私たちの間で成就されたことを、大勢の人たちが順序よく記録するように、すでに手がけていますから、
2 御言葉の、最初からの目撃者であり奉仕者であった人たちも、私たちにそのことを任せてくれたように、
3 最も敬愛するテオピロ殿, 最初から1すべての出来事を完全に確認して、あなたに順序正しく書き送るのがよいと私は思いました。
4 それは、あなたが教えられたことの確実性をあなたが確信することができるためです。
5 ユダヤの王ヘロデの代に、アビヤの組2のザカリヤという祭司がいた。ザカリヤの妻はアロンの娘の一人で、名はエリサベツであった。
6 この夫婦は共に神の御前で正く、主の命令と戒めすべてを咎められることなく歩んでいた。
7 しかし、エリサベツは不妊症であったので、二人には子がなかった。そして二人ともかなり高齢になっていた。
8 さて、ことの次第はこうであった。ザカリヤは自分の組の順番がきて、神の御前で祭司としての職を務めると、
9 祭司職の習慣により、くじを引いたところ、主の神殿に入り、香をたくことになった。
10 それで、群衆は全員、香の時間、外で祈っていた。
11 その時、主の御使いがザカリヤに現れ、香壇の右に立っていた。
12 そして、ザカリヤは御使いを見ると、不安になり、恐怖が彼を襲った。
13 しかし、御使いは彼に言った。「ザカリヤよ、あなたの祈りは聞き届けられたので、恐れてはいけません。そして、あなたの妻エリサベツは息子を産みます。息子の名前をヨハネと呼びなさい。
14 すると、あなたに喜びと幸せが来ます。また、その誕生を多くの人たちは喜びます。
15 なぜなら、ヨハネは主の御前に偉大な人になり、葡萄液もその他の酔うものは飲みません。そして、母の胎内にいる時からでさえ、聖霊で満たされます。
16 そして、ヨハネはイスラエルの多くの子らを、彼らの神である主へ帰らせます。
17 そして、父親たちの心を子どもたちに向けるため、また不従順の者たちを義人の知恵に向けるため、また主のために準備された一つの民を整えるため、ヨハネはエリヤの霊と力によって、主の御前を先に進みます。」
18 すると、ザカリヤは御使いに言った。「私はどうしてそれを知ることが出来ましょうか。なぜなら、私は老人で、妻は盛りを過ぎています。」
19 すると、御使いは答えて、ザカリヤに言った。「私は神の御前に立つガブリエルです。あなたと話し、この良い知らせを伝えるため、遣わされたのです。
20 見よ。時が来て、私の言葉が成就されるとあなたは信じなかったから、これらのことが行なわれる日まで、あなたは口がきけない者になり、話せなくなります。」
21 さて、ザカリヤを待っていた民は、彼が神殿の中に長く留まっていたことを不思議に思った。
22 やがて、ザカリヤが出てきた時、人々に言葉を発することが出来なかった。それで、彼は手まねするのみで、無言のままであったから、人々はザカリヤは神殿の中で幻を見たと分かった。
23 さて、ことの次第はこうであった。奉仕の日々が終わるとすぐ、ザカリヤは家に帰った。
24 その後幾日かして、彼の妻エリサベツはみごもり、五ヶ月間、身を隠した。そして言った。
25 「人々の間で、私の恥になっていたことを取り除くため、主は私に目をとめてくださった日々、主が私にこうしてくだったのです。」
26 さて、六ヶ月目に、ナザレというガリラヤの町に、御使いガブリエルが神により遣わされた。
27 ダビデの家系のヨセフという男の婚約者である処女の所に、彼は遣わされた。処女の名前はマリヤであった。
28 そして、御使いは入ってきて、マリヤに言った。「恵まれた方よ、おめでとう。主はあなたと共におられます。女性たちの中で、あなたは祝福されています。」
29 しかし、御使いに会い、マリヤはその言葉に困惑し、この挨拶はいったい何なのかと考え込んだ。
30 それで御使いは彼女に言った。「マリヤよ、あなたは神から恵みを受けたのですから、恐れてはいけません。
31 そして、見よ。あなたの胎は身ごもり、御子息を生みます。御子息の御名をイエスと呼びなさい。
32 この方は偉大な方であり、至高者の御子息と呼ばれます。そして、主である神はイエスの父ダビデの王座をイエスにお与えになります。
33 そして、御子息は永遠にヤコブの家を支配します。そして、この方の王国は終わりがありません。」
34 しかし、マリヤは御使いに言った。「私は男を知りませんのに、どうしてそんなことが起こり得るのでしょうか。」
35 御使いはマリヤに答えて言った。「聖霊はあなたの上に下り、至高者の力はあなたを覆います。したがって、生まれる聖なる方は『神の御子息』と呼ばれます。
36 そして見よ。あなたの親戚エリサベツも、年老いて、息子をみごもっています。うまずめと呼ばれていたエリサベツは、今、六月目になります。
37 なぜなら、神にとって不可能なことはないからです。」
38 それでマリヤは言った。「ご覧ください。私は主のはしためです。あなたの言葉通りになりますように。」すると、御使いはマリヤから去って行った。
39 さて、その時期、マリヤは立ち上がり、急いで丘陵地方の、ユダの町の一つに行き、
40 ザカリヤの家に入り、エリサベツに挨拶をした。
41 そして、ことの次第はこうであった。エリサベツはマリヤの挨拶を聞くと、胎内で胎児は喜びおどった。そして、エリサベツは聖霊で満たされた。
42 そして、彼女は大声をあげて言った。「あなたは女性の中で祝福され、あなたの胎内の実は祝福されています。
43 しかし、私の主の母が、私を訪問して下さるほど、私はなぜ、認められているのでしょう。
44 なぜなら、まったくの所、あなたの挨拶が私の耳に響いた時、お腹の子は喜びのあまりで、おどりはねました。
45 信じた女性は幸いです。主がその女性に話されたことはすべて成就されるからです。」
46 するとマリヤは言った。「私のたましいは主をあがめ、
47 そして、私の霊は私の救い主である神により喜びおどっています。
48 なぜなら、主はご自分のはしための低い身分をご覧になりましたので、御覧なさい、これからのすべての世代は、私を祝福された者と呼びます。
49 なぜなら、力ある方は私のために偉大なことをしてくださったからです。その方の御名は神聖です。
50 そして、その方の哀れみは、世代を通し、ご自分を恐れる人たちの上にあります。
51 その方は御腕の力強さを示し、心の思いにおごりのある者たちを散らされました。
52 その方は支配者たちをその座から引きずり降ろし、低い者たちを高めました。
53 その方は、飢えている者たちを良い物で満たし、富む者たちを空手で帰らせました。
54 主はご自分の哀れみを忘れず、ご自分の僕、イスラエルをお助けになりました。
55 私たちの父たちに言われたように、『永遠にアブラハムとその子孫に。』」
56 そして、マリヤはおよそ三ヶ月間エリサベツの所に滞在し、自分の家に帰った。
57 さて、出産の時が満ち、エリサベツは息子を産んだ。
58 そして、主が大いなる哀れみをエリサベツに与えられたことを聞き、マリヤの隣人たちと親戚たちは、エリサベツと共に喜んだ。
59 そして、ことの次第はこうであった。八日目にこの子に割礼をするため、人々がやって来た。そして、親戚たちと隣人たちは父ザカリヤの名で、その子を呼んでいた。
60 しかし、子の母は答えて、言った。「いいえ、ヨハネと呼びます。」
61 しかし、人々はエリサベツに言った。「あなたの親戚の中、この名前で呼ばれている人は、一人もいません。」
62 それで、人々は父親に、何と呼んでほしいか、と身振りで聞いた。
63 そして、ザカリヤは書き板を頼み、書いた。「この子の名はヨハネです。」それで皆驚いた。
64 すると直ちに、ザカリヤの口は開かれ、彼の舌は解放され、話し、神を誉めたたえた。
65 すると、恐怖が近所に住んでいたすべての人々に襲い、このやり取りした言葉は、ユダヤの丘陵地方中で話題になった。
66 そして、このやり取りを聞いたすべての人々は、それを心にとどめ、言った。「この子はどういう子になるでしょう。」そして、主の御手はこの子と共にあった。
67 さて、ヨハネの父ザカリヤは聖霊に満たされ、預言して言った。
68 「イスラエルの神である主に、祝福あれ。なぜなら、ご自分の民を訪ね、購いをなされたからです。
69 そして、ご自分の僕、ダビデの家に、我らのために救いの角をお立てになりました。
70 世の初めからいた、聖なる預言者たちの口を通して、主が言われた通りです。
71 つまり、我らを敵から、また我らを憎むすべての者から、救い出されるためです。
72 我らの父祖たちに約束されたあわれみを実行され、その聖なる契約を忘れず、
73 我らの父アブラハムに誓われた誓いを忘れず、
74 敵の手から救い出された我らが、恐れず主に仕えることができる特権を主は下さり、
75 主の御前に、我らの全生涯を、聖と義によって過ごせますようにお与えになりました。
76 そして子よ、あなたは至高の方の預言者と呼ばれます。なぜなら、あなたは主の数々の道を整えるため、主の御前を先立って行きます。
77 また、あなたが、主の民が犯した数々の罪の赦しから来る、救いの知識を主の民に知らせます。
78 その知識とは、我らの神の深い哀れみを通して来ます。その昇る日は高い所から私たちにお臨みになりました。
79 昇るその日は、暗闇に、そして死の陰に座っている者たちに光を与え、平安の道に私たちの足を導くためです。」
80 そしてこの子は成長し、霊に強くなり、イスラエルに姿を現すまで砂漠にいた。
さて、ことの次第はこうであった。その当時、カイザル・アウグストより、全世界3の人は登録すべしとの勅令が出された。
2 クレニオがシリアを支配していた時に行われた、最初の登録であった。
3 それで、すべての人々は登録のため、それぞれ自らの町に行った。
4 ヨセフもダビデの家系であり、その血統であったので、ナザレの町からガリラヤを出て、ユダヤに入り、ベツレヘムと呼ばれるダビデの町に上って行った。
5 いいなずけの妻マリヤと共に登録のためである。マリヤは身ごもっていた。
6 こうして、二人はそこにいた間、日が満ち、マリヤの出産日が来た。
7 そして、マリヤは息子、彼女の長男を産み、その御子息を布にくるみ、飼い葉桶に寝かせた。この家族のための部屋は宿屋にはなかったからである。
8 さて、同じ地域に、野原で暮らす羊飼いたちがいて、夜、群れを見守っていた。
9 すると、見よ、主の御使いが羊飼いたちの前に立ち、主の栄光が羊飼いたちの回りを照らした。すると、彼らはとても恐れた。
10 すると、御使いは羊飼いたちに言った。「恐れてはいけません。なぜなら、見よ、すべての民に大いなる喜びの良い知らせを、私は持って来たのです。
11 なぜなら今日、救い主、つまり主キリストが、ダビデの町で、あなたがたのためにお生まれになりました。
12 そして、布にくるまれ、飼い葉桶に寝ておられる幼児を、あなたがたは見いだします。それがあなたがたへのしるしです。」
13 すると突然、その御使いの側に、天の御使いたちの大群が現れ、神を誉め讃えて言った。
14 「いと高き所の神に栄光がありますように。そして、地に平和、人々の間には、善意がありますように。」
15 さて、ことの次第はこうであった。御使いたちが天国へ去ると、羊飼いたちは互いに言った。「さあ、ベツレヘムへ行こう。そして主がなされ、私たちに知らせて下さったことを見よう。」
16 それで急いで行き、マリヤとヨセフ、それと飼い葉桶に寝ておられる幼児を探し出した。
17 羊飼いたちは御子息を見、この御子息について彼らに言われた言葉を広く伝えた。
18 そして、それを聞いたすべての人たちは、羊飼いたちが言ったことを不思議に思った。
19 しかし、マリヤはこれらのことをしっかり記憶し、心に留め幾度も考えた。
20 そして、言われた通りのことを、すべて見、聞いたので、羊飼いたちは、神をあがめ、賛美しながら帰った。
21 そして、御子息の割礼のための八日間4が過ぎると、御子息はイエスと呼ばれた。それは、まだ胎内に宿る前、御使いにより付けられた御名である。
22 さて、モーセの律法によって、マリヤの清めの日々が終わった時、主に捧げるため、両親はイエスを伴いエルサレムに上った。
23 主の律法に書いてある通り、「胎を開く男の子はすべて、神に関して聖なるものと呼ばれる。」
24 また、「山鳩二羽か、若い家鳩二羽」と主の律法に言われた通り、いけにえを捧げるためであった。
25 そして見よ、エルサレムにシメオンという男がいた。この男は正しく、信仰心厚く、イスラエルの慰めを待ち望んでいた。そして、聖霊はシメオンの上におられた。
26 主のキリストを見るまで、シメオンは死を見ることがないと、聖霊によって示されていた。
27 それでシメオンは御霊に導かれ、神殿の敷地に入った。そして、両親は律法の習慣通りに行なうため、御子息を抱いて来た時、
28 シメオンは腕に御子息を抱き、神を祝福して、言った。
29 「主よ、あなたの御言葉通り、今、あなたの僕を安らかに去らせてくださいます。
30 私の目はあなたの救いを見たからです。
31 主はその救いを、すべての民の面前に整えられ、
32 異邦人たちに啓示を与える光であり、また、あなたの民イスラエルの栄光です。」
33 それでヨセフと御子息の母は、御子息について話されたことに驚いた。
34 そして、シメオンは彼らを祝福し、御子息の母マリヤに言った。「見よ、イスラエルで、多くの者が倒れ、また立ち上がるため、また、逆らいの言葉を受ける象徴に、この御子息は決められました。
35 そして、あなた自身のたましいも剣が刺し通します。それは、大勢の人々の心の思いが表れるためです。」
36 さて、アセル族のパヌエルの娘、女預言者のアンナがいた。彼女はとても高齢であり、処女の時、夫の元に行き、共に七年間暮らした。
37 それで、アンナは八十四歳ぐらいの未亡人であり、神殿の敷地を離れず、昼も夜も断食と祈りで神に仕えていた。
38 そして、ちょうどその時、アンナは入って来て、主に感謝し、エルサレムの購いを待っていたすべての人々に、主のことを話した。
39 さて、主の律法に定められたすべてを終え、ヨセフたちはガリラヤに戻り、自分の町ナザレへ帰った。
40 そして、御子息は成長し、霊において強くなり、知恵で満たされ、そして、神の恵みは御子息の上にあった。
41 さて、イエスの両親は毎年過越祭の時、エルサレムに行った。
42 そして、イエスが十二歳になると、この家族は祭りの習慣に従ってエルサレムに上った。
43 祭りが終わり、家族が帰る時、少年イエスはエルサレムに残っておられた。しかし、ヨセフとイエスの母はそれを知らなかった。
44 それで、イエスは皆と共にいると両親は思い、一日の道のりを終え、親戚や知り合いの中を捜していた。
45 それでも、イエスを見つけられず、エルサレムに戻り、イエスを捜していた。
46 それで、三日経ってから、神殿の中で、教師たちの中央に座り、教師たちの話を聞いたり、質問をしたりしておられるイエスを見つけた。
47 イエスの話を聞いた人は皆、イエスの理解力と返事に大変驚いていた。
48 それで、ヨセフとマリヤはイエスを見て、驚愕した。母はイエスに言った。「息子よ、なぜこんなことを私たちにしたのですか。ほら、あなたの父と私は心配してあなたを捜していたのです。」
49 そして、イエスは両親に言われた。「なぜわたしを捜したのですか。わたしはわたしの父のご用をする必要があると言うことを、知らなかったのですか。」
50 しかし、ヨセフとマリヤはイエスの言ったことを理解できなかったのである。
51 それで、イエスは二人と共に下り、ナザレに帰り、二人に従っておられた。しかし、マリヤはこの言葉をすべて心に留めおいた。
52 そして、イエスは知恵、及び、背丈、ともに成長し、神、及び人ともさらに良い関係に成長した。
さて、カイザル・テベリオの支配の十五年目、そして、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督であった時、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主であった時、
2 アンナスとカヤパが大祭司であった時、神の御言葉は荒野でザカリヤの息子ヨハネに下った。
3 そして、ヨハネはヨルダン川のほとりのすべての地方に行き、罪の赦しを得る、悔い改めの浸礼5を説いていた。
4 これは、「預言者イザヤの言葉の書」に書かれ、言われているように、「荒野で叫ぶ者の声がする。主の道を準備せよ。その方の道を真っ直ぐにせよ。
5 すべての谷は埋められ、すべての山と丘はならされ、曲がっている場所は真っ直ぐにされ、でこぼこの場所は滑らかにされる。
6 そして、すべての肉なる者は神の救いを見る。」
7 それで、ヨハネに浸礼を受けるためやって来た群衆に言った。「まむし一族の者たちよ、来るべき怒りから逃れよと、誰がお前たちに警告したのか。
8 逃れるそのためには、悔い改めにふさわしい実を結べ。そして、『私たちの父はアブラハムである。』と自分たちに言い出してはいけない。なぜなら、私はお前たちに言う。神はこれらの石から、アブラハムに彼の子どもを立ち上がらすことができるからだ。
9 そして、斧はもうすでに、木の根元に当てがわられている。ゆえに、すべて良い実を結ばない木は切り倒され、火の中へ投げ入れられる。」
10 すると、群衆はヨハネに尋ねて言った。「私たちはどうしたらいいのでしょうか。」
11 ヨハネは答えて言った。「短い上着を二枚持っている人は、持っていない人に与えなさい。食べ物を持つ人も同じようにしなさい。」
12 すると、収税人たちも浸礼を受けるためにやって来て、ヨハネに言った。「先生、私たちはどうしたらいいのでしょうか。」
13 ヨハネは収税人たちに言った。「指示された以上の金額を取り立ててはいけない。」
14 同様に兵士たちもヨハネに尋ねて言った。「それで、私たちはどうしたらいいのでしょうか。」ヨハネは兵士たちに言った。「人を脅迫してはいけない。また、偽証をしてはいけない。自分の給料で満足しなさい。」
15 そして、全国民は、期待していたので、皆、ヨハネはキリストであるかどうかを、心の中で論争していたので、
16 ヨハネは答えて、皆に言った。「私はもちろん、あなたがたに水で浸礼を授けているが、おいでになる方は、私より力ある方です。その方の履き物のひもを解く値さえ私にはありません。その方はお前たちに聖霊と炎で浸礼をお授けになります。
17 その方の手には、ご自分の箕があり、その方はご自分の脱穀する場所を徹底的に清められます。そして、その方はご自分の麦を集め、倉に収めるが、殻は消すことのできない炎で焼き尽くしてしまいます。」
18 そして、他の多くの励ましの言葉で、民に福音を説いた。
19 さて、領主ヘロデは、彼の兄弟ピリポの妻、ヘロデヤについて、またヘロデが行なったいろいろな悪事のために、ヨハネに叱責されたので、
20 その上になお、ヨハネを牢獄に閉じ込める悪事を重ねた。
21 さて、ことの次第はこうであった。民全員が浸礼を授けられ、イエスも浸礼をお受けになる時、イエスが祈っておられると、天が開かれ、
22 そして、聖霊が鳩のような姿で降りて来られ、イエスの上に来られた。そして、天からの声が言われた。「あなたはわたしの愛する子である。あなたはわたしが喜ぶ者である。」
23 そして、イエスご自身が活躍を始められたのは、およそ三十歳であった。イエスはヨセフの息子であると思われていた。ヨセフはヘリの子、
24 マタテの子、レビの子、メルキの子、ヤンナイの子、ヨセフの子、
25 マタッテアの子、アモスの子、ナホムの子、エスリの子、ナンガイの子、
26 マアツの子、マタッテアの子、シメイの子、ヨセフの子、ヨダの子、
27 ヨアンナの子、レサの子、ゾロバベルの子、サラテエルの子、ネリの子、
28 メルキの子、アデイの子、コサムの子、エルモダムの子、エルの子、
29 ヨセの子、エリエゼルの子、イヨレムの子、マタテの子、レビの子、
30 シメオンの子、ユダの子、ヨセフの子、ヨナンの子、エリヤキムの子、
31 メレアの子、マイナンの子、マタタの子、ナタンの子、ダビデの子、
32 エッサイの子、オベデの子、ボアズの子、サルモンの子、ナアソンの子、
33 アミナダブの子、アラムの子、エスロムの子、パレスの子、ユダの子、
34 ヤコブの子、イサクの子、アブラハムの子、テラの子、ナホルの子、
35 セルクの子、ラガウの子、ペレグの子、エベルの子、サラの子、
36 カイナンの子、アルパクサデの子、セムの子、ノアの子、ラメクの子、
37 メトセラの子、エノクの子、ヤレデの子、マハラレルの子、カイナンの子、
38 エノスの子、セツの子、アダムの子、このアダムは神の子であった。
さて、イエスは聖霊に満ち、ヨルダン川から帰り、御霊によって荒野の中へ導かれ、
2 四十昼夜にわたり、悪魔に試された。この期間、イエスは何も召し上がることはなかった。それで、この期間が終わると、空腹を覚えられた。
3 すると、悪魔はイエスに言った。「もしあなたが神の御子息なら、この石にパンになれと命じなさい。」
4 すると、イエスは悪魔に答えて言われた。「『人はパンだけではなく、神の一つ一つの御言葉によって生きる。』と書いてある。」
5 すると悪魔はイエスを高い山に連れて行き、一瞬のうちに世界のすべての王国をイエスに見せた。
6 そして、悪魔はイエスに言った。「私はこの権威とその栄光をすべてあなたに与える。なぜなら、権威も栄光も私に引き渡されているのだ。そして、与えようと思う者に、私は与えることができる。
7 従って、もしあなたが私の前に伏し、私を拝めば、すべて、あなたのものになる。」
8 するとイエスは悪魔に答えて言われた。「サタンよ、わたしの後に行け。『あなたの神である主を拝み、その方のみに仕えよ。』と書いてあるからだ。」
9 その時、悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、神殿の最も高い所に立たせた。そして、イエスに言った。「もしあなたが神の御子息なら、自らを下へ投じなさい。
10 『神はあなたを守るため、ご自分の御使いたちに、あなたについて命じられる。』と書いてあるからだ。
11 それと、『あなたの足が石に打ち当たらないように、御使いたちはあなたを手で支える。』」
12 すると、イエスは答えて、悪魔に言われた。「『あなたの神である主を試みてはいけない。』と言われている。」
13 すると、悪魔はすべての試みを止め、好機が来るまでイエスから離れた。
14 さて、イエスは御霊の力によりガリラヤに帰られると、イエスの評判はその全土に広がった。
15 そして、イエスは彼らのシナゴーグで教え、全員から栄光をお受けになった。
16 さて、イエスはご自分が育ったナザレに行かれた。そして、ご自分の習慣で、安息日にシナゴーグに入り、読むために立たれた。
17 すると、イエスは預言者イザヤの書を手渡された。書を開き、こう記録されている所を見いだされた。
18 「主の御霊はわたしの上におられる。主がわたしに油を注がれたので、貧しい人々に福音を説く。心が砕かれた人々をいやし、囚人たちに解放を宣言し、盲人たちに視力を回復させ、虐げられた人々に自由を返し、このためにわたしは遣わされ、
19 主のふさわしい年を宣言するために主はわたしを遣わされた。」
20 次いでイエスは書を閉じ、係りに返し、座られた。シナゴーグにいた会衆の全員の目はイエスに釘付けになった。
21 イエスは一同に言い始められた。「今日、あなたがたの耳が聞いた御言葉が成就されました。」
22 それで全員、イエスのことを証して、イエスの口から出た優しい言葉に驚いた。そして、「これはヨセフの息子ではないのか。」と、一同は言った。
23 イエスは一同に言われた。「あなたがたはきっとこの諺をわたしに言うでしょう。『「医者よ、自らを治せ。」あなたがカペナウムで行われたことを、私たちは聞いています。ここで、つまりあなたの故郷でもやってください。』」
24 そしてイエスは言われた。「真に、わたしはあなたがたに言います。自らの故郷では、預言者は誰一人受け入れられていません。
25 しかし、わたしはあなたがたに正確に言います。エリヤの時代に、イスラエルに多くの未亡人がいました。それは、天は三年半閉じられ、国中に大飢饉があった時です。
26 しかし、その未亡人たちの誰一人にもエリヤは遣わされず、シドンのサレプタのやもめになった女性のみに遣わされた。
27 そして、預言者エリシャの時代に、レプラ病6の人は多くいたが、シリア人のナアマン以外、誰も清められなかったのです。」
28 すると、シナゴーグにいた全員はこれを聞き、激しく憤慨し、
29 立ち上がって、イエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘の崖へ連れて行き、投げ出すために、断崖へイエスを連れて行った。
30 しかし、イエスは彼らの中央を通り、自らの道を行き、去られた。
31 そして、イエスはガリラヤにある町、カペナウムに下って行き、安息日毎に人々を教えておられた。
32 そして、イエスは権威ある御言葉で語られたから、人々はイエスの教えに驚嘆していた。
33 さて、シナゴーグに、汚れた悪魔の霊を持つ男がいた。そして、この男は大声で叫んで、
34 言った。「俺たちをほっておいてくれ。ナザレのイエスよ、俺たちはあなたと何の関係があるのか。俺たちを滅ぼしに来たのか。あなたは誰か、俺は知っている。神の聖なる人だ。」
35 しかし、イエスはその霊に警告し、言われた。「黙れ、この男から出てこい。」すると、悪魔はその男をそこにいた人たちの中に倒したが、けがをさせずに、男から出て来た。
36 それで、全員は驚き、互いに言葉を交わし、言った。「これは何の言葉だ!この方が権威と力を持って、悪魔たちに命じると、悪霊たちは人から出て来る。」
37 こうしてイエスに関する名声は、その周りの地方一帯に広がって行った。
38 さて、イエスは立ち上がりシナゴーグを離れ、シモンの家に入られた。しかし、シモンの義母は病で高熱があった。それで、家の者たちは彼女のためにイエスにお願いした。
39 イエスは病人の上にかがみ、熱をたしなめられると、熱は去った。そして、女はすぐ起きてイエスたちを接待した。
40 そして、日が正に沈もうとする頃、様々な病気を患う人を抱えている人たちが、病人たちをイエスの所に連れて来た。そして、イエスは一人一人すべての病人の上に手を置かれ、治された。
41 そして、多くの人から悪霊たちは、わめきながら出てきて、言った。「あなたは神の御子息、キリストです!」そして、悪霊たちはイエスがキリストであると知っていたので、イエスは悪霊たちを叱責し、口を封じたのである。
42 明るくなると、イエスは去り、寂しい所に行かれた。すると、群衆はイエスを探し出し、そこに行き、イエスが去って行くのを止めようとした。
43 しかし、イエスは群衆に言われた。「わたしは他の町々でも神の王国を説かなければなりません。このためにこそ、わたしは遣わされてきたのです。」
44 そしてイエスはガリラヤ各地のシナゴーグで説き続けられた。
さて、ことの次第はこうであった。群衆は神の御言葉を聞くために、イエスの周りに押し寄せて来た。それで、イエスはゲネサレの湖畔に立ち、
2 岸に上げてある二隻の船をご覧になった。しかし、漁師たちは船から離れ、網を洗っていた。
3 それで、イエスはシモンの船であるその一隻に乗り、シモンに岸から少し離れるようにイエスは頼まれた。そして、イエスは座り、船から群衆を教えられた。
4 イエスは話を終えられると、シモンに言われた。「深いところへ船を出し、魚を獲るために網を降ろしなさい。」
5 しかし、シモンは答えて、イエスに言った。「師よ、私たちは一晩中苦労をしましたが、何も獲れませんでした。でも、あなたのお言葉ですので、私は網を降ろします。」
6 そしてシモンたちがその通りにすると、彼らは大量の魚を獲ったが、網が破れ出した。
7 それで、もう一隻の船に乗っていた仲間たちに、来て助けるように手で合図した。仲間たちは来て、二隻を魚で満たしたので、船は沈み始めた。
8 すると、これを見たシモン・ペテロは、イエスの膝元に伏して言った。「主よ、私は罪深い男です。だから、私から離れてください。」
9 なぜなら、ペテロも、共にいた仲間たちも、獲れた大量の魚に衝撃を受けたからである。
10 シモンの仲間で、ゼベダイの息子たちヤコブとヨハネも驚いた。それで、「恐れてはいけません。これからあなたは人を漁どるのです。」とイエスはシモンに言われた。
11 彼らは船を岸につけ、何もかも捨て、全員イエスに従った。
12 さて、ことの次第はこうであった。イエスがある町におられた時、見よ、全身レプラ病で覆われた男がイエスを見て、ひれ伏し、イエスに哀願して、言った。「主よ、もしあなたがお望みになれば、私を清めることができます。」
13 そこでイエスはご自分の手を差しのべ、その男に触れ、言われた。「わたしは望みます。清くなりなさい。」そして、たちどころにその人のレプラ病は清められた。
14 そして、イエスは誰にも話すなと命じられた。「祭司の所に行き、あなた自身を祭司に見せ、あなたの清めのため、モーセが命じたように、皆に証するため、捧げ物をしなさい。」
15 しかし、イエスについての情報はさらに広がった。そして、お話を聞き、病を治されようと多くの人たちが各地からやって来た。
16 それで、しばしばイエス自ら寂しい所に退き、祈っておられた。
17 さて、ことの次第はこうであった。ある日のこと、イエスが教えておられた。そこにガリラヤのすべての村、またユダヤとエルサレムから出てきた、パリサイ派の人たちと、律法の教師たちが座っていた。そして、病人たちを治すのに、主の力があった。
18 すると見よ、床に寝ている中風の男を、男たちが運んで来た。運び入れ、そして、イエスの前に置こうとした。
19 そして、群衆のため、持ち込む方法が分からず、屋上に行き、床と共に、人たちの真ん中に、瓦屋根を通して病人をイエスの前に降ろした。
20 すると、イエスはこの人たちの信仰をご覧になり、病人に言われた。「男よ、あなたの罪は赦されました。」
21 すると、律法学者たちとパリサイ派の人たちは、論争を始め、言った。「冒涜の言葉を口にするこの者は何者だ。罪を赦すことができる方は、神以外おいでになるのか。」
22 しかし、イエスは彼らの考えをお知りになり、答えて、言われた。「あなたがたは心の中で何を論じているのですか。」
23 『あなたの罪は赦されました。』と言うのと、『起きて歩きなさい。』と言うのと、どちらが簡単ですか。
24 しかし、人の子が、地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたがに知らせるために。」それでイエスは中風の男に言われた。「わたしはあなたに言います。起き上がれ、あなたの寝床を持って、あなたの家に帰りなさい。」
25 それで、たちどころに男は立ち上がり、寝ていた床を持ち、神に栄光を捧げながら、自分の家に帰った。
26 すると全員驚き、神に栄光を捧げ、恐怖に満たされ、言った。「今日私たちは信じられないことを目の当りにしました。」
27 さて、この後イエスは出かけ、収税所に座っているレビという収税人をご覧になった。そして、レビに言われた。「わたしについて来なさい。」
28 それで、レビは何もかもおいて、立ち上がり、イエスに従った。
29 そして、レビは自分の家で、イエスのため、大きな食事会を開いた。そして、大勢の収税人と他の人たちはレビたちと共に座った。
30 すると、パリサイ派の人たちはイエスの弟子たちに向かって、苦情を言った。「あなたがたはなぜ、収税人や罪人と共に飲み食いするのですか。」
31 イエスは答えて、彼らに言われた。「健康な人は医者を必要としません。必要とするのは、病人です。
32 正しい人でなく、わたしは罪人を呼び集め、悔い改めさせるために来たのです。」
33 それで、人たちはイエスに言った。「ヨハネの弟子たちはパリサイ派の人たちと同様、よく断食し、祈りをしますが、あなたの弟子たちは飲み食いをします。」
34 イエスは彼らに言われた。「立会人たちと花婿が共にいる間、立会人たちを断食させることができますか。
35 しかし、花婿は立会人たちから取り上げられる日が来ます。その期間は、立会人たちは断食します。」
36 それで、イエスは彼らに例え話を話された。「誰も古い服に新しい布を当てる人はいません。さもなくば、その布切れは服を引き裂きます。新しいものは古いものに合いません。
37 また、だれも新しい葡萄液を古い革袋には入れはしません。入れれば、革袋は破れ、葡萄液はこぼれ、革袋は裂けるからです。
38 しかし、新しい葡萄液を新しい革袋に入れると、両方とも保全されます。
39 そして、古い葡萄液を飲んだ人は、誰もすぐ新しい葡萄液を欲しがりません。なぜなら、『古い方がいい。』と人は言うからです。」
さて、ことの次第はこうであった。次の次の安息日に、イエスは麦畑の中を通られ、そして、イエスの弟子たちは穂を摘み、そして手でもんで食べていた。
2 すると、パリサイ派の中の人たちはイエスたちに言った。「あなたがたはなぜ、安息日にしては不法な事をしているのですか。」
3 しかし、イエスは答えて彼らに言われた。「ダビデと供をしていた人たちが空腹であった時に、ダビデが何をしたか、読んでいないのですか。
4 すなわち、祭司たちだけに、食べる事を許されている供えのパンを、ダビデは神の家に入り、受け取り、食べ、また供をしていた者にも与えました。」
5 そして、イエスはパリサイ派の人たちに言われた。「人の子は、安息日の主でもあるからです。」
6 さて、ことの次第はこうであった。ほかの安息日にも、イエスはシナゴーグに入り、教えておられた。そこに、右手のなえた男がいた。
7 それで、律法学者たちとパリサイ派の人たちは、イエスが安息日に人を治すかどうか、注意して見ていた。それは、イエスに対する告発の口実を見つけ出すためであった。
8 しかし、イエスは彼らの考えを知り、手のなえた男に言われた。「立ち上がり、真ん中に立ちなさい。」彼は腰を上げ、立った。
9 すると、イエスは彼らに言われた。「あなたがたに一つ聞きます。安息日に、良いことをするのと、悪いことをするのと、また、命を救うのと、命を殺すのと、どちらが律法にかなっているでしょうか。」
10 そして、イエスは皆を見回し、その男に言われた。「あなたの手を伸ばしなさい。」男はそうした。そして、その手はもう一本の手と同じように回復した。
11 しかし、律法学者たちとパリサイ派の人たちは狂気に満たされ、イエスをどうしてやろうかと、互いに相談した。
12 さて、ことの次第はこうであった。この数日間、イエスは祈るために山に出かけ、一晩中、神への祈りで過ごされた。
13 そして、昼になり、自らの弟子たちをご自分の所に呼び寄せ、その中から十二人を選び、その十二人を使徒7と言う名前でも呼ばれた。
14 イエスがペテロとも名付けたシモン、その兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、
15 マタイとトマス、アルパヨの息子ヤコブ、熱心党員と呼ばれるシモン、
16 ヤコブの息子ユダ、そして裏切り者にもなったユダ・イスカリオテである。
17 そして、イエスは使徒たちと共に降り、平坦な所に立たれると、ご自分の大勢の弟子たち、そしてユダヤとエルサレムの全地から、またツロとシドンの海辺から来た大勢の群衆がやって来た。皆イエスの話を聞くために、また病気を治して頂くために来たのである。
18 汚れた霊に苦しまされている人たちも来て、治された。
19 そして、力はイエスから出て、全員を治したので、群衆は皆、イエスに触れようとした。
20 そして、イエスは目を上げ、弟子を見て言われた。「貧しいあなたがたは祝福されています。天の王国はあなたがたのものだからです。
21 今、飢えているあなたがたは祝福されています。満たされるからです。
22 人々はあなたがたを憎み、人の子が原因で、あなたがたを排除し、あなたがたをののしり、あなたがたの名を邪悪なものとして呼びます。その時、あなたがたは祝福されます。
23 その日は喜び、かつ跳び上がって喜びなさい。あなたがたの天での報償は大きいからです。あの人々の父祖たちも預言者たちを、同様に迫害したからです。
24 金持ちたちよ、あなたがたに災いあれ。すでに自分の慰めを受けているからです。
25 満腹している者たちよ、あなたがたに災いあれ。飢えるからです。今、笑う者たちよ、あなたがたに災いあれ。悲しみ、泣くからです。
26 すべての人たちがあなたがたを誉めそやす時、あなたがたに災いあれ。なぜなら、誉めそやした人たちの父祖たちも、にせ預言者たちにそうしたからです。
27 しかし、聞いている皆さんに言います。あなたがたの敵を愛しなさい。あなたがたを憎む人たちに良くしてあげなさい。
28 あなたがたを呪う人たちを祝福しなさい。そして、悪意であなたがたに接する人たちのために祈りなさい。
29 誰であれあなたの頬を打つ人に、他の頬も向けなさい。そして、誰であれあなたの上着を取る者には、下着をとることも禁じてはいけません。」
30 誰が求めても、あげなさい。また、あなたの物を取った人から取り戻してはいけません。
31 そして、あなたがたが他人からして欲しい事を、そのまま他人にしなさい。
32 しかし、もしあなたがたを愛している人を、あなたがたが愛したからといって、何か恵みはあるでしょうか。罪人でさえ自分を愛している人たちを愛します。
33 そして、もし良い事をしてくれた人たちに、良い事をしても、あなたがたにとって何の恵みがあるでしょうか。罪人たちでさえもしているからです。
34 そして、返してもらおうと、貸すのであれば、あなたがたにとって何の恵みがあるでしょうか。なぜなら、罪人に貸す罪人でさえ、貸した金額と同額を受け取ろうと思って貸すからです。
35 ですから、あなたがたの敵を愛し、良いことを行ない、何の返済も望まず貸しなさい。そうすれば、あなたがたは大きな報酬を受けます。そして、あなたがたは最高位の方の子どもになります。その方は感謝を知らない者たちや、悪人たちに優しい方だからです。
36 従って、あなたがたの父も哀れみ深い方なのだから、哀れみ深い人でいなさい。
37 そしてまた、裁いてはいけません。裁かれないためです。人を罪に定めてはいけません。罪に定められないためです。赦しなさい。赦されるからです。
38 与えなさい。そうすれば、与えられます。押し、揺すり、あふれるまで、量を良くして、人々はあなたがたのふところに入れます。あなたがたの計る秤で、あなたがたは計られるからです。」
39 それで、イエスは弟子たちに例え話を話された。「盲人は盲人を導けるでしょうか。二人とも穴に落ちるのではありませんか。
40 弟子はその先生の上の者ではないが、誰であれ完全に備えた者は、その先生のようになります。
41 あなたは自分の目にある梁を気にもせず、兄弟の目にあるちりが見えるのは、なぜでしょうか。
42 または、自分の目にある梁が見えないのに、あなたはどうして、『兄弟よ、あなたの目にあるちりを取らせてください。』と、どうして言えるのですか。偽善者よ、まず自分の目からその梁を取りなさい。そうすればはっきりと目が見え、兄弟の目にあるそのちりを取り除けます。
43 良い木は悪い実を結びません。また悪い木は良い実を結ばないからです。
44 すべての木はその実によって判断できるからです。なぜなら、人々は茨からイチジクを収穫しないし、また葡萄を野バラから収穫しません。
45 善人は自らの心の良い宝の蔵から良い物を出し、そして、悪人は自らの心の悪い宝の蔵から悪い物を出します。心の豊かなところより、人の口は話します。
46 しかし、あなたがたはなぜわたしを『主よ、主よ』と呼ぶのに、わたしの言うことを実行しないのですか。
47 わたしの所に来て、これらわたしの言葉を聞き、実行するすべての人は、どのような人であるかを、あなたがたに示します。
48 その人は、深くほり、岩の上に土台を置き、家を建てる人のようです。そして、洪水が来て、水の流れがその家に激しく、何度も当たりましたが、家の土台は岩の上に置かれていたので、水の流れはその家をびくとも動かすことはできませんでした。
49 しかし、聞いて何もしない人は、土台なしで地面に家を建てた人のようです。水の流れはその家に何度も激しく当たった時、すぐ倒れました。そして、その家は瓦礫の山になりました。」
さて、民の聴衆にご自分の言葉を語り終え、イエスはカペナウムの町に入られた。
2 すると、ある百人隊長の僕が、病気で、臨終を迎えていた。隊長にとって大切な僕であった。
3 それで、イエスのことを聞いていた、この隊長は、ユダヤ人の長老たちをイエスの所に送り、僕を救ってくださるよう願わせた。
4 それで、長老たちはイエスの所に行き、イエスに必死に願って、言った。「これを願っているのは、この願いにふさわしい者です。
5 なぜなら、この男は私たちの国を愛し、私たちにシナゴーグを建ててくださいました。」
6 それで、イエスは長老たちと共に行かれ、そして、さほどその家から遠くない所に来た時、百人隊長は親友たちをイエスの所に送り、言わせた。「主よ、わざわざ、あなたが私の屋根の下までお出でになるほどの価値は、私にはありません。ですからご足労には及びません。
7 従って、私自身が、あなたの所に行くのさえ、ふさわしくないと私は思っていました。しかし、ただ一言言ってくだされば、僕は治ります。
8 なぜなら、私も権威の下に置かれている者の一人です。私も配下に兵士たちがいます。そしてこの一人の兵士に、私が、『行け』と言ったら、彼は行きます。また、別の一人に、『来い』と言えば来ます。そして私は自らの僕に『これをせよ』と言ったら、彼はそうします。」
9 すると、イエスはこれらを聞いて、この百人隊長に驚き、振り向いて従って来た群衆に言われた。「まことに、わたしはあなたがたに言います。イスラエルにさえも、わたしはこのような偉大な信仰を見いだしたことがありません。」
10 そこで、使いに出されていた人たちが家に帰ると、元気になった病気の僕を見いだした。
11 さて、ことの次第はこうであった。翌日、大勢の弟子たちと、大群衆を従え、イエスはナインという町に入られた。
12 そして、イエスが町の門に近づくと、見よ、遺体が外へ運び出されているところであった。未亡人である母親の唯一の息子の遺体であった。そして、町から、かなりの群衆が未亡人と同行していた。
13 主は彼女をご覧になり憐れみ、彼女に言われた。「泣いてはいけません。」
14 そして、イエスは蓋のない棺に手をお置きになると、運んでいた人たちは立ち止まった。するとイエスは言われた。「若者よ、あなたに言います。起き上がりなさい。」
15 すると死者は起き上がり、話し出した。そしてイエスはその若者をその母に渡された。
16 すると、恐怖が全員を襲い、皆、神に栄光を捧げ、「私たちの中に大いなる預言者が立ち上がった。」そして、「神がご自分の民を訪ねて来られた。」と言った。
17 イエスについてのこの出来事はユダヤ全土、及びその周辺全域に広がった。
18 それで、これらの事に関する全てを、ヨハネの弟子たちは、ヨハネに報告をした。
19 それでヨハネはとある弟子二人を自分の所に呼び、そして、「あなたが、来られることになっている方ですか、それとも私たちは別の人をさがすべきですか。」と尋ねるよう言い、イエスの所に送り出した。
20 その二人の弟子はイエスの所に来て、言った。「浸礼者のヨハネはあなたの所に私たちを遣わして、『あなたが、来られることになっている方ですか、それとも私たちは別の人をさがすべきですか。』と言っています。」
21 ちょうどその時イエスは多くの人たちの病気、疫病、悪霊を治された。また、多くの盲人たちに視力をお与えになった。
22 イエスはヨハネの弟子たちに、答えて言われた。「行って、あなたがたの見たこと、聞いたことをヨハネに伝えなさい。盲人たちは見え、足の不自由な人たちは歩き、レプラ病8の人たちは清められ、耳の聞こえない人たちは聞こえ、死人たちは復活させられ、貧しい人たちは福音が説かれるのを聞いています。
23 そして、わたしのことでつまずかない人は、幸いです。」
24 さて、ヨハネの使者たちが去ると、ヨハネについてイエスは群衆に語り始められた。「あなたがたは何を見るつもりで、荒野に出て行ったのですか。風で揺れる一本の葦9ですか。
25 では、何を見に出て行ったのですか。柔らかい服を着ている一人の男ですか。見よ。豪華な服を着て、ぜいたくな生活をしている人々なら王の宮殿にいます。
26 では、あなたがたは何を見に出て行ったのですか。預言者ですか。そうです。あなたがたに言うが、預言者以上の人です。
27 『見よ。わたしの使者をあなたの面前に遣わし、この人はあなたの道をあなたの前に準備する。』と、書かれている人がこの人です。
28 なぜなら、あなたがたに言います。女性から生まれた中で、浸礼者のヨハネより偉大な人はいません。しかし、天の王国の最も小さい人でも、ヨハネより偉大です。」
29 それで、すべての民はイエスの話を聞くと、収税人でさえ神の義を認め、浸礼者のヨハネの浸礼を受けた。
30 しかし、ヨハネの浸礼を受けず、パリサイ派の人たちと律法の専門家たちは彼らのための、神のご意志を拒否した。
31 さて、主は言われた。「わたしはこの世代の人々を何に例えましょうか。彼らは何に似ているでしょう。
32 市場に座り込んで互いに呼びかける子どもに似ています。その子どもたちは言います。『我らはお前らのため、笛を吹いたのに、お前らは踊らなかった。我らはお前らのため、死者を悲しんだのに、お前らは胸を叩かなかった。10』
33 なぜなら、浸礼者のヨハネが、パンを食べず、葡萄液も飲まずに来ると、『あの者には悪霊がいる。』と人々は言うからです。
34 人の子が、来て飲み食いすると、『見よ。大食いで、大酒飲みで、収税人や罪人の友人だ。』とあなたがたは言います。
35 しかし、知恵は、知恵の子どもたちによって義と認められます。11」
36 さて、パリサイ派の一人が、イエスに食事を共にしてくれるよう願った。それで、イエスはパリサイ派の人の家に行き、食卓につかれた。
37 すると、見よ。罪人であった町の女性が、イエスがパリサイ派の人の食卓に座っていると分かり、香油の入っていた石膏の壺を持ってやって来て、
38 イエスの後ろに立ち、足下で泣き、イエスの足を自らの涙で濡らし、自らの髪の毛で拭き始めた。そして、イエスの足に口づけし、香油を塗った。
39 すると、イエスを招待したパリサイ派の者はこれを見て、心の中で言った。「もしこの人が預言者なら、自分に触れている者が誰か、どんな女かを分かるはずだ。女は罪人なのだから。」
40 それで、イエスはシモンに答えて言われた。「シモンよ、あなたに言いたいことがあります。」シモンは言った。「先生、言ってください。」
41 「ある金貸しから、二人の人が借りていました。一人は五百デナリの借り、もう一人は五十デナリの借りがありました。
42 そして、二人は返すお金がまったくなかったので、金貸しは二人とも許しました。ところで、二人の内どちらが、この金貸しに大きな愛を覚えるでしょうか。私に教えてください。12」
43 それで、シモンは答えて言った。「多くを許された者だろうと、私は想像します。」イエスはシモンに言った。「あなたの判断は正しい。」
44 それで、イエスは女性の方を向いて、シモンに言った。「この女性を何と見なしますか。わたしはあなたの家に入りました。足のための水をあなたはくれなかったが、この女性はわたしの足を自らの涙で洗い、自らの髪の毛で拭いてくれました。
45 あなたはわたしに口づけをしてくれなかったが、この女性はわたしの足に口づけするのを、わたしが入って来てから、止めようとはしませんでした。
46 あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかったが、この女性はわたしの両足に香油を塗ってくれました。
47 ですから、わたしはあなたに言います。この女性は多く愛してくれたのだから、多くの罪は赦されました。しかし、わずか愛した者はわずかしか赦されません。」
48 それからイエスは女性に言われた。「あなたの罪は赦されました。」
49 すると、イエスと共に食卓についていた人たちは、心の中で問い始めた。「罪までも赦すこの人は、誰なのだろうか。」
50 そこで、イエスは女性に言われた。「あなたの信仰が、あなたを救ったのです。安らかに行きなさい。」
さて、その後の次第はこうであった。イエスは説教し、神の王国の福音を説きながら、一つ一つ、町と村を通過した。十二人も同行した。
2 そして悪霊や病気から解放されたとある女性たち、すなわち七人の悪霊が去ったマグダラと呼ばれるマリヤ、
3 ヘロデの執事クーザの妻ヨハンナ、そしてスザンナ、その他にも自らの財産からイエスを援助していた大勢の女性たちも共にいた。
4 そしてすべての町から、大群衆がイエスの所に集まった時、イエスは例え話を通して彼らに話された。
5 「種をまく人が、種まきに出かけました。そして、その男がまくと、ある種は道端に落ち、踏みつけられ、鳥たちが来てそれを食べつくしました。
6 そして、岩の上に落ちた種もあったが、水分がなかったため、芽を出すと枯れてしまいました。
7 そして、茨の中に落ちた種は、茨が伸びて、種を覆い塞ぎました。
8 しかし、他の種はよい土に落ち、芽を出すと百倍の実を結びました。」イエスはこれらのことを語った後、大声で言われた。「聞く耳のある人には聞かせよ。」
9 すると、弟子たちはイエスに尋ねて、言った。「この例え話は、どういう意味ですか。」
10 それで、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたが天の王国の奥義を知ることは、すでに許されているが、他の人たちには例え話で与えられます。それは、見ても見ず、聞いても聞かずの状態に彼らをするためです。
11 さて、これがこの例え話です。種は神の御言葉です。
12 道端にいる人たちとは、聞く人たちです。聞いても、信じて救われることがないように、悪魔が来て、その人たちの心にある御言葉を取り去ります。
13 また、岩の上の人たちは聞いて、喜びを持って御言葉を受け入れます。でも、この人たちは根がないので、しばらくは信じるが、誘惑の時は離れてしまいます。
14 また、茨の中に落ちた種は聞き、進み行くときに、不安、富、生活の快楽で成長を止められ、熟した実を結びません。
15 しかし、よい土に落ちた種は、善良で真摯な心で御言葉を聞き、それを保持し、忍耐を持って実を結ぶ人です。
16 また、火をつけた灯りに、枡をかぶせたり、または床の下に置いたりする人はいません。それどころか、人は燭台の上に置きます。家に入るすべての人に灯りが見えるからです。
17 なぜなら、明らかにならない秘密はなく、知られ、明るみに出ない秘密はないからです。
18 したがって、どのように聞くか、気をつけなさい。なぜなら、持っている人にはもっと与えられ、持っていない人は、持っていると思うものさえも、取りあげられるからです。」
19 すると、イエスの母と兄弟たちがイエスの所に来たが、群衆のため、近づくことができなかった。
20 そこで、イエスに伝えられた。彼らは言った。「あなたのお母さんと兄弟たちが外に立って、あなたに会いたがっています。」
21 しかし、イエスは答えて、その人たちに言われた。「わたしの母と兄弟たちとは、神の御言葉を聞き、それを行なう人たちです。」
22 さて、ことの次第はこうであった。ある日、イエスは弟子たちと船に乗られた。そして、弟子たちに言われた。「湖の向こう岸に渡りましょう。」そして、イエス一行は船を出した。
23 しかし、帆走していると、イエスは眠られた。すると、湖上に突風が吹きくだり、船は水で満たされ、危険な状態になった。
24 そこで、弟子たちはイエスの所に行き、イエスを起こし、言った。「師よ、師よ、私たちは滅ぼされそうです。」すると、イエスは起き上がられ、風と暴れている水を叱り付けた。すると、波も風も止み、大凪になった。
25 そして、弟子たちに言われた。「あなたがたの信仰はどこにあるのですか。」すると、弟子たちは恐がり、驚き、互いに言った。「この方はいったいどなたなのでしょうか。この方が命じれば、風も水も従います。」
26 さて、イエス一行は、ガリラヤの対岸にあるガダラ人の地方へ船で行った。
27 イエスがその地に足を踏み入れると、長い間、悪霊に占領されていた男が、イエスに会いにガダラ人の町から来ていた。その男は何も着ず、家に住まず、墓場に住んでいた。
28 男はイエスを見て、叫び、イエスの前にひれ伏し、大声で言った。「いと高き神の御子息であるイエスよ、あなたと俺は何の関係がありますか。お願いだから、拷問にかけないでくれ。」
29 それは、汚れた霊に男から出て来るよう、イエスは命じられていたからである。そして、しばしばこの男は悪霊に捕らえられ、人に縛られ、鎖と足かせを付けられて、監視されていたが、その拘束具を壊し、悪霊に荒野に追い立てられていたのである。
30 イエスは男に尋ねて言われた。「名は何と言うか。」多くの悪霊がその男に入っていたので、男は言った。「レギオンだ。13」
31 すると、出て底なしの所14へ入れ、と命じないでくださいと、悪霊たちはイエスに懇願した。
32 それで、その辺の山に、多くの豚の群れが餌を食べていた。そこで、豚の群れの中に入らせてくださいと、悪霊たちは願った。イエスは悪霊たちの願いを許された。
33 すると、悪霊たちは男を出て、豚の群れに入った。そして、豚の群れは崖を全速で駈け、落下して、湖に入り、おぼれ死んだ。
34 それで、豚飼たちは、この出来事を見ると、逃げだし、町、そしてその地方に伝えた。
35 それから、ことの次第を見に出て来た人々は、イエスの所に来て、悪霊を追い出してもらった男が服を着、正気に戻り、イエスの足下に座っているのを見いだした。そして、人々は恐れた。
36 そして、悪霊に占領されていた男が治ったことを目撃した人たちは、その治された方法を伝えた。
37 それで、ガダラ周辺地域の全群衆は、大きな恐怖に襲われ、イエスに自分たちから離れ去るように願った。それでイエスは船に乗り、帰られた。
38 さて、悪霊を追い出してもらった男は、お供することを願ったが、イエスは男を帰らせ、そして、言われた。
39 「自分の家に帰り、神があなたのためにどんなに偉大なことをなさったかを伝えなさい。」それで、男は帰り、町中に、イエスが自分のためなさった、偉大な業を説いた。
40 さて、ことの次第はこうであった。イエスは帰られると、群衆はイエスを歓迎した。イエスを待っていたからである。
41 そして見よ。ヤイロという人が来た。ヤイロはそこのシナゴーグの支配者であった。彼はイエスの足下にひれ伏し、自分の家に来るよう、イエスに必死に願った。
42 なぜなら、ヤイロには十二才ぐらいの一人娘がいて、娘は死にかけていた。しかし、イエスが行かれようとすると、群衆がイエスの周りに押し寄せてきた。
43 そして、十二年間出血していて、生活費を医者にすべて使っても、どの医者にも治してもらえなかった女性がいた。
44 その女がイエスの後ろに近づき、イエスの服のへりに触れた。すると、女の出血はたちどころに止まった。
45 すると、イエスは言われた。「誰がわたしに触れたのですか?」全員、否定した。すると、ペテロとその供をしていた人たちは言った。「師よ、群衆が四方から来て、あなたを押しつけているのに、あなたは、『誰がわたしに触れたのですか?』と言っておられます。」
46 しかし、イエスは言われた。「誰かがわたしに触れました。力が出て行くのを感じたからです。」
47 それで、隠れることはできないと知った女性は、震えながら来て、イエスの御前にひれ伏し、民全員の前で、イエスに触れた理由と、たちどころに治されたことを話した。
48 すると、イエスは女に言われた。「娘よ、勇気を出しなさい。あなたの信仰が、あなたを治しました。安心して行きなさい。」
49 イエスはまだ話しておられる間、シナゴーグのあの支配者の家から、一人の者が来て、支配者に言った。「あなたの娘さんは亡くなりました。先生を煩わせないでください。」
50 しかし、イエスはそれを聞き、シナゴーグの支配者に答えて言われた。「恐れるな。ただ信じなさい。そうすれば、娘は治されます。」
51 そして、イエスは家にお入りになると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、そしてその少女の父と母だけ、入ることが許された。
52 全員、少女のために泣いたり悲しんだりしていたが、イエスは言われた。「泣いてはいけません。少女は死んでいません。眠っているだけです。」
53 しかし、少女は死んでいるのが分かっていたので、その人たちはイエスをあざ笑った。
54 しかし、全員、外に追い出され、イエスは少女の手を取り、呼びかけられ、言われた。「子よ、立ち上がりなさい。」
55 すると、少女の霊が戻り、少女はすぐに立ち上がった。それで、イエスは食べ物を与えるように命じられた。
56 少女の両親は非常に驚いたが、この出来事は誰にも言ってはいけないと、イエスは命じられた。
さて、イエスはご自分の十二人の弟子たちを呼び集め、すべての悪霊に対しての力と権威を、また病気を治す力と権威を与えられ、
2 そして、神の王国を説き、病人を治すため、この十二人を遣わされた。
3 その時、彼らに言われた。「道中、何も持って行ってはいけません。杖、革袋、パン、金銭を持って行ってはいけません。そして、一人、二着の上着を持って行ってはいけません。
4 そして、どの家に入っても、そこに滞在し、そこから出発しなさい。
5 そして、誰であれ、あなたがたを受け入れない者たちがいれば、その町を去る時に、その町の人たちに対する証として、足からほこりを振り落としなさい。」
6 そして、十二人は出発し、町々を通り、どんな所でも福音を説き、また、人々を治した。
7 さて、領主ヘロデは、イエスが行われたすべてのことを聞き、途方に暮れた。なぜなら、ある人たちによれば、ヨハネが死人の中から復活したのだと言い、
8 また、ある人たちによれば、エリヤが現れたのだと言い、そしてさらに、昔の預言者たちの一人が復活したのだと言う人たちもいた。
9 ヘロデは言った。「ヨハネの首は私が斬ったが、色々噂のあるこの者は何者か。」それで、イエスに会う方法をさがした。
10 さて、使徒たちは帰ってくると、自分たちが行なったことを一部始終イエスに伝えた。すると、イエスはベツサイダと呼ばれる町の一部の人里離れた所に、使徒たちを密かに連れて行かれた。
11 しかし、群衆はそれを知って、イエスについて行くと、イエスは群衆を受け入れ、神の王国について説かれ、治療が必要な人たちを治された。
12 そして、日が傾いたので、十二人は来てイエスに言った。「付近の村か町の宿で必要な食べ物を手に入れるべく、群衆を去らせてください。ここは人里離れた所ですから。」
13 しかし、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたが群衆に何か食べ物を与えなさい。」すると、弟子たちはイエスに言った。「我々がこの人たち全員のため、食べ物を買いに行かない限り、我々にはパン五個と魚二匹しかありません。」
14 おおよそ五千人の男がいたからである。そしてイエスは弟子たちに言われた。「五十人を一組にして座らせなさい。」
15 それで、弟子たちはそのようにし、全員を座らせた。
16 そして、イエスはパン五個と魚二匹を手に取り、天を見上げ、手にした物を祝福し、裂き、群衆の前に置くように、弟子たちに与えられた。
17 そして、群衆は一人残らず食べ、満腹し、弟子たちは残った食べ物でいっぱいになったかご十二を、弟子たちは手にした。
18 さて、ことの次第はこうであった。イエスは一人で祈っておられると、弟子たちも加わった。するとイエスは弟子たちに尋ねられた。「群衆はわたしのことを、何者だと言っているのですか。」
19 それで弟子たちは答えて言った。「浸礼者のヨハネだと、また、エリヤという人たちもいるし、昔の預言者の一人が復活したのだ、と言う人もいます。」
20 イエスは弟子たちに言われた。「しかし、あなたがたはわたしを誰だと言うのですか。」ペテロは答えて言った。「あなたは神のキリストです。」
21 すると、イエスは弟子たちに、このことは誰にも言わないように、厳しく警告し、そして命じ、
22 言われた。「人の子は多くの苦しみを受け、長老たちと大祭司たちと律法学者たちに拒まれ、殺され、三日目に復活しなければなりません。」
23 それで、イエスは弟子全員に言われた。「もし誰であれわたしの後をついて来たいのなら、自らを否定し、日々自らの十字架を担い、そしてわたしに従いなさい。
24 誰であれ、自らの命を救おうとする者は、命を失うが、誰であれ、わたしのために命を失う者は命を救うからです。
25 なぜなら、もし全世界を獲得しても、滅ぼされ、命を失うならば、それは何の役に立ちましょうか。
26 なぜなら、自らの栄光と父の栄光のうちに、聖なる御使いたちと来る時、人の子は、わたしとわたしの言葉を恥じる者を恥とします。
27 まことにわたしはあなたがたに言います。ここに立っている人たちの中で、神の王国を見るまで、死を決して味わわない人たちがいます。」
28 さて、ことの次第はこうであった。この言葉のおよそ八日後、イエスはペテロとヨハネとヤコブだけを連れ、祈るため、山に登って行かれた。
29 祈っておられる間に、御顔の様子は変貌され、衣服は白くなり、そして輝いていた。
30 そして、見よ。二人の男がイエスと話をしていた。モーセとエリヤであった。
31 モーセとエリヤは栄光のうちに現れ、イエスがエルサレムで正に、やり遂げようとするご自分の最後をお話をしていた。
32 しかし、ペテロ、そして共にいた人たちは、すっかり眠っていたが、完全に目を覚まし、イエスの栄光とイエスと共に立っている二人を見た。
33 その時、事が起きた。モーセとエリヤがイエスから離れて行く時、ペテロがイエスに言った。「師よ、ここにいる事は私たちには、嬉しいことです。私たちはここに三つの天幕を作りましょう。一つをあなたのため、一つをモーセのため、一つをエリヤのためにです。」しかし、ペテロは自分が何を言っているのか理解していなかった。
34 ペテロがまだこのことを話している間に、雲が現れ、皆を覆った。そして、彼らは雲の中に入ると、恐れた。
35 そして、雲からの声が言われた。「これはわたしの愛しい息子である。息子に耳を傾けよ。」
36 そして、声が止むと、イエスお一人の姿があった。しかし、三人は沈黙を守り、その時見たことを何一つ、誰にも話さなかった。
37 さて、ことの次第はこうであった。翌日、四人が山から下りると、大変な数の群衆がイエスを迎えた。
38 すると見よ、突然、群衆の中から一人の男が叫んで言った。「先生、お願いします。私の息子にお目をとめてください。ただ一人の息子だからです。
39 ご覧下さい。霊が息子を我が物とし、息子は突然叫び出します。息子が口から泡を吹くほど、霊はひきつけを起こさせ、引き裂くようにして離れます。
40 それで、あなたの弟子たちに霊を追い出すよう、お願いしましたが、弟子の皆さんはできませんでした。」
41 それでイエスは答えて言われた。「信仰のない、歪んだ世代の人たちよ、わたしはいつまで、あなたがたと共にいて、我慢するのか。わたしの所にあなたの息子を連れて来なさい。」
42 息子がイエスに近づこうとすると、悪霊は子どもを地面に投げつけ、ひきつけを起こさせた。すると、イエスは汚れた悪霊を叱り付け、子どもを治し、父親に返された。
43 そして、人々は皆、神の威厳に驚愕していた。しかし、人々がイエスの行なわれたことに驚いていると、イエスはご自分の弟子たちに言われた。
44 「人の子は今正に、裏切られ、人々の手に渡されようとしているのだから、これらの言葉は耳に留めておきなさい。」
45 しかし、弟子たちはこの御言葉を理解しなかった。弟子たちが理解しないよう、隠されていたからである。それで、弟子たちはこの言葉についてイエスに尋ねるのを恐れていた。
46 さて、弟子たちの間に、誰が一番偉くなるか、と言う論争が起きた。
47 そうすると、イエスは弟子たちの心を察知し、一人の幼児を呼び寄せ、ご自分のそばに立たせ、
48 弟子たちに言われた。「この幼児を、わたしの名によって受け入れる者は、誰であれわたしを受け入れた事になります。そして、わたしを受け入れる者は誰であれわたしを遣わした方を受け入れたことになります。あなたがたの間で最も小さな者が偉大になるからです。」
49 すると、ヨハネは答えて言った。「師よ、あなたのお名前によって悪霊を追い出している男を私たちは見ました。私たちと共にあなたに従っていない男でしたので、中止させました。」
50 しかし、イエスはヨハネに言われた。「中止させてはいけません。わたしたちに反対しない人は、わたしたちの仲間だからです。」
51 さて、ことの次第はこうであった。イエスの昇天なさる日時が満たされつつあると、イエスは、エルサレムに行くべく断固とした御顔をなされた。
52 そして、ご自分に先立ち、使者たちを遣わされた。そして、使者たちは行き、イエスのため準備をするため、サマリア人のある村に入った。
53 しかし、イエスは、エルサレムに行くべく断固とした御顔であったので、サマリア人たちはイエスを受け入れなかった。
54 それで、弟子のヤコブとヨハネはこれを見て、こう言った。「主よ、エリヤがしたように、ここの人たちを消すため、天から火が降るよう、我々が命じましょうか。」
55 しかし、イエスは振り向き、二人を叱り、言われた。「あなたがたの霊が何なのかも、あなたがたは分かっていません。
56 人の子は人々の命を滅ぼすためではなく、救うために来たからです。」そう言って一行は別の村に行った。
57 さて、事が起きた。旅を続けている途中、ある人がイエスに言った。「主よ、あなたの行く所は、どこであれ私は従います。
58 すると、イエスはその男に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には、枕する所がありません。」
59 すると、もう一人の人にイエスは言われた。「わたしについて来なさい。」その男は言った。「主よ、先ず、我が父を葬りに行かせてください。」
60 しかし、イエスは男に言われた。「死者に死者たちを葬らせなさい。あなたは行って、神の王国を説きなさい。」
61 すると、別のもう一人も言った。「主よ、私はあなたに従いますが、まず、私の家にいる者たちに別れの挨拶をさせてください。」
62 しかし、イエスは男に言われた。「誰であれ、鋤に手をかけ、振り向く人は、神の王国にふさわしくありません。」
その後、主はさらに他の七十人を任命され、ご自分の面前で、ご自分が行く予定のすべての町と場所に、二人ずつ遣わされた。
2 そして七十人に言われた。「稔りは、真に豊かだが、働き人はほとんどいません。だから主の取り入れに働き人を送り出すように、取り入れの主に祈りなさい。
3 あなたがたの道を行きなさい。見よ、狼たちの真ん中にあなたがた子羊たちを遣わすようなものです。
4 財布も、皮袋も、サンダルも、持って行ってはいけません。また、途中、誰にも挨拶をしてはいけません。
5 しかし、どんな家に入っても、『この家に平安がありますように。』と、最初に言いなさい。
6 そして、もし平安の子がその家にいれば、あなたがたの平安はその家に留まります。そうでなければ、あなたがたの平安があなたがたの所に戻ります。
7 そして、その同じ家に留まり、その家の人たちがくれる物を食べ、飲みなさい。働き人が賃金を受けるのは当然だからです。家から家へ移ってはいけません。
8 そして、どこの町に入っても、そこの人たちが受け入れてくれれば、出された物を食べなさい。
9 そしてそこにいる病人たちを治し、そこの人たちに言いなさい。『神の王国はあなたがたの近くに来ています。』
10 しかし、いかなる町に入っても、もしその町の人たちが、あなたがたを受け入れなければ、その町の通りに出て言いなさい。
11 『私たちの足についた、あなたがたの町のちりさえも、私たちはあなたがたに対して払い落とします。しかし、神の王国はあなたがたに近づいて来ていることを、知りなさい。』
12 わたしはあなたがたに言います。その日はソドムの町の方が、この町よりしのぎやすいのです。」
13 「コラジンよ、お前に災いあれ。ベツサイダよ、お前に災いあれ。なぜなら、もしお前たちの中で行なわれた力ある業が、ツロやシドンで行なわれたなら、その町はきっと大昔に荒布を着て、灰に座って悔い改めたのです。
14 裁きの時、お前たちの裁きよりツロとシドンの裁きの方が耐えやすい。
15 そして、天へ上げられたカペナウムよ、お前は地獄に引きずり落とされます。
16 あなたがたの話を聞く人たちは、わたしの話も聞くが、あなたがたを拒む者たちは私を拒みます。そして、わたしを拒む者たちは、わたしを遣わされた方を拒みます。」
17 その後、七十人は喜びながら戻って来て、言った。「主よ、悪霊どもでさえ、あなたのお名前によって私たちに服従します。」
18 それで、イエスは七十人に言われた。「稲妻のように、サタンが天から落ちるのをわたしは見ました。
19 見よ、蛇、サソリ、また敵のすべての力を踏み潰す権威を、私はあなたがたに与えています。そして、どんな方法でも、あなたがたを害するものは何もありません。
20 しかし、このことで、霊たちが、あなたがたに服従することで喜んではいけません。むしろ、あなたがたの名が、天国に記載されたのを喜びなさい。」
21 その時、イエスは御霊によって喜び、言われた。「天と地の主である父よ。あなたはこれらのことを賢い人や理解力のある人から隠し、赤子に啓示されたことを、あなたに感謝します。そうです。父よ、あなたの視点では喜ばしいことと思われます。」
22 そして、イエスは弟子たちに向かって、言われた。「すべてのものはわたしの父からわたしに引き渡されました。そして、子が何者であるかを知る者は、父の他、誰もいません。また父が何者であるかを知っているのは、子と、子が明らかにすると決めた人の他、誰も知りません。」
23 それで、イエスは弟子たちの方に向かって、ひそかに言われた。「あなたがたが見るものを見る目は祝福されています。
24 なぜなら、あなたがたに言います。多くの預言者たちや王たちは、あなたがたが見るものを見ようと望んだが、見られず、またあなたがたが聞くものを聞こうと望んだが、聞くことができなかったからです。」
25 さて、とある一人の律法の専門家が立って、イエスを試みようとして言った。「先生、永遠の命を相続するには、私は何をすればいいですか。」
26 イエスは彼に言われた。「律法に何と書いてありますか。あなたはどう読み取りますか。」
27 律法の専門家は答えて、言った。「『あなたの神であられる主を、心の全てを尽くし、魂の全てを尽くし、力の全てを尽くし、知力の全てを尽くし、愛しなさい。』そして、『あなたの隣人を、あなた自身のように愛しなさい。』」
28 イエスは律法の専門家に言われた。「あなたは正しく答えました。そう実行しなさい。そうすればあなたは生きます。」
29 しかし、男は自分を正当化しようとして、イエスに言った。「私の隣人とは、誰ですか。」
30 それでイエスは応えて言われた。「ある一人の男がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗たちに取り囲まれました。男の服をはぎ取り、傷つけ、半死半生にして、強盗たちは去って行きました。
31 さて、そこに偶然、ある一人の祭司がその道を下って来ました。そして、その男を見ると、反対側を通り、行ってしまいました。
32 同様に、ある一人のレビ人はその場に着くと、近づいて見たが、反対側を通り過ぎて行きました。
33 しかし、旅行中のある一人のサマリヤ人が、その男の所に来ました。そして、男を見て、同情しました。
34 それで、男に近寄り、数々の傷にオリーブ油と葡萄液を注ぎ、包帯をしました。そして、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行き、介抱しました。
35 そこで、翌日別れる時、二デナリ出し、宿屋の主人に与え、言いました。『この男を介抱してください。また、これ以上の金がかかれば、私がまた来る時、支払います。』
36 それで、この三人の中、強盗に襲われた男に対して、誰が隣人だったとあなたは思いますか。」
37 それで、律法の専門家は言った。「男への哀れみを実行した人です。」それでイエスは彼に言った。「あなたも行って、同じようにしなさい。」
38 さて、ことの次第はこうであった。イエスと弟子たちの旅行中、イエスは一つの村に入られた。そして、マルタと言う一人の女性がイエスを自分の家に歓迎した。
39 さて、マルタには、マリヤという姉妹がいた。マリヤもイエスの足下に座り、イエスの御言葉を聞いた。
40 しかし、マルタは接待でひどく忙しく、イエスの側に立ち、言った。「主よ、私の姉妹は私一人に接待を押しつけているのを、あなたは何とも気になさらないのですか。手伝うよう、姉妹に言ってください。」
41 しかし、イエスは答えて、マルタに言われた。「マルタ、マルタ、あなたは多くの事を抱えすぎ、困っています。
42 しかし、必要なのは一つです。マリヤは良い方を選んだのです。そして、それはマリヤから奪われることはありません。」
さて、ことの次第はこうであった。イエスはある所で祈っておられた。祈り終わった時、イエスの弟子の一人がイエスに言った。「主よ、ヨハネも彼の弟子たちに教えたように、私たちにも祈ることを教えてください。」
2 それでイエスは弟子たちに言われた。「祈る時、こう言いなさい。『天国におられる私たちの父よ。あなたの御名が尊ばれますように。あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が天国で行なわれているように、地上でも行なわれますように。
3 日々の私たちのパンを毎日与えてください。
4 そして、私たちも私たちのすべての負い目のある人たちを赦しますから、私たちの罪を赦してください。そして、私たちを誘惑に導かず、邪悪なものから救い出してください。」
5 また、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたの中の誰かに、友人がいるとして、真夜中にその友人の所へ行き、『友よ、パン三切れ貸してくれ。』と言います。
6 『私の一人の友が、旅の途中、私の所に来たが、この友人の前に出すものは何もないのです。』
7 すると、友人は中から答えて言います。『迷惑をかけないでくれ。戸締りをし、子どもたちと床についているのだから、起きてあなたにあげることはできない。』
8 わたしはあなたがたに言います。この男は友だからといって、起きてパンを与えることはありません。しかし、友人の執拗さに男は起き、彼の必要なものは何でも与えます。
9 だから、わたしはあなたがたに言います。求め続けなさい。そうしたら、それはあなたがたに与えられます。探し続けなさい。そうしたら、それをあなたがたは見いだします。戸をたたき続けなさい。そうしたら、戸はあなたがたのため開かれます。
10 なぜなら、求める人はだれでも受け取り、また、探す人は見いだすからです。また、戸をたたく人には開かれます。
11 もし、あなたがた父親たちの中で、パンを求める息子に、石を与えるでしょうか。または、魚を求める息子に、魚の代わりに蛇を与えるでしょうか。
12 また、もし息子が卵を求めるなら、サソリを差し出す父親がいるでしょうか。
13 したがって、あなたがたは悪い者でありながら、自分の子どもには良い贈り物を与えることを知っているのだから、なおさらのこと、あなたがたの天国におられる父は、ご自分に願う人たちに聖霊を下さいます。」
14 さて、イエスは悪霊を追い出された。そして、それは口のきけない悪霊であった。それで、その悪霊が出た時、その口のきけない男は話し出した。すると、群衆は驚いた。
15 しかし、「悪霊の支配者、ベルゼブル15によって、この者は悪霊を追い出すのだ。」と、言う人たちが、群衆の中にいた。
16 その他の人たちはイエスを試みて、天からのしるしをイエスに求め続けた。
17 しかし、イエスはその人たちの思いを知られ、言われた。「すべてそれ自身が分裂し対立する王国は、廃墟になります。そして、それ自体が分裂し対立する家は倒れます。
18 しかし、サタン自身が分裂し対立するなら、サタンの王国はどうして立ち行くのですか。わたしがベルゼブルによって悪霊たちを追い出すと、あなたがたは言うからです。
19 そして、もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとするなら、あなたがたの息子たちは、誰によって悪魔を追い出すのですか。ですから、あなたがたの息子たちが、あなたがたの裁判官になるのです。
20 しかし、もしわたしが神の指によって悪霊たちを追い出しているのなら、もう神の王国は間違いなくあなたがたの所に来ています。
21 完全武装した屈強な男が、自らの宮殿を守るなら、その男の所有物は安泰です。
22 しかし、この男より強い者が彼を襲い、そして倒せば、そして男が頼りにしていた、全ての装備を奪い、分捕り品として分配します。
23 わたしと共にいない者は、わたしに反対する者です。そして、わたしと共に集めない者は、散らしています。
24 汚れた霊は人から出て行く時、休息を求めて乾燥地帯を通ります。そして休息の場所を見いだせず、汚れた霊は言います。『私は出て来た元の家に戻ろう。』
25 そして、汚れた霊が家に帰ると、家はほうきで掃かれ、きちんと整頓されていることに気がつきます。
26 それから、汚れた霊は行き、その霊自身より悪い、七つの霊を連れて来ます。そしてその霊たちは中に入り、そこに住みます。そうなると、その男の後の状態は、最初の状態より悪くなります。」
27 そして、イエスがこれらのことを話しておられると、ことが起きた。一人の女が群衆の中から声を上げた。「あなたを産んだ胎と、あなたが乳を吸った乳房は祝福されています。」と言った。
28 しかし、イエスは言われた。「それより、神の御言葉を聞き入れ、それを守る人たちの方がもっと祝福されています。」
29 そして、群衆の人数が増えると、イエスは話し始められた。「今は悪の世代です。この世代はしるしを求めるが、預言者ヨナのしるしの他は何のしるしもこの世代には与えられません。
30 なぜなら、ヨナがニネベ人たちにとって、しるしになったと同様に、人の子もこの世代にとってしるしとなります。
31 あの南の女王は裁きで、今の世代の男たちと共に立ち上がり、彼らを糾弾します。女王はソロモンの知恵を聞きに、地のはてから来たからです。そして、見よ、ソロモンより偉大なる人がここにいます。
32 ニネベの男たちは、ヨナの語ることで悔い改めたから、裁きの時に、ニネベ人は今の世代の人とともに立ち上がり、今の世代を糾弾します。そして、見よ、ヨナより偉大なる人がここにいます。
33 灯りに火をつけ、隠れた場所に置く人や、枡をかぶせる人は誰もいません。むしろ燭台の上に置きます。それで灯りは家にいるすべての人を照らします。入って来る人たちが、その灯りを見るためです。
34 体の灯りは目です。したがって、あなたの目が健全である時、体全体も光で満たされます。しかし、あなたの目が悪い時、あなたの体全体も暗くなります。
35 あなたの中の光が暗黒でないように、気をつけなさい。
36 従って、もしあなたの体全体は輝き、暗い所がなければ、その灯りが輝く光であなたを照らすように、体全体は光で満たされます。」
37 さて、イエスが話をなさっていると、とある一人のパリサイ派の人が食事を共にしてくれるよう、イエスに願った。それで、イエスは入り、食卓に着かれた。
38 このパリサイ派の男はこれを見て、イエスが食事の前に、先ず浸しの儀式をされなかった16ことに驚いた。
39 それで主はその男に言われた。「今、あなたがたパリサイ派の人たちはカップと皿の外側を清潔にするが、あなたがたの内側は貪欲と邪悪で満たされています。
40 愚か者たちよ。外部を作ったお方は、内部は作られなかったのですか。
41 ですから、あなたがたの持っているものの中から、施しなさい。そうすると、そうです、あなたがたにとって、すべてのものは清潔です。
42 しかし、パリサイ派の者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜならあなたがたはハッカとヘンルーダとあらゆる種類のハーブの十分の一を捧げるのに、正義や神の愛を無視します。これらは当然なすべきことであり、他のこともおざなりにしてはいけません。
43 パリサイ派の者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたはシナゴーグの最上席や、市場での挨拶が大好きだからです。
44 律法学者たち、パリサイ派の者たち、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。あなたがたは、上を行く人には、それと気づかずに歩く、隠れた墓のようです。」
45 それで律法の専門家の一人は答えて、イエスに言った。「先生、今の言い方は、私たちをも侮辱しています。」
46 するとイエスは言われた。「律法の専門家たちよ、あなたがたに災いあれ。あなたがたは担いがたい重い荷を、人々に担がせるが、あなたがた自身は、指一本も、荷に触れません。
47 あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたは預言者の墓を建てるが、その預言者たちを殺したのは、あなたがたの父祖たちだからです。
48 事実、あなたがたの父祖たちの行為に賛同すると、あなたがたは証言しています。なぜなら、父祖たちは預言者たちを殺し、あなたがたはその墓を建てているからです。
49 従って、神の知恵は言いました。『わたしは彼らに、預言者たち、使徒たちを遣わすが、彼らはその中のある人たちを殺したり、迫害したりする。
50 それは、世の礎の時より、すべての預言者たちの流された血が、今の世代に責任を取らせるためである。
51 アベルの血より、あなたがたが祭壇と神殿の間で死んだザカリヤの血までです。そうです、あなたがたに言います。その血は今の世代から要求される。』
52 律法の専門家たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたは知識の鍵を取り上げ、あなたがた自身も入らず、そして、入ろうとする人たちを妨げました。」
53 それで、イエスは彼らにこれらのことを言うと、律法学者たちとパリサイ派の人たちはイエスを激しく攻撃し、数々のことについて敵意を持ってイエスを問いただし、
54 イエスを訴えるため、言葉尻を捕らえようと待ち構えた。
その間に、互いに足を踏むほど、数限りない人々が集まっていた。イエスはまず弟子たちに言い始められた。「偽善であるパリサイ派の人たちのパン種に気を付けなさい。
2 覆われているもので、現われないものは何もないし、隠されたもので、知られないものは何もありません。
3 従って、暗やみの中で言った事は何であれ、光の中で聞こえます。また、奥まった部屋で、耳元でささやいた事は何であれ、屋上で公表されます。
4 ですから、私はあなたがた友人たちに言います。肉体を殺して後は、何もできない者たちを恐れてはいけません。
5 しかし、誰を恐れるべきかを、わたしは告げます。殺して後、地獄に投げ込む権威を持つ方です。そうです、あなたがたに言います、その方を恐れなさい。
6 雀五羽は、銅貨二個で売られてはいませんか。しかし、その五羽の中の一羽も神の前では、忘れられていません。
7 しかし、あなたがたの頭髪さえ一本一本すべて、数えられています。従って、恐れてはいけません。あなたがたは多数の雀よりもっと値があります。
8 また、わたしはあなたがたに言います。人々の前でわたしを言い表す人は誰であれ、人の子はその人を神の御使いたちの前で言い表します。
9 しかし、人々の前でわたしを否定する人は、わたしもその人を、神の御使いたちの前で否定します。
10 そして、誰であれ、人の子に敵対の言葉を用いる者は、赦されます。しかし、聖霊を冒涜する者のその冒涜は容赦されることはありません。
11 しかし、人々があなたがたをシナゴーグや、支配者たち、また権威ある者たちの所に連れて行く時、どのように、また、何を答えようか、何を言おうかと、心配してはいけません。
12 なぜなら、あなたがたは何を言うべきか、その時こそ聖霊が教えてくださいます。」
13 そこで、群衆の中の一人がイエスに言った。「先生、私の兄弟に、相続財産を私と分けるよう言ってください。
14 しかし、イエスはその男に言われた。「男よ、誰がわたしをあなたの上に、裁判官、または仲介者に据えたのですか。」
15 そして、イエスは人々に言われた。「貪欲には、気を配り、注意しなさい。なぜなら、人の命は、所有するものの豊かさで成り立っているのではないからです。」
16 それで、イエスは例え話を人々に話され、言われた。「ある金持ちの畑が豊かに稔りました。
17 そして、その男は心の中で考えて言いました。『収穫物を貯蔵するのに、空いている所はもうない。どうしようか。』
18 それで男は言った。『こうしよう。今の納屋を壊し、もっと大きい納屋を建てよう。そして、そこに私の全収穫物と値打ちのある物を保管しよう。
19 そして、私の魂に私は言います。「魂よ、お前はこれから長年の間やっていける、値打ちのある物を十分積み上げたのだから、休み、食え、飲め、そして楽しめ。」』
20 しかし、神はその男に言われました。『愚か者よ。今晩お前の魂をお前から返してもらう。そうすると、お前の用意したものは、誰のものになるか。』
21 神に対して宝を積まず、自分のために宝を積んだ男の姿です。」
22 それから、イエスはご自分の弟子たちに言われた。「だから、わたしはあなたがたに言います。命のために何を食べようか、また、体のために何を着ようかなどと、心配してはいけません。
23 命は食べ物以上、また体は衣服以上ではありませんか。
24 大ガラスのことを考えなさい。大ガラスは、種蒔きも刈り入れもせず、倉も納屋もありませんが、神は食べ物を与えます。あなたがたはこの鳥たちより、もっと価値があるのではないですか。
25 また、あなたがたの中の誰が心配したからと言って、自分の身長に一キュウビット17を加えることができるでしょうか。
26 最小のことさえ出来ないのに、なぜそれ以上の事を心配するのですか。
27 ユリはどう育つのか、よく考えて見なさい。ユリは働かず、紡ぎもしません。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄光が絶頂時のソロモンでさえ、この一輪のユリの花ほども着飾ってはいなかったのです。
28 したがって、今日は野にあるが、明日はかまどに投げ込まれてしまう野の草を、神はこのように服を着せてくださるのだから、それ以上のものをあなたがたに着せないことがあるでしょうか。ああ信仰の薄き者たちよ。
29 そして、何を食べたら良いのか、また、何を飲んだら良いのか探し求め、不安になってはいけません。
30 なぜなら、すべてこれらの物を世の国々は求めます。しかし、これらの物を、あなたがたが必要としていることは、あなたがたの父はご存じです。
31 しかし、神の王国を求めなさい。そうすれば、これらすべての物があなたがたに加えられます。
32 小さな群れよ、恐れてはいけません。なぜなら、あなたがたに王国を与えることが、あなたがたの父の喜びなのです。
33 あなたがたの持ち物を売り、施しなさい。自らのために、古くならない金袋を準備し、天にある朽ちない宝を入れなさい。それは泥棒は近づかず、虫も食べません。
34 なぜなら、あなたがたの宝がある場所に、あなたがたの心もあるからです。
35 腰に帯を締め、灯りに火を付けていなさい。
36 そして、あなたがたは、結婚式から帰って来る主人を待つ男たちのようでありなさい。主人が帰り、戸を叩けばすぐに開けれるからです。
37 主人が帰って来た時、僕たちが警戒していると主人が分かれば、その僕たちは祝福されています。私は真にあなたがたに言います。主人は腰に帯を締め、僕たちを食事のため座らせ、自ら来て、僕たちに給仕します。
38 そして、もし主人が二度目の見回り、三度目の見回りに来て、見張っている僕たちを見たなら、その僕たちは祝福されています。
39 しかし、このことは理解しておきなさい。もし家の主人が、泥棒が何時に来るかを知っていたなら、主人は見張っていて、自らの家に押し入ることは許しません。
40 ですから、あなたがたも備えなさい。あなたがたの考えもしない時に、人の子は来るからです。」
41 すると、ペテロはイエスに言った。「主よ、あなたはこの例え話を私たちだけに話されていますか、それとも、皆にですか。」
42 それで主は言われた。「定められた時に、食事を分配し与えるため、主人が、家人を支配する者にした、忠実で賢い執事は誰ですか。」
43 主人が来た時、こうしている姿を、主人に見られる僕は、祝福されています。
44 まことにわたしはあなたがたに言います。主人はその僕を自分の全財産の支配者にします。
45 しかし、もしその僕が心の中で、『私の主は遅れて来る。』と言って、男の召使い、女の召使いを殴打し、飲み食いし、酔っ払うと、
46 その僕の主人が思いがけない日に、僕の気が付かない時に来て、男を二つに斬り分け、彼の取り分を信仰のない者と共にします。
47 そして、主人の意向を知っていて、自ら準備もせず、主人の意向で行動しなかった僕は、数多くむち打たれます。
48 しかし、知らずに、数多くむち打たれるのにふさわしい事をした者は、むちの数はわずかです。なぜなら、すべて、多く与えられた人は、多く要求されます。そして、多く任された人は、多く要求されます。
49 わたしは地に火を投ずるために来ました。そして、すでに着火していればと、私はどんなにか望んでいることでしょう。
50 しかし、浸されるべき浸礼はわたしにはあり、それが完了するまでに、わたしの苦悩はともかく続くのです。
51 平和を地にもたらすため、わたしが来たのだと思っているのですか。あなたがたに言うが、まったく違います。それどころか分裂をもたらすために来たのです。
52 なぜなら、今後、一軒の家に五人がいて、三人対二人、また二人対三人、と分裂します。
53 父は息子に対して、息子は父に対して、母は娘に対して、娘は母に対して、義理の母は義理の娘に対して、義理の娘は義理の母に敵対します。」
54 次いで、イエスはまた群衆に言われた。「西から雲が昇って来るのを見ると、あなたがたはすぐ言います。『にわか雨になるぞ。』そして、そうなります。
55 また、南風が吹いているのを見ると、あなたがたは言います。『暑くなるぞ。』そして、そうなります。
56 偽善者たちよ。あなたがたは空と地の表情を判断する力がありながら、この時代を判断することができないのは、なぜですか。
57 そうです、何が正しいかを、自ら自分たちで、なぜ判断しないのですか。
58 あなたに敵対する者と支配者の所に行く時、道中、相手と和解するため、あらゆる努力をしなさい。そうしないと、相手はあなたを裁判官の所に引きずって行き、そして裁判官はあなたを役人に引き渡し、そして役人はあなたを牢獄に投げ込みます。
59 わたしはあなたに言います。最後の一レプタ18を支払うまで、あなたはそこを決して出ることはないでしょう。」
その時、ガリラヤ人たちの血を、ガリラヤ人たちのいけにえに、ピラトが混ぜたと言うことを、イエスに伝えた何人かの人たちがいた。
2 すると、イエスは答えて、その人たちに言われた。「そのガリラヤ人たちがそんな苦しみを受けたからと言って、他のガリラヤ人たち以上に、ひどい罪人だとあなたがたは思うのですか。
3 あなたがたにわたしは言います。いいえ。しかし、あなたがたも悔い改めなければ、全員、そのように消滅します。
4 または、シロアムの塔が倒れ、押しつぶされ死んだあの十八人のことですが、あの人たちは、エルサレムに住んでいた、他の全部の男たち以上に、悪い罪人だと、あなたがたは思っているのですか。
5 わたしはあなたがたに、そうではない、と言います。しかし、あなたがたも悔い改めなければ、あなたがたも皆、そのように消滅します。」
6 そして、イエスはこの例え話も話された。「一人の男が、自分のぶどう園にイチジクの木を一本植えさせました。そして、その木に実を探し求めて来たが、一個も発見できませんでした。
7 それで、男はぶどう園のぶどう栽培人に言いました。『見なさい。三年間続けて、私はこのイチジクの木に実を求めて来たが、一個も見つからない。切り倒しなさい。なぜ土地を無駄にするのか。』
8 しかし、ぶどう栽培人は男に言った。『ご主人様、私が木の回りを掘って、肥料をやりますから、今年もそのままにしておいてください。
9 それでもし、実を結べば、結構なことです。実を結ばなければ、それからでも切り倒すことはできます。』」
10 さて、イエスは安息日に、あるシナゴーグで教えておられた。
11 すると、見よ、十八年間、病気の霊に占領された女がいた。女の腰は曲がり、どうしても自分でまっすぐ立つことができなかった。
12 しかし、イエスはその女を見ると、ご自分の側に呼び寄せ、女に言われた。「婦人よ、あなたは病気から解放されました。」
13 そして、御手を女にお置きになると、たちどころに曲がった腰は真直ぐに治され、そして女は神に栄光を捧げた。
14 しかし、イエスは安息日に人を治したので、シナゴーグの支配者は怒り、群衆に答えて言った。「人々には働くべき六日間がある。だから、安息日ではなく、その六日間に来て治してもらいなさい。」
15 それで主は男に答えて、言われた。「偽善者よ。あなたがたはだれでも、安息日に牛やロバを小屋から出して、水の所に連れては行かない者は一人でもいるのですか。
16 だから、見よ、十八年間サタンが縛っていた、アブラハムの娘であるこの女を、安息日にこの拘束から解いてはならないのですか。」
17 そして、イエスがこれらのことを言われると、イエスに反対する者たちは皆、恥じ入り、そして、群衆は皆、イエスによりなされた、すべての栄光あることを目にし、群衆は皆喜んだ。
18 さて、イエスは言われた。「神の王国は何に似ているでしょう。また、何と比べましょうか。
19 一粒のからしの種を、手にいれた男が、その種を自分の庭にまくと、種は成長し、大きな木になったのに似ています。空の鳥たちはその枝に巣を作りました。」
20 次いで、イエスはさらに言われた。「神の王国は何に比べましょうか。
21 パン種に似ています。女がこれを取り、三サトン19の粉の中に隠し入れれば、全体が膨れたのです。」
22 さて、イエスは教えながら町や村を通り、エルサレムに向かって旅をしておられた。
23 その時、ある人がイエスに言った。「主よ、救われる人たちは少ないのですか。」それでイエスは皆に言われた。
24 「あの狭い門を通って入れるように努力しなさい。なぜなら、わたしはあなたがたに言います。大勢の人は入ろうと探し求めるが、入ることができません。
25 家の主人が一度起きて、戸を閉めた時に、あなたがたは外に立って、戸を叩き、『主よ、主よ、私たちのために開けてください。』と言い出しても、主は答えて、あなたがたに言います。『私はお前たちはどこから来たのかを知らない。』
26 その時あなたがたは言い出します。『私たちは主の御前で飲食しました。また、主は私たちの大通りで教えてくださいました。』
27 すると、主は言います。『言っておくが、お前たちが何者か、またどこから来たのか、私は知らない。不正を行なう者どもよ、皆私から立ち去れ。』
28 あなたがたは、神の王国にいる、アブラハム、イサク、ヤコブ、それに預言者全員を、目の当りにしているのに、己自身は追い出され、泣き悲しみ歯をかみならします。
29 そして人々は東から、西から、北から、南から来て、神の王国で座に着きます。
30 そして,最後の人たちが最初になり、最初の人たちが最後になるのは真のことです。」
31 ちょうどその日、何人かのパリサイ派の人たちが来て、イエスに言った。「ヘロデがあなたを殺そうとしていますので、出発し、ここを離れなさい。」
32 それで、イエスはパリサイ派の人たちに言われた。「行って、あの狐に言いなさい。『見よ、わたしは今日、明日と、悪霊を追い出し、病を治します。そして、三日目に、わたしが完成された者となります。』
33 しかし、預言者はエルサレム以外の地で死ぬことはあり得ないから、今日、明日、あさってと、わたしは旅をしなければなりません。
34 エルサレム、エルサレムよ、預言者たちを殺し、お前に遣わされた人たちを石投げの刑に処す者よ、めん鶏がひなを翼の下に集めるように、幾たびもわたしはお前の子らを集めようとしたが、お前たちは望まなかった。
35 見よ。お前たちの家は、荒廃したままお前たちに残される。そして、わたしは真にお前たちに言う。『主の御名によって来る方は祝福される。』とお前たちは言う時が来るまで、お前たちはわたしを見ない。」
さて、ことの次第はこうであった。安息日にパンを食べるために、パリサイ派の指導者である一人の家に、イエスが入られたので、皆はイエスを注意深く観察した。
2 すると見よ、イエスの御前に、水腫のある一人の男がいた。
3 そこで、イエスは答えて、律法の専門家とパリサイ派の人たちに言われた。「安息日に病気を治すことは合法なのですか。」
4 しかし、全員、無言であった。それで、イエスはその男を手を触れ、治し、去らせられた。
5 そこで、「あなたがたの中で、ロバか牛がいて、それが安息日に穴に落ちたら、すぐ引き上げない人がいますか。」と、イエスは皆に答え、言われた。
6 すると、皆はイエスが言われるこれらのことに答えられなかった。
7 そこで、招かれた人たちが最上席を選んだと分かり、イエスは皆に例え話を話され、そして、皆に言われた。
8 「誰からであれ、結婚式の宴席に招かれた時は、最上席に座ってはいけません。そうしないと、あなたよりもっと偉い人が招かれている可能性があるからです。
9 そして、もっと偉い人と、あなたを招いた人が来て、あなたに言います。『この方に席を空けなさい。』それで、あなたは恥をかきながら末席に着きます。
10 しかし、あなたが招かれた時は、末席に行き座りなさい。そうすれば、あなたを招いた人は来て、あなたに言うでしょう。『友よ、もっと上の席に行ってください。』そこで、あなたと同席する人たちの前で、あなたに栄光があるでしょう。
11 なぜなら、誰であれ自らを偉くする人は低くされ、自分を低くする人は偉くされるからです。」
12 そして、ご自分を招いた人たちにも言われた。「正餐であろうが夕食であろうが、あなたが催す時、友人たち、兄弟たち、親戚たち、金持ちの隣人たちを招いてはいけません。その人たちは返礼として、あなたを招き、お返しします。
13 そうでなく、食事会を催す時、貧しい人たち、体の不自由な人たち、足が悪い人たち、目が見えない人たちを招きなさい。
14 それで、その人たちはお返しができないのだからこそ、あなたは祝福されます。なぜならあなたは義人の復活の時、返礼を受けるからです。」
15 イエスと共に食卓に座っていた一人の男はこれを聞くと、イエスに言った。「神の王国でパンを食べる男は祝福されます。」
16 それでイエスはその男に言われた。「ある男が豪華な夕食会を催し、大勢の人たちを招きました。
17 そして、夕食会の時刻に、自分の僕を遣わし、招かれた人たちに言わせました。『すべての準備が整いました。お出でください。』
18 しかし、招かれた人は皆一斉に言い訳を言い始めました。最初の人がその僕に言いました。『私は土地を買ったから、見に行かなければなりません。出席はお断りさせてください。』
19 すると、もう一人が言いました。『私は五対の牛を買いましたから、試すために行きます。出席はお断りさせてください。』
20 また、別の一人が言いました。『私は妻をめとったから、行けません。』
21 そこで、その僕は来て、主人にこのことを報告しました。それで、家の主人は怒り、その僕に言いました。『急いで、町の大通りや小さな通りに出て行き、貧しい人たち、体の不自由な人たち、足が不自由な人たち、目の見えない人たちをここに連れて来い。』
22 すると、僕は言った。『ご主人様、あなたが命じたとおりにしましたが、空席がまだあります。』
23 それで主人は僕に言いました。『私の家が一杯になるよう、街道や垣根の所に出かけて行き、無理にでも人々を来させよ。
24 なぜなら、私はお前たちに言うが、あの招待された者たちは誰一人として私の夕食の味を見ない。』」
25 さて、大群衆がイエスについて来ていた。それで、イエスは向きを変え、群衆に言われた。
26 「わたしの所に来る者は、誰でも自分の父、母、妻、子どもたち、兄弟たち、姉妹たち、また自らの命さえも憎まなければ、わたしの弟子になることはできません。
27 そして、誰であれ、自らの十字架を背負い、わたしに従う者ではなければ、わたしの弟子になることはできません。
28 なぜなら、あなたがたの中で、塔を建てようとするその者は、先ず腰を下ろし、かかる費用を見積もり、完成するのに十分な資金があるかどうかを計算しないでしょうか。
29 そうでなければ、土台を据えた後、完成しなければ、それを目にする人々は、全員、その男をあざけり、
30 言います。『この男は建て始めはしたが、完成できなかった。』
31 また、他の国王と戦争をしに出て行く国王は、先ず腰を下ろし、二万人の兵で挑んで来る王に、一万人の兵で対抗できるかと、よく考えない王がいますか。
32 そうでないなら、一方の兵の王がまだ遥か遠くにいる時、使者を派遣し、和平の条件を願い出ます。
33 従って、あなたがたも同様に、自ら持つすべてのものを捨てなければ、わたしの弟子になることはできません。
34 塩は良い物だが、もしその塩が塩の味をなくしたら、何によってこの塩の味を取りもどすことができますか。
35 土地にも、肥やしとしても役立たず、人々は捨てます。聞く耳のある人には聞かせよ。」
さて、収税人と罪人は皆、話を聞こうとイエスに近づいた。
2 すると、パリサイ派の人たちと律法学者たちは不満を言った。「この人は罪人を受け入れ、罪人たちと食事を共にする。」
3 それで、パリサイ派の人たちと律法学者たちに、イエスはこの例え話を話し、言われた。
4 「あなたがたの中で、百匹の羊を持っている男が、一匹でも見失えば、他の九十九匹を荒野に残し、その見失った一匹を見つけるまで、捜しに行かない人はいますか。
5 そして見つけると、羊を担ぎながら、喜んで、
6 家に帰り、友人たち、隣人たちを呼び集め、皆に言います。『一緒に喜んでください。私の行方知れずであった羊を見つけたからです。』
7 わたしはあなたがたに言います。これと同じで、悔い改める必要のない九十九人の義人に関することより、悔い改める一人の罪人に関する方が、天国ではもっと喜びがあります。
8 また、銀貨十枚を持っている女が、一枚を失くせば、それを見つけるまで、灯りをつけ、ほうきで注意深く家を掃かない女はいますか。
9 そして、その銀貨を見つけると、友人、隣人たちを共に呼び、言います。『失くした銀貨を見つけたから、一緒に喜んでください。』
10 それと同じで、わたしはあなたがたに言います。悔い改める一人の罪人のことで、神の御使いたちの前に喜びがあるのです。」
11 さらに、イエスは言われた。「ある男に二人の息子がいました。
12 そして、若い方が父親に言いました。『お父さん、私がいただく財産の取り分をください。』それで、父親は自分の財産を二人に分け与えました。
13 それで、幾日もしないうちに、若い方の息子はすべての物をまとめて、遠い国に旅立ち、そこで放蕩し、財産を無意味に使い果たしました。
14 しかし、若い息子がすべて使い切った時、その地方にひどい飢饉が起り、息子は困窮しだしました。
15 そこで息子はその土地のある住民の一人にすがりました。すると、その人は息子を、自分の畑に送り、豚を飼わせました。
16 そこで、豚の餌であるイナゴ豆のさやをいとわず食べて、空腹を満たそうとしたほどでしたが、食べ物をくれる人は誰もいませんでした。
17 しかし、その時、男は我に返り、言いました。『父の雇い人はほとんど有り余るパンがあるのに、私は餓死しようとしている。
18 腰を上げよう。父の元に行って、父に言おう。「お父さん、私は天に背き、また、あなたの眼前でも、罪を犯しました。
19 それで、あなたの息子と呼ばれる価値はもうありません。私をあなたの雇い人の一人のように扱ってください。」』
20 そして、次男は腰を上げ、父の所に行きました。しかし、まだ家から遠く離れていた時、父は次男を見て、哀れに思い、駆け寄り、息子の首に抱きつき、口づけしました。
21 それで、次男は父に言いました。『父上、私は天に背き、あなたの眼前でも、罪を犯しました。それで、あなたの息子と呼ばれる価値はもうありません。』
22 しかし、この父親は僕たちに言いました。『一番良い衣を出して、次男に着せ、そして、手に指輪をはめ、足に履き物をはかせなさい。
23 そして、肥えた子牛をここに連れて来て、ほふりなさい。そして私たちは食べ、楽しもう。
24 なぜなら、私のこの息子は死んでいたが、生き返った。失われていたが、見つかった。』それで、皆はお祝いを始めました。
25 さて、年上の息子は畑にいました。そして、やって来て、家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえました。
26 それで、長男は一人の僕を呼び寄せ、これは一体何事かと尋ねました。
27 すると、僕は長男に言いました。『あなたの弟さんが帰って来ました。そして、弟さんが無事で帰ってきたのだから、父上はあの肥えた子牛を殺したのです。』
28 それで長男は怒り、家に入ろうとしませんでした。そこで、父親は出てきて、長男に懇願しました。
29 すると長男は答えて、父親に言いました。『いいですか、私はこの永年父上に仕えてきました。私は父上の命令に背いたことはありません。にもかかわらず、私が友人たちと楽しもうとしても、一匹の子ヤギもくれませんでした。
30 しかし、売春婦たちと組み、父上の財産を食い尽くした、あなたのこの息子が帰るやいなや、あいつのために太らせた子牛を父上は屠りました。』
31 それで、父は長男に言った。『息子よ、お前はいつも私と共にいる。そして、私の持ち物すべてはお前の物だ。
32 お前の弟は死んでいたが生き返り、また失われていたが、見つかったのだから、私たちが祝い、また喜ぶことは当然のことである。』」
イエスはまた弟子たちに言われた。「ある金持ちがいました。この男には一人の執事がいました。この執事が主人の財産を撒き散らしていると、告発が主人にもたらされました。
2 そこで、金持ちは執事を呼び、言いました。『お前の事を聞いた。これは何事か。執事として会計報告をしなさい。お前はもう執事としては失格だ。』
3 しかし、執事は心の中で言いました。『主人は私から執事職を取り上げようとしているのだが、どうしようか。土を掘ることはできないし、物乞いをするのは恥ずかしい。
4 執事職から追放されても、人たちが私を家庭に受け入れてくれる方法を決めた。』
5 それで、執事は自分の主人に負債のある者を一人残らず呼び、そして最初の人に言いました。『私の主人からの負債はいくらありますか。』
6 その男は言いました。『油百バテ20です。』それで執事はその男に言いました。『あなたの証書を手に取り、すぐ座り、五十と書きなさい。
7 次に、執事は別の一人に言いました。『あなたの債務はいくらありますか。』するとその男は言いました。『百コル21の小麦です。』すると執事は言いました。『あなたの債務証書を取って、八十と書きなさい。』
8 それで、この抜け目のないやり方をした不正な執事を、主人は誉めました。なぜなら、今の世の子たちは、光の子たちの世代より抜け目がないからです。
9 それで、わたしはあなたがたに言います。不正の富によって、自分のために友人を作りなさい。そうすれば、あなたがたが失敗した時、その友人たちはあなたがたを永遠の住まいに受け入れることができます。
10 最小のことに忠実な人は、何にでも忠実です。そして、最小のことに忠実でない者は、何にでも不正を働きます。
11 従って、もし不義の富にあなたがたが忠実でなかったら、誰がまことの富を、あなたがたに委ねますか。
12 そして、他人のことに忠実ではなかったなら、誰があなたがたに、あなたがたのものを任せますか。
13 二人の主人に仕えることのできる僕はいません。なぜなら、一人を憎み、もう一人を愛するからです。または、一人に従い、もう一人を疎んじます。あなたがたは神と富に仕えることはできません。」
14 しかし、金銭を愛するパリサイ派の人たちも、これらのことを聞き、イエスをあざ笑っていた。
15 それで、イエスは彼らに言われた。「あなたがたは人々の前で自らを正しいと正当化してるが、神はあなたがたの心をご存じです。人間の間で尊ばれるものは、神の前では忌み嫌われるものだからです。
16 律法と預言者たちはヨハネの時まででした。それ以来、神の王国は説かれ、一人残らず、そこに殺到しています。
17 そして、律法の一画が消えるよりも、天地が消える方が簡単です。
18 誰であれ、自分の妻を離婚し、他の女と結婚する者は、姦淫を犯します。そして、誰であれ、夫から離婚された女と結婚する者も、姦淫を犯すのです。
19 紫色の服と緻密な亜麻布を着て、毎日、ぜいたくに暮らしている一人の金持ちの男がいました。
20 また、ラザロという一人の物乞いがいました。ラザロは全身吹き出物だらけで、その金持ちの門で横になり、
21 金持ちの食卓から落ちる食べくずで空腹を満たそうと願っていました。しかし、犬どもがやって来て、ラザロの吹き出物をなめていました。
22 時は過ぎ、物乞いは死に、御使いたちによりアブラハムの懐に運ばれました。金持ちも死に、墓に葬られました。
23 そして、金持ちは地獄で苦しみながら、目を上げて、遠くにいるアブラハムとその懐にいるラザロを見ました。
24 そこで金持ちは叫んで、言いました。『父アブラハムよ、私を哀れみ、ラザロの指先を水に浸し、私の舌を冷やすためラザロを遣わしてください。私はこの炎で苦しんでいるからです。』
25 しかし、アブラハムは言いました。『子よ、あなたは生きている時良いものを受け、そして、ラザロは同じように悪いものを受けた事を思い出しなさい。でも今、ラザロは慰められ、あなたは苦しめられているのです。
26 そしてこれらの事を全部加えても、私たちとあなたの間に、巨大な淵が定められてあり、ここからあなたの所に渡ろうと思う者らがいても渡れず、そしてあなたの所から、誰もここに来られません。』
27 『それでは』と、金持ちは言いました。『父よ、ではお願いします。ラザロを私の父の家に遣ってください。
28 なぜなら、私には兄弟が五人いて、ラザロは兄弟たちに証できるからです。兄弟たちもまた、この苦しみの所に来ないためです。』
29 アブラハムは金持ちに言いました。『兄弟たちにはモーセと預言者たちがいます。モーセと預言者たちに聞けばよいのです。』
30 すると金持ちは言いました。『父アブラハムよ、違います。人が死人の中から兄弟たちの所に行けば、悔い改めます。』
31 しかし、アブラハムは金持ちに言いました。『兄弟たちはモーセや預言者たちの言葉を聞かないのであれば、死人の中から復活した人がいても、兄弟たちは説得されません。』」
次いで、イエスは弟子たちに言われた。「数々のつまずきが来ることは防ぎようがないが、つまずきを起こす者に災いあれ。
2 この小さき者の一人をつまずかせる者は、首に石臼をぶら下げられて、海に投げられた方がましです。
3 あなたがたは自分自身に気をつけなさい。もしあなたの兄弟があなたに対して罪を犯せば、兄弟を注意しなさい。そして、その兄弟が悔い改めれば、赦しなさい。
4 そして、もしその兄弟が日に七度、あなたに対して罪を犯し、日に七度あなたの所に戻って来て、『私は悔い改める。』と言えば、あなたは兄弟を赦しなさい。」
5 それで使徒たちは主に言った。「主よ、私たちの信仰を増してください。」
6 すると主は言われた。「もしあなたがたに、からし種一粒ほどの信仰があれば、あなたがたはこの桑の木に、『根から引き抜かれて、海に生えよ。』と言えば、木はあなたがたに従います。
7 そして、あなたがたのだれかに、耕しの仕事や、羊飼いの仕事をする僕がいるなら、その僕は野原から帰ってくると、『すぐ来て、食卓につきなさい。』と言いますか。
8 それどころか、主人はその僕にこう言うのではありませんか。『私の夕食に、何か用意せよ。私が飲み食いするまで、帯を締め、給仕せよ。その後でお前は飲み食いするのだ。』
9 僕は命じられた通りのことをしたのだから、主人はその僕に感謝しますか。わたしはそう思いません。
10 そのように、あなたがたも、命じられたことをすべてした時、『私たちは役に立たない僕です。やるべき義務を果たしました。』と言いなさい。」
11 さて、ことの次第はこうであった。エルサレムに行く途中、イエスはサマリヤとガリラヤの中を通られた。
12 そして、イエスがある村に入ると、十人のレプラ病22の男がイエスに出迎えようとしていた。彼らは遠くで立っていた。
13 そして、病人たちは声を上げて言った。「イエス、師よ、私たちを哀れんでください。」
14 すると、イエスは彼らを見て、言われた。「行って、あなたがたの体を祭司たちに見せなさい。」すると見よ、行く途中、彼らは清められた。
15 すると、その中の一人は治されたと分かったので、戻って来て大声で神に栄光を捧げた。
16 そしてイエスの足もとにひれ伏し、感謝した。ちなみにこの男はサマリヤ人であった。
17 次いでイエスは答えて言われた。「清められたのは十人ではないのですか。九人はどこにいますか。
18 神に栄光を捧げるために戻って来た人はこの外国人以外、誰も見いだせなかったのですか。」
19 そして、イエスは言われた。「立ち上がり、あなたの道を行きなさい。あなたの信仰があなたを治しました。」
20 さて、神の王国はいつ来るか、とパリサイ派の人たちに尋ねられた時、イエスは彼らに答えて言われた。「神の王国はよく観察したからと言って来るものではありません。
21 『ここを見よ!』とか、『あそこを見よ!』と、人々は言いません。なぜなら、真実、神の王国はあなたがたの中にあるからです。」
22 それで、イエスは弟子たちに言われた。「人の子の日々を、あなたがたは一日でも見たいと望む日々は来ます。だが、あなたがたはその一日も見ることはありません。
23 それで、『ここを見よ!』とか『あそこを見よ!』と、人々はあなたがたに言います。その人々の後を追ってはいけません。また、ついて行ってもいけません。
24 稲妻が天の一方から一方に、光るように、人の子もご自分の日に、そのようになるからです。
25 しかし、人の子は先に多くの苦しみを受け、この世代に拒まれなければなりません。」
26 そして、ちょうどノアの日々と同じように、人の子の日々もそうなります。
27 ノアが箱船に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、娶ったり嫁いだりしていました。そして洪水がすべての人を滅ぼしました。
28 そして、ロトの日々もそうでした。人々は食べたり飲んだり、買ったり売ったり、植えたり、建てたりしていました。
29 しかし、ロトがソドムを出た日に、火と硫黄が天から降り、すべてを滅ぼしました。
30 人の子が現れる日も、これらのことと同様になります。
31 その日、屋上にいて、財産が家の中にある者は、財産を取りに降りてはいけません。同様に、野原にいる者は、戻ってはいけません。
32 ロトの妻を忘れてはいけません。
33 誰であれ、自らの命を救おうと努力する者は、命を失うが、誰であれ、命を失う者はそれを保持します。
34 わたしはあなたがたに言います。その夜、一つの床にいる二人は、一人は連れ去られ、一人は残されます。
35 二人の女が臼をひいていて、一人は取られ、もう一人は残されます。
36 二人が野原にいて、一人は連れ去られ、一人は残されます。」
37 弟子たちは答えて、イエスに言った。「主よ、どこですか。」それで主は弟子たちに言われた。「死体のある所は、どこにでも鷲23は集まります。」
さて、人は失望せず、常に祈るべきであると、イエスは弟子たちに例え話を話された。
2 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わない一人の裁判官がいました。」とイエスは言われた。
3 「さて、その町に一人の未亡人がいました。そして、裁判官の所に来て、その女は言いました。『私の敵に、私に代わり正義を行なってください。』
4 それで、しばらくの間、裁判官は女の願いを聞き入れる気はなかったが、その後、心の中で言いました。『私は神を恐れず、人を人とも思わないが、
5 この未亡人は迷惑だ。だから、仕返しをしてやろう。そうでないと、四六時中来られてうんざりだ。』」
6 そこで、主は言われた。「この不正な裁判官の言ったことを聞きなさい。
7 神ご自身が選ばれた者たちが、夜も昼も助けを求めて叫ぶのを、神は長期間耐えるとしても、その者たちに仕返ししない訳はありません。
8 わたしはあなたがたに言います。神はその者たちに速やかに裁きを行ないます。しかし、人の子が来る時、地上に信仰をまことに見つけますか。」
9 そして、自分が義人であると自ら信じて他人を軽蔑しているある人たちに、イエスはこの例え話を話された。
10 「二人の男が、祈るために神殿に上って行きました。一人はパリサイ派の男であり、もう一人は収税人でした。
11 パリサイ派の男は立って、自らの中でこう祈りました。『神様、私は他の男たち、つまり強奪する者たち、不正な者たち、姦淫者たち、ましてこの収税人のようではないことをあなたに感謝します。
12 私は週二回断食します。私は得る物すべての十分の一を献金しています。』
13 一方、収税人は遠く離れて立ち、天に目を向けようとせず、胸を叩いて言いました。『神よ、罪人の私を哀れんでください。』
14 わたしはあなたがたに言います。パリサイ派の男より、この男は義と認められ、自分の家に帰りました。自らを高くする者は誰であれ低くさせられ、自らを低くする人は高くさせられるからです。」
15 次いで、イエスに手を触れていただくため、人々は幼児たちをイエスの御元に連れて来たが、弟子たちはこれを見て、その人たちを叱った。
16 しかし、イエスは弟子たちをご自分の所にお呼びになり、言われた。「小さい子どもたちをわたしの所に来させなさい。止めてはいけません。神の王国はこのような者のためだからです。
17 まことに、わたしはあなたがたに言います。小さな子どものように、神の王国を受け入れる者でなければ、誰であれ、決して王国に入ることはできません。」
18 さて、一人の支配者はイエスに言った。「善なる師よ、永遠の命を受け継ぐために、私は何をしたらよいのでしょうか。」
19 それでイエスはその支配者に言われた。「わたしを『善なる師』と、なぜあなたは言うのですか。一人を除いて、つまり神以外に、誰も善なる者はいません。」
20 『姦淫をしてはいけない。殺人を犯してはいけない。盗んではいけない。偽証をしてはいけない。』『あなたの父と母に敬意をはらいなさい。』という命令をあなたは知っています。」
21 そして、その支配者は言った。「私はこれらすべてを青年時代から守ってきています。」
22 それで、イエスはこれらのことを聞き、男に言われた。「一つまだ足りないところがあります。自分の持ち物をすべて売り、貧しい人たちに分け与えなさい。そうすれば、あなたは天国で宝を手にします。そして、わたしに従いなさい。」
23 しかし、その支配者はこれを聞き、とても悲しくなった。彼は大金持ちであったからである。
24 イエスはとても悲しくなるのをご覧になり、言われた。「富がある者は神の王国に入るのは本当に難しいことです。
25 金持ちが神の王国に入ることより、らくだが針の穴を通る方が簡単だからです。」
26 これを聞いた人々は言った。「では、誰が救われることができましょうか。」
27 しかし、イエスは言われた。「人間にとって不可能なことでも、神にとっては可能です。」
28 それで、ペテロは言った。「ご覧下さい。私たちはすべてをおいて、あなたに従って来ました。」
29 それで、イエスは彼らに言われた。「まことに、わたしはあなたがたに言います。家、両親、兄弟、妻、子どもを神の王国のため、捨てて来たその者は、
30 いまこの時代に何倍も受け、来るべき時代には永遠の命を受けない者はいません。」
31 さて、イエスは十二人を呼び寄せて、弟子たちに言われた。「見よ。わたしたちはエルサレムに上って行きます。そして、人の子について、預言者を通して書かれたすべてのことは完成されます。
32 なぜなら、人の子は異邦人に渡され、あざけられ、侮辱され、つばきをかけられます。
33 人々は人の子をむち打ち、そして殺します。そして、人の子は三日目に復活します。」
34 しかし、弟子たちはこれらのことを何一つ理解しなかった。言われたことは弟子たちには隠されていて、言われたことが分からなかった。
35 さて、ことの次第はこうであった。イエスがエリコに近づいて来られると、一人の盲目の男が道端に座り、物乞いをしていた。
36 そして、群衆が通りかかるのを聞き、何事かとその男は尋ねた。
37 それで、ナザレのイエスが通りかかっていると、人々は物乞いに教えた。
38 物乞いは叫んで言った。「イエスよ、ダビデの御子息よ、私を哀れんでください。」
39 すると、先頭を行く人たちが、静かにするよう叱りつけたが、物乞いはますます何度も何度も叫んだ。「ダビデの御子息よ、私を哀れんでください。」
40 すると、イエスは立ち止まり、盲目の男を自分の所に連れてくるように命じられた。そして、男が近づくと、イエスは尋ね、
41 言われた。「あなたは、わたしに何をしてほしいのですか。」物乞いは言った。「主よ、視力を頂きたいのです。」
42 そこで、イエスは物乞いに言われた。「あなたの視力を受けよ。あなたの信仰があなたを救いました。」
43 そこでその瞬間、男は目が見えるようになり、神に栄光を捧げながら、イエスに従った。そして、このことを目撃した人々は皆、神を誉めたたえた。
さて、イエスはエリコに入り、通過された。
2 そして、名前がザアカイという、収税人の長である男がいた。なお、ザアカイは金持ちであった。
3 そこで、イエスがどんな人かと見ようとしたが、ザアカイは背が低く、群衆がじゃまで見えなかった。
4 それで、イエスがその道を通過しようとしていたので、ザアカイは前方に走り、イエスを見るためにイチジク桑の木に登った。
5 そして、イエスがその所に来ると、上を向きザアカイをご覧になり、言われた。「ザアカイよ、急いで降りて来なさい。今日あなたの家にわたしは泊まらなければならないからです。」
6 それでザアカイは急いで降り、イエスを喜んで迎えた。
7 しかし、皆はそれを見て、つぶやいて言った。「イエスは罪深い男の家に客として行った。」
8 それで、ザアカイは立ち上がり、主に言った。「申し上げます、主よ。私の所有物の半分を、貧しい人に差し出します。そして、もし、私が虚偽の告発で、いかなる人からいかなる物を取ったとしたら、それを四倍にして返します。」
9 イエスはザアカイに言われた。「今日この家に救いが来ました。ザアカイもアブラハムの息子の一人だからです。
10 人の子は、失われた人を捜し、救うために来たからです。」
11 さて、人々がこれらのことを聞いていると、イエスはもう一つの例え話を話された。イエスはエルサレムに近づいておられたし、また、人々は、神の王国はすぐ現れるであろうと、思っていたからである。
12 それで、イエスは言われた。「ある高貴な生まれの男が、遠国に王国を受け取りに自ら行き、帰って来ることになりました。
13 それで、自分の僕、十人を呼び寄せ、十ミナ24を渡し、僕たちに言いました。『私が帰って来るまで、商売をしなさい。』
14 しかし、この男の人民たちは、この男を嫌悪したので、男の後から代表の人たちを派遣し、言いました。『この男が我々を支配することを我々は望みません。』
15 そして、ことの次第はこうでした。男が王国を受け取り、帰って来ると、金を受け取った僕たちが商売をして、どれだけ儲けたかを知るために、僕たちを呼ぶように命じました。
16 それで、一人目が来て言いました。『御主人様、あなたの一ミナで十ミナ儲けました。
17 主人は最初の僕に言いました。『よくやった、良き僕よ。お前はわずかな物にも忠実だったから、十の町を支配せよ。』
18 次いで二人目が来て、言いました。『御主人様、あなたの一ミナで五ミナ儲けました。』
19 そして主人は二人目にも言いました。『お前も、五つの町を支配せよ。』
20 すると、もう一人が来て、言いました。『御主人様、見てください。これはあなたの一ミナです。布に包みしまっておきました。
21 なぜなら、あなたは厳しい方ですから、私はあなたを恐れていました。あなたは預けていない物を徴収し、まいていない物を刈り取ります。』
22 主人はこの僕に言いました。『悪い僕よ。お前の口から出たことで、お前を裁く。預けていない物を徴収し、まいていない物を刈り取る、私は厳しい者だとお前は知っていた。
23 そうであれば、私の金をなぜ銀行に貯金しなかったのか。帰ってきた時利息と共に、私は回収できたであろうに。』
24 そして、主人は側に立っている人たちに言いました。『奴からこの一ミナを取り上げ、十ミナある者に与えよ。』
25 しかし、その人たちは主人に言いました。『御主人様、彼はもう十ミナを持っています。』
26 それで、わたしはあなたがたに言います。誰であれ、持っている者は、与えられます。しかし、誰であれ、持っていない者からは、持っている物でさえ、取り上げられます。
27 『しかし、私に支配されることを望まない、私の敵どもをここに連れて来て、私の前で奴らを殺せ。』」
28 そして、このことを言われ、イエスは前進し、エルサレムに上って行かれた。
29 さて、ことの次第はこうであった。オリーブと呼ばれる山の所にあるベテパゲとベタニヤに近づくと、イエスは弟子の二人を送り、
30 言われた。「あなたがたの向こう側の村に行きなさい。そうすると、あなたがたはすぐ、誰も乗ったことのない、繋がれている、ロバの子を見つけます。解いてわたしの所に連れて来なさい。
31 もし誰かがあなたがたに、『なぜ解いていますか。』と尋ねれば、その男に、『主がこれを必要としているからです。』と言いなさい。」
32 それで、送り出された二人が行くと、イエスが言われた通りのロバの子を見つけた。
33 しかし、二人がロバの子を解いていると、その持ち主たちは言った。「なぜロバの子を解いているのか。」
34 二人は言った。「主はこれが必要としておられます。」
35 それから、二人の弟子はロバの子をイエスの所に連れて来た。そして、自分たちの服をロバの子の上に投げかけ、そしてイエスをその上に乗っていただいた。
36 そして、イエスが進んで行かれると、人たちが自分たちの服を道に敷いた。
37 そこで、イエスがオリーブ山の下り道に近づくと、多くの力ある業を目にした弟子たちの全群集は喜びだし、大声で神を誉めたたえ、
38 言った。「主の御名により来られる王は、祝福されます。天に平安を、そして、最高位の所に栄光がありますように。」
39 すると、パリサイ派のある人たちが、群衆の中からイエスに呼びかけた。「先生、あなたの弟子たちを注意してください。」
40 すると、イエスは答えて、パリサイ派の人たちに言われた。「わたしはあなたがたに言います。もしこの人たちが沈黙すれば、石がたちどころに叫び出します。」
41 さて、イエスが近づき、エルサレムの町をご覧になり、その町のためお泣きになり、
42 言われた。「お前さえ、特にお前の日である今日、お前の平和に至る道を知っていたなら。だが今、それはお前の目には隠されている。
43 なぜなら、敵はお前の回りに砦を作り、お前を包囲し、あらゆる方向からお前を攻め、
44 お前を倒し、そして、お前の子らをお前の中に、共々地に倒す。敵はお前の中に、石の上に石一つ残さない。それは、お前はお前の訪れの時を知らなかったからだ。」
45 そこで、イエスは神殿の敷地に入り、神殿の敷地で売り買いしている者たちを追い出し始められ、
46 商売人たちに言われた。「『わたしの家は祈りの家である。』と書いてあります。しかし、あなたがたはわたしの家を強盗の巣窟にしてしまいました。」
47 そして、イエスは毎日神殿の敷地で教えておられた。しかし、大祭司たち、律法学者たち、民の指導者たちはイエスを破滅させようとしたが、
48 しかし、できそうなことは何も見つからなかった。なぜなら、民全員、熱心にイエスの話を聞こうとしていたからである。
ことの次第はこうであった。イエスが神殿の敷地で人々を教え、福音を説いていたある日、大祭司たちや律法学者たちが、長老たちと共に、イエスに敵意を持って、
2 イエスに話しかけ、言った。「何の権威によってこれらのことを行なっているのか。そして、その権威を与えたのは誰なのか、我々に言え。」
3 すると、イエスは答えて彼らに言われた。「わたしもあなたがたに一つ尋ねましょう。そして、わたしに答えなさい。
4 ヨハネの浸礼は、天からでしたか、それとも人間からでしたか。」
5 彼らは互いに言い合った。「もし我々が『天から』と言えば、イエスは、『それでは、あなたがたはなぜヨハネを信じなかったのか。』と言います。
6 しかし、もし我々が、『人間から』と言えば、群衆は我々を石投げの刑にします。群衆は皆、ヨハネを預言者と信じているからです。」
7 それで、どこからか知らないと、彼らは答えた。
8 それで、イエスは彼らに言われた。「わたしも、何の権威によってこれらのことを行なっているかと、言いません。」
9 そして、イエスは人々にこの例え話を始められた。「ある男が、ぶどう園にぶどうを植え、農夫たちに貸し、長期間、遠く旅に出ました。
10 そこで、収穫の時に、ぶどう園の収穫のいくらかを農夫たちから徴収するため、主人は一人の僕を派遣しました。しかし、農夫たちは僕を何度も殴り、手ぶらで帰しました。
11 再度、別の僕を送ったが、農夫たちはその僕も何度も殴り、はずかしめ、手ぶらで帰しました。
12 それで、三人目を送ったが、農夫たちはその僕にけがをさせ、放り出しました。
13 そこで、ぶどう園の主人は言いました。『どうしようか。我が愛する息子を遣わそう。農夫らはきっと息子を見ると、敬意を払ってくれる。』
14 しかし、農夫たちは息子を見た時、互いに言いました。『奴は相続人だ。さあ、来い、相続権は我らのものになるように、奴を殺そう。』
15 そこで、農夫たちはぶどう園から息子を放り出し、そして殺しました。さて、ぶどう園の主人はこの農夫たちをどうしますか。
16 主人は来て、その農夫たちを破滅し、ぶどう園を他の人たちに与えます。」これを聞いて、彼らは言った。「まさか、あり得ません。」
17 イエスは人々を見つめ、言われた。「それでは、こう書いてあるのは何ですか。『建築家たちが拒んだ石こそが、礎になった。』
18 その石の上に落ちる者は誰であれ破滅されるが、この石が上に落ち、下になった者は、石はその者を粉砕してしまいます。」
19 そして、ちょうどその時、大祭司たちと律法学者たちは、イエスに手をかけようとしたが、人々を恐れた。イエスがしたこの例え話は自分たちのことを言っているのだと、分かったからである。
20 それで、彼らはイエスを見張り、イエスの言葉尻を掴み、総督の支配と権威にイエスを引き渡せるよう、義人に偽装したスパイたちを送った。
21 そこで、イエスに尋ねて、言った。「先生、あなたは正しく話し、かつ正しく教えていることを、我々は知っています。あなたはえこひいきはせず、真理によって神の道を教えています。
22 カイザルに税金を納めることは、律法に叶っているでしょうか、叶っていないでしょうか。
23 しかし、イエスは彼らの企みを知り、言われた。「なぜわたしを試すのですか。
24 デナリ硬貨を一枚わたしに見せなさい。誰の像と銘がありますか。」彼らは答えてイエスに言った。「カイザルのです。」
25 それで、イエスは彼らに言われた。「それでは、カイザルのものはカイザルに返し、神のものは神に返しなさい。」
26 それで、人々の前で、彼らはイエスの言葉尻を捕らえることができなかった。そして、イエスの答えに驚き、沈黙した。
27 その時、復活を否定するサドカイ派の人たちはイエスの所に来て、尋ね、
28 言った。「先生、もし一人の男に妻がいて、子どもがなく死ねば、その男の兄弟はその妻と結婚して、兄弟のために子孫を上げよ、とモーセは私たちに書きました。
29 では、七人兄弟がいました。そして、長男は妻をめとり、子がないまま死にました。
30 そして、次男はその女を妻としてめとり、子どもがないまま死にました。
31 三男もこの女をめとり、このようにして、七人ともそうなりました。兄弟全員子どもを残さずに死にました。
32 最後にその女も死にました。
33 それで、復活の時、この女は誰の妻になるのですか。七人ともこの女をめとったからです。」
34 イエスは答えて、彼らに言われた。「今の時代の子たちはめとったり、嫁がされたりします。
35 しかし、その時代に至るようにふさわしい人たち、また死人の中からの復活にふさわしい人たちは、結婚したり嫁がされたりしません。
36 そして、その人たちは御使いたちと同等であり、復活の子であり、神の子たちだから、もう死ぬことはできません。
37 モーセでさえ、燃える柴の節で、主を『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』と呼び、死人たちは復活させられることを示しました。
38 神は死人の神ではなく、生きている者の神です。すべての人は主に対して生きるからです。」
39 それで、ある律法学者たちは答えて言った。「先生、あなたは正確に言われました。」
40 そして、その後もう、あえてイエスに質問をする律法学者たちはいなかった。
41 それで、イエスは彼らに言われた。「どういう理由で、キリストはダビデの子息だと、人々は言うのですか。
42 ダビデ自らが詩篇の書で言っています。『主は私の主に言われた。「わたしの右に座りなさい。」
43 わたしがあなたの敵をあなたの足台にするまでである。』
44 ダビデがキリストを『主』と呼んでいます。それなら、キリストはどうしてダビデの子息なのでしょうか。」
45 それで、人々は全員、聞いている時、イエスはご自分の弟子たちに言われた。
46 「律法学者たちに気をつけよ。彼らは長い衣を着て歩き回るのを好み、市場での挨拶、シナゴーグの最高の席、宴会の最上の座が大好きです。
47 律法学者たちは、未亡人の家々をむさぼり、見せるための長い祈りをします。この者たちは大変厳しい裁きを受けます。」
さて、イエスは目を上げ、献金箱に捧げ物を入れる金持ちたちをご覧になり、
2 またレプタ25二枚入れる一人の貧しい未亡人もご覧になった。
3 そして、言われた。「まことに、あなたがたに言っておきます。この貧しい未亡人は誰よりも多く入れました。
4 他の人たちは皆、自らの豊かさの中から神へ捧げ物を入れたが、この未亡人は貧しさの中から、生活費をすべて入れたからです。」
5 さて、ある人たちが神殿の全体、つまり美しい石や捧げ物で飾られていることを話すと、イエスは言われた。
6 「あなたがたが目にしているこれらの物は、石の上に石一つとして残されず、引き倒される時期が来ます。」
7 それで、彼らはイエスに尋ねて、言った。「先生、それらはいつのことですか。そして、これらのことは起ころうとする時、どんなしるしがあるでしょうか。」
8 イエスは言われた。「騙されないように気をつけなさい。多くの者がわたしの名で、『私がキリストです。』とか、『時は近づいてきました。』と言って、やって来るからです。ですから、そういう者たちについて行ってはいけません。
9 しかし、戦争や動乱の話を耳にして、恐怖心を起こしてはいけません。まずこれらのことはすべて起こらざるを得ないのですが、終焉はすぐ来ません。」
10 その時、イエスは弟子たちに言われた。「国家は国家に敵対して、王国は王国に敵対して立ち上がります。
11 そして、巨大地震が各地で起こり、また飢饉や疫病が発生します。そして、天から恐ろしい光景、そして偉大なしるしがあります。
12 しかし、これら全てが起こる前に、人々はあなたがたに手をかけ、あなたがたを迫害し、シナゴーグや牢獄にあなたがたを引き渡します。そして、わたしの名のために、あなたがたは王たちと支配者たちの前に、連行されます。
13 しかし、それはあなたがたにとって証の機会になります。
14 したがって、何を答えるかと、前もって考えないように、心に決めなさい。
15 なぜなら、あなたがたに敵対する全員が、攻撃も反論もできない口と知恵を、わたしが与えるからです。
16 しかし、あなたがたは両親と兄弟たちからさえ裏切られ、また、親戚と友人たちからさえも、裏切られます。そして、あなたがたの中のある者たちを、人々は死に追いやります。
17 そして、わたしの名のために、あなたがたは皆に憎悪されます。
18 しかし、あなたがたの頭髪の一本も失われることはありません。
19 あなたがたは自ら忍耐して、自らの魂を得よ。
20 そして、数々の軍隊に包囲されたエルサレムをあなたがたは見ます。その時、エルサレムの滅亡は近いと知りなさい。
21 その時、ユダヤにいる人たちは、山地26に逃げなさい。そして、エルサレムの中にいる人たちは、立ち去りなさい。また、田舎の人々を、エルサレムの中に入れてはいけません。
22 書かれてあることのすべてが成就されるための、これらの日々は復讐のためだからです。
23 しかし、その日々の間は、身ごもっている者たち、乳を飲ませている者たちは、悲惨です。この地方は大いに窮乏し、またこの民に怒りが下るからです。
24 そして、人々は剣の刃に倒れ、すべての国々に捕虜として連行されます。そして、異邦人の時が満たされるまで、エルサレムは異邦人に踏みつぶされます。
25 そこで、太陽、月、星々にしるしがあり、地球には混乱に伴う国々の苦難があり、また海と波は大音響を発します。
26 恐怖と地上に起こるべきことを予想し、人々は動けなくなります。天の力が揺れ動されるからです。
27 そしてその時、力と偉大な栄光を帯びて、雲に乗って来られる、人の子を人々は見ます。
28 これらのことが起こり始めると、あなたがたの贖罪は近づいているから、上を見て、頭を上げなさい。」
29 それで、イエスは弟子たちに例え話を話された。「イチジクの木や、他のすべての木を見なさい。
30 すでに芽を出している時、夏が近いと、あなたがたはおのずと分かります。
31 それと同じように、あなたがたも、これらのことが起こっていることを見ると、神の王国は近いと理解します。
32 まことにわたしはあなたがたに言います。すべてのことが起こるまで、この時代は決して過ぎ去りません。
33 天も地も消滅します。しかしわたしの言葉、一つ一つは決して消滅しません。
34 しかし、羽目を外して騒いだり、泥酔したりして、この世の心配事で、心が押しつぶされている所へ、その日が突然あなたがたを襲わぬよう、自分自身に気をつけなさい。
35 なぜなら、全地表に住むすべての者たちにとって、その日は罠としてやって来ます。
36 だから、これら起ころうとするすべてのことを逃れるのに、また人の子の前に立てるのに、自分はふさわしい者だと認めてもらえるように、警戒し、そして常に祈っていなさい。」
37 さて、昼間は、イエスは神殿の敷地で教えていたが、夜は神殿を出て、オリーブと呼ばれる山にお泊まりになっていた。
38 それから、早朝、民衆は皆、イエスの話を聞きに神殿の敷地に来た。
さて、過越祭と呼ばれる種なしパンの祭りが近づいた。
2 それで、民を恐れていたので、大祭司たち、律法学者たちは、イエスを殺す方法を探していた。
3 さて、十二人の一人として数えられていた、イスカリオテという名字のユダの中に、サタンが入った。
4 そこで、ユダは大祭司たちと守衛長たちの所に行き、どうすればイエスを裏切ることができるかと、彼らと相談した。
5 すると、大祭司たちと守衛長たちは喜び、金をユダに与えると合意に達した。
6 それで、ユダは同意し、群衆がいない時、大祭司たちと守衛長たちのため、イエスを裏切る機会を探した。
7 さて、過越のいけにえをほふるべき、種なしパンの日が来た。
8 それで、イエスはペテロとヨハネを遣わし、言われた。「わたしたちが食事をできるよう、行って、わたしたちのため、過越の準備をしなさい。」
9 それでペテロとヨハネはイエスに言った。「どこに準備するか、ご希望の場所はありますか。」
10 すると、イエスは弟子たちに言われた。「見よ。町に入ると、水がめを運んでいる男にあなたがたは出会います。その男について行き、男が入る家へ入りなさい。
11 そこで、その家の主人に言いなさい。『わたしの弟子たちと共に、過越祭の食事をする客間はどこですか、と先生はあなたに言っています。』
12 そこでその家の主人はあなたがたに広い、調度の整った、二階の部屋を見せてくれます。そこで準備しなさい。」
13 そして、ペテロとヨハネは出かけ、イエスが言われた通りの部屋を見つけ、過越祭の準備をした。
14 時刻になり、イエスは食卓にお着きになった。そして十二人の使徒たちもイエスと共に座った。
15 そして、イエスは弟子たちに言われた。「わたしは苦しみの前に、あなたがたと共に、この過越の食事をすることを、切に望んでいました。
16 あなたがたに言います。神の王国でそれが成就される時まで、わたしは二度と過越の食事をしないからです。」
17 そして、イエスはカップを取り、感謝し、言われた。「これを取り、あなたがたの間で分けなさい。
18 なぜなら、あなたがたに言います。神の王国が来るまで、わたしはこの蔓の実からできたものを決して飲むことがないからです。」
19 イエスはパンを取り、それを祝福し、裂き、弟子たちに与え、言われた。「これはあなたがたのために捧げられるわたしの体です。わたしを忘れないため、このことを行ないなさい。」
20 同様に、食事が終わった後、イエスはカップも取り、言われた。「このカップは、あなたがたのために流されるわたしの血による、新しい契約です。
21 しかし、見よ、わたしを裏切る者は、わたしと共にこの食卓に片手を置いています。
22 それで、人の子は、定められた通りにここを去ります。しかし、人の子を裏切るその者に、災いあれ。」
23 それで、仲間内で、こんなことをする者は誰かと、弟子たちは互いに詮索し始めた。
24 さて、弟子たちの中で、誰が一番偉い者と思われるかと、議論が起こった。
25 それで、イエスは弟子たちに言われた。「異邦人の王たちは異邦人たちの上に権力を行使します。そして、異邦人の上に権威を行使する人たちは『援助者たち』と呼ばれています。
26 しかし、あなたがたの間では、全く違います。むしろ、あなたがたの間で一番偉い人は、一番若い人のようになり、支配する人は仕える人のようになりなさい。
27 なぜなら、食卓に着く人と、給仕する人では、どちらが偉いのですか。食卓に着く人ではないのですか。しかし、わたしはあなたがたの間で、給仕をする者のようです。
28 しかし、あなたがたはわたしの試練の間、わたしと共に堪え忍んできた人たちです。
29 そして、わたしの父がわたしに与えてくださったように、わたしもあなたがたに王国を授けます。
30 それは、あなたがたがわたしの王国でわたしの食卓で飲食し、そして王座に着き、イスラエルの十二部族を裁くためです。」
31 さらに、主は言われた。「シモンよ、シモンよ。見よ。サタンはあなたがたを麦のように、ふるいにかけるため、あなたがたを要求してきました。
32 しかし、あなたの信仰が無にならぬよう、わたしはあなたのために祈りました。ですから、向きを変えたら、あなたの兄弟たちを強固な者にしなさい。」
33 それで、ペテロはイエスに言った。「主よ、牢獄でも、死でも、あなたと共に行く覚悟はできています。」
34 すると、イエスはペテロに言われた。「ペテロよ、わたしはあなたに言います。今日、雄鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと、わたしを否定します。」
35 そして、イエスは弟子たちに言われた。「わたしはあなたがたを財布、皮袋、サンダルを持たさず遣わした時、何か不足の物がありましたか。」弟子たちは、「何もありませんでした。」と言った。
36 すると、イエスは弟子たちに言われた。「しかし今、財布を持っている人はそれを手にし、また皮袋を持っている人もそうしなさい。そして、剣を持っていない人は、服を売り、剣を買いなさい。
37 なぜなら、わたしはあなたがたに言います。わたしに関しての、この書きしるされたことは、まだ成就せねばなりません。つまり、『この男は犯罪人と共に数えられた。』そして、『わたしに関することは、終局がある。』と。」
38 それで弟子たちは言った。「主よ、ご覧ください。ここに剣が二振りあります。」すると「十分です。」とイエスは弟子たちに言われた。
39 イエスは出かけ、自らの習慣に従い、オリーブ山に行かれた。そして、弟子たちもイエスに従った。
40 そして、その場所に来ると、イエスは弟子たちに言われた。「誘惑に陥らぬように祈りなさい。」
41 それで、石を投げれば、届くほどの距離を離れ、ひざまずき、祈り、
42 言われた。「父よ、あなたのご意志ならば、このカップをわたしから取り去ってください。しかし、わたしの意志ではなく、あなたのご意志が行なわれますように。」
43 すると、天から一人の御使いがイエスに現れ、イエスに力を注入した。
44 そして、イエスは苦しみ悶えられ、さらに熱心に祈られた。すると、イエスの汗は、血の大きな雫になり、地面に落ち続けた。
45 そして、イエスは祈りから立ち上がり、ご自分の弟子たちの所に来られると、弟子たちは悲しみの果て、眠っているのをご覧になった。
46 それで、イエスは弟子たちに言われた。「なぜ眠っているのですか。立ち上がり、誘惑に陥らぬよう、祈りなさい。」
47 すると、イエスがまだ話しておられる間に、見よ、群衆と十二人の一人であるユダと呼ばれる者が、イエスたちの前に行き、口づけするためイエスに近づいた。27
48 すると、イエスはユダに言われた。「ユダよ。口づけで人の子を裏切るのですか。」
49 イエスの回りにいる人たちは、事件の成り行きを見て、イエスに言った。「主よ、剣で打ちすえましょうか。」
50 そして、弟子の一人が、大祭司の僕を打ちすえ、その男の右の耳を切り落とした。
51 しかし、イエスは答えて、言われた。「このことまでは許しなさい。」そしてイエスはその男の耳に触れ、その男を治された。
52 それで、イエスは大祭司たち、神殿の守衛長たち、そして、ご自分の所に来ていた長老たちに言われた。「あなたがたは、強盗に敵対するように、剣や棍棒を持って出かけて来たのですか。
53 わたしが毎日あなたがたと共に、神殿の敷地にいた間は、あなたがたはわたしに手をかけようとしませんでした。だが、今はあなたがたの時であり、そして闇の力の時です。」
54 そこで、イエスを捕まえ、大祭司の家の中へ連れて行った。しかしペテロは遠く離れて、ついて行った。
55 さて、人々は屋敷の前庭の中央に火をたき、共に座ると、ペテロも皆と共に腰をかけた。
56 すると、一人の女奴隷が、火のそばに座っているペテロを見かけ、じっと見て言った。「この男もイエスといっしょにいました。」
57 しかし、ペテロはイエスを否定して、言った。「女よ、私はあの男を知らない。」
58 そしてしばらく経つと、別の一人がペテロを見て、言った。「あなたも、仲間の一人だ。」しかし、ペテロは言った。「男よ、私は違う。」
59 それから、一時間ほど経つと、また別の一人が自信満々に断言した。「確かにこの者は、あの男といっしょだった。なぜなら、この男もガリラヤ人だからだ。」
60 しかし、ペテロは言った。「旦那、あなたの言っていることが私は分かりません!」すると、ペテロが言い終わらぬうちに、雄鶏が鳴いた。
61 そこで、主は振り向き、ペテロをご覧になった。すると、ペテロは、「雄鶏が鳴く前に、あなたは三回わたしを否定します。」と主が言われた言葉を思い出した。
62 それで、ペテロはその場を離れ、号泣した。
63 さて、イエスを拘留していた男たちは、イエスを侮辱し、何度も殴った。
64 そして、イエスを目隠しして、顔を殴り、尋ねて言った。「お前の預言はどうなっている。28お前を殴ったのは、誰だ。」
65 そして、その他にも、イエスに対して数々の冒涜的な言葉を言った。
66 さて、夜が明けるやいなや、民の長老たち、つまり大祭司たちと律法学者たちは共に集まり、イエスを自分たちの議会29に連れ出して、言った。
67 「お前がキリストなら、我々に言いなさい。」しかし、イエスは彼らに言われた。「もしあなたがたに言っても、あなたがたは決して信じません。
68 そして、もしわたしがあなたがたに聞いても、あなたがたは決して答えず、わたしを解放することもしないのです。
69 この後、人の子が神の力の右の座に座ります。」
70 すると、全員が言った。「では、お前は神の御子息か。」イエスは彼らに言われた。「あなたがたが言ったとおりです。」
71 それで、民の長老たちは言った。「我々はもうこれ以上、証人の必要があろうか。我々は、この男自身の口から聞いたのだから。」
そこで、全群衆は立ち上がり、イエスをピラトの所へ連れて行った。
2 そして、イエスを訴え始め、言った。「この者は国をあらぬ方向に誘導し、カイザルに税を払うことを禁じ、自分自身は王であるキリストだと言っていることが明らかにしました。」
3 そこでピラトはイエスに尋ねて言った。「お前はユダヤ人の王か。」それでイエスはピラトに答えて言われた。「それはあなたの言うことです。」
4 それでピラトは大祭司たちと群衆に言った。「私はこの男に、何の罪科も認めない。」
5 しかし、皆はさらに激しく言った。「この者はガリラヤから始め、この地まで、ユダヤ全土で教え、民を扇動しています。」
6 ガリラヤのことを耳にし、この男はガリラヤ人かとピラトは尋ねた。
7 そして、イエスはヘロデの管轄であると分かり,ヘロデも当時エルサレムにいたから、直ちに、ヘロデの所に送った。
8 そこで、ヘロデはイエスを見ると、非常に喜んだ。イエスについて多くのことをヘロデは聞いており、長い間イエスに会いたいと思っていたからである。またイエスが何か奇蹟を行なうのを見たいと望んでいた。
9 それで、ヘロデは多くの言葉でイエスを問いただしたが、イエスはヘロデに何もお答えにならなかった。
10 それで、大祭司たちと律法学者たちは立ち上がり、イエスを激しく糾弾した。
11 それでヘロデは、自分の兵士たちと共に、イエスを軽蔑で処遇し、嘲笑した。そして、イエスに派手な衣を着せ、ピラトの所に送り返した。
12 その日から、ピラトとヘロデは友人になった。それ以前、二人は互いに敵対していたのである。
13 それでピラトは大祭司たち、支配者たち、そして民を呼び寄せ、
14 彼らに言った。「お前たちは民を惑わす者として、この男を私の所に連れて来た。しかし、見よ。お前たちの前で私はこの男を問いただしたが、お前たちが訴えていることに関して、この男に何の罪科も見あたらない。
15 そして、ヘロデも咎を見いだせなかった。お前たちはヘロデの所にこの男を送り返したが、見よ、死に相当することは、何もイエスによって行なわれていない。
16 よって、余は、イエスをムチ打ち、釈放する。」
17 (なぜなら、その祭りに囚人一人を、釈放する必要がピラトにあったからである。)
18 それで、皆は一斉に叫んで、言った。「この男を連れて行き、バラバを私たちに釈放せよ。」
19 バラバは、町で起こったある反乱事件で、殺人のため投獄されていた。
20 したがって、イエスを釈放しようとするピラトは、再度群衆に呼びかけた。
21 しかし、群衆は叫んで言った。「イエスを十字架につけろ。イエスを十字架につけろ。」
22 すると三度目にピラトは言った。「なぜだ。この男はどんな悪を行なったのか。私はイエスに、死に当たる理由は見つけられなかった。だから、イエスをむち打ち刑にし、釈放する。」
23 しかし、群衆は執拗に、イエスを十字架につけよと、大声で要求した。そして、群衆と大祭司たちの声が勝った。
24 それで、群衆の願い通り、ピラトは判決を下した。
25 そして、ピラトは、群衆が願った者、つまり反乱と殺人のため、牢獄に投げ込まれていた者を釈放したが、群衆の意に沿いイエスを引き渡した。
26 そして、群衆がイエスを連れて行く途中、田舎から来たクレネ人のシモンを拘束し、十字架を背負わせ、イエスの後から運ばせた。
27 さらに、大勢の民と、イエスを悲しみ、そして嘆く女たちがその後に従った。
28 しかし、イエスは女たちの方に向きを変え、言われた。「エルサレムの娘たちよ。わたしのために泣いてはいけません。むしろ、自分自身と自分の子どもたちのために泣きなさい。
29 なぜなら、『不妊の女、子を産んだことのない子宮、授乳したことのない乳房は祝福されている。』と人々が言う日々がまことに来るからです。
30 その時、人々は山に向かい、『私たちの上に倒れてくれ。』そして丘に向かい、『私たちを埋めてくれ。』と言い始めます。
31 というのは、こんなことを生木にするのなら、一体、枯れ木には何をするのですか。」
32 それで、犯罪人である別の二人も、イエスと共に処刑のため連れて行かれた。
33 そして、「カルバリ」30と呼ばれる所に来た時、兵隊たちはイエスを十字架につけ、そして犯罪人の一人をイエスの右側、もう一人を左側の十字架につけた。
34 すると、イエスは言われた。「父よ、この者たちを赦してください。彼らは何をしているのか分からないのですから。」そして、兵隊たちはくじを引き、イエスの服を分配した。
35 そして、群衆は立って成行きを見ていた。さらに、群衆と共にいた支配者たちもあざ笑い、言った。「あの男は他人を救ったのだ。もし神が選ばれたキリストならば、自らを救わせろ。」
36 兵隊たちもイエスの所に行き、イエスを馬鹿にしながら、酸い葡萄酒を差し出した。
37 そして、言った。「お前はユダヤ人たちの王なら、自分を救え。」
38 そして、イエスの頭上に、ギリシャ文字、ラテン文字、ヘブライ文字で、「これがユダヤ人の王である。」という罪状も書かれていた。
39 そして、十字架上の犯罪人の一人はイエスを冒涜し、言った。「お前がキリストなら、己と俺たちを救え。」
40 しかし、別の犯罪人は答え、その男を非難し、言った。「お前も同じ刑なのに、神さえも恐れていないのか。
41 それに、自らの行為の当然の報いを受けているのだから、俺たちは完全に正しく裁かれた。しかし、この方は不法なことは何もしたことはない。」
42 それでその男はイエスに言った。「主よ、あなたがあなたの王国に入る時、私を忘れないでください。」
43 それで、イエスはその男に言われた。「まことに、わたしはあなたに言います。あなたはわたしと共に今日、パラダイスにいます。」
44 さて、第六時間目ころから、全地上が第九時間目31まで暗くなった。
45 その時、太陽は暗くされ、神殿の幕は二つに裂かれた。
46 それで、イエスは大声で叫び、そして言われた。「父よ、あなたの御手にわたしの霊を委ねます。」こう言って、イエスは息を引き取られた。
47 そこで、この出来事を見た百人隊長は、神に栄光を捧げ、言った。「本当にこの方は正しい人だった。」
48 そして、その光景を見に集まった群衆全員は、数々の実行されたこれらのことを目撃し、胸を叩きながら帰って行った。
49 しかし、イエスの知人たち、またガリラヤからイエスに従って来た女たちは、遠くに立って、これらのことを見つめていた。
50 さて、見よ、議会員で、ヨセフと言う名の男がいた。善人で、正しい男であった。
51 この男は議会が決議し、実行したことに賛成していなかった。ヨセフはユダヤ人のある町のアリマタヤの出身で、ヨセフ自身も神の王国を待ち望んでいた。
52 この男はピラトのもとに行き、イエスの遺体を願った。
53 そして、ヨセフはイエスの遺体を取り降ろし、亜麻布で包み、誰も葬られたことのない、岩を削って作った墓にイエスを納めた。
54 その日は「準備の日」であり、安息日は近づいていた。
55 そして、ガリラヤからイエスの供をして来た女たちが後に従い、墓とイエスの遺体はどう納められたかを見届けた。
56 そしてその女たちは帰って、香料と香油を準備した。そして、掟通り、安息日に休んだ。
さて、その週の最初の日に、夜明けごく早く、女たちは他の女たち数人と、用意した香料を持って墓に行った。
2 すると、例の石が墓から転がされているのが分かった。
3 それで女たちは中に入ったが、主イエスの遺体は見つからなかった。
4 ことの次第はこうであった。女たちはこのことにすっかり動転していると、見よ、光り輝く服を着ている二人の男が、女たちの側に立っていた。
5 それで、女たちは恐れおののき、頭を垂れると、二人は女たちに言った。「なぜ生きている方を、死人たちの中に捜しているのですか。
6 復活されたので、イエスはここにはいらっしゃいません。まだガリラヤにおられた時、その方があなたがたにどう話されたかを思い出しなさい。
7 イエスは言われた。『人の子は罪深い男たちの手に渡され、十字架につけられ、三日目に復活しなければなりません。』」
8 すると、女たちはイエスの言葉を思い出した。
9 それで、女たちは墓から戻り、十一人と他の全員にこれらのことを伝えた。
10 使徒たちにこれらのことを伝えたのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、ヤコブの母であるマリヤ、その他共にいた女たちであった。
11 それで、女たちの言葉は、荒唐無稽な話に聞こえ、使徒たちは女たちの言葉を信じなかった。
12 しかし、ペテロは立ち上がり、走って墓に行き、身を屈め見ると、亜麻布だけが置かれていた。起こったことに驚き、ペテロは、自らも不思議に思いながら帰った。
13 さて、見よ、弟子の二人はその同じ日に、エルサレムから七スタディオン32離れている、エマオという村へ向け旅をしていた。
14 そして、起こったすべてのことを語り合った。
15 ことの次第はこうであった。二人が語り合い、論じ合っていると、イエスご自身が近づき、共に歩かれた。
16 しかしイエスであると分からないよう、二人の目は制限を受けていた。
17 そして、イエスは二人に言われた。「悲嘆にくれ歩きながら、二人で何の話をしているのですか。」
18 それで、クレオパという名前の一人が答えて、イエスに言った。「あなたはこの数日、エルサレムで起こったことを知らない、ただ一人のよそ者とでも言うのですか。」
19 それでイエスは二人に言われた。「何事ですか。」それで、二人はイエスに言った。「ナザレのイエスに関することです。この男の方は神と民全員の前で、行ないも言葉も力ある預言者でした。
20 そして、大祭司たちと私たちの支配者たちが、イエスを、死刑の判決を受けさせるため引き渡し、十字架につけた計略のことです。
21 しかし、イスラエルを贖ってくださる方だと私たちは望みをかけていました。そればかりでなく、これら一連のことが起こってから今日で三日目なのです。
22 おまけに、朝早く墓に行った私たちの仲間のとある女たちは、私たちを驚かしました。
23 イエスの遺体は探したが、見あたらず女たちは帰って来ました。そして、イエスは生きておられると告げた御使いたちの幻を見たと言うのです。
24 そして、私たちの仲間のある人たちが墓に行きますと、女たちが言った通りだと分かりました。やはり、イエスの姿は見あたりませんでした。」
25 それで、イエスは二人の弟子に言われた。「おお、愚か者たち、預言者たちが言ったすべてのことを、信じることを学ぶのに、心の働きの遅い者たちよ。
26 キリストはこれら一連のことを苦しみ、それから自らの栄光に入るはずではなかったのですか。」
27 そして、モーセ33および全預言者を始めとする、すべての御言葉の中のイエスご自身に関することをお示しになった。
28 そして、二人が目的の村に近づいても、イエスはまだ歩み進めるご様子を示された。
29 しかし、二人はイエスに強く勧めて言った。「もう夕刻で、日は傾いています。私たちといっしょにご滞在ください。」それで、イエスは彼らと滞在するため、中に入られた。
30 ことの次第はこうであった。イエスはその二人と共に食卓につき、パンを取り、祝福し、裂き、二人に与えられた。
31 そこで、二人の目は開かれ、イエスであると分かった。そして、イエスは二人の視界から姿を消された。
32 そこで、二人は互いに言った。「道の途中、あの方が私たちと話した時、また私たちに御言葉をお示しになってくださった時、私たちの心は燃えていたではありませんか。」
33 そして、その時すぐ、二人は立ち上がり、エルサレムに戻ると、十一人と、その仲間たちが共に集まっているのが分かり、
34 言った。「主はまことに復活し、シモンに現れました。」
35 それから、道の途中で起こった様々なこと、そして、あの方がパンを裂く時、イエスであると分かったことを、二人は伝えた。
36 それで、二人はこれらのことを話していると、イエスご自身が皆の中央に立ち、言われた。「あなたがたに平安あれ。」
37 しかし、全員恐怖におちいり、恐れおののき、幽霊を見ているのだと思った。
38 すると、イエスは皆に言われた。「あなたがたはなぜ動転しているのですか。そして、あなたがたの心に、なぜ疑いが起こるのですか。
39 わたしの手と足を見なさい。わたしそのものです。手で触れ確認しなさい。あなたがたが目にしている通り、わたしには肉も骨もあります。幽霊にはないのです。」
40 そして、イエスはこう言われると、弟子たちにご自分の手と足をお示しになった。
41 しかし、喜びのあまり、弟子たちはまだ信じず、驚いていると、イエスは言われた。「あなたがたはここに、何か食べ物を持っていますか。」
42 それで弟子たちはイエスに焼いた魚一切れと蜜蜂の巣の一部を差し上げた。
43 イエスはそれらを手に取り、皆の前で召し上がった。
44 それでイエスは弟子たちに言われた。「わたしについて、モーセの律法、預言者たち、そして詩篇に書いてあることはすべて成就される必要があるとわたしがまだあなたがたと共にいた時、あなたがたに話した言葉はこれです。」
45 それから、弟子たちが聖書を理解できるように、彼らの理解力の制限を解放された。
46 そして、イエスは弟子たちに言われた。「こう言う訳で書かれ、そしてこう言う訳で、キリストには苦しみ、また、
47 また、キリストの名によって、悔い改めと罪の赦しはエルサレムから始まり、すべての国々に説かれます。
48 そして、あなたがたはこれらのことの証人です。
49 そして、見よ。わたしは我が父の約束をあなたがたの上に送ります。あなたがたが、高き所より力を身に付けて頂くまで、エルサレムにとどまりなさい。」
50 それから、イエスは弟子たちをベタニヤまで連れて行き、両手を上げ、彼らを祝福された。
51 さて、ことの次第はこうであった。弟子たちを祝福している間に、イエスは弟子たちから離れ、天に引き上げられた。
52 そして、弟子たちはイエスを礼拝し、驚喜してエルサレムに戻った。
53 そして、絶えず神殿の敷地にいて神を賛美しつつ、祝福していた。アーメン。
このギリシャ語の単語は、「上から」という意味もある。 ↩
ユダヤ教の祭司が神殿の奉仕をする順番を決めるグループであった。 ↩
当時のローマ帝国のすべての地方。 ↩
当時の表現で、一週間という意味。 ↩
ギリシャ語のβαπτισμα(baptisma、バプティスマ)の意味は、「浸し、浸すこと、漬けること、沈めること」である。(「新約聖書ギリシャ語小辞典」、織田昭編、59ページ)。 ↩
現代はハンセン病と言う。 ↩
弟子(ギリシャ語 μαθητης、aposotolos)とは、従う人。使徒(ギリシャ語 αποστολος、mathetes)とは、遣わされた人である。 ↩
現代はハンセン病と言う。 ↩
この葦は、弱い人間の象徴である。ここでは、ヨハネを指す。 ↩
当時の子供たちの遊び。 ↩
この場合、「知恵」は擬人法で女性で受ける。 ↩
負債を返済しなければ、牢獄に入れられる。 ↩
ローマ軍の六千人隊。 ↩
悪魔を入れる牢獄のようなもので、一度入ると、出ることはできない。 ↩
「ハエの主」という意味で、悪魔を指している。 ↩
儀式的な洗いであった。 ↩
約四五センチ。 ↩
小さくて少額の銅貨。 ↩
四十リットルぐらい。 ↩
一バテは三七リットルぐらいである。 ↩
一コルは三七〇リットルぐらいである。 ↩
現代はハンセン病と言われる。 ↩
パレスチナの鷲は、死んだものの肉を食べることがある。 ↩
六十日分ぐらいの労賃。 ↩
小さくて少額の銅貨。 ↩
原語では、山は冠詞付きの複数形である。 ↩
この口づけは、頬に軽く唇を触れる挨拶であった。 ↩
預言は神から預かった言葉である。ゆえに、イエスは過去、未来、全ての出来事は、イエスは父なる神から預かっている預言者である。 ↩
当時のイスラエルの最高裁判所。 ↩
ラテン語で、「どくろ」という意味である。 ↩
午後三時ごろ。 ↩
一スタディオンは約一.六キロメートル。 ↩
モーセ五書を指す。 ↩