうすでに臭くなっております。」
40 イエスは彼女に言われた。「信じれば、あなたは神の栄光を見るとわたしはあなたに言わなかったのですか。」
41 その時、彼らは故人が横になっている所から石を取り除いた。そしてイエスは目を上げて言われた。「父よ、わたしを聞き入れてくださったことを、あなたに感謝します。
42 それで、あなたがいつもわたしを聞き入れてくださることをわたしは知っていました。しかし、わたしのまわりに立っている人々のために、あなたがわたしを遣わされたことを彼らが信じるために、わたしは言ったのです。」
43 イエスはこれらのことを言われてから、大声で叫ばれた。「ラザロよ、出て来なさい。」
44 そして、死んでいた者は、死人の服装で手も足も縛られ、顔は布で巻かれたままで出て来た。イエスは彼らに言われた。「彼をほどいてやり、帰らせてやりなさい。」
45 それから、マリヤの所に来て、イエスのなさったことを見た大勢のユダヤ人はイエスを信じた。
46 しかし、彼らの中のある人たちは、パリサイ派の人たちの所に去って行って、イエスがなさったことを彼らに告げた。
47 それで、大祭司たちとパリサイ派の人たちは、議会を召集し、言った。「我々は何かやっていますか。というのは、この男はたくさんの奇蹟を行なっているのです。
48 もしこの男をこのままほっておけば、すべての者は彼を信じます。そして我々の場も国家も、ローマ人たちは来て取り上げてしまいます。」
49 しかし、パリサイ派の一人で、その年の大祭司であったカヤパという人が彼らに言った。「あなたがたはまったく何も理解していないし、
50 さらに、あなたがたは、国全体が滅びないで、一人の人が国民のために死ぬことは、私たちにとって益となるとも考えていません。」
51 しかし、彼はこれを自ら言ったのではなく、彼はその年の大祭司であったので、イエスはこの国家のために死のうとしている、と彼は預言したのである。
52 そして、この国家のためだけではなく、広く散らされた神の子どもを一つに集めるためなのである。
53 それで、彼らはその日から、イエスを死刑にしようと、全員で協議し始めた。
54 それで、イエスはもはやユダヤ人の中を公然とは歩かず、その所を立ち去り、荒野の近くにあった田舎のエフライムという町に行かれた。そして、ご自分の弟子たちと共にそこで過ごされた。
55 そして、ユダヤ人の過越祭が近く、大勢の人たちは、自らを清めるために、過越祭の前に、地方からエルサレムに上って行った。
56 ゆえに、人々はイエスを探し、そして神殿の敷地に立って互いに、「皆さん、どう思いますか。まさかあの方が祭に来るとは思っていないでしょうね。」と話し合っていた。
57 さて、もしイエスのいる所を知っている人がいれば、イエスを逮捕するから知らせよ、と大祭司たちとパリサイ派の人たちは、命令を出してあった。

12章

それから、イエスは過越祭の六日前にベタニヤに行かれた。ご自分が死人の中から復活させたラザロがそこにいた。
2 それで、人々はそこでイエスのために夕食を作った。マルタは給仕をしていたが、ラザロはイエスと共に卓についた者たちの一人であった。
3 その時、マリヤは非常に高価で純粋なナルドの香油を一リトラ29取り、イエスの足に注ぎ、彼の足を自分の髪の毛で拭いた。それで、家は香油の香りで満たされた。
4 そこで、後にイエスを裏切る者であり、イエスの弟子の一人であった、シモンの息子ユダ・イスカリオテが言った。
5 「なぜこの香油を三百デナリ30で売り、貧しい人たちに与えなかったのですか。」
6 彼がこれを言った理由は、貧しい人たちに関心があったからではなく、泥棒でありながら、財布を持ち、その中に入れる物を担当していたからである。
7 そこでイエスは言われた。「彼女をそのままにしておきなさい。わたしの埋葬の日のために、これを取って置いたのです。
8 貧しい人々はいつもあなたがたと共にいますが、わたしはずっとあなたがたと共にいるわけではないからです。」
9 その時、ユダヤ人の大勢の群衆は、イエスがそこにおられたことを知っていた。そして、ただイエスがいるというだけではなく、またイエスが死人の中から復活させたラザロをも見に来た。
10 しかし、大祭司たちは、ラザロをも殺そうと企んだ。
11 なぜなら、ラザロのゆえに、大勢のユダヤ人は去り、イエスを信じたからである。
12 次の日に、祭に来ていた大勢の群衆は、イエスがエルサレムに来られると聞いて、
13 やしの木の枝を取って、イエスを迎えに出て行った。そして、「ホサナよ。主の御名で来られるイスラエルの王が、祝福されますように。」と彼らは叫んだ。
14 そして、書いてあるとおり、イエスは若いロバを見つけそれに乗られた。
15 「シオンの娘よ、恐れるな。見よ、あなたの王は、ロバの子に座して来られる。」
16 それで、イエスの弟子たちは最初、これらのことを理解しなかった。しかし、イエスが栄光を受けられた時に、彼らはこれらのことがイエスについて書かれたことであり、また人たちはこれらのことをイエスに対して行なったことを思い出した。
17 その時、イエスがラザロを墓の中から呼び出され、彼を死人の中から復活させた時に、イエスと共にいた群衆は証をしていた。
18 このゆえにも、群衆がイエスに会いに行ったのは、イエスがこの奇蹟を行なわれたことを聞いたからである。
19 そうして、パリサイ派の人たちは互いに言った。「あなたがたは何も効果のないことをしていることが分かっているのか。見なさい。全世界はあの人の後について行ってしまった。」
20 さて、祭で礼拝するために上って来た人々の中に、何人かのギリシャ人がいた。
21 ところが、この人たちは、ガリラヤのベツサイダ出身のピリポの所へ行って、「ご主人様、私たちは、イエスにお目にかかりたいのです。」と彼に願って言った。
22 ピリポは行ってアンデレに伝えた。そしてまたアンデレとピリポはイエスに伝えた。
23 そして、イエスは彼らに答えて言われた。「人の子が栄光を受ける時が来ています。
24 まことに、まことに、あなたがたに言います。土に落ちた麦の種一粒が死ななければ、一つのままです。しかし、死ねば、多くの実を結びます。
25 自分の命を愛している者は、それを失ってしまいます。そして、この世で自分の命を憎んでいる者は、その命を保ち、永遠の命に至るのです。
26 誰であれわたしに仕えるのであれば、わたしについて来なさい。そして、わたしのいる所に、わたしに仕える人もそこにいます。そして、誰であれわたしに仕えるのであれば、父はその人を誉めてくださいます。
27 今わたしのたましいは困難な状態です。そしてわたしは何と言ったら良いでしょうか。『父よ、わたしをこの時から救ってください。』と言おうか。しかし、このためにわたしはこの時に来ました。
28 父よ、あなたの御名に栄光を与えてください。」その時、天からの声がした。「すでに栄光を与えた。また、改めて栄光を与える。」
29 ところが、近くに立っていてこれを聞いた群衆は、「雷が鳴った。」と言った。「御使いは彼に話した。」と言う者たちもいた。
30 イエスは答えて言われた。「この声が臨んだのは、わたしのためではなく、あなたがたのためです。
31 今はこの世の裁きなのです。今はこの世の支配者は外へ投げ出されます。
32 それで、もしわたしこそが地から上げられるなら、すべての人を自分の所に引き寄せます。」
33 イエスはこれを言われ、ご自分はどのような死に方で死に向かうかと、知らせたのである。
34 群衆はイエスに答えた。「私たちは律法から、キリストは永遠に留まると聞きました。なのに、あなたはどういうふうにして、『人の子は、上げられなければならない。』と言いますか。この『人の子』とは、誰のことですか。」
35 それで、イエスは彼らに言われた。「まだしばらくの間、光はあなたがたと共にいます。暗やみがあなたがたを襲いかからないように、あなたがたに光がいる間に歩みなさい。それに、暗やみの中を歩む者は、自分がどこに行くか分かりません。
36 光がいる間に、光の子たちになるように、光を信じなさい。」イエスはこれらのことを言われ、去って行き、彼らから姿を隠された。
37 しかし、イエスは彼らの前でこれほど多くの奇蹟をなさったのに、彼らはイエスを信じなかった。
38 それは、預言者イザヤのこう言った言葉が成就されるためである。「主よ、誰が私たちの報告を信じたか。主の御腕が誰に啓示されたか。」
39 そのゆえに、彼らは信じることができなかった。イザヤはさらに言ったからである。
40 「神は彼らの目を見えなくされ、彼らの心をかたくなにされた。それは、彼らは目で見ず、心で理解せず、回心せず、そしてわたしが彼らを治すことがないようにするためである。」
41 イザヤがこれらのことを言ったのは、イエスの栄光を見た時、イエスについて話した。
42 しかしながら、それにもかかわらず、支配者たちの中にも大勢の人たちはイエスを信じた。しかし、パリサイ派の人たちのせいで、シナゴーグから破門されないように、彼らはイエスを言い表さなかった。
43 なぜなら、神の誉れよりも、人間の誉れを愛したからである。
44 それで、イエスは叫んで言われた。「わたしを信じる者は、わたしを信じているのではなく、わたしを遣わされた方を信じているのです。
45 そして、わたしを見る者は、わたしを遣わされた方を見ています。
46 わたしは、世に来た光です。それは、誰であれわたしを信じる者が、暗やみにとどまらないためです。
47 そして、もし誰であれわたしの言葉を聞いても、信じないならば、わたし自身はその者を裁きません。世を裁くためにではなく、世を救うためにわたしは来たからです。
48 わたしを拒否し、わたしの言葉を受け入れない者には、その者を裁くものがあります。わたしが話した言葉、それが最後の日にその者を裁きます。
49 なぜなら、わたしを遣わされた父、その方がわたしに何を言うべきか、そして何を話すべきか、命令を与えられたので、わたしが自ら話したのではありません。
50 また、父の命令は永遠の命であると、わたしは知っています。したがって、わたしの話すことは何でも、父がわたしに言われたとおりにわたしは話すのです。」

13章

さて、過越祭の前に、イエスはこの世から去り、父の所に行くべきご自分の時が来たことを知り、今まで愛してきたこの世にいるご自分の者たちを、極限まで愛された。
2 そして、夕食が終わった後、悪魔はもうすでにシモンの息子ユダ・イスカリオテの心に、イエスを裏切ることの思いを入れ込んでいたが、
3 イエスは御父がすべてのことをご自分の手に与えられたこと、それとご自分は神から来て、神の所に行くことを知っておられ、
4 夕食から立ち上がって、上着を側に置き、手ぬぐいを取り、自ら腰につけられた。
5 それからイエスは、水をたらいに注ぎ、弟子たちの足を洗い始め、そして腰につけてあった手ぬぐいで拭き始められた。
6 ところが、イエスがシモン・ペテロの所に来られると、「主よ、あなたが私の足をお洗いになるのですか。」とペテロはイエスに言った。
7 イエスはペテロに答えて言われた。「あなたは今はわたしの行なうことを理解していませんが、後で分かってきます。」
8 ペテロはイエスに言った。「あなたは決して永遠に私の足をお洗いになることがありません。」イエスは彼に答えられた。「もしあなたを洗わなければ、あなたはわたしと何の関係もありません。」
9 シモン・ペテロはイエスに言った。「主よ、私の足だけではなく、私の手も頭もどうぞ。」
10 イエスはペテロに言われた。「水浴した者は、洗う必要があるのは足だけです。その者は全身きれいです。それで、あなたがたはきれいですが、全員ではありません。」
11 イエスはご自分を裏切る者は誰であるかを知っておられた。それで、「あなたがたは全員がきれいではありません。」と言われたのである。
12 さて、イエスは弟子たちの足を洗われ、ご自分の服を取り、再び席についた時、彼らに言われた。「わたしがあなたがたにしたことが分かりましたか。
13 あなたがたはわたしのことを『先生』とも『主』とも呼んでいます。そう言うのはよいのです。わたしはそのとおりだからです。
14 ゆえに、あなたがたの主であり、先生であるわたしが、あなたがたの足を洗ったなら、あなたがたもお互いの足を洗うべきです。
15 なぜなら、わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、模範を示したからです。
16 まことに、まことに、あなたがたに言います。僕は主人より偉大ではないし、使徒は自分を遣わした人よりも大きくはありません。
17 もしあなたがたがこれらのことを知っていて、これらのことを実行すれば、幸いです。
18 わたしは、あなたがた全員のことを話しているのではありません。わたし自身が自分で選んだその者たちを知っています。しかし、『わたしと共にパンを食べる者が、わたしに対して彼のかかとをあげた。』という聖書が成就するためです。
19 わたしはそれが現実のものとなる前に、今あなたがたに言います。それが現実のものとなった時に、あなたがたが、わたしが『わたしはある』31ことを信じるためです。
20 まことに、まことに、あなたがたに言います。誰であれ、わたしが遣わす者を受け入れれば、その人はわたしを受け入れているのです。そして、わたしを受け入れる人は、わたしを遣わした方を受け入れているのです。」
21 イエスはこれらのことを言われてから、霊がかきたてられ、証をして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたの中の一人が、わたしを裏切ります。」
22 それから、イエスは誰のことを言われたのであろうかと不審に思った弟子たちは、互いに顔を見合わせた。
23 さて、イエスの弟子の一人で、イエスが愛していた弟子が、イエスの御胸にもたれて座っていた。
24 それで、シモン・ペテロは、イエスは誰のことを話しておられるのかと尋ねるように、彼に合図した。
25 ゆえに、イエスの御胸に寄りかかって座っていた人は、イエスに言った。「主よ、それは誰ですか。」
26 イエスは返事された。「わたしがパン一切れを浸し、それを手渡す者です。」そして、イエスはパン切れを浸し、シモンの息子ユダ・イスカリオテに与えられた。
27 そして、一切れのパンの後、サタンもその者の中に入った。それから、イエスはその者に言われた。「お前がやることを、早くしなさい。」
28 しかし、卓についている32人たちは、イエスがユダにこれを言われたことの意図が誰も分からなかった。
29 そのために、ユダが財布を持っていたから、「祭のために、わたしたちが必要としている物を買いなさい。」とか、貧しい人たちに与える物のことをイエスが彼に言われたのかと思った者たちもいた。
30 それで、ユダはパン切れを受け取るやいなや、出て行った。夜中であった。
31 それで、彼が出て行った時、イエスは言われた。「今、人の子は栄光を受け、神は人の子において栄光を受けられました。
32 神が人の子において栄光を受けられたのなら、神もご自分において彼に栄光を与えられます。そして、直ちに神は彼に栄光を与えられます。
33 子どもたちよ、わたしはまだしばらくの間あなたがたと共にいます。あなたがたはわたしを捜します。そして、わたしがユダヤ人たちに言ったとおりに、『あなたがたは、わたしの行く所には来ることができません。』とあなたがたにも、今そう言います。
34 互いに愛し合いなさい、という新しい命令をわたしはあなたがたに与えます。あなたがたも互いに愛し合うように、わたしがそのようにあなたがたを愛しました。
35 このことで、もしあなたがたが互いに対して愛があれば、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての人は分かります。」
36 シモン・ペテロはイエスに言った。「主よ、あなたはどこに行かれますか。」イエスは彼に答えられた。「わたしの行く所に、あなたは今はついて来られません。しかし、あなたは後でわたしについて来ます。」
37 ペテロはイエスに言った。「主よ、なぜ私は今あなたについて行けないのですか。あなたのためなら、私は命を投げ出します。」
38 イエスは彼に答えられた。「わたしのためなら、自分の命を投げ出しますか。まことに、まことに、あなたに言います。あなたが三回わたしを否定し終わるまで、雄鶏は決して鳴きません。

14章

あなたがたの心を乱してはいけません。あなたがたは神を信じています。わたしをも信じ続けなさい。
2 わたしの父の家には、住居がたくさんあります。もしそうでなければ、わたしはあなたがたにそう教えたでしょう。わたしは、あなたがたのために、場所を準備しに行きます。
3 そして、わたしが行って、あなたがたのために場所を準備したら、わたしは再び来て、あなたがたをわたしの場所に受け入れます。それは、わたしがいる所に、あなたがたもいるためです。
4 そして、わたしが行く所を、あなたがたは知っています。またその道を知っています。」
5 トマスはイエスに言った。「主よ、私たちは、あなたがどこへ行かれるかを知りません。また、その道をどうしたら知ることができますか。」
6 イエスは彼に言われた。「わたしこそがその道であり、真理であり、命なのです。わたしを通してではなければ、誰も父の所に行く者はいません。
7 もしあなたがたはわたしを知っていたならば、わたしの父をも知っていたでしょう。また、これからは、あなたがたは父を知っています、また見たことがあります。」
8 ピリポはイエスに言った。「主よ、私たちにその父親を見せてください。私たちにとって、それで十分です。」
9 イエスは彼に言われた。「こんなに長い間、わたしはあなたがたと共にいるのに、ピリポよ、わたしを知らないのですか。わたしを見た者は、父をも見たのです。それなのに、あなたはいったいどうやって、『私たちにその父親を見せてください。』と言うのですか。
10 わたしは父の中におり、父はわたしの中におられることを信じませんか。わたしがあなたがたに話す言葉は、わたしが自分自身から話しているのではないし、業を行なっているのは、わたしの中に住んでおられる父なのです。
11 わたしは父の中におり、父はわたしの中におられる、このわたしを信じなさい。あるいは、業そのものでわたしを信じなさい。
12 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしを信じるその者は、わたしのするこれらの業を彼も行ないます。また、わたしは父の所に行きますから、その者の行なう業は、これらの業を越えます。
13 そして、父が子によって栄光を受けるため、わたしの名によってあなたがたの願うことは何でも、わたしはそれを行ないます。
14 何でもわたしの名において、あなたがたが願うなら、わたしはそれを行ないます。
15 わたしを愛しているのであれば、わたしの命令を守りなさい。
16 そして、わたしは父に祈ります。それで、父はあなたがたにもう一人の慰め主を与えます。それは、その方が永遠にあなたがたと共に住んでくださるためです。
17 その方とは、世は見ていないし、知らないので、彼を受け入れることができない真理の御霊なのです。しかし、この方はあなたがたと共に住んでいて、そしてあなたがたの中にいることになるから、あなたがたはこの方を知っています。
18 わたしはあなたがたを孤児のままにしておきません。あなたがたの所に戻って来ます。
19 しばらくすると、もはや世はわたしの姿を見ることがありませんが、あなたがたはわたしの姿を見ます。わたしは生きているので、あなたがたも生きるようになります。
20 その日に、わたしがわたしの父の中にいて、そしてあなたがたはわたしの中にいて、わたしはあなたがたの中にいることを、あなたがたは分かります。
21 わたしの命令を持って、それらを守る者こそが、わたしを愛している者です。そして、わたしを愛している者は、わたしの父に愛されます。わたしもその人を愛し、その人にわたしを現します。」
22 イスカリオテでない方のユダが、彼に言った。「主よ、ご自分を私たちに現されるが、世には現されない理由は何ですか。」
23 イエスは答えて彼に言われた。「もし誰であれわたしを愛しているなら、その人はわたしの言葉を守ります。また、わたしの父は、その人を愛されます。そして、わたしたちはその人の所に行き、その人と共にわたしたちの住まいをつくります。
24 わたしを愛さない者は、わたしの言葉を守りません。また、あなたがたが聞いている言葉は、わたしの言葉ではなく、わたしを遣わされた父の言葉です。
25 わたしは、まだあなたがたと共にとどまっている間に、これらのことをあなたがたにもうすでに話しました。
26 そして、父がわたしの名によって遣わす慰め主、すなわち聖霊は、あなたがたにすべてのことを教えてくださいます。また、あなたがたにわたしが言ったすべての言葉を、その方は思い出させてくださいます。
27 わたしはあなたがたに平安を置いて行きます。わたしの平安を与えます。わたしの与え方は、世の与え方ではありません。あなたがたの心を乱してはいけない、また怖がってもいけません。
28 『わたしは去って行き、またあなたがたの所に戻る』とわたしがあなたがたに言ったことをあなたがたは聞いています。もしあなたがたはわたしを愛していたなら、父の所にわたしは行くと言ったのだから、あなたがたは喜んだはずです。なぜなら、わたしの父は、わたしより偉大だからです。
29 そして、それが起こる前に、あなたがたが信じるために、前もって、わたしはあなたがたに今言っておきました。
30 わたしはもう、あなたがたと共に多く話すことはありません。この世の支配者は来ますが、その者はわたしに何の関係もないからです。
31 しかし、わたしが父を愛していること、それと父がわたしに与えた命令をそのまま実行していることを、世が知るためです。さあ、立ちなさい。ここを去りましょう。」

15章

「わたしこそが真のぶどうの木であり、わたしの父がその農夫です。
2 わたしにつながっているが実を結ばない枝を、父は取り去られます。そして、実を結んでいるすべての枝は、ますます豊かに実を結ばせるために、父は剪定します。
3 あなたがたは、わたしが話した言葉を通して、すでに清くなっています。
4 わたしの中にとどまりなさい。そうしたら、わたしはあなたがたの中にとどまります。枝は、もしぶどうの木にとどまらなければ、自ら実を結ぶことができないように、あなたがたもわたしの中にとどまらなければ、実を結べません。
5 わたしはぶどうの木であり、あなたがたは枝です。わたしの中にとどまる人、そしてわたしが中にとどまる人こそが、豊かな実を結びます。というのも、あなたがたはわたしなしでは、何もできないからです。
6 もし人はわたしの中にとどまっていなければ、その人は枝として投げ捨てられ、枯れてしまいます。そして、人たちはそれらを集め、火の中へ投げ入れ、それらの枝は燃やされてしまいます。
7 もしあなたがたがわたしの中にとどまっていて、わたしの言葉があなたがたの中にとどまっていれば、あなたがたが望むことを願ったら、何であれそうなります。
8 わたしの父はこれ、すなわちあなたがたが豊かな実を結ぶことによって、栄光を受けられます。そしてあなたがたはわたしの弟子となります。
9 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛しました。わたしの愛の中にとどまり続けなさい。
10 もしあなたがたはわたしの命令を守るなら、わたしの愛の中にとどまります。同じように、わたしはわたしの父の命令を守ってきているので、父の愛の中にとどまっているのです。
11 これらのことをあなたがたに言ったのは、わたしの喜びがあなたがたの中にとどまり、あなたがたの喜びが満ち溢れるためです。
12 わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。これこそがわたしの命令です。
13 人が自分の友人たちのために、自分の命を投げ出す以上の大いなる愛を、持っている人は誰もいません。
14 もしわたしがあなたがたに命じるどのようなことでも行なえば、あなたがたはわたしの友人なのです。
15 わたしはもはやあなたがたを僕とは呼びません。僕は主人が何をするか分からないからです。しかし、わたしはあなたがたを友人と呼んでいます。わたしの父から聞いたすべてのことを、わたしはあなたがたに教えたからです。
16 あなたがたがわたしを選んだのではなく、わたしがあなたがたを選びました。そして、あなたがたは行って、実を結び、その実が残るために、わたしはあなたがたを任命しました。これは、あなたがたがわたしの名によって父に願うものは何であれ、父はあなたがたに与えてくださるためです。
17 あなたがたが互いに愛し合うために、わたしがこれらのことをあなたがたに命じています。
18 世があなたがたを憎んでいるなら、その以前から、世はわたしを憎んでいたということを、あなたがたは知っています。
19 もしあなたがたが世に属している者であったなら、世は世に属している者を愛したでしょう。しかし、あなたがたは世に属している者ではないので、わたしはあなたがたを世から選びました。それゆえに、世はあなたがたを憎んでいます。
20 『僕は主人より偉大ではない』とわたしがあなたがたに言った言葉を覚えておきなさい。もし彼らがわたしを迫害したなら、あなたがたをも迫害します。もし彼らがわたしの言葉を守ったなら、あなたがたの言葉をも守ってくれます。
21 しかし、わたしを遣わされた方を彼らは知らないので、わたしの名のゆえにこれらすべてのことをあなたがたにしてしまいます。
22 もしわたしが来て話さなかったならば、彼らに罪はなかったが、今となっては、彼らは自分たちの罪の弁解の余地がありません。
23 わたしを憎んでいる者は、わたしの父をも憎んでいます。
24 もし他の誰もしたことのない業を、彼らの間でわたしがしなかったならば、彼らには罪はありませんでした。しかし今、彼らはわたしをも、わたしの父をも見てしまい、憎むにいたったのです。
25 しかし、『彼らは訳もなくわたしを憎んだ』と彼らの律法に書いてある言葉が成就するためです。
26 しかし、父の所からあなたがたにわたしが遣わす慰め主、つまり、父から出て来られる真理の御霊が来る時、その方はわたしについて証します。
27 そして、あなたがたは初めからわたしと共にいるのだから、あなたがたも証することになります。

16章

あなたがたがつまずかないように、わたしはこれらのことを話したのです。
2 彼らはあなたがたをシナゴーグから破門します。しかも、あなたがたを殺す者は誰でも、神に奉仕をしている者と思ってしまう、という時が来ています。
3 このようなことをあなたがたにするのは、彼らが父をもわたしをも知らなかったからです。
4 しかし、わたしがこれらのことを、あなたがたに言ったのは、その時が来ると、わたしの言ったこれらのことを、あなたがたが思い出すためです。最初にこれらのことを言わなかったのは、わたしはあなたがたと共にいたからです。
5 そして今、わたしは、わたしを遣わした方のもとに行きますが、『どこへ行かれるのですか。』とあなたがたの中でわたしに尋ねている者はいません。
6 むしろ、わたしがこれらのことをあなたがたに話したので、悲しみがあなたがたの心を満たしているのです。
7 しかし、わたしはあなたがたに真実を教えます。わたしが去って行くことは、あなたがたにとって有益です。なぜなら、もしわたしが去って行かなければ、慰め主はあなたがたの所に来ません。しかし、わたしが離れて行けば、わたしはその方をあなたがたに遣わします。
8 そして、その方が来る時には、罪について、義について、裁きについて世に認めさせます。
9 罪についてとは、人たちはわたしを信じていないからです。
10 そして、義についてとは、わたしの父のもとにわたしが行って、あなたがたはもうわたしの姿を見ないからです。
11 そして、裁きについてとは、この世のあの支配者なる者33はすでに裁かれているからです。
12 わたしはまだあなたがたに話すことは多くありますが、今のあなたがたは耐えることができません。
13 しかし彼、つまり真理の御霊が来る時には、あなたがたをすべての真理に導いてくださいます。なぜなら、その方はご自分から話すのではなく、聞いていることをすべて話し、そして来るべきことをあなたがたに知らせてくださるからです。
14 その方はわたしに栄光をくださいます。なぜなら、彼はわたしのものを受け入れ、あなたがたにそのことを知らせてくださるからです。
15 父が所有されるものすべてはわたしのものです。ゆえに、その方はわたしのものを受け入れ、あなたがたにそのことを知らせてくださるとわたしは言ったのです。
16 もうしばらくすると、あなたがたはわたしの姿を見ず、そしてまたしばらくすると、あなたがたはわたしの姿を見ますが、それはわたしが父のもとに行くからです。」
17 そこで、イエスの弟子たちのある者は互いに言った。「『もうしばらくすると、あなたがたはわたしの姿を見ず、そしてしばらくすると、あなたがたはわたしの姿を見ます。』そして、『それはわたしが父のもとに行くからです。』とイエスが言われるこのことは、何のことでしょう。」
18 そこで、彼らは言った。「イエスが言われるこの言葉、『もうしばらく』とは何ですか。彼の言われたことが、私たちには分かりません。」
19 それで、イエスは弟子たちが質問したがっているのを知って、彼らに言われた。「『もうしばらくすると、あなたがたはわたしの姿を見ず、そしてまたしばらくすると、あなたがたはわたしの姿を見ます。』とわたしが言ったこのことについて、互いに尋ねているのですか。
20 まことに、まことに、わたしはあなたがたに言っておきます。あなたがたは泣いたり嘆いたりしますが、世は喜びます。そして、あなたがたは悲しみますが、あなたがたの悲しみは喜びに変わります。
21 女はお産をする時、時間が来ると、陣痛があり子が生まれるが、一人の人間が世に生まれてきた喜びのため、もうその苦難を記憶していません。
22 そして、こういうわけで、あなたがたは今悲しみがあります。しかし、わたしはもう一度あなたがたの姿を見ます。そして、あなたがたの心は喜び、あなたがたの喜びを、あなたがたから取る者はいません。
23 そして、その日にはあなたがたはわたしに何も尋ねません。まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしの名によって父に願うものは何でも、父はあなたがたにくださいます。
24 以前あなたがたはわたしの名によって何も願いませんでした。願いなさい。そして喜びが満ち溢れるために、あなたがたは受け取るのです。
25 わたしはこれらのことをあなたがたに、たとえによって話してきましたが、もうたとえによって話さず、父についてはっきりと、あなたがたに告げる時が来ます。
26 その日に、あなたがたはわたしの名によって願います。そして、あなたがたのことについて、わたしが父に尋ねるとは、あなたがたに言っていません。
27 というのは、父ご自身があなたがたを愛しておられます。なぜなら、あなたがたがわたしを愛していて、わたしが神から来たと信じているからです。
28 わたしは父から出て来て、世の中に入って来ました。わたしはまた世を去り、父のもとに行きます。」
29 イエスの弟子たちは彼に言った。「ああ、今あなたはもうたとえで話さずに、はっきりと話しておられます。
30 今、あなたがすべてのことをご存じで、誰もあなたに尋ねる必要がないことが、私たちは分かっています。このことで、あなたが神から出て来られたことを信じています。」
31 イエスは彼らに答えられた。「今はあなたがたは信じていますか。
32 見よ、あなたがたは一人一人、各々の所に散らされ、わたしを置き去りにする時が来る、いや、もう来ています。しかし、父がわたしと共におられるから、わたしは一人ではありません。
33 これらのことをわたしがあなたがたに話したのは、わたしの中にいて平安を持つためです。この世の中では、あなたがたは苦しみを受けますが、すでにわたしは世を打ち破りました。勇気を出しなさい。」

17章

イエスはこれらのことを語り終えてから、目を天に向け言われた。「父よ、時が来ました。あなたの子もあなたに栄光を現すように、あなたの子に栄光を現してください。
2 同様に、あなたが彼にくださったすべての肉なる者たちに、永遠の命を与えるようにと、あなたはすべての肉体の者の上に、権威を子に与えました。
3 唯一真の神であるあなたと、あなたの遣わされたイエス・キリストを彼らが知るということ、これこそが永遠の命です。
4 地上でわたしはあなたに栄光を現しました。あなたがわたしに与えられた、実行せよという使命をやり遂げました。
5 そして今、父よ、世が存在する前から、わたしがあなたと並んで34持っていた栄光で、ご自身と並んでわたしに栄光を与えてください。
6 わたしは、世の中からあなたが与えてくださった者たちに、あなたの御名を明らかにしました。その者たちはあなたのものでしたが、あなたはわたしにくださいました。そして、彼らはあなたの御言葉を守り続けてきました。
7 あなたがわたしにくださったものすべては、あなたからのものであると彼らは、今は知っています。
8 なぜなら、わたしはあなたがわたしにくださった言葉を彼らに与えたからです。そして彼らは自らその言葉を受け入れ、わたしがあなたから出て来たことを本当に知りました。また、あなたがわたしを遣わされたことを彼らは信じました。
9 わたしは彼らのために祈っています。わたしは世のために祈っていないが、あなたがわたしにくださった者たちのために祈っています。彼らはあなたのものだからです。
10 そして、わたしの者はすべてあなたのものであり、あなたの者はすべてわたしのものです。わたしは彼らによって栄光を受けました。
11 そして、わたしはもう長くは世にいませんが、この者たちは世にいます。また、わたしはあなたのもとに行きます。聖なる父よ、あなたの御名によって、わたしとあなたが一つであるように、わたしにくださったこの者たちも一つであるように、彼らを守ってください。
12 わたしは彼らと共に世にいた時、わたしはあなたの御名によって彼らを守りました。わたしは、あなたがわたしにくださった者たちを守りました。そして、聖書が成就されるように、滅びの子以外、彼らのうちから一人の者も失われていません。
13 それで今わたしはあなたのもとに行きます。そして、彼らがわたしの喜びを持って、彼ら自身が満ちあふれるように、わたしはこれらのことを世で話しています。
14 わたしは彼らにあなたの御言葉を与えました。そして、わたしが世の者でないと同様に、彼らも世の者でないので、世は彼らを憎みました。
15 あなたが彼らを世から取り去ると祈らずに、あなたが彼らを邪悪なものから守ってくださるようと、わたしは願っています。
16 わたしがこの世からの者でないように、彼らもこの世の者ではありません。
17 あなたの真理によって、彼らを聖別してください。あなたの御言葉は真理です。
18 あなたがわたしを世の中に遣わされたように、わたしも彼らを世の中に遣わしました。
19 そして、彼らも真理によって聖別されるために、わたしは彼らのためわたし自身を聖別します。
20 わたしはこの者たちのためだけではなく、彼らの言葉を通してわたしを信じる者たちのためにも願っています。
21 父よ、これは、あなたがわたしの中におられ、わたしがあなたの中にいると同様に、彼ら全員が一つになるためです。そしてあなたがわたしを派遣されたことを世が信じるために、彼らもわたしたちの中にいて一つになるためです。
22 そして、わたしたちが一つであるように、彼らも一つになるために、あなたがわたしにくださった栄光を、わたしは彼らに与えました。
23 彼らは完全な一つのものになるために、そしてあなたがわたしを遣わされたことと、あなたがわたしを愛したように、あなたは彼らをも愛したことを世が知るために、わたしは彼らの中に、同時にあなたはわたしの中にもおられます。
24 父よ、わたしにくださった者たちが、あなたがわたしにくださったわたしの栄光を見るために、わたしがいる所に彼らもわたしと共にいることを望んでいます。なぜなら、あなたは世の創造の前から、わたしを愛したからです。
25 正義の父よ、世はあなたを知りませんでした。しかし、わたしはあなたを知りました。そしてこの者たちは、あなたがわたしを遣わされたことを知りました。
26 そして、あなたがわたしを愛した愛は彼らの中にあり、またわたしも彼らの中にいるために、わたしは彼らにあなたの御名を明らかにしました、そしてこれからも明らかにします。」

18章

イエスはこれらのことを言われ、弟子たちと共に出て行き、ケデロン小川を渡り、そこにあった園に、彼と弟子たちは入られた。
2 そしてそこは、イエスがご自分の弟子たちとよく集まった所であったから、イエスを裏切ったユダも知っていた所であった。
3 その時、ユダは、大祭司たちとパリサイ派の人たちから構成された分遣隊と下役人たちを連れて、たいまつや灯り、それに武器を持ってそこに来た。
4 それで、イエスは、すべてご自分に起こることを知りながら、進み出て、彼らに言われた。「だれを捜しているのですか。」
5 彼らはイエスに答えた。「ナザレ人のイエス。」イエスは彼らに言われた。「わたしです。」そして、イエスを裏切ったユダも、彼らと共に立っていた。
6 その時、すなわち、イエスが彼らに、「わたしです。」と言われた時、彼らは後ろに下がって、地面に倒れた。
7 それで、イエスは再び彼らに尋ねられた。「だれを捜しているのですか。」そして、彼らは言った。「ナザレ人のイエス。」
8 イエスは答えられた。「『わたしです。』とあなたがたに言いました。それゆえに、もしわたしを捜しているのなら、この人たちが立ち去ることを許しなさい。」
9 これは、「あなたがわたしにくださった人たちを、彼らのうちの一人も失わなかった。」とイエスが言われた御言葉が成就されるためであった。
10 その時、剣を持っていたシモン・ペテロが、剣を抜き、大祭司の僕を打ち、彼の右耳を切り落とした。その僕の名前はマルコスであった。
11 それで、イエスはペテロに言われた。「あなたの剣をさやに収めなさい。わたしは、父がわたしにくださったカップを飲むのは当然ではありませんか。」
12 そこで、分遣隊と千人隊長とユダヤ人の下役人たちは、イエスを逮捕して、彼を縛った。
13 まず、イエスをアンナスの所へ連れて行った。彼はその年の大祭司カヤパの義理の父であったからである。
14 そして、一人の男が国家のために死ぬことは好都合である、とユダヤ人たちに勧めたのは、このカヤパであった。
15 そして、シモン・ペテロと他の弟子一人は、イエスについて行っていた。その弟子は大祭司の知人であって、イエスと共に大祭司の中庭に入った。
16 しかし、ペテロは外で門の所に立っていた。したがって、大祭司の知人であるその弟子は出て行って、門番の女に話し、ペテロを連れて入った。
17 そこで、門番である若い女奴隷はペテロに言った。「あなたもあの人の弟子の一人ではありませんか。」彼は言った。「私は違う。」
18 そして、寒かったので、僕たちや下役人たちは炭火をおこし、そこに立っていた。そして、彼らは暖をとっていた。ペテロも彼らと共に立って、暖をとっていた。
19 その時、大祭司はイエスの弟子について、そして彼の教理について、イエスに尋問した。
20 イエスは大祭司に答えられた。「わたしはみんなの前で世に話しました。ユダヤ人がいつも集まるシナゴーグや神殿の敷地で、わたしはいつも教えました。そして、わたしは人に隠れて話したことはありません。
21 なぜわたしに尋問しますか。わたしが何を言ったかを、わたしの聞き手である彼らに尋問しなさい。見よ、わたしが彼らに何を言ったのか、彼らは知っています。」
22 そして、イエスはこれらのことを言われると、そばに立っていた一人の下役人が、イエスを平手で打ち、言った。「お前はこんなふうに、大祭司に答えるのか。」
23 イエスは彼に答えられた。「もし、わたしの言い方が悪かったとしたら、その悪かったことについて証明しなさい。しかし、もし良かったなら、あなたはなぜわたしをたたくのですか。」
24 ところが、アンナスはイエスを縛ったままで、大祭司カヤパの所に送った。
25 一方、シモン・ペテロは立って、暖をとっていた。そこで、彼らはペテロに言った。「あなたもあの人の弟子の一人ではないか。」ペテロはそれを否定して言った。「私は違う。」
26 大祭司の僕の一人で、ペテロが耳を切り落とした者の親戚が言った。「私があの人といっしょにいるあなたを、園で見なかったとでも言うのですか。」
27 そこでまた、ペテロは否定した。そのとたん、雄鶏が鳴いた。
28 それから、彼らはイエスをカヤパの所から官邸に連れて行った。早朝であった。そして、汚れずに過越祭の食事ができるように、彼ら自身は官邸に入らなかった。
29 それで、ピラトは彼らの所に出て行って、言った。「この男に対してどのような訴えをするというのか。」
30 彼らはピラトに答えて言った。「もしこの男が悪人でなかったら、あなたに引き渡さなかったでしょう。」
31 ついで、ピラトは彼らに言った。「この男を連れて行って、お前たち自身の律法によって裁け。」それで、ユダヤ人たちはピラトに言った。「誰をも死刑にすることは、私たちには非合法なのです。」
32 これは、ご自分がどの死に方で死ぬかと、イエスが示して言われた言葉が成就するためであった。
33 そこで、ピラトはまた官邸に入り、イエスを呼び、言った。「あなたがユダヤ人の王なのか。」
34 イエスは彼に答えられた。「あなたはこのことを自ら言っているのですか、または、わたしに関して他人があなたに言ったのですか。」
35 ピラトは答えた。「私はユダヤ人だとでもいうのか。あなたの同国人と大祭司たちがあなたを私に引き渡したのだ。あなたは何をしたのか。」
36 イエスは答えられた。「わたしの王国は、この世からのものではありません。もしわたしの王国がこの世からのものであったならば、わたしの下役人たちは、わたしがユダヤ人に引き渡されないように戦ったのです。しかし、わたしの王国は現在、ここからのものではありません。」
37 したがって、ピラトはイエスに言った。「では、あなたは王なのか。」イエスは答えられた。「あなたはわたしが王であると言います。わたしはこのため、すなわち真理について証するために生まれ、この目的のために世に来ました。すべて真理に属する者は、わたしの声を聞きます。」
38 ピラトはイエスに言った。「真理とは何か。」そして、ピラトはこう言って、ユダヤ人たちの所へ再び出て、彼らに言った。「私は、この男に何の犯罪も認めない。
39 しかし、お前たちには過越祭に、一人をお前たちに放免してもらう習慣がある。したがって、ユダヤ人の王をお前たちに放免することを私に要求するのか。」
40 そうすると、彼らは皆、再び叫んで言った。「あいつではなく、バラバを。」ところで、バラバは強盗であった。

19章

そこで、ピラトはその時イエスを捕らえさせ、イエスを鞭で打たせた。
2 そして、兵士たちはいばらで冠を編み、イエスの頭上にかぶらせた。そして、彼らはイエスに紫の上着を着せた。
3 そうして、兵士たちは、「おめでとう、ユダヤ人の王よ。」と言って、イエスを平手で打った。
4 そこで、ピラトはまた出て行き、彼らに言った。「見よ、私はこの人に何の不法行為も認め得ないので、お前たちにわかるように、お前たちの前に連れて来た。」
5 それで、イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たまま出て来られた。そしてピラトは彼らに言った。「見よ、この男だ。」
6 そこで、その時、大祭司たちや下役人たちはイエスを見ると、叫んで言った。「十字架につけろ、十字架につけろ。」ピラトは彼らに言った。「お前たちがイエスを連れて行き、十字架につけよ。なぜなら、私はこの人に不法行為を認め得ないからだ。」
7 ユダヤ人たちは彼に答えた。「私たちには律法があります。そして、私たちの律法によれば、彼は死ぬべき者です。それは、自らを神の御子息にしたからです。」
8 それで、ピラトはその言葉を聞いたとたん、ますます恐れた。
9 そして、彼はまた官邸に入り、イエスに言った。「あなたはどこから来たのですか。」しかし、イエスは彼に返事をされなかった。
10 そうすると、ピラトは彼に言った。「私に話さないのか。私は、あなたを十字架につける権威もあれば、放免する権威もあるのを知らないのか。」
11 イエスは答えられた。「もしそれが上からあなたに与えられたのでなければ、わたしに対して何の権威も持つことはありませんでした。したがって、わたしをあなたに引き渡した者の方こそ、もっと重い罪があります。」
12 この時から、ピラトはイエスを放免する道を探したが、ユダヤ人たちは叫んで言った。「この男を放免すれば、あなたはカイザル様の味方ではありません。すべて自分を王にする者は、カイザル様に反対を唱える者です。」
13 それで、ピラトはその言葉を聞くと、イエスを連れ出し、「敷石」と言われる(ヘブライ語でガバタという)場所で裁判の座についた。
14 そして、当日は過越祭の準備の日であり、第六時間目ごろ35であった。そこで、ピラトはユダヤ人たちに言った。「見なさい。お前たちの王だ!」
15 しかし、彼らは叫んだ。「連れて行け、連れて行け。彼を十字架につけろ。」ピラトは彼らに言った。「お前たちの王を私に十字架につけよと言うのか。」大祭司たちは答えた。「私たちには、カイザル様以外の王はいません。」
16 そこで、十字架につけるために、ピラトはイエスを彼ら36に引き渡すと、彼らはイエスを受け取り、連れて行った。
17 そして、イエスはご自分の十字架を背負って、ヘブライ語でゴルゴタ、すなわち「どくろの地」と言われている所へ向かわれた。
18 その場所で、彼らはイエスを十字架につけたが、イエスと共に他の二人を両側に、イエスを真ん中にした。
19 そして、ピラトは罪状書を書き、十字架にかけた。そして、そこには、「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」と書かれてあった。
20 イエスが十字架につけられた場所は町の近くにあり、そして、ヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語で書かれてあったので、大勢のユダヤ人はこの罪状書を読んだ。
21 それで、ユダヤ人の大祭司たちはピラトに言った。「『ユダヤ人の王』と書かないで、『自分はユダヤ人の王であると彼は言った。』と書いてください。」
22 ピラトは答えた。「私が書いたことは、私が書いたのだ。」
23 そこで、兵士たちはイエスを十字架につけると、イエスの衣服を取り、四つの部分に分け、兵士たちはそれぞれを一つずつ分けた。イエスの内側の衣もあったが、内側の衣には、縫い目がなく、上からすべてが一つに織った物であった。
24 そこで、彼らは互いに言った。「私たちはこれを裂かないで、誰の物にするか、くじで決めよう。」これは、「彼らはわたしの衣服を自分たちの間に分け、わたしの上着のためにくじを引いた。」という聖書が成就するためであった。ゆえに、兵士たちはこれらのことを行なったのである。
25 さて、イエスの母と、彼の母の姉妹であるクロパの妻マリヤと、マグダラのマリヤは、イエスの十字架のそばに立っていた。
26 それで、イエスはご自分の母とご自分が愛された弟子がそばに立っているのを見て、ご自分の母に言われた。「婦人よ、見なさい、あなたの息子を。」
27 それから、彼はその弟子に言われた。「見なさい、あなたの母を。」そして、その時から、その弟子はマリヤを自分の家に受け入れた。
28 この後、イエスはすべてのことはもう行なわれたとわかって、聖書が成就するために言われた。「わたしは渇く。」
29 そこで、酢37で満たされた器が置いてあったので、彼らは海綿をその酢で満たし、ヒソプの枝につけて、イエスの口もとへ差し出した。
30 そこで、イエスは酢を受けられて、言われた。「全うした。」そして、頭を下げられ、霊を渡された。
31 さて、準備の日であったから、安息日に十字架の上に遺体が残らないように(その安息日が大いなる日であったから)、ユダヤ人たちは、足を彼らに折ってもらい、そして彼らを取り下ろしてくれるようにとピラトに願った。
32 それで、兵士たちが来て、最初の男と、イエスと共に十字架につけられたもう一人の男の足を折った。
33 しかし、彼らがイエスの所に来た時、イエスはもう死亡しているのを見て、彼の足は折らなかった。
34 しかし、兵士たちの一人が槍でイエスのわき腹を刺したとたん、血と水が出て来た。
35 そして、それを見た者は証言をしてきて、かつ彼の証言は真実である。その者は真実を言うということを知っている。その理由は、あなたがたが信じるためである。
36 なぜなら、「彼の骨は一本も折られることがない。」という聖書が成就されるように、これらのことは行なわれたからである。
37 そして、また聖書の別の箇所が言う。「彼らは自分たちが刺した人を見る。」
38 この後、ユダヤ人たちへの恐れのゆえにひそかにイエスの弟子であったアリマタヤ出身のヨセフは、イエスの遺体を引き取ることを、ピラトに願った。そしてピラトは許した。それで、ヨセフは来て、イエスの遺体を引き取った。
39 そして、かつて夜中にイエスの所に来たニコデモも、没薬とアロエの混ぜ物を百リットラぐらい38持って来た。
40 それから、彼らはイエスの遺体を受け取り、それを香料と共に亜麻布で巻いた。ユダヤ人の葬りの習慣に従ったのである。
41 さて、イエスが十字架につけられた所に園があった。そして、園には、まだ誰も置かれたことのない、新しい岩穴の墓があった。
42 したがって、ユダヤ人の準備の日のために、彼らはイエスをそこに置いた。その岩穴の墓は近かったからである。

20章

週の最初の日の朝早く、まだ暗いうちに、マグダラのマリヤは岩穴の墓に行き、石が墓から取り外されているのを見た。
2 そこで、マリヤは走って、シモン・ペテロとイエスが愛されたもう一人の弟子の所に行って、彼らに言った。「彼らは主を墓から取り出してしまいました。彼らが主をどこに置いたのか、私たちにもわからないのです。」
3 それで、ペテロとそのもう一人の弟子は出て行き、墓に向っていた。
4 そこで、二人は共に走り出したが、もう一人の弟子が、ペテロより速く走って、先に墓に着いた。
5 そして、かがんで見ると、亜麻布が置いてあった。しかし、彼は中に入らなかった。
6 そこで、シモン・ペテロが彼について来て、墓の中に入り、置いてあった亜麻布を見た。
7 そして、イエスの頭部に置いてあった布は、亜麻布と共に置かれていたのではなく、別の所に巻かれたまま、置いてあった。
8 そこでその時、先に墓に着いたもう一人の弟子も墓に入った。そして、彼は見て、信じた。
9 なぜなら、彼らは、イエスが死人たちの中から復活しなければならないという聖句をまだ理解していなかったからである。
10 それで、弟子たちはまた自分たちの所に去って行った。
11 しかし、マリヤは墓の外に立って泣いていた。そこで、彼女は泣きながら、身をかがめて墓の中を見た。
12 そして、イエスの遺体を横たえていた所に、彼女は、白い服装をした二人の御使いが座っているのを見た。一人は頭の所に、もう一人は足の所にいた。
13 そして、彼らはマリヤに言った。「ご婦人よ、なぜ泣いているのですか。」マリヤは彼らに言った。「あの人たちは私の主を持ち去り、彼らは主をどこに置いたのかはわからないからです。」
14 マリヤはこれを言い終わり、後ろを振り返って、イエスが立っているのを見たが、イエスであると気づかなかった。
15 イエスはマリヤに言われた。「婦人よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか。」彼女は、イエスが庭師かと思って、彼に言った。「だんな様、もしあなたはあの方をここから運び去ったなら、どこに置いたかを私に教えてください。そうしたら、私があの方を取りに行きます。」
16 イエスは女に言われた。「マリヤよ。」彼女は振り向き、イエスに言った。「ラボニ」、すなわち「先生」という意味である。
17 イエスはマリヤに言われた。「わたしはまだ父の所に昇っていないから、わたしに触れてはいけません。しかし、わたしの兄弟たちの所に行って、『わたしは、わたしの父とあなたがたの父に、またわたしの神とあなたがたの神の所に昇ります。』と彼らに言いなさい。」
18 マグダラのマリヤは行って、自分が主を見たこと、そして主はこれらのことを自分に話されたと、弟子たちに言った。
19 さて、その日は週の最初の日の夜であった。ユダヤ人への恐れのため、弟子たちは集まっていた所のドアが閉じておいたが、イエスは入って来られ、彼らの中央に立ち、彼らに言われた。「あなたがたに、平安がありますように。」
20 そして、イエスはこう言われると、彼らにご自分の手と脇をお見せになった。それで、主を見て弟子たちは喜んだ。
21 それで、イエスはまた彼らに言われた。「あなたがたに平安がありますように。父がわたしを遣わしたように、わたしもあなたがたを遣わします。」
22 そして、イエスはこのことを言われ、弟子たちに息を吹きかけ、彼らに言われた。「聖霊を受け入れなさい。
23 あなたがたが赦すと、誰の罪にしても、その人たちの罪は赦されます。あなたがたがそのままにしておくと、誰でもその人たちの罪はそのまま残ってしまいます。」
24 しかし、十二人の一人で、デドモ39と呼ばれるトマスは、イエスが来られた時に彼らと共にいなかった。
25 それで、他の弟子たちは彼に言った。「私たちは主を見たのだ。」するとトマスは彼らに言った。「主の御手の釘の跡を、もし見なければ、また指を釘の跡に入れなければ、また手を主の脇に差し入れなければ、私は決して信じない。」
26 そして、八日後40、イエスの弟子たちはまた屋内にいた。そして、トマスも共にいた。ドアは閉じてあったが、イエスは来られ、中央に立ち、言われた。「あなたがたに平安がありますように。」
27 それからイエスはトマスに言われた。「あなたの指をここまでおき、わたしの両手を見なさい。そして、あなたの手を伸ばし、わたしの脇に入れなさい。そして、信仰のない人にならないで、信仰のある人になりなさい。」
28 それで、トマスは答えて、イエスに言った。「私の主、私の神。」
29 イエスは彼に言われた。「トマスよ、あなたはわたしを見たので、信じたが、見ないでも信じる人たちは祝福されているのです。」
30 さて、イエスはこのほかにも、ご自分の弟子たちの前で多くのしるしを確かに行なわれた。それらはこの本に書かれていない。
31 しかし、これらのことが書かれてあるのは、イエスがキリストであり、神の御子息であることをあなたがたが信じるように、また信じた上で、イエスの御名によってあなたがたが命を持つようになるためである。

21章

これらのことの後、イエスはテベリヤの海で弟子たちに再びご自分を示された。そして、ご自身を現されたのはこのような方法であった。
2 シモン・ペテロと、デドモと呼ばれるトマスと、ガリラヤのカナ出身のナタナエルと、ゼベダイの息子たちと、イエスの他の弟子二人が共にいた。
3 シモン・ペテロは彼らに言った。「私は漁に行く。」彼らはペテロに言った。「私たちもあなたと一緒に行く。」彼らは出て行って、すぐ船に乗り込んだ。そして、その夜は、捕ったものは何もなかった。
4 さて、すでに夜が明けてから、イエスは岸に立っておられた。しかし、それがイエスであると、弟子たちは分からなかった。
5 そこで、イエスは彼らに言われた。「子らよ、食べられそうな魚は何かありますか。」彼らは答えた。「ありません。」
6 それで、イエスは彼らに言われた。「網を船の右側に投げなさい。そこであなたがたは魚を見つけます。」それで、網を投げると、おびただしい魚で、もう網を引き上げることができなかった。
7 ゆえに、イエスが愛されたあの弟子がペテロに言った。「主です。」それで、シモン・ペテロは、主であると聞いて、裸であったので、上着を身に付け、湖に飛び込んだ。
8 しかし、他の弟子たちは、魚の入った網を引きながら小舟で来た。なぜなら、およそ距離は二百ペーキュス41ぐらいで、陸から遠くなかったからである。
9 そこで彼らは陸に上がったら、そこに炭火があり、その上にのせた魚があり、そしてパンがあるのが見えた。
10 イエスは彼らに言われた。「今捕った魚を少し持って来なさい。」
11 シモン・ペテロは上がって来て、網を陸の上に引っ張り上げた。網は大きな魚でいっぱいで、百五十三匹いた。このように多かったが、網はさけなかった。
12 イエスは彼らに言われた。「来て、朝食を食べなさい。」主であると知っていたので、弟子たちは誰も、「あなたは誰ですか。」と尋ねることはあえてしなかったのである。
13 それから、イエスは来て、パンを取り、彼らに与え、また同様に魚もお与えになった。
14 イエスが死人の中から復活された後、ご自分の弟子たちに自らを示されたのは、これがすでに三度目である。
15 さて、彼らが朝食を食べ終わった時、イエスはシモン・ペテロに言われた。「ヨナの息子シモンよ、これらのものよりわたしを愛していますか。」彼はイエスに言った。「はい、主よ、私があなたのことが大好きであることをあなたはご存知です。」イエスは彼に言われた。「わたしの子羊たちに食事をさせなさい。」
16 二度目に、イエスはまたペテロに言われた。「ヨナの息子シモンよ、わたしを愛していますか。」彼はイエスに言った。「はい、主よ、私があなたのことが大好きであることを、あなたはご存知です。」イエスは彼に言われた。「わたしの羊たちを飼いなさい。」
17 三度目、イエスはペテロに言われた。「ヨナの息子シモンよ、わたしのことが大好きですか。」イエスは彼に、「わたしのことが大好きですか。」と三度目に言われたので、ペテロは悲しんだ。そして、ペテロは主に言った。「主よ、あなたはすべてご存知です。私があなたのことが大好きであることをご存知です。」イエスは彼に言われた。「わたしの羊たちに食事をさせなさい。
18 まことに、まことに、あなたに言います。あなたがもっと若かった時は、あなたは自分で服を着て、望む所へ歩いて行きました。しかし、あなたは歳を取ると、自分の手を差し出すようになり、そして、他人があなたに服を着せ、あなたの望んでいない所へ連れて行きます。」
19 イエスはこれを言われたのは、ペテロがどういう死によって、神に栄光を捧げるかを示すためであった。そして、イエスはこれを話されてから、ペテロに言われた。「わたしに従いなさい。」
20 すると、ペテロは振り向いて、イエスが愛された一人の弟子がついて来るのを見た。それはまた、夕食でイエスの御胸に寄りかかって座って、「主よ、誰があなたを裏切る者ですか。」とイエスに尋ねた者であった。
21 その者を見て、ペテロはイエスに言った。「主よ、あの者は何を?」
22 イエスはペテロに言われた。「もしわたしが、あの者がわたしが来るまで残ると決めるとしても、それがあなたにどうしたというのか。あなたはわたしに従いなさい。」
23 それで、あの弟子は死なないと言うこの言葉は、兄弟たちの間に広がった。しかし、イエスは彼に、「あの人は死なない。」と言われたのではなく、「もしわたしは、あの者がわたしが来るまで残ると決めるとしても、それがあなたにどうしたというのか。」と言われたのである。
24 この弟子こそが、これらのことについて証をして、そしてこれらのことを書いたのである。そして、彼の証は真実であることを、私たちは知っている。
25 しかし、イエスが行なわれたことは、他にもたくさんある。それらの一つ一つ、もし書かれたとすれば、世界でさえ、その書かれた本を収める余地はない、と私は思う。アーメン。


  1. 原語「ロゴス」というギリシャ語は、意味が広い。言葉、説明、理性、話題、メッセージ、考えなどの意味がある。  

  2. イスラエルの首都。  

  3. ギリシャ語のバプティゾの根本的な意味は、「浸す、漬ける、沈める」である。(「新約聖書ギリシャ語小辞典」、織田昭編、58ページ)。  

  4. 今の時計では午後四時ごろを指す。当時の人は昼の時間を朝六時から、その時間を数え始め、夜六時まで十二時間数えた。  

  5. 油を注がれた者。すなわち、民を導くために神から遣わされた者。  

  6. 「ケパ」は、アラム語で「石」を意味し、「ペテロ」はギリシャ語で「石」を意味している。  

  7. ギリシャ語のオイノス。葡萄から作ったすべての飲み物を含む。  

  8. ユダヤ人の清めの儀式であった。  

  9. 一メトレテスは約三九リットルである。  

  10. ユダヤ人の祭で、モーセがエジプトからユダヤ人を導いたことを記念する日である。  

  11. ヘブライ語で、先生という意味。  

  12. アラム語で「泉」。  

  13. 正午。  

  14. ヘブライ語で、先生という意味。  

  15. 午後一時。  

  16. ローマ帝国の銀貨。一デナリは一般労働者の一日分の賃金。  

  17. ⒌6キロメートル。  

  18. ヘブライ語で、先生という意味。  

  19. 天国からのパン。  

  20. ユダヤ教の会堂。  

  21. 他国に住むユダヤ人たち。  

  22. 直訳すれば、腸という意味である。ユダヤ人にとって、深い感情の元は腸であった。  

  23. 「わたしはある」とは、神の呼称の一つである。  

  24. ヘブライ語で、先生という意味。  

  25. ハヌカー、神殿清め。  

  26. ヘブライ語で、先生という意味。  

  27. 双子という意味。  

  28. 三キロメートル(一スタディオンは百八十五メートル)。  

  29. 三百二十七.五グラム。  

  30. 一デナリは一日の生活費に相当する金額。  

  31. 「わたしはある」とは、神の呼称の一つである。  

  32. 当時のイスラエルでは、低いテーブルに横になって食事をする習慣であった。  

  33. 世界の支配者は悪魔である。  

  34. 父なる神と御子息は、永遠から永遠まで、永遠の唯一の神である。この箇所は三位一体の教理を教える。父なる神と御子息イエスは同等である。  

  35. 正午ごろ。  

  36. ローマ帝国の兵士を指す。二三節を参考。  

  37. 酸っぱいぶどうの果汁で、当時ローマの兵士の飲み物であった。  

  38. 三十キログラムぐらい。  

  39. 双子という意味。  

  40. 当時の表現で、一週間を指す。  

  41. 百メートル。一ペーキュスは、四五センチぐらいである。