マルコ

マルコの福音書

1章

神の御子息、イエス・キリストの福音のはじめ。
2 数々の預言の書に書いてあるように、「見よ、わたしはわたしの使者をあなたの眼前に遣わす。彼はあなたの前にあなたの道を用意する。
3 荒野で叫ぶ者の声がする。あなたがたは主の道を準備し、その方の道をまっすぐにしなさい。』」と。
4 ヨハネは来て、荒野で浸礼1を授けて、罪の赦しに至る悔い改めの浸礼を説いていた。
5 そこで、ユダヤ全土、そしてエルサレムからの人たちは、ヨハネの所にやって来て、罪を言い表し、ヨルダン川でこの男によって浸礼を授けられた。
6 そして、ヨハネはらくだの毛の衣を着て、動物の皮の帯を腰にしめていた。そして、彼の食べ物はバッタと野の蜜であった。
7 そして、ヨハネは説いて言った。「私より偉大な方が、私の後からおいでになっています。私自身は、この方の履き物のひもをかがんで解く値さえありません。
8 私はもちろん、お前たちに水で浸礼を授けているが、その方はあなたたちに聖霊で浸礼をお授けになります。」
9 そして、ことの次第はこうであった。当時、イエスはガリラヤのナザレから来て、ヨルダン川でヨハネによって浸礼を授けられた。
10 そして、イエスが水中から立ち上がると、すぐに、天が開き、神の御霊が鳩のように降りてきて、イエスの上に来るのをヨハネは見た。
11 そして、天から声がした。「あなたこそがわたしの愛する子である。わたしが喜ぶ者である。」
12 そして、すぐ、イエスを荒野へと御霊は駆り立てた。
13 そして、イエスはその荒野に、サタンに誘惑されながら、野生の動物と共に四十日間、そこに滞在された。そして御使いたちがイエスに仕えていた。
14 さて、ヨハネが投獄された後、イエスはガリラヤに来られ、神の王国の福音を説き、
15 言われた。「時は満ち、神の王国は近づきました。悔い改め、福音を信じなさい。」
16 そして、ガリラヤの海の岸辺を歩かれていた時、イエスはシモンとその兄弟アンデレが、網を海に投げ入れているのをご覧になった。ふたりは漁師であったからである。
17 そして、イエスはその二人に言われた。「わたしに従いなさい。そしてわたしはあなたがたを人間をとる漁師にします。」
18 そこでふたりはすぐ網をそのまま残し、イエスに従った。
19 そして、そこから先に進んで行くと、船に乗って網を繕っているゼベダイの息子ヤコブとその兄弟ヨハネを、イエスはご覧になった。
20 そしてイエスは即座に、二人を呼ばれた。すると二人は雇い人と共にいた父親ゼベダイを船に残し、イエスに従った。
21 さて、彼らはカペナウムに入り、そして安息日にイエスはすぐシナゴーグに入り、教えられた。
22 すると、人々はイエスの教えに驚嘆していた。イエスは、律法学者2たちと違い、権威ある人として群衆を教えて来られたからである。
23 さて、彼らのシナゴーグに、汚れた霊を持つ男がいた。そして、この男は叫んで、
24 言った。「俺たちをほっておいてください。ナザレのイエスよ、俺たちはあなたと何の関係がありますか。俺たちを滅ぼしに来たのですか。あなたがどなただか、俺は知っています。神の聖なる人です。」
25 しかし、イエスはその霊を強く咎めて言われた。「黙れ。この男から出て来い。」
26 それで、汚れた霊はこの男の身をもだえさせて、大声でわめき、男から出た。
27 それで、全員は驚き、互いに言葉を交わし、言った。「これは何だ!これは何か新しい教えですか。この方が権威を持っていて命じると、悪霊たちでさえ、この方に従います。」
28 こうして、イエスに関する名声は、すぐ、ガリラヤ地方一帯に広がった。
29 さて、シナゴーグを出るとすぐ、イエス一行は、ヤコブとヨハネと共にシモンとアンデレの家に入られた。
30 しかし、シモンの義母は熱で寝ていた。それで、皆はすぐ義母のことをイエスに話した。
31 そこで、イエスは側に行かれ、その女の手を取り、立たせると、熱はたちどころに去った。そして、女はイエスたちを接待した。
32 日が沈み夜になると、すべての病人と悪霊に占領された皆を、人々はイエスの所に連れて来た。
33 そして、町の人全員が戸口の所に集まっていた。
34 そして、イエスは様々な病気で苦しむ多くの人たちを治し、多くの悪霊を追い出された。そして、悪霊たちはイエスを知っていたから、イエスは悪霊たちが話すのをお許しにならなかった。
35 さて、翌朝、まだ暗いうちに、イエスは起き上がり、出かけ、寂しい所に行き、そこで祈られた。
36 そして、シモン一行はイエスを捜しに出た。
37 そして見つけると、イエスに言った。「皆があなたを求めています。」
38 だが、イエスはシモンたちに言われ、「わたしが説けるように、次々と隣の町に行きましょう。わたしはそのために出て来たのだからです。」
39 そして、全ガリラヤでイエスはそれぞれのシナゴーグで説いたり、また悪霊を追い出したりしておられた。
40 すると、一人のレプラ病3の人がイエスの所に来て、願って拝して言った。「主よ、もしあなたが望めば、あなたは私を清めることができます。」
41 そこでイエスは心を動かされ、ご自分の手を差しのべ、その男に触れ、言われた。「わたしはそう望みます。清くなりなさい。」
42 そして、イエスが言われると、たちどころにその人のレプラ病は消え、男は清められた。
43 そして、イエスはその男を厳しく警告し、送り出された。
44 さらにイエスは男に言われた。「心して誰にも話さないように。途中で、あなた自身を祭司に見せ、その時、人々に証になるように、清めに関する、モーセが命じた捧げ物をしなさい。」
45 しかし、その男はそこを出て、多くのことを話し、多くの所でこのことを話しはじめたので、イエスはもう自由に町に入れず、人の気配のない外におられると、人々が四方からイエスの所にやって来た。

2章

さて、イエスは数日後、またカペナウムに入られた。そして、イエスは家におられるという話しが知れ渡った。
2 それで、すぐ大勢の人たちが集まったので、全員を受け入れる場所がなくなり、戸口の所さえもいっぱいであった。そこで、イエスは皆に御言葉を説かれた。
3 すると、中風の男を四人の男が運んで来る、一行がイエスの所に来た。
4 すると、人が多すぎて、イエスのそばに行くことができず、イエスのおられる所の屋根をはがした。そして、押し入り、中風の男が横になっている寝床を降ろした。
5 イエスは男たちの信仰を見て、中風の男に言われた。「子よ、あなたの罪は赦されました。」
6 すると、そこに座っていた律法学者のある者たちが、心の中で議論していた。
7 「この者はなぜこのように冒涜する言葉を口にするのか。神、お一人のほか、誰が罪を赦すことができるのか。」
8 しかしすぐ、イエスは自らの霊の中で、学者たちが仲間同士で議論しているの感知され、学者たちに言われた。「なぜあなたがたは心の中でこれらのことを議論していますか。
9 中風の男に、『あなたの罪は赦されました。』と言うのと、『起き上がり、あなたの寝床を手に持ち、そして歩きなさい。』と言うでは、どっちが簡単でしょうか。
10 しかし、人の子は、地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたが知るためにです。」それでイエスは中風の男に言われた。
11 「あなたに言います。起き上がれ、あなたの寝床を持ち上げて、あなたの家に帰りなさい。」
12 するとたちどころに、男は起き上がり、寝床を持ち上げて、皆の前を出て行ったので、皆驚き、神に栄光を捧げ、「私たちはこのようなことを見たことがありません。」と言った。
13 さて次に、イエスは出て再び海辺に行かれた。すると、全群衆がイエスの所に来たので、イエスはその人たちを教えられた。
14 そして、イエスが通りかかると、収税所に座っている、アルパヨの息子レビをご覧になった。イエスはレビに言われた。「わたしについて来なさい。」それで、レビは立ち上がり、イエスに従った。
15 そうして、イエスがレビの家で食卓に着いておられると、大勢の収税人や罪人もイエスの弟子たちと共に食卓に着いていた。彼らは大勢で、イエスについて来たからである。
16 そして、律法学者たちとパリサイ派の人たちは、イエスが収税人たちと罪人たちと共に食卓に着いているのを見て、イエスの弟子たちに言った。「あなたがたの先生はなぜ、収税人や罪人と共に飲み食いをするのですか。」
17 イエスはこれを聞き、彼らに言われた。「医者を必要とするのは、病人であり、健康な人ではありません。正しい人でなく、わたしは罪人を呼び集め、悔い改めさせるために来ました。」
18 さて、ヨハネの弟子たちとパリサイ派の弟子たちは、断食をしていた。そこで彼らはイエスの所に来て言った。「ヨハネの弟子たちとパリサイ派の人たちは断食しますが、あなたの弟子たちは断食しないのは、なぜでしょうか。」
19 すると、イエスは彼らに言われた。「花婿の立会人たちは花婿と共にいる間、断食ができますか。花婿が共にいる限り、彼らは断食はできません。
20 しかし、花婿が彼らから取り上げられる日が来ます。その時、彼らは断食します。
21 また、古い服に縮んだことのない布を当てる人はいません。その布切れは服を引き裂き、破れた所はもっとひどくなるからです。
22 また、誰も新しい葡萄液4を古い革袋には入れはしません。入れれば、革袋は破れ、ぶどうの果汁はこぼれ、革袋は裂けるからです。だから、新しいぶどうの果汁は新しい革袋に入れるべきです。」
23 さて、イエスが安息日に穀物畑の中を通られた時のことであった。道を進みながら、イエスの弟子たちは穂を摘み始めた。
24 そこで、パリサイ派の人たちはイエスに言った。「見よ、あなたの弟子たちはなぜ、安息日に律法に反することをしているのですか。」
25 しかし、イエスは彼らに言われた。「ダビデが食べ物に事欠き、空腹になった時、ダビデと供をしていた人たちが何をしたか、読んでいないのですか。
26 すなわち、アビヤタルが大祭司であった時、ダビデは神の家に入り、祭司たちだけが、食べることが許されている供えのパンを食べ、そして、供をしていた者にも与えました。」
27 そして、イエスはパリサイ派の人たちに言われた。「人間は安息日のためではなく、安息日は人間のためにつくられたのです。
28 従って、人の子は、安息日の主でもあります。」

3章

さて、イエスはまたシナゴーグに入られた。そしてそこに、手のなえた男がいた。
2 そして、そこにいた人たちはイエスを訴えようとよく見張った。それはイエスが安息日にこの男を治すかどうかである。
3 そして、イエスは手のなえた男に言われた。「立ち上がり、真ん中に行きなさい。」
4 そして、イエスは全員に言われた。「安息日に、善を行なうのと、悪を行なうのと、また、命を救うのと、命を奪うのと、どちらが律法にかないますか。」しかし、全員無言であった。
5 そして、そこの人たちの心のかたくなさを悲しみ、怒りを持って全員を見回し、イエスはその男に言われた。「あなたの手を伸ばしなさい。」それで男は手を伸ばした。すると、その手はもう一方の手と同じように元通りになった。
6 そこで、パリサイ派の者たちは出て行き、すぐイエスに反対して、抹殺する方法を、ヘロデ党の者たちと企み始めた。
7 それで、イエスは弟子たちと共に海へ退かれた。すると、ガリラヤからの大群衆がついて来た。そして、ユダヤ、
8 エルサレム、イドマヤ、ヨルダンの向こう、ツロとシドンから、イエスがどんなに多くのことをなさっているかを聞いて、大群衆がイエスの所に来た。
9 それで、群衆がイエスを押しつぶすことのないように、小舟を準備するようにと、イエスは弟子たちに言われた。
10 なぜなら、イエスは多くの人を治したので、身体の悩みを抱えている人たち皆、イエスに触れようと、押しかけて来たからである。
11 そして、汚れた霊たちはイエスを見る度に、イエスの御前にひれ伏し叫んで言った。「あなたは神の御子息です!」
12 しかし、イエスはご自身のことを明らかにしないよう、汚れた霊たちに何度も厳しく警告をされていた。
13 さて、イエスは山に登り、呼びたい人たちをご自分の所に召された。そして、その者たちはイエスの所に来た。
14 そして、十二人を指名された。その者たちはイエスと同行し、そして教えを説くために、遣わす十二人である。
15 また、この者たちが病気を治し、悪霊を追い出す力を持つためでもあった。
16 イエスがペテロにシモンと名づけられた。
17 それに、ゼベダイの息子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ、イエスはこの男たちにボアネルゲ、すなわち、「雷鳴の息子たち」という名をつけられた。
18 そして、アンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの息子ヤコブ、タダイ、カナン人のシモン、
19 そして、イエスを裏切ったイスカリオテのユダもいた。そして、全員、家に入った。
20 また、パンさえ食べることができないほど、群衆が再び集まって来た。
21 しかし、イエスの身内の者たちはこれを聞き、イエスを捕まえようと、出かけて行った。「あの男は狂っている。」と身内の者たちが言ったからである。
22 そしてまた、エルサレムから下って来た律法学者たちは言った。「この者はベルゼブル5を持っている。」そして、「悪霊の支配者によって、この者は悪霊を追い出している。」
23 それで、イエスは学者たちをご自分の所に呼び寄せ、例え話で話された。「サタン6はどうすればサタンを追い出せますか。
24 そして、ある王国が、もしその王国内で対立があり分裂すれば、その王国は立ちいきません。
25 そしてまた、もしある家それ自体の中で対立し、分裂すれば、その家は立ちいきません。
26 もしサタンが立ち上がり、自らの中で対立し、分裂すれば、サタンは立つことができず、終わりです。
27 もしまず強い男を縛らない限り、誰も強い男の家に入り、財産を強奪できるわけはありません。縛れば、その男の財産を強奪できます。
28 まことに、わたしはあなたがたに言います。人の子たちのあらゆる罪も、人の子たちが口にするどんな冒涜も赦されます。
29 しかし、聖霊に対する冒涜を口にする者は決して容赦されることなく、永遠の裁きを受ける危険な状態にあります。」
30 それは、学者たちが、「イエスは汚れた霊を持っている。」と言ったからである。
31 次いで、イエスの兄弟たちと母がやって来て、戸外に立ち、人をやりイエスを呼ばせた。
32 すると、イエスの周囲に座っていた大勢の人がイエスに言った。「ご覧なさい、あなたのお母さんと兄弟たちが外にいて、あなたを探しています。」
33 しかしイエスは答えて、その人たちに言われた。「わたしの母とか、わたしの兄弟たちとは誰ですか。」
34 そこで、イエスはご自分の周囲に座っている人たちを見回し、言われた。「わたしの母とわたしの兄弟たちをご覧なさい。
35 なぜなら、わたしの父のご意志を行なう人は誰であれ、その人はわたしの兄弟であり、姉妹であり、母です。」

4章

さて、イエスは海辺で再び教え始められた。すると、大群衆がイエスの所に集まったので、イエスは座るため船に乗り、海に出られた。そして、群衆はみんな海に向かって陸にいた。
2 それからイエスは群衆に多くのことを例え話で教え、その中で、次の教理を語られた。
3 「聞きなさい。見よ。種を蒔く人が、種蒔きに出かけました。
4 そうして、その男が蒔くと、路肩に落ちた種がありました。すると、空の鳥たちが来てそれを食べつくしました。
5 また、あまり土のない岩地の上に落ちた種もあったが、そこは土が深くなかったため、その種はすぐ芽を出しました。
6 しかし、太陽が昇ると、やけて枯れてしまいました。根がなかったためです。
7 また、茨の中に落ちた種もありました。すると茨が伸びて、種を覆いふさぎ、そして実は稔りませんでした。
8 しかし、良い土に落ちた種は芽を出し実を結び、あるものは三十倍、あるものは六十倍、またあるものは百倍にもなりました。」
9 それから、イエスは彼らに言われた。「聞く耳のある人には聞かせよ。」
10 しかし、イエスが一人になると、十二人の弟子と共に、周りにいた人たちは、この例え話について質問し出した。
11 それで、イエスは言われた。「神の王国の奥義を知ることは、あなたがたにはすでに許されています。しかし、他の人たちには、すべて、例え話で知らされます。
12 それは、『彼らは見ることは見るが、認めず、聞くことは聞くが、理解しない。だから彼らは向きを変えず、よって罪は赦されない。』」
13 そして、イエスは周りにいた人たちに言われた。「この例え話が分からないのですか。それで、どうしてすべての例え話を理解できるのですか。
14 種を蒔く人は、御言葉を蒔きます。
15 これは、御言葉が蒔かれた道端にいる人たちのことです。聞くとすぐ、サタンが来て、聞いた人たちの心の中に蒔かれた御言葉を持ち去ります。
16 そして、同様に、岩地に蒔かれた人たちは御言葉を聞き、喜びを持ってすぐ御言葉を受け入れます。
17 しかし、この者たちは自らの中に根を持っていないが、しばらくは耐えます。後で、御言葉のために苦難や迫害が起こると、たちどころにつまずきます。
18 さて、茨の中で御言葉を蒔かれた人たち、この人たちは御言葉を聞く人たちです。
19 しかし、今の時代の不安、富の惑わし、その他の物の欲望も入り込み、御言葉を覆いふさぎ、御言葉は実を結ぶことはないのです。
20 しかし、良い土に種を蒔かれた人たちがいます。この人たちは御言葉を聞き、それを受け入れ、そして実は稔ります。ある人は三十倍、ある人は六十倍、ある人は百倍に稔ります。」
21 また、イエスは群衆に言われた。「灯りは升や床の下に置くべき物でしょうか。そうではなく、燭台の上に置くべきではありませんか。
22 なぜなら、明らかにならないで、隠れているものはないように、また隠れているものがすべて明らかになるためです。
23 誰であれ、聞く耳のある者には聞かせよ。」
24 そして、周りにいた人たちに言われた。「耳にすることに注意せよ。あなたがたの量る秤で、あなたがたは量られるからです。そして、耳にするあなたがたには、もっと加算されます。
25 誰であれ、持っている人は与えられ、誰であれ、持っていない人は、持っているものさえも、取り上げられるからです。」
26 そして、イエスは言われた。「神の王国は、男が土地に種を撒き散らすようなものです。
27 そして、男は夜は寝、昼は起き、そして種は芽を出し、成長するが、その男自身、その訳を知りません。
28 地はおのずから実を結ばせるからです。まず発芽し、それから頭、その後その中に豊かな実をつけます。
29 そして、実が熟すると、すぐ鎌を入れます。刈り入れの時が来たからです。」
30 そしてイエスは言われた。「神の王国は、何に似ているでしょうか。そして、何の例え話で説明しましょうか。
31 神の王国はからし種のようです。地に蒔かれると地上のどの種よりも小さいが、
32 いったん蒔かれると、成長し、畑のどの作物より大きくなり、大きな枝を広げ、空の鳥たちは巣を作るために来ます。」
33 そして、このような多くの例え話で、人々の聞いて理解する能力に従い、イエスは御言葉を話された。
34 イエスは例え話によらずに人々に話すことはなかった。そして、イエスと弟子たちだけになった時、あらゆることを弟子たちに解き明かされた。
35 さて、その日、夜が来た。イエスは弟子たちに言われた。「向こう岸に渡りましょう。」
36 それで、弟子たちは群衆を離れ、イエスをその船に乗せたまま連れて行った。他に数艘の小舟が同行した。
37 すると、激しい暴風が発生し、その船の中に波が激しく入り込み、ほとんど水浸しになるところであった。
38 しかし、イエスは船尾で枕をして寝ておられた。弟子たちはイエスを起こして、言った。「先生、私たちが消滅しても気にしないのですか。」
39 すると、イエスは起き上がり、風を叱りつけ、海に言われた。「静まれ、騒ぐな。」すると風はやみ、大凪になった。
40 そこで、イエスは弟子たちに言われた。「なぜそんなに恐れるのですか。それほどまでも、信仰がないのですか。」
41 すると弟子たちは非常に恐れ、互いに言った。「風と海さえもが聞き従うこの方は、いったいどなたなのでしょうか。」

5章

さて、イエス一行は海の向こう岸、つまりガダラ人の地方に行かれた。
2 船を降りられるとすぐ、墓地から悪霊に占領された一人の男がイエスに出会った。
3 男は墓地に住まいがあり、そして、鎖を使ってさえ、誰もこの男を縛ることができなかった。
4 それで、誰もが、この男を取り押さえることができなかったのは、何度拘束しても、鎖を引っ張って外し、手錠を壊してしまったからである。
5 そして、男はいつも、夜も昼も、山の中や、墓地にいて、叫んだり自分を石で切ったりしていた。
6 しかし、男は遠くからイエスを見ると、走って、イエスを拝んだ。
7 そして、この男は大声で叫んで言った。「いと高き神の御子息であるイエスよ、私はあなたと何の関係がありますか。神によってお願いします。私を拷問にかけないでください。」
8 「汚れた霊よ、この男から出よ。」とイエスは男に言われたからである。
9 それから、イエスは霊に尋ねられた。「お前の名は何と言うか。」すると、霊は答えて言った。「私の名はレギオン7です。私たちは大勢いるからです。」
10 そしてまた、この地から仲間たちを追い出さないように、汚れた霊はイエスに強く願った。
11 さて、この山地の近くで、豚の大きな群れが餌を食べていた。
12 それで、悪霊たち全員はイエスに願って言った。「私たちを豚に送ってください。豚たちの中に入ることができるのですから。
13 すると直ちに、イエスは悪霊たちの願いを許可された。そして、汚れた霊たちは男を出て、豚の体に入った。(およそ二千匹いた。)そして、豚の群れは急な崖をいっせいに転げ落ち、海に入り、海中で溺れ死んだ。
14 それで、豚飼たちは逃げ出し、町や各地で人々に伝えた。それで、人々は何が起こったのかを確認するため、やって来た。
15 すると、人々はイエスの所に来た。そして、悪霊たちに占領されていた、あのレギオンに占領されていた男が、服を着、正気に戻って座っているのを見て、皆恐れた。
16 それで、このことを目撃した人々は、悪霊に占領されていた男に起こったことと豚のことを触れ回った。
17 すると、この地方から去るように、人々はイエスに願い出た。
18 そして、イエスが船に乗られると、悪霊に占領されていた男は、共に行けるようにイエスに願い出た。
19 しかし、イエスは許可されず、言われた。「自分の家に帰り、あなたの身近な人々に、主があなたにどんなことをなさったかを、また、主があなたをいかに哀れんでくださったかを伝えなさい。」
20 それでこの男は立ち去り、デカポリスでイエスがどんなに大きいことを自分にして下さったかを一部始終、説き始めた。すると、人々は皆、不思議に思った。
21 さて、イエスがまた船で向こう岸に渡られると、イエスの所に大群衆が集まった。その時イエスは海辺におられた。
22 そして見よ、ヤイロという名の、シナゴーグの支配者の一人が来て、イエスを見ると、足下にひれ伏し、
23 そして、イエスに必死に願って言った。「私の小さな娘が死にかけています。病気を治すため、お出でになって、娘の上に御手を置いてください。そうすれば、娘は生き続けます。」
24 それでイエスはヤイロと共に行かれた。すると、群衆はイエスについて行き、イエスを押しつけた。
25 ところで、ある女がいて、十二年間、不正出血が止まらず、
26 そして、大勢の医者たちから数々、ひどい目にあわされた。この女は所持金すべて使ったのに、良くはならず、かえって悪くなった。
27 女はイエスのことを聞き、群衆に混じりイエスの背後に来て、イエスの服に触れた。
28 「もし、あの方の服に触れさえしたら、私は治される。」と女は言っていたからである。
29 すると、たちどころに女の血の泉は乾き、忌まわしい病気は治ったと、体で分かった。
30 そしてすぐ、ご自分の中から力が出て行ったと分かったイエスは、群衆の中で振り返り、言われた。「誰がわたしの服に触れたのですか。」
31 しかし、弟子たちはイエスに言った。「群衆が四方からあなたを押しつけているのに、『誰がわたしに触れたのですか。』と、言っておられますか。」
32 そして、触れた女を見るため、イエスは振り向かれた。
33 すると、女は自分に何が起こったかを知り、恐れ、震えながら、イエスの御前に来てひれ伏し、すべての真実を話した。
34 そこで、イエスは女に言われた。「娘よ、あなたの信仰が、あなたを治しました。安心して行きなさい。あなたのあの忌まわしい病気から健やかでいなさい。」
35 イエスはまだ話しておられる間、シナゴーグのあの支配者の家から、数人の者が来て、言った。「あなたの娘さんは亡くなりました。なぜこれ以上、先生を煩わせることがあるでしょうか。」
36 しかし、イエスはそれを聞くとすぐ、シナゴーグの支配者に言われた。「恐れるな。ただ信じなさい。」
37 そして、ペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネ以外は、誰も同行することをイエスは許可されなかった。
38 さて、イエスはその支配者の家に来られ、そして大騒ぎして、泣いたり盛んに叫んでいる者たちをイエスは見られた。
39 イエスは家に入り、その人たちに言われた。「なぜこんなに泣き騒いでいるのですか。子どもは死んではいません。眠っているのです。」
40 しかし、人たちはイエスをあざ笑った。イエスはその人たちを外に出し、子どもの父と母とご自分を伴って来た人たちを連れ、子どもが横になっている所に入られた。
41 イエスは子どもの手を取られ、少女に「タリタ、クミ。」と言われた。訳すると、「少女よ、あなたに言います。立ち上がりなさい。」
42 すると、すぐ少女は立ち上がり、歩いた。少女は十二歳であったからである。そして全員、驚き、動転した。
43 そして、このことを誰にも知らせてはならないと、厳重に命じられ、少女に何か食べ物を与えるよう言われた。

6章

さて、イエスはそこを出、ご自分の故郷に来られた。そして、イエスの弟子たちも同行した。
2 それで、安息日になり、イエスはシナゴーグで教え始められた。すると、イエスの話を聞いている大勢の人たちは驚愕し、言った。「この人は、これらのことをどこから得たか。また、この人の手によって行なわれたこのような力ある業をするための、与えられたこの知恵は一体何か。
3 これはあの大工ではないのか。マリヤの息子で、兄弟たちはヤコブとヨセとユダとシモンではないのか。そして、姉妹たちは私たちといっしょにここにいるのではないか。」それで、皆、イエスにつまずいた。
4 しかし、イエスは皆に言われた。「預言者が敬意を払われるのは、自分の故郷と自分の親戚の間と自分の家の外です。」
5 イエスはあまり多くの力ある業をそこではできなかったが、ただ何人かの病人に手を置いて、治された。
6 そして、イエスは皆の不信仰を意外に思われた。それから、各村に回り、教えられた。
7 さて、イエスは十二人をご自分の所に呼び集め、二人一組として遣わし始め、汚れた霊どもに対する権限を与えられた。
8 そして、この旅行には杖の他、皮袋も、パンも、胴巻きに金銭も、何も持って行ってはいけないと命じられた。
9 「しかし、サンダルは履きなさい。だが、二枚の上着を着てはいけません。」
10 そして、弟子たちに言われた。「いかなる所で家に入ろうが、そこを去るまで、その家にとどまりなさい。
11 そして、誰であれ、あなたがたを受け入れず、また、聞き入れない者がいれば、そこを去る時、その者たちへの証として、足からほこりを振り落としなさい。まことに、わたしはあなたがたに言います。ソドムとゴモラの町の方が裁きの日は、その町よりしのぎやすいのです。」
12 それで、弟子たちは出かけ、人は悔い改めるべきであると説いた。
13 そして、多くの悪霊を追い出し、大勢の病人に油を塗り、治した。
14 さて、イエスの御名は広く知れ渡ったので、ヘロデ王は、イエスのことを耳にし、言った。「バプテスマのヨハネが死人の中から復活したのだ。だから、こんな力が彼の中で働いているのだ。」
15 他の人たちは、「エリヤだ。」と言い、またさらに他の人たちは、「預言者だ。そうでなければ、預言者にちかい人だ。」と言っていた。
16 聞いたヘロデは言った。「この人こそ、私が首を斬ったヨハネが、死人の中から復活したのだ。」
17 ヘロデは自分の兄弟ピリポの妻、ヘロデヤと結婚していたので、人を遣わし、ヘロデヤのためヨハネを牢に入れ縛った。
18 ヨハネがヘロデに、「兄弟の妻を所有するのは律法に反する。」と言ったからである。
19 それで、ヘロデヤはヨハネに遺恨を持ち、ヨハネを殺したかったが、殺せなかった。
20 なぜなら、ヘロデはヨハネが義人であり、聖なる人であると知っていたので、ヨハネを恐れ、保護していた。そしてヨハネの話を聞くと、色々なことをしたが、喜んでヨハネの話を聞いた。
21 すると、都合の良い日が来た。へロデは自分の誕生日に、地位のある者たち、千人隊長たち、ガリラヤの主立った人たちのために、祝宴を設けた。
22 そして、ヘロデヤの娘、彼女自身がやって来て、踊り、ヘロデとヘロデと共にいた人たちを喜ばした。その時、王はこの少女に言った。「欲しいものを何でも願え。願えば、与える。」
23 また、ヘロデは少女に誓って言った。「願ったものは何でも与える。半分までなら我が王国もやる。」
24 それで、少女は退出し、母に言った。「私は何を願いましょうか。」それで母は言った。「バプテスマのヨハネの首を。」
25 それで、少女は即、王のもとに行き、願って言った。「今すぐ、盆に載せたバプテスマのヨハネの首を、私にお与えください。」
26 すると、王はとても後悔した。しかし、誓いのため、また共に座っている人たちの手前、少女を拒否したくなかった。
27 それで、王は死刑執行人をすぐ派遣し、ヨハネの首を持って来いと命じた。そして、死刑執行人は行き、牢にいるヨハネの首をはねた。
28 そして、盆に載せられたヨハネの首を持って来て、少女に与え、そして、少女はそれを母に渡した。
29 すると、それを聞いて、ヨハネの弟子たちがやって来て、ヨハネの死体を引き取り、墓に入れた。
30 さて、使徒たちはイエスの所に集まり、自分たちがしたことと、教えたことを、一部始終イエスに伝えた。
31 すると、イエスは使徒たちに言われた。「あなたがただけで、寂しい所に行き、少し休みなさい。」と言うのは、大勢の人の出入りがあり、使徒たちは食事を取る時間さえもなかったからである。
32 そして、使徒たち一行だけで、寂しい所に船で行った。
33 しかし、群衆は、使徒たち一行が去って行くのを見て、大多数の人はイエスと分かり、どの町からもイエスの所に走った。群衆は使徒たちより早く着き、イエスの所に集まった。
34 そして、イエスが出て行かれ、大変な数の群衆をご覧になった。そして、群衆は羊飼いのいない羊のようであったから、イエスは哀れに思われ、群衆に多くのことを教え始められた。
35 その日が終わりに近づいていた時、弟子たちはイエスの所に行き、イエスに言った。「ここは寂しい所で、もう遅い時刻ですから、
36 群衆を去らせてください。そうすれば、パンを買いに里や村に行けます。食べ物は何も持っていないのですから。」
37 すると、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたが群衆に食べ物を与えなさい。」それで弟子たちはイエスに言った。「私たちが二百デナリ分8のパンを買いに行き、群衆にその食べ物を与えるのですか?」
38 しかし、イエスは弟子たちに言われた。「パンは何個ありますか。行って見て来なさい。」弟子たちは調べて、言った。「パン五個と魚二匹です。」
39 そして、弟子たちは全員を、グループに別け、緑の草の上に横にならせよ、とイエスは弟子たちに命じられた。
40 それで、百人、五十人と、群衆は仲間ごとに座った。
41 そして、イエスはパン五個と魚二匹を手に取り、天を見上げ、祝福し、そのパンを裂き、皆の前に置くようにと、弟子たちに与え、イエスが裂かれた魚も弟子たちは全員に分配された。
42 そして、全員が食べ、満腹した。
43 弟子たちは残ったパン切れと魚でいっぱいの、十二のかごを手にした。
44 さて、パンを食べた人たちは、およそ男性五千人であった。
45 そして、イエスはすぐご自分の弟子たちを船に乗せ、ご自分より先に対岸のベツサイダへ行かせ、その間にイエスは群衆を去らせた。
46 そして、イエスは群衆を去らせ、祈るため山に行かれた。
47 そして、夕方になり、船は海の中央にあった。そして、イエスは陸に一人でおられた。
48 向かい風のため、弟子たちが漕ぐのを苦しんでいるのを、イエスはご覧になられた。さて、夜の第四時間目9に、イエスは海上を歩いて、弟子たちの所に来て側を通り過ぎようとされた。
49 すると、弟子たちはイエスが海上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、叫んだ。
50 弟子たちは全員イエスを見て、おびえた。しかし、イエスはすぐ弟子たちに話しかけ、言われた。「しっかりしなさい。わたしです。恐れてはいけません。」
51 そして、イエスが船の弟子たちの所に行かれると、風は凪いだ。弟子たちは心中驚愕し、いぶかった。
52 なぜなら、弟子たちの心はかたくなになっていたので、あのパンのことを理解していなかったのである。
53 渡り終え、一行はゲネサレの地に入り、そこで投錨した。
54 そして、一行は船から降りると、人々はすぐイエスだと分かり、
55 その周辺のすべての地に走って行き、イエスのおられる所と聞けば、床のまま病人たちを連れて来た。
56 そして、イエスは村々、町々、田舎に入られると、病人たちを市場に寝かせ、人々はイエスの衣のへりをただ触れるだけでもとイエスに願った。そして、触れた人は誰であれ治された。

7章

さて、パリサイ派の人たちとある律法学者たちが、エルサレムから来てイエスの元に集まった。
2 そして、イエスの弟子のある者たちが不浄な手、つまり手を洗わずパンを食べているのを見て、あら捜しをした。
3 パリサイ派の人たちと全ユダヤ人は、手は肘まで洗わない限り、長老たちの伝統を守り、食事はしないからである。
4 また、市場から帰った時でも、沐浴しない限り食事をせず、その他、保持すべしと受け継いだことは多くある。カップ、壺、青銅の器、床を水に浸す。
5 そこで、パリサイ派の人たちと律法学者たちは、「あなたの弟子たちはなぜ、長老たちの伝統を歩まずに、洗わない手でパンを食べるのですか。」とイエスに尋ねた。
6 すると、イエスは答えて言われた。「書いてある通りです。イザヤはあなたがた偽善者について、正に預言しました。『この国民は、唇でわたしに敬意をはらうが、心は、わたしから遠く離れている。
7 そして、この者たちは意味もなくわたしを礼拝し、人間の命令を教理として教える。』
8 あなたがたは神の命令を脇に置き、人間のする、たとえば、壷、カップを水に浸すなど、他の多くの伝統を守ります。」
9 そして、イエスは全員に言われた。「あなたがたは、自分たちの伝統を守るため、神の命令をも正に拒みます。
10 なぜなら、モーセは言いました。『あなたの父と母に敬意を払いなさい。』そして、『父または母の悪口を言う者は、死に至らしめよ。』
11 しかし、あなたがたは言います。『父または母に、私から受け取ることになっている利益は、「コルバン」』(すなわち、奉げ物)と言えば、
12 それで、その男の父のためであろうが母のためであろうが、それ以上何もあなたがたは要求しません。
13 あなたがたは、受け継いできた己の伝統のゆえに、神の御言葉をないがしろにし、この類のことを多く行なっています。」
14 そして、イエスはご自分の所に、全群衆を呼び、言われた。「皆さん、わたしの言うことを聞きなさい、そして理解しなさい。
15 外から人に入ってくるものは何も、その人を汚すことができないが、その人の中から出るもの、それが人を汚します。
16 聞く耳のある人がいれば、聞かせよ。」
17 そして、イエスは群衆から離れた家に入られると、弟子たちはこの例え話についてイエスに尋ねた。
18 それで、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたも未だ分かっていないのですか。外から人に入るものは、人を汚すことができないことを、理解していないのですか。
19 なぜなら、それはその人の心に入らずに、腹の中に入り、そして排泄され、それで、すべての食べ物を清めるのです。」
20 そして言われた。「人から出るものは、人を汚すのです。
21 なぜなら、悪い思い、姦淫、性的な罪、殺人は内部から、すなわち人々の心から出るからです。
22 また、盗み、貪欲、悪、偽り、好色、悪の目、冒涜、傲慢、愚かさも心から出ます。
23 これらの悪事はすべて人の内部から出て、人を汚します。」
24 さて、そこからイエスは立ち上がり、ツロとシドンの国境地方に行かれた。そして、家に入られた時、そのことをイエスは誰にも知られたくないと思われたが、隠れることができなかった。
25 それは、汚れた霊を持つ幼い娘のいる女が、イエスのことを聞き、やって来て、イエスの足もとにひれ伏したからである。
26 この女はギリシャ人であり、スロ・フェニキヤの生まれであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださるよう、イエスに頼み続けた。
27 しかし、イエスは答えて言われた。「子どもたちのパンを取って、小犬らに投げ与えるのは良くありません。まず最初に子どもを満腹させなさい。」
28 すると、女は答えて、イエスに言った。「はい、主よ。でも、食卓の下にいる小犬らは、子どもたちの食べくずを食べるのです。」
29 イエスは女に言われた。「そう言うのであれば家に帰りなさい。悪霊はあなたの娘から去ったのです。」
30 それで、家に帰ると、悪霊は去り、床に娘が横になっているのを見た。
31 さて、ツロとシドンの国境地方を去り、イエスは再びデカポリス地方の中心部を通り、ガリラヤの海に行かれた。
32 そして、御手を置いてくださるように願うため、人々は耳が聞こえず、言葉の不自由な男をイエスの所に連れて来た。
33 すると、イエスはこの男を群衆から連れ出し、両の耳にご自分の指を入れ、つばきをし、男の舌を触れられた。
34 そして、天を仰ぎ、吐息し、男に「エファッタ」、すなわち「開けよ」と言われた。
35 すると、たちどころに男の両の耳は開き、舌を縛るものは解除され、明瞭に話した。
36 それから、誰にもこのことを話してはいけないと、イエスは人々に命じられたが、強く言えば言うほど、人々は広範囲に伝えた。
37 そして、人々は非常に驚愕し、言った。「この方はすべてのことを立派になさいました。耳が聞こえない男を聞こえるようにし、おしの男を話せるようにもなさいました。」

8章

さて、この数日間、群衆は大変な数で、食べ物を持っていなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて、言われた。
2 「群衆はすでに三日間わたしと共にいます。食べ物は何も持っていません。だから、哀れとわたしは思います。
3 そして、群衆の中には、遠くからやって来た者たちもいるから、空腹のまま、家に帰せば、途中で倒れてしまいます。」
4 それで弟子たちはイエスに答えた。「この荒れ果てた所でこの人たちをパンで満腹させるのに、どうすればよいのですか。」
5 すると、イエスは弟子たちに尋ねられた。「パンは何個ありますか。」弟子たちは言った。「七個です。」
6 すると、イエスは地面に座るよう、群衆に命じられた。そして、イエスはその七個のパンを手に取り、感謝をささげ、それらを裂き、群衆に与えるよう、弟子たちに渡された。そして、弟子たちはそのパンを群衆の前に置いた。
7 そして、弟子たちは小魚を数匹持っていた。イエスはそれを祝福し、みんなの前にそれも置くように言われた。
8 それで、みんなは食べ、満腹した。そして、食べ残しの入ったかご、七個を弟子たちは手にした。
9 そして、食べた人たちは、およそ四千人であった。それからイエスは群衆を去らせた。
10 そして、イエスはすぐ弟子たちと共に船に乗り、ダルマヌタの地方に行かれた。
11 そこに、パリサイ派の人たちがやって来て、イエスを試みようと、天からのしるしを要求し、論争を始めた。
12 しかし、イエスは自らの霊で深く吐息し、言われた。「この世代はなぜしるしを求めますか。まことに、あなたがたに言います。この世代にしるしは与えられません。」
13 イエスはパリサイ派の人たちと別れ、また船に乗り、対岸へ去って行かれた。
14 さて、弟子たちは、パンを持って来るのを忘れていた。そして、船の中には、パンは一つしかなかった。
15 そこで、イエスは弟子たちに命じ、言われた。「注意しなさい。パリサイ派の人たちのパン種と、ヘロデのパン種には警戒しなさい。」
16 そこで、弟子たちは自分たちだけで話し合い、言った。「私たちにはパンがないからだ。」
17 しかし、イエスはこのことに気付かれ、言われた。「あなたがたはパンがないからと言って、なぜ話し合いしているのですか。まだ悟らず、理解できないのですか。心は未だかたくなのままなのですか。
18 目があっても、見えないのですか。そして、耳があっても、聞こえないのですか。そして、記憶にもうないのですか。
19 五千人のため、五つのパンを裂いた時、パン切れでいっぱいになったかごを、いくつ手にしたのですか。」弟子たちは、「十二個です。」とイエスに言った。
20 「そして、四千人のため、七つのパンを裂いた時、パン切れでいっぱいになっていたかごを、いくつ手にしたのですか。」弟子たちは、「七個です。」とイエスに言った。
21 そして、イエスは弟子たちに言われた。「どうして分からないのですか。」
22 さて、イエスはベツサイダに行かれた。そして、人々はイエスの所に盲目の男を連れて来て、手を触れるように願った。
23 すると、イエスは盲目の男の手を取り、村の外に連れて行かれた。そして、盲目の男の両目につばきし、男に手を置き、何か見えるかと尋ねられた。
24 そして、盲人は見上げて言った。「男たちが見えます。木が歩いているようです。」
25 それから、イエスは男の目に改めて手を置き、見上げさせた。すると、視力が戻り、すべてがはっきりと見えた。
26 それで、イエスは「村に入ってはいけません。また村の誰にも話してはいけません。」と言い、男を帰宅させられた。
27 さて、イエスと弟子たちは、ピリポ・カイザリヤの村々に行かれた。そして、途中、イエスは弟子たちに尋ね、言われた。「人々はわたしのことを、何者だと言っているのですか。」
28 それで弟子たちは答えた。「バプテスマのヨハネです。しかし、エリヤだと言う人たちもいるし、預言者たちの一人だと言う人たちもいます。
29 そして、イエスは弟子たちに言われた。「しかし、あなたがた自身はわたしを何者だと言うのですか。」ペテロは答えて言った。「あなたはあのキリストです。」
30 そして、イエスは弟子たちに、ご自分のことについて誰にも言わないように厳しく命じられた。
31 人の子は多くの苦しみを受け、長老たちと大祭司たちと律法学者たちに拒否され、殺され、三日の後に復活しなければならないと、イエスは弟子たちに教え始められた。
32 イエスはこの言葉をはっきりと言われた。すると、ペテロはイエスを脇に来て頂き、非難しだした。
33 しかし、イエスは振り向いて、弟子たちをご覧になり、ペテロを非難して言われた。「サタン10よ、わたしの後ろに行け。あなたは神のことを考えず、人間のことを考えているからです。」
34 そして、群衆をご自分の弟子たちと共に呼び寄せ、全員に言われた。「もし誰であれわたしの後について来たいのなら、自分を捨て、自分の十字架を持ち上げ、そしてわたしに従いなさい。
35 誰であれ、自らの命を救おうとする者は、命を失うが、誰であれ、わたしと福音のために命を失う者は、自らの命を救うからです。
36 なぜなら、もし全世界を手に入れても、自らのたましいを損じるなら、何の利益になりましょうか。
37 あるいは、自らのたましいを、人は何と交換し得ましょうか。
38 なぜなら、人の子は将来、聖なる御使いたちと共に、自分の父の栄光の中に来る時、この姦淫と罪深い時代では、わたしとわたしの言葉を恥じる者を、人の子もその者を恥じとします。」

9章

そして、イエスは弟子たちに言われた。「まことにわたしはあなたがたに言います。ここに立っている人たちの中で、神の力強い王国が来るのを見るまで、死を決して味わわない人たちがいます。」
2 さて、六日後、イエスは他の弟子たちからペテロとヤコブとヨハネを離し、四人で高い山に登って行かれた。そしてイエスは三人の前で御姿を変えられた。
3 イエスの衣服は輝き出すし、地上のどんな漂白する職人も白くすることができないほど、雪のように極めて白くなった。
4 すると、エリヤがモーセと共に三人に現れ、そして、彼らはイエスと話をしていた。
5 そこで、ペテロは答えてイエスに言った。「ラビよ、私たちはここにいるのは、良いことです。私たちはここに三つの幕屋を作りましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、一つはエリヤのためにです。」
6 三人はとても恐怖に陥っていたので、ペテロは何を言っていいか分からなかったからである。
7 すると雲が現れ皆を覆った。そして、その雲からの御声が言われた。「これはわたしの愛しい息子である。息子に耳を傾けなさい。」
8 そして、三人の弟子があたりを見回すと、急に、共におられたイエスのほか、誰一人としてもう人は見かけなかった。
9 さて、イエス一行が山を下りている時、人の子が死人の中から復活するまで、今見たことを誰にも話してはいけないと、イエスは弟子たちに命じられた。
10 それで、弟子たちは今の御言葉を自分たちだけのものとし、死人たちの中からの復活とは、どう言う意味かを互いに論争した。
11 それで、弟子たちはイエスに尋ねて言った。「では、なぜ律法学者たちは、エリヤが先に来なければならない、と言っているのですか。」
12 すると、イエスは答えて弟子たちに言われた。「エリヤが間違いなくまず先に来て、すべてのものを元の状態に戻します。そして人の子は数々の苦しみを受け、侮辱をもって扱われます。このことはどう書かれていますか。
13 しかし、わたしはあなたがたに言います。エリヤも来たが、エリヤについて書いてある通り、人々は勝手気ままにエリヤを扱いました。」
14 さて、イエスは弟子たちの所に来られると、弟子たちの回りの大群衆と、論争している律法学者たちを、イエスがご覧になった。
15 そして、すぐ人々はイエスを見、とても驚き、イエスの所に走りより、挨拶した。
16 すると、イエスは律法学者たちに尋ねられた。「この人たちと、何を論じているのですか。」
17 すると、群衆の一人が答えて言った。「先生、私はおしの霊に占領された我が息子をあなたの所に連れて来ました。
18 そして、霊はどこで息子を捕らえようが、投げ飛ばします。そして、息子は口から泡を吹き、歯ぎしりし、やせ衰えて来ました。それで、私は霊を追い出すように、お弟子さんたちに言いましたが、できませんでした。」
19 イエスはその男に答えて言われた。「おお、信仰のない世代の人たちよ、わたしはいつまで、あなたがたと共にいられようか。わたしはいつまであなたがたに我慢できようか。その子を連れて来なさい。」
20 すると人々は、その子をイエスの所に連れて来た。そして悪霊がイエスを見ると、たちどころにその子をもだえさせた。そして、その子は地に倒れ、身を転がし、口から泡を吹いた。
21 それでイエスは父親に尋ねられた。「いつからこの子はこうなったのですか。」父親は、「小さい時からです。」と言った。
22 「そして、しばしば息子を滅ぼすため、霊は息子を火の中、また水の中に投げ入れたことがあります。しかし、もし何かしていただけるのであれば、私たちを憐れみ、お助けください。」
23 するとイエスは男に言われた。「あなたが信じるのであれば、信じるその者には、すべてのことが可能です。」
24 すると、直ちに子どもの父は叫び、涙を流しながら言った。「主よ、私は信じます。私の不信仰から私をお助けください。」
25 イエスは人々が走って集まって来るのを見て、汚れた霊を叱責し、言われた。「口が利けない、耳が聞こえない霊よ、お前に命じる。子どもから出て、二度と入るな。」
26 すると霊は叫び、その子を激しくもだえさせ、その子から出た。そして子は死人のようになったので、多くの人は「子どもは死んだ。」と言った。
27 しかし、イエスは子の手を取り、抱き起こされると、その子は立った。
28 そして、イエスは家に入られると、弟子たちはひそかにイエスに尋ねた。「私たちはなぜ悪霊を追い出せなかったのですか。」
29 すると、イエスは弟子たちに言われた。「この種のものは、祈りと断食の外、他のものでは、出て行くことはありません。」
30 それから、イエス一行はそこを離れ、ガリラヤを通過中、このことをイエスは誰にも知られたくなかった。
31 なぜなら、「人の子は、裏切られ、人々の手に渡されます。そして、人々は人の子を殺します。そして、殺されてから、人の子は、第三日目に復活します。」と、イエスは弟子たちに言って、教えておられたからである。
32 しかし、弟子たちはこの御言葉を理解せず、尋ねるのが怖く、イエスに質問はしなかった。
33 さて、イエスはカペナウムに来られた。そして、イエスは家の中におられ、弟子たちに尋ねられた。「来る途中、あなたがたは何を論争していたのですか。」
34 しかし、来る途中で弟子たちは、誰が一番偉くなるかと、論争したので、黙っていた。
35 それで、イエスは座り、十二人を呼び、言われた。「一番になろうと思う者が、全員の最後になり、全員の僕になります。」
36 そして、イエスは一人の幼児を弟子たちの中央に立たせた。そして、幼児を抱擁し、弟子たちに言われた。
37 「このような幼児の一人を、わたしの名によって受け入れる者は、誰でもわたしを受け入れます。そして、誰でもわたしを受け入れるなら、わたしをではなく、わたしを遣わした方を受け入れます。」
38 さて、ヨハネはイエスに答えて、言った。「先生、あなたのお名前によって悪霊を追い出している男を私たちは見ました。私たちと共にあなたに従っていない男でしたので、中止させました。」
39 しかし、イエスは言われた。「中止させてはいけません。わたしの名によって奇蹟を行なう者は、その後すぐわたしの悪口を言うことができないからです。
40 なぜなら、わたしたちに反対しない者は、わたしたち側の者だからです。
41 なぜなら、もし誰であれ、あなたがたに、わたしの名ゆえに、あなたがたはキリストの者たちだからと言って、ただ一杯の水を与えても、まことにあなたがたに言いますが、その者は決してその報酬を失うことはありません。
42 でも、わたしを信じるこの小さき者の一人を、つまずかせる者は誰であれ、石臼を首にぶら下げられて、海に投げ込まれた方がましです。
43 そして、もしあなたの手が、あなたをつまずかせるなら、切り落としなさい。両手がそろって、地獄の消えることのない火の中に入るより、不具で、命に入る方が優っています。
44 そこでは、彼らのうじ虫は死ぬことはなく、また火も消されることはありません。
45 しかし、もしあなたの足が、あなたをつまずかせるなら、切り落としなさい。両足そろって、地獄の消えることもない火に投げ込まれるより、不具で、命に入る方が遥かに優っています。
46 そこは、彼らのうじ虫は死ぬことはなく、また火も消されることはありません。
47 また、あなたの目の一つが、あなたをつまずかせるなら、それをえぐり出しなさい。両目がそろって、地獄の火に投げ込まれるより、片目で、神の王国に入る方が遥かに優っています。
48 そこは、彼らのうじ虫は死ぬことはなく、また火も消されることはありません。
49 すべては火によって味を付けられ、また、すべての生贄は塩で味を付けされるからです。
50 塩はよい物だが、もしその塩が塩の味をなくしたら、何によってそれに塩気を与えられますか。あなたがたは内に塩を持ち、互いに平安を持ちなさい。」

10章

さて、イエスは立ちあがり、そこを去り、ヨルダン川を越え、ユダヤの地方に行かれた。そして、再度、群衆がイエスの所に集まったので、また、いつものように群衆を教えられた。
2 そして、パリサイ派の人々が進み出て、イエスに尋ねた。「男が妻を離婚することは合法ですか。」と、イエスを試みた。
3 すると、イエスはパリサイ派の人々に答えて言われた。「モーセは、何をあなたがたに命じましたか。」
4 すると、パリサイ派の人々は言った。「離縁状を書き、妻を去らせるのを、モーセは許しました。」
5 それでイエスはパリサイ派の人々に答えて言われた。「あなたがたの心がかたくななため、モーセはこの命令を書いたのです。
6 しかし、創造の最初から神は、『人間を男と女として造った。
7 このため、男は父と母を離れ、妻と結ばれる。
8 そして、この二人は一つの肉体になる。』したがって、もう二人ではなく、一体です。
9 それで、神が結ばれたものを、人が離してはいけません。」
10 そして、家に入ってから、弟子たちもまたこの同じことをイエスに尋ねた。
11 それで、イエスは弟子たちに言われた。「自分の妻を離婚して、他の女と結婚する男は、妻に対して姦通を犯します。
12 そして、女は自分の夫を離婚して、他の男と結婚すれば、姦通を犯します。」
13 さて、イエスに手を触れてもらおうと、人たちが幼い子どもたちをイエスの所に連れて来た。しかし、弟子たちは連れて来た人たちをとがめた。
14 これを見たイエスは激しい不快感を示し、弟子たちに言われた。「幼い子どもたちを、わたしの所に来させなさい。さまたげてはいけません。神の王国は、このような者たちの所だからです。
15 まことにあなたがたに言います。人は幼い子どもとして神の王国を受け入れなければ、神の王国に入ることはありません。」
16 そして、イエスは子どもたちを抱き上げ、子どもたちに手を置き、祝福された。
17 さて、イエスは道に出て行かれると、一人の男がイエスの所に走って来て、イエスの前にひざまずき尋ねた。「よい先生よ、私が永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいのでしょうか。」
18 そうすると、イエスはその男に言われた。「あなたはなぜわたしを『よい』と言うのですか。神お一人以外、誰もよい人はいません。
19 『姦通をしてはいけない。殺人を犯してはいけない。窃盗をしてはいけない。偽証をしてはいけない。欺き取ってはいけない。あなたの父と母に敬意をはらいなさい。』と言う命令をあなたは知っています。」
20 男は答えてイエスに言った。「先生、これらすべてを青年時代から守ってきています。」
21 イエスはその男を見て、愛で、言われた。「あなたはまだ足りないことが一つあります。帰って、すべての持ち物を売り、貧しい人たちに与えなさい。そうすれば、あなたは天国で宝を手にします。そして、十字架を手に取り、わたしに従いなさい。」
22 しかし、男はこの言葉を聞き落胆し、悲しみながら帰った。多くの富があったからである。
23 そして、イエスは見回し、弟子たちに言われた。「財産を持つ者が、神の王国に入ることは、本当に難しいことです。」
24 すると弟子たちはイエスの言葉に驚いた。しかし、イエスはもう一度答えて、弟子たちに言われた。「子らよ、富に信頼を置く者が、神の王国に入ることの、本当に難しいことです。
25 金持ちが神の王国に入るより、らくだが針の穴を通る方が簡単です。」
26 それで弟子たちは非常に驚愕し、互いに言った。「では、誰が救われることができましょうか。」
27 しかし、イエスは弟子たちをご覧になり、言われた。「人間には不可能だが、神は違います。神にはすべて可能だからです。」
28 すると、ペテロはイエスに言い出した。「ご覧下さい。私たちは何もかもおいて、あなたに従って来ました。」
29 それでイエスは答えて言われた。「まことに、あなたがたに言います。家、兄弟たち、姉妹たち、父、母、妻、子どもたち、土地をわたしのため、そして福音のため、捨てて来たその者たちすべては、
30 今のこの時代に、家、兄弟たち、姉妹たち、母たち、子どもたち、土地を、そして迫害も共に、すべてその百倍にして受け、そして来るべき時代に、永遠の命を受けます。
31 しかし、最初の多勢の人は最後に、最後の人たちは最初になります。」
32 さて、エルサレムに上って行く道の途中、イエスは弟子たちの前に行かれると、弟子たちは驚いていた。そして、従って来た人たちは、従いながら恐ろしくなった。それでイエスはもう一度、十二人を道ばたに寄せ、ご自分に起ころうとすることを彼らに教え始められた。
33 「見よ、わたしたちはエルサレムに上り、人の子は祭司長たちと律法学者たちに裏切られ、その者たちは人の子を死に定め、異邦人に渡します。
34 異邦人たちは人の子をあざけり、むち打ち、つばきをかけ、そして殺します。そして、人の子は三日目に復活します。」
35 その時、ゼベダイの息子、ヤコブとヨハネが、イエスの所に来て、言った。「師よ、私たちの願うことを何であれ叶えてください。
36 そこで、イエスは二人に言われた。「あなたがたはわたしに何を願うのですか。」
37 それで、二人はイエスに言った。「私たちを、あなたのご威光で、一人はあなたの右に、もう一人はあなたの左に、座れますようお願いします。」
38 しかし、イエスはヤコブとヨハネに言われた。「あなたがたは何を願っているのか理解していません。わたしが飲むカップを飲み、わたしの受けようとしている浸しを受けることができるのですか。」
39 二人はイエスに言った。「私たちはできます。」それで、イエスは彼らに言われた。「あなたがたはまことにわたしが飲むカップを飲み、わたしの受ける浸しで浸しを受けます。
40 しかし、わたしの右、わたしの左に座ることは、わたしが与えることではなく、それはすでに準備されたものであり、定められた人たちのためです。」
41 すると、残りの十人はそれを聞き、ヤコブとヨハネに対し激しい不快の念を持ち始めた。
42 しかし、イエスは弟子たちをご自分の所に呼び寄せて、言われた。「異邦人の支配者と尊敬されている者たちは、異邦人の上に君臨します。また民の大物たちは、異邦人の上に権力を振るうことを、あなたがたは知っています。
43 しかし、あなたがたの間ではそうはなりません。あなたがたの間では、大物になりたい人はあなたがたの中では僕になります。
44 そして、誰であれあなたがたの間で一番になりたい人は、全員の僕になります。
45 なぜなら、人の子は、仕えてもらうために来たのではなく、仕えるため、そして、自分の命を大勢の人の身代金として、与えるために来たのです。」
46 さて、イエスと弟子たちは、エリコに行った。それから、イエスと弟子たちと大群衆がエリコを出た時、テマイの息子、盲人のバルテマイが、道ばたに座り、こじきをしていた。
47 そして、その方がナザレのイエスであると聞き、バルテマイは叫び出し、言った。「ダビデの御子息イエスよ、私を哀れんでください。」
48 そこで、多くの人たちは、静かにするようバルテマイに警告したが、彼はさらにいっそう大声を出した。「ダビデの御子息よ、私を哀れんでください。」
49 それでイエスは立ち止まり、バルテマイを呼ぶように命じられた。そして彼らはその盲人を呼び、盲人に言った。「勇気を出しなさい。立ちなさい。イエスがあなたを呼んでいます。」
50 それで、盲人は服を投げ捨て、立ち上がり、イエスの所に来た。
51 すると、応えてイエスはその盲人に言われた。「あなたのため、あなたはわたしに何をしてほしいのですか。」盲人はイエスに言った。「主よ、視力を頂きたいのです。」
52 それでイエスは盲人に言われた。「行きなさい。あなたの信仰があなたを治しました。」すると、たちどころに、盲人は再び見えるようになり、イエスに従い同行した。

11章

さて、イエス一行はエルサレムの近くに来た時、ベテパゲとベタニヤに入り、オリーブ山で、イエスは二人の弟子を遣わされた。
2 そして、イエスは二人の弟子に言われた。「向こう側の村に行きなさい。村に入るとすぐ、あなたがたはつながれている、誰も乗ったことがないロバの子が見つかります。手綱を解いて連れてきなさい。
3 もし誰かがあなたがたに、『何をしているのか。』と言えば、『主はこれを入用としています。』と言いなさい。すると、その人はすぐロバをここに送り届けてくれます。」
4 それで、弟子たちは出かけ、ロバの子が戸外に、通りの戸口に繋がれているのを見つけ、解いた。
5 しかし、そこに立っていた人たちの中のある人たちが二人に言った。「ロバの子を解いて、どうするのか。」
6 すると、弟子たちはイエスが命じた通り、彼らに言った。すると、その人たちは弟子たちを許した。
7 そして、二人の弟子はロバの子をイエスの元に連れて来て、その上に自分たちの服を敷いた。イエスはその上に乗られた。
8 そして、多くの人たちは彼らの服を道に広げ、また他の者たちは木から葉の茂った枝を切り、道に広げた。
9 すると、先に行った群衆と後からついて来た群衆が叫び、言っていた。「ホサナ。11主の御名により来られる方に、祝福あれ。」
10 主の御名により来るべき、私たちの父ダビデの王国に、祝福あれ。最高位の、ホサナよ。」
11 そして、イエスはエルサレムに入り、神殿の敷地内に入られた。そして、すべてあたりのものを見渡し、もう時刻が遅かったので、十二人と共にベタニヤに入られた。
12 さて、翌日ベタニヤを出た時、イエスは空腹であった。
13 それで、遠くから葉の茂った一本のイチジクの木をご覧になり、探せば何かあるかも知れないと、その木に行かれたが、イチジクの季節ではなかったので、葉のほか、木には何も見あたらなかった。
14 それで、その木にイエスは話しかけ、言われた。「今後、誰も二度とお前から実を食べる者がいないように。」そして、イエスの弟子たちはそれを聞いた。
15 さて、彼らはエルサレムに来た。そこで、イエスは神殿の敷地に入り、そこで物を売買しているすべての者たちを追い出し始められた。また、イエスは両替人の卓と、鳩を売る者の床几をひっくり返された。
16 そして、誰もかごを持って神殿の敷地を通ることも許されなかった。
17 そして、イエスは彼らに教えて言われた。「『わたしの家は、すべての国々の民のため、祈りの家と呼ばれる。』と書いてはないですか。しかし、あなたがたはわたしの家を強盗の巣窟にしてしまった。」
18 すると、律法学者たちや大祭司たちはこれを聞き、どうすればイエスを亡き者にできるか、その方法を探し求めた。民の全員はイエスの教えに驚愕していたので、律法学者たちや大祭司たちはイエスを恐れていたからである。
19 さて、夕方になり、イエスは町を出られた。
20 そして、朝、通り過ぎると、根から枯れたあのイチジクの木を彼らは見た。
21 そしてペテロは思い出して、イエスに言った。「ラビよ、見てください。あなたの呪ったイチジクの木は枯れてしまいました。」
22 イエスは答えて弟子たちに言われた。「神を信仰しなさい。
23 まことにわたしはあなたがたに言います。誰であれこの山に、『移動せよ、そして、海に投げ込まれよ。』と、心の中で疑わず言い、そうなると信じれば、その者の言うことは、何でも実現します。
24 ですから、あなたがたに言います。祈る時、願うものは何であれ頂けると信じれば、願うものを頂けます。」
25 そして、立って祈る時、もし誰かに恨みがあるなら、その人を赦しなさい。そうすれば、天におられるあなたがたの父も、あなたがたの悪行を赦してくださいます。
26 しかし、もしあなたがたが赦さなければ、あなたがたの天におられる父も、あなたがたの悪行をお赦しになりません。」
27 さて、イエスと弟子たちはまたエルサレムに入った。そして、イエスは神殿の敷地を歩いていた時、大祭司たち、律法学者たち、長老たちが、イエスの所に来た。
28 そして、彼らはイエスに言った。「お前は何の権威によってこれらのことを行なうのか。そして、これらのことを行なう権威を誰がお前に与えたのか。」
29 しかし、イエスは答えて彼らに言われた。「わたしもあなたがたに一つ尋ねましょう。そして、わたしに答えなさい。そうすれば、わたしも、何の権威によってこれらのことを行なうのかを教えましょう。
30 ヨハネの浸礼は、天からでしたか、それとも人間からでしたか。わたしに答えなさい。」
31 それで、彼らは互いに言い合った。「もし我々が『天から』と言えば、イエスは、『それでは、あなたがたはなぜヨハネを信じなかったのか。』と言うし、
32 そして、もし我々が、『人間から』と言えば…。」民は全員、ヨハネを預言者として認めていたから、彼らは民を恐れていたからである。
33 それで、彼らはイエスに答えて言った。「我々は分かりません。」それで、イエスは答えて彼らに言われた。「わたしも、何の権威によってこれらのことを行なうか、言いません。」

12章

さて、イエスはその人たちに例え話で話し始められた。「ある男がぶどう園を作り、その周りに垣を作り、またぶどう汁を入れる大桶の穴を掘り、塔を建てた。そして、彼は農夫たちに賃貸して、遠く旅行しました。
2 さて、収穫の時になり、ぶどう園の成果を農夫たちより受け取るために、主人は僕を農夫たちの元に遣わしました。
3 すると、農夫たちは僕を捕え、何度も殴り、から手で送り返しました。
4 すると、主人は農夫たちにもう一人の僕を遣わしたが、農夫たちは僕に石を投げ、頭にけがをさせ、辱め、送り返しました。
5 すると、主人はまた別の僕を遣わしたが、農夫たちはこの僕を殺しました。そして、その他に、大勢の者を遣わしたが、農夫たちはある者は殴り、ある者は殺しました。
6 それで、愛する一人息子がまだいたから、最後にこの息子も農夫たちの元に遣わし、言いました。『農夫たちは息子なら敬意を払ってくれる。』
7 しかし、農夫たちは互いに言いました。『こいつは相続人だ。さあ来い、こやつを殺してしまおう。そうすれば、こいつの相続する財産は俺たちのものだ。』
8 そこで、農夫たちは息子を捕え、殺し、ぶどう園の外に捨てました。
9 それで、ぶどう園の主人はどうしますか。来て、農夫たちを容赦なく殺し、ぶどう園を他の者たちに与えます。
10 あなたがたはこの聖書を読んだことがないのですか。『建築家たちが拒んだ石こそ、その石が礎になった。
11 これは主がなさったことで、私たちの目には、驚異である。』」
12 そして、彼らはイエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。イエスは自分たちのことを話していると彼らは分かったからである。それで彼らはイエスから離れ、去って行った。
13 そして、イエスの御言葉でイエスを罠にかけるため、パリサイ派とヘロデ党は、仲間の数人をイエスの所に遣わした。
14 彼らは来て、イエスに言った。「先生、あなたは人の顔色を見ずに、真理によって神の道を教えているから、あなたは真であり、誰のことをも気にしないことを我々は知っています。カイザルに税金を納めることは、律法に叶っているでしょうか、叶っていないでしょうか。
15 私たちは払いましょうか、それとも払わずにおきましょうか。」しかし、イエスは彼らの偽善を知り、彼らに言われた。「偽善者たちよ、なぜわたしを試すのか。見るから、デナリ12を持って来なさい。」
16 それで、持って来たので、イエスは彼らに言われた。「これは誰の像と銘ですか。」彼らはイエスに言った。「カイザルのです。」
17 それで、イエスは答えて、彼らに言われた。「カイザルのものはカイザルに返し、神のものは神に返しなさい。」すると、彼らはイエスを不思議に思った。
18 そして、復活がないと言うサドカイ派の人たちはイエスの所に来て、尋ねて言った。
19 「先生、もし妻を残し、子どものいない男が死ねば、その男の兄弟はその妻と結婚して、死んだ兄弟のために子孫を上げよ、とモーセは私たちに書きました。
20 それでは、七人兄弟がいました。長男は結婚して、跡継ぎがなく、死にました。
21 次男は長男の妻をめとりましたが、跡継ぎがないまま死にました。三男もそうなりました。
22 そして、七人ともこの女をめとり、跡継ぎがないまま死にました。最後にその女も死んでしまいました。
23 それでは、復活の時、この兄弟たちが復活すると、七人全員がこの女を妻としていましたから、この女は誰の妻になるのですか。」
24 しかし、イエスはサドカイ派の人たちに言われた。「あなたがたは、聖書も神の力も分かっていないから、間違っているのではありませんか。
25 人々は死人たちの中から復活すると、結婚したり、嫁に行ったりはせず、天国にいる神の御使いたちに似ています。
26 それに、死人については、彼らは復活することは、モーセの書には、柴の個所で神はどういうふうにモーセに話したか読んだことがないのですか。神はモーセに言われました。『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』
27 神は死人たちの神ではなく、生きている者の神です。したがって、あなたがたは大間違いをしています。」
28 そこで、律法学者の一人が来て、彼らが論じ合っていることを聞き、イエスが見事に答えられたことがわかり、イエスに尋ねた。「すべての命令の中で、第一の命令は何ですか。」
29 イエスは彼に答えられた。「『イスラエルよ、聞け。私たちの神であられる主は、お一人である。』これこそがすべての命令の中、第一の命令です。
30 『あなたは、心のすべてを尽くし、魂のすべてを尽くし、知力のすべてを尽くし、力のすべてを尽くし、あなたの神であられる主を愛しなさい。』これが第一の命令です。
31 そして、第二の命令はこれに似ています。『あなたの隣人を、あなた自身のように愛しなさい。』これらより、大いなる命令はありません。」
32 それで、律法学者はイエスに言った。「先生、真理を見事に言われました。『神はお一人であり、そしてこの方以外の神はない。』
33 そして、『心のすべてを尽くし、知力のすべてを尽くし、魂のすべてを尽くし、力のすべてを尽くし、神を愛し、また隣人を自分自身のように愛する』ことは、どんな全焼のいけにえや供え物よりも大きいのです。」
34 そして、この男は思慮深く答えたとイエスは知り、男に言われた。「あなたは神の王国から遠くはいません。」そしてその後、イエスにあえて尋ねる者はいなかった。
35 それから、イエスは神殿の敷地で続いて教えられた。「律法学者たちはどういう理由でキリストはダビデの息子だと言うのですか。
36 ダビデ自身は、聖霊によって言いました。『主は私の主に言われた。「わたしはあなたの敵をあなたの足台にするまで、わたしの右に座りなさい。」』
37 したがって、ダビデ自身がキリストを『主』と呼んでいるから、キリストはどうしてダビデの息子なのでしょうか。」それで、多くの群衆は喜んでイエスの話を聞いた。
38 そして、イエスは自らの教理で人々に言われた。「律法学者たちに気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩き回ることや、市場で敬意ある挨拶が大好きです。
39 シナゴーグでは上座を、宴席では上席が大好きです。
40 また、彼らは未亡人たちの家を食い尽くし、偽りの長い祈りをします。この者たちはより厳しい裁きを受けます。」
41 さて、イエスは献金箱の向かいに座られ、献金箱にどのように人々は金を入れるのか見ておられた。すると、大勢の金持ちは多く入れた。
42 その時、一人の貧しい未亡人が来て、一コドラントに当たるレプタ13二枚を入れた。
43 それで、イエスは弟子たちをご自分の所に呼び寄せて、弟子たちに言われた。「まことにわたしはあなたがたに言います。この貧しい未亡人は、献金箱に献金を入れた誰よりも多く入れました。
44 なぜなら、入れた人は皆、有り余っている中から献金したが、未亡人は貧しさの中から、持っている物すべて、命に関わる生活費まで入れたのです。」

13章

さて、神殿の敷地を出られると、弟子の一人がイエスに言った。「先生、ご覧ください。何という石、それに何という建物群でしょう!」
2 するとイエスは答えて、その弟子に言われた。「この大建物群を眺めているのですか。崩れずに、石一つとして重なっては残されることはありません。」
3 そして、神殿の向かいにあるオリーブ山にイエスが座ると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレがイエスの所に来て、ひそかに言った。
4 「私たちに教えてください。そのことはいつですか。また、それが成就する直前にどんなしるしがありますか。」
5 それで、イエスは答えて彼らに話し始められた。「誰にも騙されないよう気をつけなさい。
6 『私がキリストです。』と言って、多くの者がわたしの名をかたってやって来て、多くの人を騙すからです。
7 そして、あなたがたは戦争や戦争の噂を聞いても、混乱に陥ってはいけません。これらのことは起こらざるを得ないのですが、まだ終わりではないからです。
8 なぜなら、国家は国家に敵対して、王国は王国に敵対して立ち上がります。そして、各地で地震が起こり、飢饉や紛争が発生します。これらは産みの苦しみの始まりです。
9 しかし、あなたがた自身、自分たちのため気をつけなさい。あなたがたは最高議会に引き渡され、シナゴーグで殴られるからです。そして、わたしのために、あなたがたは支配者たちと王たちの前に、連行されます。
10 そして、福音は先ず、すべての民族に説かれなければなりません。
11 しかし、人々があなたを連行し、引き渡す時、あらかじめどう言おうか、事前に心配してはいけません。また言うべきことを前もって考えてもいけません。ただ、その時あなたがたに与えられることを話しなさい。話すのはあなたがたではありません。話をするのは、聖霊だからです。
12 そして、兄弟は兄弟を裏切り死に渡し、父は子を裏切り死に渡し、子どもらは親たちに反逆し、親たちを死に至らしめます。
13 そして、わたしの名のために、あなたがたはすべての人たちに憎悪されます。しかし、終わりまで耐え抜く者、その者は救われます。
14 したがって、あなたがたは、預言者ダニエルが話した、荒らす忌むべき者が立つべき所でない所に立つのを見れば(読む人よ、考えなさい。)、その時は、ユダヤにいる人たちは、山々に逃げなさい。
15 屋上にいる者は、降りて家の中へ入るな。自分の家から何かを持ち出そうと家に入るな。
16 また、野にいる者は、服を取りに戻るな。
17 そしてその数日間は、身ごもっている者たち、乳を飲ませている者たちは、悲惨です。
18 しかし、あなたがたの脱出が、冬にならないよう祈りなさい。
19 この日々の間、神が世界を創られた創造から、今に至るまで、また今後も決してない艱難があります。
20 そして、その日々を主が短くされることがなければ、救われる肉の人はいません。しかし、選ばれた人たちのために、その日々を主が短くします。
21 その時、もし誰であれ、あなたがたに、『見よ、キリストは、ここにおられる、あそこにおられる。』と言っても、それを信じてはいけません。
22 偽キリストたちや、偽預言者たちが立ち上がって、しるしや不思議な業を行なうからです。それが、もし可能であれば、そういう者たちは選ばれた人たちさえも騙します。
23 しかし、気をつけなさい。見よ、わたしは前もって、すべてのことをあなたがたに話しました。
24 しかし、その日々に、その艱難の後、太陽は暗くなり、月はその光を出しません。
25 また、宇宙の星は落ち、宇宙の色々な力は揺れ動かされます。
26 そしてその時、大いなる力と栄光を帯びて、雲に乗って来られる人の子を、人たちは見ます。
27 そしてその時、人の子はご自分の御使いたちを遣わし、ご自分の選んだ人たちを、四つの風から、そして地の果てから天の果てまで集めます。
28 さて、イチジクの木の例え話を忘れてはいけません。枝がもう柔らかくなって、葉を出す時、あなたがたは夏が近いと分かります。
29 それと同じように、あなたがたもこれらが起こっていることを見ると、それは近く、戸口まで来ていると分かります。
30 まことにわたしはあなたがたに言います。これらすべてのことが起こるまで、この時代は決して過ぎ去りません。
31 天も地も過ぎ去って行きます。しかし、わたしの言葉は決して過ぎ去りません。
32 しかし、その日と時刻は、父以外、天国の御使いたち、そして息子さえも知りません。
33 その時はいつか、あなたがたは知らないのだから、目を開け、警戒して祈りなさい。
34 それはちょうど、僕たちに権限を与え、各自になすべき仕事を与え、警戒せよと門番に命じ、それから、自分の家を後にする、遠くに旅に出る男のようです。
35 したがって、警戒していなさい。夕方か、真夜中か、雄鶏が時を作る時か、それとも朝か、いつ家の主人が来るか、あなたがたは分からないからです。
36 つまり、主人が不意に帰って来て、眠っているあなたがたを見つけるでしょう。
37 そして、あなたがたに言うわたしのこの言葉は、すべての人に言う言葉です。警戒していなさい。」

14章

二日後に過越祭と種なしパンの祭りがあった。そして、大祭司たちと律法学者たちは、策略を用いてイエスを捕まえ、殺す方法を相談した。
2 そして、彼らは言った。「民衆の間に騒動が持ち上がるから、祭りの日はまずい。」
3 さて、イエスはベタニヤにある、レプラ病14のシモンの家にいた時、イエスが食卓についていた時、ある女が、とても高価なナルド油が入っている石膏のつぼを持って来た。そして、イエスの所に来て石膏のつぼを壊し、イエスの頭の上にその油を注いだ。
4 しかし、ある人たちは自分たちの間で憤慨して言った。「なぜこのよい香の油が無駄になってしまったか。
5 この香油は、三百デナリ以上で売れたのに、そうすれば貧しい人たちにあげることができたのに。」そして、女を厳しく非難した。
6 しかし、イエスは言われた。「好きなようにさせなさい。なぜこの女を困らせるのですか。わたしによいことをしてくれたのです。」
7 貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいるから、望む時はいつでも、よくしてあげれます。しかし、わたしはいつもあなたがたと共にいる訳ではありません。
8 この女性はできるだけのことをしたのです。前もって、わたしの埋葬のため、わたしの身体に香油を注いだのです。
9 まことにあなたがたに言います。全世界のどこでも、この福音が説かれる所では、この女性がしたことも、この人の記念として語られます。」
10 さて、イエスを裏切るため、イスカリオテ・ユダという、十二弟子の一人が、大祭司たちの所に行った。
11 そして、大祭司たちは聞いて喜び、ユダに金を与えると約束した。そして、ユダはイエスをうまく裏切る方法を探した。
12 さて、種なしパンの祭りの最初の日、それは過越の子羊を殺す日に、弟子たちはイエスに言った。「どこに行ってあなたの過越祭の食事を準備しましょうか。お望みの所はありますか。」
13 それで、イエスはご自分の弟子二人を遣わし、言われた。「町に入りなさい。すると、水がめを運んでいる男にあなたがたは会います。その男について行きなさい。
14 そして、その男が、どこに入ろうが、その家の主人に言いなさい。『弟子たちと共に、過越祭の食事をする客間はどこですか、と先生が言っています。』
15 すると、その家の主人はあなたがたに広い、調度の整った、二階の部屋を見せてくれます。そこでわたしたちのために準備しなさい。」
16 そして、イエスの二人の弟子たちは出かけ、町には入り、イエスが二人に言われた通りの部屋を見つけ、過越祭の準備をした。
17 そして、夜になり、イエスは十二人と共に来られた。
18 さて、彼らは座って食べていた時に、イエスは言われた。「まことにあなたがたに言います。わたしと共に食べているあなたがたの中の一人が、わたしを裏切ります。」
19 それで、弟子たちは悲嘆にくれだし、「それは私ですか?」、「それは私ですか?」と一人一人、イエスに言った。
20 イエスは答えて言われた。「十二人の一人、わたしと共に深い皿に手を浸す者が、わたしを裏切ります。
21 人の子について書かれているように、正に行くが、人の子を裏切る者に、災いあれ。その男は、生まれなかったほうがましです。」
22 そして、弟子たちが食べている間に、イエスはパンを取り、それを祝福し、裂き、弟子たちに与え、言われた。「取って、食べなさい。これはわたしの体です。」
23 それからイエスはカップを取り、感謝を捧げ、弟子たちに与えた。そして、彼ら全員、カップから飲んだ。
24 そして、イエスは弟子たちに言われた。「これは新しい契約の、わたしの血であり、多くの人々のために流される血です。
25 まことに、あなたがたに言います。今からわたしの父の王国でこれを飲むその日まで、わたしは蔓の実を決して飲みません。」
26 そして、彼らは賛美の歌を一曲歌ってから、オリーブ山へ出かけた。
27 そこで、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたは今夜、わたしのことで全員、つまずかされます。『わたしは羊飼いを殴り、そして、羊たちは散らされる。』と、こう書いてあるからです。
28 しかし、わたしは復活させていただいた後、あなたがたより先にガリラヤに行きます。」
29 しかし、ペテロはイエスに言った。「全員がつまずいても、私はつまずきません。」
30 それで、イエスはペテロに言われた。「まことにわたしはあなたに言います。今日、すなわち今晩、雄鶏が二回時を作る前に、あなたはわたしを三回否定します。」
31 ペテロはイエスに非常に強く、さらに言った。「あなたと共に、たとえ死ぬ羽目になっても、私はあなたを決して否定しません。」彼ら全員はそのように言った。
32 それから、イエスと弟子たちはゲッセマネという名の所に行った。そして、イエスはご自分の弟子たちに言われた。「わたしが祈る間は、ここに座っていなさい。」
33 そして、イエスはペテロとヤコブとヨハネを連れて行かれた。すると、イエスの心は乱れ出し、非常に重くなり出された。
34 それで、イエスは三人に言われた。「わたしの魂は、死に至るほどとても悲しい。ここにいて、警戒していなさい。」
35 そして、イエスはもう少し行き、地に倒れ、できることなら、この時が自分を通り過ぎて行くように、と祈られた。
36 そして、イエスは言われた。「アバ、父よ、何でもあなたはお出来になります。このカップをわたしから取り去ってください。ただ、わたしが望むようにでなく、あなたのご意志のままにしてください。」
37 そしてイエスは戻って来て、眠っている弟子たちを見つけ、ペテロに言われた。「シモンよ、眠っているのですか。一時間、目を覚ましている力もないのですか。
38 誘惑に陥らないよう、警戒し、祈りなさい。霊は遂行の意志があっても、肉は弱いのです。」
39 そして、イエスは再び去り、そして、同じ言葉で祈られた。
40 そしてイエスは戻って来られ、弟子たちが眠っているのを再度見つけられた。なぜなら、彼ら三人のまぶたは重たかったからである。また、弟子たちはイエスにどう答えればいいか分からなかった。
41 そして、イエスは三度目に戻られた時、弟子たちに言われた。「あなたがたは未だ眠って休んでいるのですか。もうよい。時は来ました。人の子は、罪人の手に裏切られようとしています。
42 起きなさい。我ら全員行きましょう。見なさい。わたしを裏切る者が近づいて来ました。」
43 すると、その直後、イエスがまだ話しておられる間に、十二人の一人であるユダが近づいて来た。そのユダと共に、大祭司たち、そして律法学者たち、そして長老たちからの大群衆が、剣や棍棒を持って来た。
44 そこで、イエスを裏切ろうとしている者が群衆に合図し、言った。「私が口づけする人、それがその人だ。その男を捕まえ、間違いなく連れて行きなさい。」
45 そして、ユダが来ると、ただちにイエスに近づき、「ラビ、ラビ」と言って、イエスに口づけをした。
46 その時、群衆が来て、イエスに手をかけ捕らえた。
47 そして、そばに立っていたある男が剣を抜き、大祭司の僕を打とうとし、その男の耳を切り落とした。
48 そして、イエスは人々に向かって言われた。「あなたがたは、強盗に向かうように、剣や棍棒を持ってわたしを捕まえに出かけて来たのですか。
49 わたしは毎日あなたがたと共に、神殿の敷地で教えていたのに、あなたがたはわたしを捕まえませんでした。しかし、御言葉が成就するためです。」
50 そして、弟子たち全員はイエスを捨てて、逃げ去った。
51 さて、亜麻布一枚を裸の体にまといた、ある若い男がイエスについて行った。そして、若い男たちがこの男を捕まえた。
52 すると、若い男は亜麻布を棄て、裸で彼らから逃げた。
53 そして、人々はカヤパ大祭司の所へ、イエスを連れて行った。そこに、大祭司たち、長老たち、律法学者たち全員が集まっていた。
54 しかし、ペテロは遠く離れて、大祭司の屋敷の中庭に入り、イエスについて中に入り、役人たちと共に座り、焚き火で暖を取っていた。
55 さて、大祭司たち、それに全議会が、イエスを死刑にするため、イエスに対する証言を求めていたが、得られなかった。
56 なぜはら、多くの者たちはイエスに対して偽証したが、その者たちの証言は一致していなかった。
57 すると、数人のある者が進み出て、イエスに対して偽証をして、言った。
58 「『わたしは人間の手で建てられたこの神殿を破壊し、三日間で人間の手を使わず、別の神殿を建てます。』とこの人は言ったことを、私たちは聞いた。」
59 しかし、それにしても彼らの証言は一致してはいなかった。
60 それで、大祭司は中央に立ち上がり、イエスに尋ねて言った。「お前は何も答えないのか。この男たちがお前にした証言は何なんだ。」
61 しかし、イエスは黙って何もお答えにならなかった。それで、大祭司は再びイエスに言った。「お前はキリスト15、祝福された方の御子息なのか。」
62 イエスは言われた。「わたしはその通りです。そして、人の子が力の方の右の座に座り、空の雲とともに来る姿を、あなたがたは見ます。」
63 すると、大祭司は自らの衣を裂き、言った。「これ以上、我々には証人の必要がまだあろうか。
64 あなたがたは今この者の冒涜の言葉を聞いた。どう考えるか。」彼ら全員は、イエスが死に値すると裁いた。
65 彼らの中のある者はイエスの顔につばきをかけ始め、目隠しし、殴り、イエスに言った。「預言せよ。」そして、役人たちはイエスを平手打ちした。
66 さて、ペテロは下の中庭にいた時、大祭司の女奴隷たちの一人が来た。
67 そして、暖を取っていたペテロを見ると、女奴隷は言った。「あなたもナザレのイエスといっしょにいた人です。」
68 しかし、ペテロは否定して言った。「お前の言っていることは理解できないし、分からない。」そして、ペテロは前庭に出ると、雄鶏が時を作った。
69 すると、女奴隷は再びペテロを見て、回りに立っている人たちに言い始めた。「この男はあの人たちの一人です。」
70 しかし、ペテロはもう一度否定した。それから少したち、そばに立っていた人たちがもう一度ペテロに言った。「お前は間違いなく仲間の一人だ。ガラリヤ人でないか。お前の話し方で分かる。」
71 すると、ペテロは悪態をつき、誓い、言い出した。「あなたがたが言っているその男を、私は知らない。」
72 その時、雄鶏が二度目の時を作った。すると、ペテロは、「雄鶏が二回時を作る前に、あなたはわたしを三回否定します。」と言ったイエスの言葉を思い出した。そして、それを考えると、泣いた。

15章

さて、朝になると直ちに、大祭司たち、長老たち、そして律法学者たちは、議会議員たち全員と合同で会議を開いた。そして、イエスを縛り連れ出し、ピラトに引き渡した。
2 そして、ピラトはイエスに尋ねて言った。「お前はユダヤ人の王か。」それでイエスは彼に答えて言われた。「あなたはそう言います。」
3 それから、大祭司たちはイエスに対して多くのことを糾弾したが、イエスは何もお答えにならなかった。
4 それで、ピラトは再びイエスに尋ねた。「お前は何も答えないのか。あの者たちはお前に対してこんなに多くのことを証言しているのに、理解せよ。」
5 それでも、ピラトが驚くほど、イエスはそれでもまだ一言もお答えにならなかった。
6 さて、祭りで群衆が求める囚人一人を、総督が釈放する習慣があった。
7 仲間たちと反乱を起こし、人を殺し、仲間たちと鎖で縛られていたバラバという者がいた。
8 それで、群衆は叫び、ピラトにいつもと同様に行なうように願い始めた。
9 すると、ピラトは群衆に答えて、言った。「ユダヤ人の王を釈放してほしいか。」
10 大祭司たちはねたみでイエスを引き渡したことを、ピラトは知っていたからである。
11 しかし、ピラトがバラバを群衆に釈放するよう、大祭司たちは群衆を扇動した。
12 ピラトは群衆に言った。「では、お前たちがユダヤの王と呼ぶこの男を私にどうせよと言うのか。」
13 すると、群衆は再び皆叫んだ。「十字架刑にせよ。」
14 するとピラトは群衆に言った。「なぜだ。この男はどんな悪を行なったのか。」しかし、群衆はますます強く叫んだ。「その男を十字架刑にさせよ。」
15 それで、ピラトは群衆を満足させようとして、バラバを群衆に釈放した。そして、イエスをむちで打ってから、イエスを十字架につけるために引き渡した。
16 それで、兵士たちは、イエスをプライトリオンと呼ばれていた広間の中へ連れて行き、六百人部隊全員を呼び集めた。
17 そして、兵士たちはイエスに紫の衣を着させ、茨で冠を編み、イエスの頭にかぶせた。
18 そして、イエスに挨拶をし始めた。「ユダヤ人たちの王サマ、ご挨拶申しあげます。」
19 そして、兵士たちは葦でイエスの頭をたたき、つばきをかけ、そして、ひざまずき、イエスを拝んだ。
20 次いで、イエスを馬鹿にして、紫の衣を脱がせ、元の服を着せ、十字架につけるため連れ出した。
21 そして、アレキサンデレとルポスの父、田舎から出てきて通りかかった、クレネ人のシモンと言う男がイエスの十字架を背負うことを強制された。
22 そして、「どくろの地」と訳されているゴルゴタに連れて行った。
23 兵士たちはイエスに、没薬を混ぜた葡萄液を飲ませようと与えたが、イエスはそれをお飲みにならなかった。
24 そこで、彼らはイエスを十字架につけ、イエスの服を分配した。各自何を取るかを決めるため、くじを引いた。
25 彼らがイエスを十字架につけたのは、その日の第三時間目16であった。
26 そして「ユダヤ人たちの王」と、イエスの罪状が頭上に書いてあった。
27 そして、彼らはイエスと共に、右に一人、左に一人、二人の強盗を十字架につけた。
28 それで、「彼は犯罪人の数の中に入った。」と言う御言葉は成就された。
29 そして、通りかかった人たちは、イエスを侮辱し、頭を振りながら、言っていた。「神殿を破壊し、三日のうちに建てる者よ、
30 自分自身を救い、そして、十字架から下りて来い。」
31 大祭司たちも同様に、律法学者たちと共に次々と、イエスを馬鹿にして言った。「あの男は他人を救ったが、自分は救えない。
32 あのキリスト、イスラエルの王に今こそ、十字架から下りて来てもらおう。それを見て、私たちが信じるためだ。」と言った。イエスと共に十字架につけられた強盗たちが、イエスを侮辱していた。
33 さて、第六時間目17になり、第九時間目まで、全地上が暗くなった。
34 そして、第九時間目に、イエスは大声で叫んで言われた。「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ。」これは訳すと、「我が神、我が神、なぜわたしを見放したのですか。」という意味である。
35 すると、そこに立っていた者たちの中で、これを聞いたある者は、「この人はエリヤを呼んでいる。」と言った。
36 ある人が走って行き、海綿に酢を十分含ませ、葦につけ、イエスが飲めるように差し出して、言った。「そのままにしておけ。エリヤが彼を降しに来るか見ようではないか。」
37 そして、イエスは大声で叫び、最後の息をなされた。
38 すると見よ。神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。
39 それで、イエスの向かいに立っている百人隊長は、イエスがこう叫ばれ、最後の息をなされたのを見て、言った。「本当に、この方は神の御子息でした。」
40 そして、遠く離れて見守っていた女たちもいた。その中に、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセの母マリヤ、サロメがいた。
41 イエスがガリラヤにおられた時、イエスに従い、仕えていた女たちである。そして、その他、イエスとともにエルサレムに上って来た大勢の女もいた。
42 さて、もう夜になると、準備の日、すなわち安息日の前日であったから、
43 高い身分の議会員のアリマタヤのヨセフという人がいた。彼は神の王国を待ち望んでいた。そして、勇気を持って、ピラトのもとに行き、イエスの遺体を求め願った。
44 イエスはもう死んでしまったのか、と驚いたピラトは、百人隊長を呼び、イエスはもう死んでしまったのかと確認した。
45 それで、百人隊長に確かめ、ヨセフに遺体を渡すことを許した。
46 そのあと、ヨセフは亜麻布を持ってきて、イエスをそれで包んだ。そして、その遺体を、岩に掘られた墓に横たえ、石を墓の入り口に転がして置いた。
47 マグダラのマリヤと、ヨセの母マリヤは、イエスの置かれた場所を見つめていた。

16章

さて、安息日が過ぎ、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤ、そしてサロメは、イエスの遺体に塗るため、香料を買った。
2 その週の最初の日、朝とても早く、日の出の時、女たちは墓に行った。
3 そして、互いに言った。「私たちのため、お墓の入り口の石を、転がしてくれる人がいるでしょうか。」
4 しかし、見上げてよく見ると、石は転がされていた。この石はとても大きかったからである。
5 そして、墓18には入ると、白くて長い衣を着ている若い男が右側に座っているのを見て、女たちは驚き恐れた。
6 しかし、その若い男は女たちに言った。「恐れることはありません。十字架刑にされたナザレのイエスをあなたがたは探していますが、イエスは復活されました。ここにはいらっしゃいません。ヨセフたちがイエスを横にされた所を見なさい。
7 しかし、行って、『イエスはあなたがたより先にガリラヤに行かれます。』イエスが言われた通り、あなたがたはそこでイエスにお会いします。』と弟子たちとペテロに伝えなさい。」
8 それで女たちは震え驚き、急いで外に出て、墓から逃げ出した。そして、恐怖のため、誰にも何も言わなかった。
9 そして、その週の最初の日の朝早く、復活されたイエスは、最初にマグダラのマリヤにお姿を見せられた。イエスは以前、この女から七つの悪霊を追い出された。
10 悲嘆にくれ、そして泣いている人たち、つまりイエスの供をした人たちの所にマリヤは行って、このことを伝えた。
11 そして、この人たちはイエスが生きておられ、マリヤに目撃されたと聞いても、信じなかった。
12 その後、田舎へ歩いて行く途中の二人に弟子に、イエスは別の姿でご自分のお姿を見せられた。
13 この二人は行って他の弟子たちに伝えたが、その弟子たちも二人の話しを信じなかった。
14 その後、イエスは食卓に付いている十一人にお姿を見せられた。そして、復活後のイエスを見た人たちの話を信じなかった十一人の不信仰と、頑迷さをイエスは責められた。
15 そして、イエスは十一人に言われた。「全世界に行き、すべての造られた者に福音を説きなさい。
16 信じて、浸礼を受ける人は救われるが、信じない人は罪に定められます。
17 そして、信じる人たちには、これらのしるしが付随してきます。すなわち、わたしの名によって、悪霊を追い出すこと、新しい言語を話すことです。
18 信じる人たちは蛇を摘み上げます。そして、毒を飲んでも決してその毒は害を与えません。信じる人たちは病人たちに手を置くと、病人たちは良くなります。」
19 そして、主は十一人にお話しになった後、天国に引き上げられ、神の右手にお座りになった。
20 そして、弟子たちは出かけ、あらゆる所で説いた。そして、主は弟子たちと共に働き、付随したしるしを通して御言葉を確かなものにされた。アーメン。


  1. ギリシャ語の動詞βαπτιζω(baptizo、バプティゾ)の意味は、「浸す、漬ける、沈める」である。(「新約聖書ギリシャ語小辞典」、織田昭編、58ページ)。  

  2. 律法学者たちは、旧約聖書の解釈書をそのまま知識として教えた。  

  3. 現代はハンセン病と言う。  

  4. ギリシャ語のオイノス。葡萄から作ったすべての飲み物を含む。  

  5. 「ハエの主」という意味で、悪魔を指している。  

  6. サタンとは、悪魔の長であり、名前は「敵」という意味である。  

  7. レギオン:ローマ軍の六千人隊。  

  8. ローマ帝国の銀貨。一デナリは一般労働者の一日分の賃金。  

  9. 三時ごろ。  

  10. サタンの意味は「敵」である。  

  11. ユダヤ人が礼拝のため使う言葉、ヘブル語で、「お救いください」という意味である。  

  12. ローマ帝国の銀貨。  

  13. 小さくて少額の銅貨。  

  14. 現代はハンセン病と言う。  

  15. 「キリスト」とは、「油注がれた」救世主と言う意味である。  

  16. 午前九時。  

  17. 正午。  

  18. 洞窟の墓であった。