マタイ

マタイの福音書

1章

アブラハムの息子であり、ダビデの息子でもあるイエス・キリストの家系の書。
2 アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、
3 ユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、
4 アラムにアミナダブが生まれ、アミナダブにナアソンが生まれ、ナアソンにサルモンが生まれ、
5 サルモンに、ラハブによってボアズが生まれ、ボアズに、ルツによってオベデが生まれ、オベデにエッサイが生まれ、
6 エッサイにダビデ王が生まれた。ダビデ王に、かつてウリヤの妻であった女によってソロモンが生まれ、
7 ソロモンにレハベアムが生まれ、レハベアムにアビヤが生まれ、アビヤにアサが生まれ、
8 アサにヨサパテが生まれ、ヨサパテにヨラムが生まれ、ヨラムにウジヤが生まれ、
9 ウジヤにヨタムが生まれ、ヨタムにアハズが生まれ、アハズにヒゼキヤが生まれ、
10 ヒゼキヤにマナセが生まれ、マナセにアモンが生まれ、アモンにヨシヤが生まれ、
11 ヨシヤに、バビロンへの強制移住のころエコニヤとその兄弟たちが生まれた。
12 バビロン強制移住の後、エコニヤにサラテルが生まれ、サラテルにゾロバベルが生まれ、
13 ゾロバベルにアビウデが生まれ、アビウデにエリヤキムが生まれ、エリヤキムにアゾルが生まれ、
14 アゾルにサドクが生まれ、サドクにアキムが生まれ、アキムにエリウデが生まれ、
15 エリウデにエレアザルが生まれ、エレアザルにマタンが生まれ、マタンにヤコブが生まれ、
16 ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスがこのマリヤからお生まれになった。
17 それで、アブラハムからダビデまでの全世代は十四代である。また、ダビデからバビロン強制移住までは十四代である。そして、バビロン強制移住よりキリストまでは十四代である。
18 さて、イエス・キリストの誕生はこうであった。イエスの母マリヤはヨセフと婚約していた時、二人が一緒になる前に、マリヤは聖霊によって身重になっていることが分かった。
19 しかし、マリヤの夫ヨセフは正しい人であり、彼女をさらし者にしたくなかったので、ひそかにマリヤとの関係を切ろうと決めた。
20 そして、彼がこれらのことを考えていた間に、見よ、主の御使いは彼に夢に現われて言った。「ダビデの子孫であるヨセフよ。マリヤを妻としてめとることを恐れるな。彼女の中にやどるのは、聖霊によるものだからである。
21 そして、マリヤは息子を産む。彼の名前をイエスとつけなさい。なぜなら、この方は自らの民をその罪からお救いになるからである。」
22 これらすべてのことが行なわれた理由は、預言者を通して言われた主からの言葉が成就するためであった。こう言われた。
23 「見よ。その処女が身重になって息子を産む。そして人は彼の御名をインマヌエルと呼ぶ。」インマヌエルを訳すと、「我らと共におられる神」の意味である。
24 それで、ヨセフは眠りから起き上がり、主の御使いが自分に命じた通りに行なった。彼は妻を受け入れたが、
25 マリヤの長男が生まれるまで、彼女を知ることはなかった。そして息子に「イエス」という名前をつけた。

2章

さて、ヘロデ王の時代に、イエスがユダヤ州のベツレヘムでお生まれになった後、見よ、賢者たちが東方からエルサレムにやって来た。
2 そして、言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにいますか。と言いますのは、私たちは東方でその方の星を見、その方を拝みに参りました。」
3 これを聞いたヘロデ王と、彼と共にエルサレムの全員は、動揺した。
4 そして、民のすべての大祭司たちと律法学者たちをヘロデは集めてから、キリストがどこで生まれるかを彼らに尋ねた。
5 そして、「ユダヤのベツレへムです。」と彼らは王に言った。「なぜなら、預言者たちを通してこのことはそう書いてあります。
6 『そして、ユダの地にあるベツレへムよ、お前はユダの支配者の中で、決して最小ではない。わたしの国民であるイスラエルを牧する支配者が、お前から出られるからである。』」
7 そこで、ヘロデは秘密裏に賢者たちを呼んだ時、彼らに星がいつ現われたかを正確に調べた。
8 そして、彼らをベツレヘムへ遣わす時、ヘロデは言った。「行って、その幼児のことを細かく調べよ。いつであれ見つかった時は、私に報告せよ。私も行って、その幼児を拝むから。」
9 それで、王の話を聞くと、賢者たちは出発した。すると、見よ、彼らが東の地で見た星は、その子のおられる所の上に止まるまで、彼らの前を行った。
10 そして、彼らはその星を見て、大いに喜び、
11 そして、家に入り、母マリヤと共にいる幼児を見て、ひれ伏して幼児を拝んだ。そして、彼らの宝箱を開けて、黄金と乳香と没薬の贈り物を幼児に捧げた。
12 それから夢を通してヘロデの所に戻らないようにと、警告された賢者たちは、別の道で自分の国へ引き返して行った。
13 しかし、賢者たちが去った後、見よ、主の御使いは夢を通してヨセフに現れて言った。「ヘロデは幼児を捜し出し、殺そうとしている。ゆえに立ち上がり、幼児とその母を連れ、エジプトに逃れ、わたしが声をかけるまでそこにとどまれ。」
14 それで、ヨセフは起き上がって、幼児とその母を夜中に連れ出し、エジプトに下った。
15 そして、ヘロデの死まで、ヨセフはそこにいた。それは、「わたしはエジプトよりわたしの息子を呼んだ。」と預言者を通して言われた主からの言葉が成就されるためであった。
16 その時、賢者たちに騙されたことが分かったヘロデは激しく怒った。そして、家来を派遣し、ベツレヘムとその近郊のすべての、二才以下の男の子を殺した。それは賢者たちから聞いた事から、時を正確に割り出したからである。
17 その時、預言者エレミヤによって言われたことが成就された。
18 「ラマで声が聞こえた。嘆きと泣き声と大勢の泣き悲しむ声である。ラケルは彼女の子たちのために泣いている。そして、子たちはいないので、彼女が慰められることを拒否している。」
19 でも、ヘロデが死んだ時に、見よ。主の御使いがエジプトでヨセフに夢の中に現れて言った。
20 「幼児の命を求める者たちは死んだから、起き上がって幼児とその母を連れてイスラエルの地に行きなさい。」
21 それで、ヨセフは起き上がって、幼児とその母を連れてイスラエルの地に入った。
22 しかし、アケラオが自分の父ヘロデの代わりにユダヤを支配していたことを聞いたヨセフは、そこに行くのを恐れた。そして、夢で神から忠告を受けていた彼はガリラヤ地方に帰った。
23 やって来たヨセフは、ナザレという町に住んだ。これは預言者たちを通して言われた言葉、すなわち、「彼はナザレ人と呼ばれる。」という言葉が成就されるためである。

3章

そのころ、浸礼者ヨハネはユダヤの荒野にやって来て、宣言して、
2 言った。「天の王国は近づいて来たから、悔い改めなさい。」
3 なぜなら、これは預言者イザヤによって言われた御言葉、「荒野で叫ぶ者の声がする。主の道を準備せよ。その方の道を真っ直ぐにせよ。」とは彼だからである。
4 そして、このヨハネはらくだの毛の衣を着て、動物の皮の帯を腰にしめていた。そして、彼の食べ物はバッタと野の蜜であった。
5 その時、エルサレム、ユダヤ全土、ヨルダン川のすべての流域の人たちは、ヨハネの所にやって来た。
6 それで、人々は自分たちの罪を言い表しながら、ヨルダン川でこの男によって浸礼1を授けられた。
7 しかし、大勢のパリサイ派とサドカイ派の人たちが、ヨハネの浸礼式に来ているのを見て、ヨハネは彼らに言った。「まむし一族の者たちよ、来るべき怒りから逃れよと、誰がお前たちに警告をしたのか。
8 そのために、悔い改めにふさわしい実を結べ。
9 そして、『私たちの父はアブラハムである。』と自らに言い聞かせようと、考えてはいけない。なぜなら、私はお前たちに言う。神はこれらの石から、アブラハムに子どもを立ち上がらすことができるのだ。
10 そして、斧はもうすでに、木の根元に当てがわれている。ゆえに、すべて良い実を結ばない木は切り倒されて、火の中へ投げ入れられる。
11 私はもちろん、悔い改めのゆえに、お前たちに水で浸礼を授けているが、私の後からおいでになる方は、私より力ある方です。その方の履き物を持つ値さえ、私にはありません。その方はお前たちに聖霊と炎で浸礼をお授けになります。
12 その方の手には、ご自分の箕があり、その方はご自分の脱穀する場所を徹底的に清められます。そして、その方はご自分の麦を集め、倉に収めるが、殻は消すことのできない炎で焼き尽くしてしまいます。」
13 その時、イエスはガリラヤからヨルダン川に、ヨハネから浸礼を授けられるために、ヨハネの所に姿を現された。
14 しかし、ヨハネはイエスをさし止めて言った。『私はあなたから浸礼を授けられる必要があるのに、あなたが私の所に来られるのですか。」
15 しかし、イエスは答えて彼に言われた。「今、許可しなさい。なぜなら、わたしたちにとって、このようにすべての義を全うすることは当然です。」それで、ヨハネはイエスを許可した。
16 そして、イエスが浸礼をお受けになるやいなや、すぐに水中から立ち上がられた。そこで、見よ、天はイエスに開き、そしてイエスは神の御霊が、鳩のように降りて来て、ご自分の上に来るのをご覧になった。
17 そして、見よ。天からの声がして言われた。「これこそがわたしの愛する息子である。わたしが喜ぶ者である。」

4章

それから、イエスは悪魔に誘惑されるため、聖霊に荒野へ導かれた。
2 そして、イエスは四十日昼夜にわたり断食されたので、その後空腹を覚えられた。
3 そして、誘惑者がイエスの所に来て、言った。「もしあなたが神の子なら、パンになるよう、これらの石に命じなさい。」
4 しかし、イエスは答えて言われた。「『人はパンだけではなく、一つ一つ神の口から出る御言葉によって生きる。』と書いてある。」
5 その時、悪魔はイエスを聖なる町へ連れて行き、神殿の最も高い所に立たせた。
6 そして、イエスに言った。「もしあなたが神の子なら、自らを下へ投じなさい。『神はご自分の御使いたちに、あなたについて命じられる。』それと、『あなたはあなたの足が石に打ち当たらないように、御使いたちはあなたを手で支える。』と書いてあるからだ。」
7 イエスは悪魔に言われた。「『あなたの神である主を試してはいけない。』とも書いてある。」
8 また悪魔はイエスを大変高い山に連れて行き、世界のすべての王国とその栄華をイエスに見せた。
9 そして、イエスに言った。「もしあなたが伏して私を拝めば、私はこれらすべてをお前に与える。」
10 そこでイエスは悪魔に言われた。「サタンよ、失せよ!『あなたの神である主を拝み、その方のみに仕えよ。』と書いてあるからだ。」
11 その時、悪魔はイエスから離れた。そして見よ、御使いたちが来て、イエスに仕えていた。
12 さて、イエスはヨハネが逮捕されたと聞かれ、ガリラヤへ帰られた。
13 そして、イエスはナザレを後にされ、カペナウムへ行き、そこに住まわれた。カペナウムは海に沿って、ゼブルンとナフタリの境にある。
14 これは預言者イザヤを通して言われた御言葉が成就するためであった。
15 「ゼブロンの地とナフタリの地、海への道、ヨルダンの向こう、異邦人のガリラヤである。」
16 暗やみに座っているその国民は、巨大な光を見た。そして、死の地方と影に座っている人たちに光が昇った。」
17 その時からイエスは説き始め、「天の王国が近づいたから、悔い改めなさい。」と言われた。
18 そして、ガリラヤの海の岸辺を歩かれていたイエスは、二人の兄弟、ペテロと呼ばれるシモンと彼の兄弟アンデレが、網を海に投げ入れているのをご覧になった。彼らは漁師であったからである。
19 そして、イエスは二人に言われた。「わたしに従いなさい。そしてわたしはあなたがたを人間をとる漁師にします。」
20 そこで二人はすぐ網をそのまま残して、イエスに従った。
21 そして、そこから先に進んで行くと、さらに二人の兄弟、彼らの父ゼベダイと共に船に乗って彼らの網を繕っている、ゼベダイの息子ヤコブとその兄弟ヨハネを、イエスはご覧になった。そして二人を呼ばれた。
22 すると、二人は即座に船と彼らの父親を離れ、イエスに従った。
23 そしてガリラヤ人たちのシナゴーグ2でイエスは教えたり、王国の福音を宣べ伝えたりして、全ガラリヤを行き巡られ、民の中のすべての病気やすべての弱っている人を治された。
24 そして、イエスの名声は、シリア全土に行き渡ったので、人たちは色々な病気と苦痛で悩んで弱っているすべての人たち、悪霊に占領されている人たち、てんかんの人たち、中風の人たちを、イエスの所に連れて来た。そして、イエスは彼らを治された。
25 そして、ガリラヤやデカポリスやエルサレムやユダヤやヨルダンの向こうから、大勢の群衆はイエスに従った。

5章

そこで、群衆をご覧になったイエスは山に登られた。そして、イエスが座られると、弟子たちはイエスの所に来た。
2 そこで、イエスは口を開き、彼らを教えて言われた。
3 「霊にあって貧しい人たちは祝福されています。天の王国はその人たちのものだからです。
4 悲しむ人たちは祝福されています。慰められるからです。
5 穏やかな人たちは祝福されています。地を受け継ぐからです。
6 義に飢えかつ乾いている人たちは祝福されています。満たされるからです。
7 慈悲深い人たちは祝福されています。慈悲を与えられるからです。
8 心の清い人たちは祝福されています。神を見るからです。
9 平和をつくりだす人たちは祝福されています。神の子どもと呼ばれるからです。
10 義のために迫害された人たちは祝福されています。天の王国は彼らのものだからです。
11 わたしが原因で、人たちがあなたがたの悪口を言ったり、迫害したり、いろいろなおぞましいことを偽って言う時、あなたがたは祝福されています。
12 喜びなさい。歓喜しなさい。あなたがたの天での褒賞は大きいからです。あなたがたより前に来た預言者たちを、彼らは同様に迫害したからです。
13 あなたがたは地の塩です。しかし、もしその塩が塩の味をなくしたら、何によってそれに塩気を与えられますか。投げ捨てられ、人に踏まれる他に、何の役にも立てません。
14 あなたがたは世の光です。山の上にある町も、隠れることができません。
15 また、灯りに火をつけ、枡をかぶせることはせず、むしろ灯りを燭台の上に置きます。それで灯りは家にいるすべての人を照らします。
16 このように、人々はあなたがたの良い行為を見て、天におられるあなたがたの父に栄光を捧げるように、人々の前であなたがたの光を輝かせなさい。
17 律法または預言者たちを廃絶するために、わたしが来たと思ってはいけません。わたしは廃絶するためにではなく、成就するために来たのです。
18 なぜなら、わたしはまことにあなたがたに言います。この空と地が消え去るまで、すべてが成就するまで、律法の一字一画は決して消えません。
19 したがって、もし誰かこの律法の一番小さいもの一つを破り、またそうするようにと人々に教えれば、その人は天の王国で、一番小さい者と呼ばれます。しかし、律法を実行したり教えたりする人は、天の王国で偉大な者と呼ばれます。
20 それで、わたしはあなたがたに言います。もしあなたがたの義が、律法学者たちやパリサイ派の人たちの義を越えなければ、あなたがたは絶対に天の王国に入ることはありません。
21 『殺人を犯してはいけない。』3そしてまた、『殺人を犯す者は、裁きの危険に陥っています。』と昔の人に言われたことを、あなたがたは聞いています。
22 しかし、わたしはあなたがたに言います。すべて理由なしに自分の兄弟に腹を立てる者は、裁きを受ける危険な状態にある。また、すべて自分の兄弟に、『脳なし』と言う者は、議会4に呼ばれる危険な状態にいる。かつ『バカ』と言う者は、地獄の炎に入る危険な状態である。
23 それで、もしあなたの捧げ物を祭壇まで持って行き、そこであなたの兄弟が何かあなたに対して恨みがあるのを思い出したら、
24 そこで、捧げ物を祭壇の前に置いて、行き、まずあなたの兄弟と仲直りをしてから、また来て、捧げ物を捧げなさい。
25 あなたの相手と道中にいるうち、すぐ仲直りしなさい。そうしないと、相手はあなたを裁判官に引き渡し、そして裁判官はあなたを下役に引き渡し、牢獄に投げ込まれてしまいます。
26 わたしは本当にあなたに言います。最後の一コドラント5を支払うまで、あなたはそこを決して出ることはありません。
27 昔の人たちに、『姦淫してはいけない。』と言われたことをあなたがたは聞いたことがあります。
28 しかし、わたしはあなたがたに言います。誰であれ、女を欲情のために見る者は、すでに自分の心の中でその女と姦淫をしたのです。
29 それで、もしあなたの右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して、捨てなさい。なぜなら、あなたの体全体が地獄に投げ込まれるより、あなたの体の一部分が消滅した方がよいからです。
30 そしてもしあなたの右の手があなたをつまずかせるなら、それを切り取り捨てなさい。あなたの体全体が地獄に投げ込まれるより、あなたの体の一部分が消滅した方がまだましです。
31 そして、『妻を離婚する者は、離縁状を与えよ。』と言われています。
32 しかし、わたしはあなたがたに言います。性的不品行の理由以外で、自分の妻を離婚する者は妻に姦淫をさせ、そして、もし誰であれその離婚された女と結婚すれば、その者は姦淫をします。
33 また、『偽って誓ってはいけない。しかし、あなたの誓いは主にすべきである。』と昔の人たちに言われたことを、あなたがたは聞いたことがあります。
34 しかし、わたしはあなたがたに言います。絶対に誓ってはいけません。天にかけて誓ってはいけません。天は神の王座だからです。
35 また、地は神の足載せ台だから、地にかけて誓ってもいけません。また、エルサレムは大いなる王の町だから、エルサレムにかけて誓ってもはいけません。
36 また、あなたの髪の毛一本さえも、白くも黒くもできないので、自分の頭にかけて誓ってはいけません。
37 それで、あなたがたの言葉を『はい、はい』そして『いいえ、いいえ』にしなさい。これら以上は悪人より来るからです。
38 『一つの目には一つの目、そして一本の歯には一本の歯。』と言われたことを、あなたがたは聞いたことがあります。
39 しかし、わたしはあなたがたに言います。悪人に反対せず、誰であれあなたの右の頬を打つ人に、左の頬も向けなさい。
40 そして、誰であれあなたの下着を取ろうとして訴えるのならば、あなたの上着も与えなさい。
41 そして、あなたを強制して一ミリオン6行かせる人が誰であれ、その人と共に、二ミリオン行きなさい。
42 あなたに求める人には与えなさい。また、あなたから借りたい人を拒否してはいけません。
43 『あなたの隣人を愛し、あなたの敵を憎みなさい。』と言われたことを、あなたがたは聞いたことがあります。
44 しかし、わたしはあなたがたに言います。あなたがたの敵を愛しなさい。あなたがたを呪う人たちを祝福しなさい。あなたがたを憎む人たちに良くしなさい。そして、悪意であなたがたに接する人たち、あなたがたを迫害したりする人たちのために祈りなさい。
45 こうして、あなたがたは、あなたがたの天国におられる父の子となるでしょう。その方は善人たちの上にも、悪人たちの上にも、ご自分の太陽を昇らせ、雨を正しい人たちの上にも、正しくない人たちの上にも降らせるからです。
46 なぜなら、もしあなたがたを愛している人を、あなたがたが愛したからといって、褒賞は何かありましょうか。収税人でさえそうしているではありませんか。
47 そして、あなたがたは自分の兄弟たちにだけ挨拶すれば、あなたがたは他の人よりそれ以上の何をしていると言うのですか。収税人でさえそのようにしているではありませんか。
48 それで、天国におられるあなたがたの父が完全であられるように、あなたがたも完全でいなさい。

6章

あなたがたは人前で、見られるために、慈善をしないように気をつけなさい。そうでないと、あなたがたは、天国におられるあなたがたの父からの褒賞を手にすることはありません。
2 したがって、あなたがたは慈善をする時、人から栄光を受けようと、シナゴーグ7や道で、人前でラッパを鳴らす偽善者たちのようにしてはいけません。本当にわたしはあなたがたに言います。その者たちはもうすでに自分たちの褒賞を手にしてしまったのです。
3 そうでなく、あなたは慈善をする時、自分の右手のしていることを、左手に知らせてはいけません。
4 これは、あなたの慈善が秘密になるためです。そうすると、秘密裏にご覧になっているあなたの父は、人前であなたに褒賞を下さいます。
5 そして、あなたがたは祈る時、偽善者のようであってはいけません。なぜなら、その者たちは人に注目されようと、シナゴーグや通りの角に立って祈るのが好きです。わたしは本当にあなたがたに言います。その者たちは褒賞を手にしてしまったのです。
6 しかし、あなたが祈る時は、あなたの奥まった部屋に入り、ドアを閉じ、秘密の場所にもおられるあなたの父に祈りなさい。そうしたら、秘密裏にご覧になっているあなたの父は、人前であなたに褒賞を下さいます。
7 そして、祈る時に、異国人がするように、空しい言葉を繰り返してはいけません。なぜなら、彼らは、言葉が多ければ、聞き入れられると思っているからです。
8 したがって、彼らのようであってはいけません。あなたがたが父に願う前に、あなたがたの父は、あなたがたの必要とするものをご存じだからです。
9 それで、あなたがたは次のように祈りなさい。『天国におられる私たちの父よ。あなたの御名が尊ばれますように。
10 あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が天国で行なわれているように、地上ででも行なわれますように。
11 今日も私たちの日ごとのパンを与えてください。
12 そして、私たちも私たちの負い目のある人たちを赦しますから、私たちの負い目も、赦してください。
13 そして、私たちを誘惑に導かず、邪悪なものから救い出してください。王国と力と栄光は、永遠にあなたのものだからです。アーメン。』
14 もしあなたがたが、人たちの悪行を赦せば、天国のあなたがたの父もあなたがたを赦してくださるからです。
15 しかし、もしあなたがたが、人たちの悪行を赦さなければ、あなたがたの父も、あなたがたの過ちを赦してくださいません。
16 また、断食する時に、つらそうな顔をする偽善者のようにあってはいけません。彼らは、断食しているように見えるよう、悲痛な顔を作るからです。本当に、あなたがたに言います。彼らはもうその褒賞を手にしてしまっています。
17 しかし、あなたは断食する時に、頭に油をつけ、顔を洗いなさい。
18 それは、断食していると人に目立つためではなく、隠れた場所におられるあなたの父に目立つためです。そして、隠れた場所でご覧になるあなたの父は、みんなの前で褒賞を与えてくださいます。
19 衣蛾8やさびがだめにしたり、泥棒が入り込んで盗んだりするこの地上に、自分のために宝を積み上げてはいけません。
20 それより、あなたがたは天国に宝を積み上げなさい。そこは、衣蛾もさびもだめにしないし、泥棒が入り込んで盗むことはありません。
21 なぜなら、あなたがたの宝がある場所に、あなたがたの心もあるからです。
22 体の灯は目です。したがって、もしあなたの目が健全ならば、体全体も光で満たされます。
23 しかし、もしあなたの目が悪いのであれば、あなたの体全体も暗くなります。それで、もしあなたの中の光が暗黒であれば、その暗黒はどんなにか深いことでしょう。
24 誰も二人の主に仕えることができません。なぜなら、一人を憎み、もう一人を愛するようになるか、または、一人に執着し、もう一人を軽視するようになります。あなたがたは神と富に、同時に仕えることができません。
25 それで、わたしはあなたがたに言います。何を食べようか、何を飲もうか、あなたがたの命を心配してはいけません。また何を身に付けようかと、体のことを心配してはいけません。命は食べ物以上、またたましいは衣服以上ではありませんか。
26 空の鳥を見なさい。なぜなら、彼らは蒔いたり刈り取ったり納屋に納めたりしないが、あなたがたの天国の父は、彼らに食べ物を与えています。あなたがたは彼らより、はるかに価値があるのではありませんか。
27 また、あなたがたの中の誰が、心配したからと言って、自分の身長に一キュウビット9を加えることができるでしょうか。
28 それで、あなたがたはなぜ服装のことを心配するのですか。野のユリがどう育つのですか、よく考えて見なさい。ユリは労働も紡ぎもしません。
29 しかし、わたしはあなたがたに言います。栄光が絶頂時のソロモンでさえ、この一輪のユリの花ほども着飾ってはいなかったのです。
30 したがって、今日は存在するが、明日はかまどに投げ込まれてしまう野の草を、神はこのように服を着せるのだから、それ以上のものをあなたがたに着せないことがあるでしょうか。ああ信仰の薄い者たちよ。
31 したがって、『何を食べたら良いのか。』とか、『何を飲んだら良いのか。』とか、『何を着たら良いのか。』と言って、心配してはいけません。
32 なぜなら、すべてこれらの物を異邦人は求めます。しかし、これらすべての物を、あなたがたが必要としていることは、あなたがたの天の父はご存じです。
33 第一に、神の王国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらすべての物があなたがたに加えられます。
34 それで、明日は明日で心配するから、あなたがたは明日のことを心配してはいけません。その日の苦しみはその日で十分だからです。

7章

裁いてはいけません。裁かれないためです。
2 自分たちの裁く裁きで裁かれ、また、自分たちの量る秤で、あなたがたは計られるからです。
3 あなたは自分の目にある梁を気にもせず、兄弟の目にあるちりが見えるのは、なぜでしょうか。
4 または、見よ、自分の目に梁があるのに、兄弟に、『あなたの目からちりを取ってあげよう。』と、どうして言うことができるのですか。
5 偽善者よ、まず自分の目からその梁を取りなさい。そうすればはっきりと目が見え、兄弟の目からそのちりを取り除けます。
6 聖なるものを犬たちに与えてはいけません。また、あなたの真珠を豚たちの前に投げてはいけません。豚たちはそれを足蹴にし、向きを変えてあなたがたを引き裂いてしまうことがないためです。
7 求め続けなさい。そうしたら、それはあなたがたに与えられます。探し続けなさい。そうしたら、それをあなたがたは見いだします。戸をたたき続けなさい。そうしたら、戸はあなたがたのため開かれます。
8 なぜなら、求める人は誰であれ受け取り、そして探す人は見いだし、そして戸をたたく人には開かれるからです。
9 あるいは、パンを求める息子に、石を与える父親はあなたがたの間にいるでしょうか。
10 そして、魚を求める息子に、その父は蛇を与えるでしょうか。
11 従って、あなたがたは、悪い者でありながら、自分の子どもには良い贈り物を与えることを知っているのだから、なおさらのこと、あなたがたの天におられる父は、ご自分に願う人たちに良いものをくださいます。
12 それで、あなたがたこそが人たちからして欲しいことは何でも、人たちにしなさい。これこそが律法と預言者たちだからです。
13 狭い門を通って入りなさい。なぜなら、崩壊への門は広く、その道は幅広く、またその門を通る人たちは多いのです。
14 しかし、永遠の命へ通じる門は狭く、その道は苦しいのです。そして、それを見つけ出す人はまれです。
15 しかし、中は極度の空腹の狼だが、羊の服であなたがたの所に来るにせ預言者に気をつけなさい。
16 あなたがたは彼らをその実によって知ります。人は葡萄を茨から、またはイチジクをアザミから集めはしないでしょう。
17 同様に、すべての良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結びます。
18 良い木は悪い実を結べません。また悪い木は良い実を結べないのです。
19 良い実を結ばないすべての木は、切り倒され、火に投げ入れられます。
20 それで、その実によってあなたがたは彼らを知ります。
21 わたしに、『主よ、主よ』というすべての人が、天の王国に入るわけはなく、天におられるわたしの父のご意志を実行する人だけが入ります。
22 その日、多くの人はわたしに言います。『主よ、主よ、私たちはあなたの御名によって預言をしたり、あなたの御名によって悪霊を追い出したり、あなたの御名によって多くの力ある業を行なったではありませんか。』
23 その時わたしはその人たちにはっきり言います。『わたしはあなたがたにまったく会ったことがありません。律法を認めない行為をする者たちよ、わたしから立ち去れ。』
24 それでは、これらわたしの言葉を聞き、実行するすべての人を、岩の上に自分の家を建てた賢い人と、わたしはその人をたとえましょう。
25 そして、雨が降り、洪水が来て、風が吹いてその家を打ちつけたが、家は岩の上に置かれていたので、倒れませんでした。
26 しかし、わたしのこれらの言葉を聞いて、実行しないすべての人は、自分の家を砂の上に建てた愚かな者にたとえられます。
27 そして、雨が降り、洪水が来、風が吹いてその家を叩き付け、その家は倒れ、その倒れ方はすさまじかったのです。」
28 そこで、ことの次第はこうであった。イエスがこれらの言葉を語り終えられた時、群衆はイエスの教えに驚嘆していた。
29 イエスは、律法学者10たちと違い、権威ある人として群衆を教えてこられたからである。

8章

それから、イエスが山からくだられると、大群衆が彼について来た。
2 すると見よ、一人のレプラ病11の人が来て、イエスを拝して言った。「主よ、もしあなたがお望みになれば、私を清めることができます。」
3 そこでイエスはご自分の手を差しのべ、その男に触れ、言われた。「わたしはそう望みます。清くなりなさい。」そして、たちどころにその人のレプラ病は清められた。
4 さらにイエスは男に言われた。「心して誰にも話さないように。それより行って、あなた自身を祭司に見せ、そして人々に証になるように、モーセが命じた捧げ物をしなさい。」
5 さて、イエスはカペナウムに入られると、一人の百人隊長がイエスの所に来て、イエスに執拗に願って、
6 言った。「主よ、私の僕12は家で中風で横になり、拷問されています。」
7 イエスは彼に言われた。「わたしが行って、僕を治します。」
8 そして、百人隊長は答えて明言した。「主よ、あなたが私の屋根の下に来ていただくほどの値打ちは、私にはありません。しかし、ただ一言を言ってくだされば、僕は治ります。
9 なぜなら、私も権威の下にいる者の一人で、私の下に兵士たちがいます。そして私はこの兵士に、『行け』と言ったら、行きます。また、別の一人に、『来い』と言えば来ます。そして私は自らの僕に『これをせよ』と言ったら、彼はそうします。」
10 すると、イエスはこれを聞いて驚き、従って来た人たちに言われた。「まことに、わたしはあなたがたに言います。イスラエルにさえも、わたしはこのような偉大な信仰を見いだしたことがありません。
11 そして、わたしはあなたがたに言います。大勢の人たちが、東と西から来て、天の王国でアブラハムとイサクとヤコブと共に座るが、
12 王国の息子たちは、外の暗やみに投げ出されます。そこは泣き悲しみ、歯をかみならします。」
13 それから、イエスは百人隊長に言われた。「帰りなさい。あなたが信じたとおりに、あなたにはそうなれ。」そしてその時、百人隊長の僕は治った。
14 さて、イエスはペテロの家に着いた時、熱で横になっていたペテロの義理の母に目を止められた。
15 そこで、イエスはその女の手を触れ、熱は去った。そして、女は起きてイエスたちを接待した。
16 夜になると、悪霊に占領された多くの人たちを、イエスの所に人たちは連れて来た。そして、イエスは一言で霊を追い出し、すべて体の悪い人を治された。
17 これは、預言者イザヤを通して言われた御言葉が成就されるためである。つまり、『その方は、私たちの弱さを引き受け、私たちの体の悪いところを取り除かれた。』
18 そして、イエスはご自分のまわりに多くの群衆を見られ、向こう岸に行くように命じられた。
19 それから、一人の律法学者がイエスの所に来て、言った。「先生、私はあなたの行かれる所なら、どこにでも従って行きます。」
20 イエスは彼に言われた。「キツネには穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には頭を置く場所がありません。」
21 また、イエスのもう一人の弟子は彼に言った。「主よ、先ず、我が父を葬りに行かせてください。」
22 しかし、イエスは男に言われた。「わたしに従いなさい。そして死者に死者たちを葬むらせなさい。」
23 さて、イエスが船に乗られると、彼の弟子たちは後に続いた。
24 そして、見よ、海上に大嵐が起き、船は波をかぶっていたが、イエスは眠っておられた。
25 そこで、弟子たちはイエスの所に行き、起こして、言った。「主よ、私たちを救ってください。滅ぼされそうです。」
26 すると、イエスは弟子たちに言われた。「信仰の薄い者たちよ、あなたがたはなぜ臆病になっているのですか。」そして、イエスは起き上がられ、風と海をしかりつけた。すると、大凪になった。
27 それから男たちは驚いて、言った。「風と海さえもが聞き従うこの方は、いったいどなたなのでしょうか。」
28 さて、イエスは向こう岸、つまりガダラ人の地方に行かれた時、悪霊に占領された二人の者が墓場から出て、イエスに出会った。誰もその道を通れないほど、彼らは非常に凶暴な者であった。
29 そしてなんと、この男たちは叫んで言った。「神の子であるイエスよ、俺たちはあなたと何の関係がありますか。時の前なのに、俺たちを拷問しに来たのですか。」
30 彼らからずっと離れた所に、豚の群れが餌を食べていた。
31 それで、悪霊はイエスに願って言った。「俺たちを追い出したら、豚の群れに入ることを許してください。」
32 次に、イエスは彼らに言われた。「行け。」そして、悪霊たちは外に出て来るやいなや、豚の群れに入った。見よ、豚の群れは一頭残らず、崖を全速で駈け下り、海に入り、水中で死んだ。
33 それから、豚飼たちは逃げ出し、町に入って悪霊に占領された人たちのことを含めて、一部始終を伝えた。
34 すると見よ、町の人は皆、イエスに会いに出てきた。彼に会い、彼らの地方から出て行くように願って言った。

9章

その後、イエスは船に乗り、湖を渡り、彼ご自身の町に行かれた。
2 そして、見よ、男たちは床に横たわっている中風の男をイエスの所に運んで来た。イエスはその男たちの信仰を見て、身体の不自由な人に言われた。「勇気を出しなさい。子よ、あなたの罪は赦されました。」
3 そうすると、見よ、律法学者たちの中には互いに、「この者は神を冒涜している。」と言った者がいた。
4 しかし、イエスは彼らの考えを知って言われた。「あなたがたはなぜ心の中で悪いことを考えていますか。
5 なぜなら、『あなたの罪は赦されました』と言うのと、『起き上がって歩きなさい』と言うでは、どちらが簡単でしょうか。
6 しかし、人の子は、地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに知らせるためです。」それからイエスは中風の男に言われた。「起き上がれ、あなたの床を持って、あなたの家に帰りなさい。」
7 男は立ち上がり、自分の家に帰った。
8 群衆はこれを見て驚き、そこで、このような権威を人間に与えられた神に栄光を捧げた。
9 さて、イエスはそこを去り、収税所に座っている、マタイという名前の男をご覧になった。イエスは彼に言われた。「わたしについて来なさい。」そこで、マタイは立ち上がり、イエスに従った。
10 そうして、イエスが家で食卓についておられると、なんと、収税人や罪人が大勢来て、イエスと彼の弟子たちと共に食卓についた。
11 すると、パリサイ派の人たちはこれを見て、イエスの弟子たちに言った。「あなたがたの先生はなぜ、収税人や罪人と共に食事をするのですか。」
12 イエスはこれを聞き彼らに言われた。「健康な人は医者を必要としません。必要とするのは、病人です。
13 しかし行き、この意味を学びなさい。『わたしが求めるのはいけにえではなく、哀れみである。』なぜなら、正しい人ではなく、わたしは罪人を呼び集め、悔い改めさせるために来たのです。」
14 そこでヨハネの弟子たちはイエスの所に来て言った。「私たちとパリサイ派の人たちはよく断食しますが、あなたの弟子たちは断食しないのは、なぜでしょうか。」
15 すると、イエスは彼らに言われた。「花婿の立会人たちは、花婿と共にいる間、悼むことができますか。しかし、花婿が立会人たちから取り上げられる日々が来ます。その期間は、立会人たちは断食します。
16 また、古い服に縮んだことのない布を当てる人はいません。その布切れは服を引き裂き、破れたところはもっとひどくなるからです。
17 また、誰も新しい葡萄液を古い革袋には入れはしません。入れれば、革袋は破れ、葡萄の果汁はこぼれ、革袋は裂けるからです。しかし、新しい葡萄の果汁を新しい革袋に入れると、両方とも保全されます。」
18 イエスがこれらのことを彼らに話される間に、見よ、ある支配者がイエスの所に来て、彼を拝して、言った。「私の娘はいま死にましたが、来て彼女の上に御手を置いてください。そうすれば娘は生きかえります。」
19 そこで、イエスは立ち上がり、彼について行くと、弟子たちもそうした。
20 そして見よ、十二年間出血していた女が、イエスの背後に近づき、イエスの服のへりに触れた。
21 「もし、あの方の服に触れられたら、私は治される。」と女は独り言を言っていたからである。
22 そこで、イエスはふり向いて、女をご覧になり、言われた。「娘よ、勇気を出しなさい。あなたの信仰が、あなたを治しました。」そして、彼女はその時から健康になった。
23 さて、イエスはその支配者の家に入られ、笛を吹く者や、大騒ぎしている群衆を見られ、
24 イエスはその人たちに言われた。「引き下がりなさい。なぜなら、少女は眠っているのです。死んではいません。」しかし、その人たちはイエスをあざ笑った。
25 そこで、群衆が外に追い出された時、イエスは入られ、少女の手を取られた。そして、少女は立ち上がった。
26 それで、この評判はその全土に広がった。
27 さて、イエスはそこから発ち去られると、
28 それから、イエスは家に入られると、盲目の男たちはイエスの所に来た。そこで、イエスは彼らに言われた。「わたしにこのことができると、あなたがたは信じますか。」彼らはイエスに言った。「はい、主よ。」
29 それから、イエスは彼らの目に触れ、言われた。「あなたがたの信仰にふさわしくそうなれ。」
30 そして、彼らの目は開けられ、「誰もこのことを知ることのないよう心せよ。」とイエスは厳しく警告して言われた。
31 しかし、彼らは出て行き、イエスの名声をその国全土に広めた。
32 さて、彼らが出て行くと、見よ、人たちは口がきけず、悪霊で占領された男をイエスの所に連れて来た。
33 そして、悪霊が追い出されると、口がきけない人が口をきいた。すると、「イスラエルで、こんなことは目にしたことがない。」と群衆は驚いて言った。
34 しかし、パリサイ派の人たちは言った。「あの者は、悪霊たちの支配者によって悪霊を追い出すのだ。」
35 さて、イエスはすべての町と村を歩き回って、彼らのシナゴーグで教えたり、王国の福音を語ったりし、国民の間ですべての病気やすべてのわずらいを治されていた。
36 しかし、イエスは群衆をご覧になり、彼らに心を痛められた。彼らは、羊飼いのいない羊のように、疲れ切って、散り散りになっていたからである。
37 その時、イエスはご自分の弟子たちに言われた。「実りは真に豊かだが、働き人がはほとんどいません。
38 だから主の取り入れに働き人を送り出すように、刈り入れの主に祈りなさい。」

10章

さて、イエスはご自分の十二人の弟子を呼び集め、汚れた霊どもを追い出す権限、またすべての病気や弱さを治す権威を与えられた。
2 それで、十二人の使徒の名前は次の通りである。まず、ペテロと呼ばれているシモン、そして彼の兄弟アンデレ、またゼベダイの息子ヤコブと彼の兄弟ヨハネ、
3 ピリポとバルトロマイ、トマスと収税人のマタイ、アルパヨの息子ヤコブとレバイと言う名字のタダイ、
4 カナン人のシモンとイスカリオテのユダである。ユダはイエスを裏切った者である。
5 「異邦人の道に入らず、またサマリヤ人の町に入ってはいけません。」と言って、イエスはこの十二人に命じて遣わされた。
6 「むしろ、イスラエルの家の滅びた羊たちの所に行きなさい。
7 そして行きながら、『天の王国は近づいて来ています。』と説きなさい。
8 弱い人たちを治しなさい。レプラ病の人たちを清めなさい。死人たちを復活させなさい。悪霊どもを追い出しなさい。あなたがたは値なしで与えられたのだから、値なしで与えなさい。
9 金も、銀も、銅もをあなたがたの胴巻きに入れてはいけません。
10 また、働き人は自分の食べ物に値するから、この旅行には、皮袋も、二枚の下着も、サンダルも、杖も用意してはいけません。
11 そして、どこの町や村に入っても、そこで誰がふさわしい人かと聞き、そこを去るまで、その所にとどまりなさい。
12 そして、家屋に入る時、家の人たちに挨拶しなさい。
13 そして、もしその家の人たちがふさわしい人であれば、あなたがたの平安がその上に来るようにしなさい。しかし、もしその家の人たちが値のない人ならば、あなたがたの平安があなたがたの所に戻るようにしなさい。
14 そして、誰であれ、あなたがたを受け入れず、また、あなたがたの言葉を聞き入れない者がいれば、その家かその町を去る時に、足からちりを振り落としなさい。
15 本当にあなたがたに言います。裁きの日に、その町より、ソドムとゴモラの地の方がしのぎやすいのです。
16 見よ、あなたがたを遣わすのは、狼たちの真ん中に羊を遣わすようなものです。だから、蛇のように鋭く、鳩のように無害な者になりなさい。
17 しかし、人たちに気をつけなさい。あなたがたを議会に連行し、そしてシナゴーグであなたがたをむちで打つからです。
18 総督たちや王たちの前に、あなたがたはわたしが原因で、彼らと異邦人に証言のため連れて行かれます。
19 しかし、人々があなたがたを連れて行く時、どう言おうか、何を話そうかと、心配してはいけません。なぜなら、あなたがたは何が話すべきか、その時与えられます。
20 それは話すのはあなたがたではなく、あなたがたの中で話す父の聖霊だからです。
21 それで、兄弟はその兄弟を、また父はその子を死に引き渡します。そして、子どもは親たちに反逆して立ち上がり、親を死に至らせます。
22 そして、あなたがたは、わたしの名のために、すべての人に憎まれます。しかし、最後まで堪え忍ぶ人は、救われます。
23 しかし、人たちがこの町であなたがたを迫害する時はいつでも、別の町に逃げなさい。本当にわたしはあなたがたに言います。人の子が来るまで、あなたがたは、決してイスラエルの町すべてを通り終えることはないからです。
24 弟子は師より上でなく、また僕は彼の主人の上ではありません。
25 弟子は彼の師のように、僕はその主人のようになれば、十分です。もし人たちは家の主人をベルゼブル13と呼んだなら、それに加えて、家の者全員をそうと呼びます。
26 したがって、彼らを恐れてはいけません。覆われているもので、現われないものはないし、隠されたもので、知られないものはないからです。
27 わたしが暗やみの中であなたがたに言うことは何であれ、光の中で言いなさい。また、耳で聞くことは、屋根の上で説きなさい。
28 そして、肉体を殺して後、魂を殺せない者を恐れてはいけません。魂も身体も、地獄で滅ぼすことができる方をむしろ恐れなさい。
29 二羽の雀は、銅貨一個で売られてはいませんか。しかし、あなたがたの父の同意なしに、その一羽も地に落ちることはありません。
30 また、あなたがたの頭の髪の毛さえ一本一本すべて、数えられています。
31 従って、恐れてはいけません。あなたがたは多数の雀よりもっと価値があります。
32 それゆえに、人々の前でわたしを言い表す人は誰であれ、わたしもその人を天国にいるわたしの父の前で言い表します。
33 しかし、人々の前でわたしを否定する人は、わたしもその人を、天国にいるわたしの父の前で否定します。
34 地球に平和を持って来るためにわたしがやって来たと思ってはいけません。平和ではなく、剣を持って来るためにわたしは来たのです。
35 わたしは男を父に対して、娘は母に対して、義理の娘は義理の母に対し、仲違いさせるために来たからです。
36 そして、男の敵は、その家の者たちになります。
37 父や母をわたしよりも愛している者は、わたしにはふさわしくない者です。そして、息子や娘をわたしよりも愛している者は、わたしにはふさわしくない者です。
38 そして、自らの十字架を背負わず、そしてわたしに従わない者は、わたしにふさわしくない者です。
39 自分の命を見つける者は、それを失います。そして、わたしのために自分の命を失う人は、それを見つけます。
40 あなたがたを受け入れる人たちは、わたしを受け入れています。そして、わたしを受け入れる人は、わたしを遣わした方を受け入れています。
41 預言者を預言者として受け入れる人は、預言者の報酬を受けます。また、義人であると認めて義人を受け入れる人は、義人の報酬を受けます。
42 そして、誰であれこの小さい者たちの一人に、弟子の名ゆえに、ただ一杯の冷たい水を与えれば、まことにあなたがたに言いますが、その者は決してその報酬を失うことはありません。」

11章

さて、ことの次第はこうであった。ご自分の十二弟子に命じるのを終えたイエスは、彼らの町々で教えたり説いたりするために、そこを去って行かれた。
2 それで、キリストのわざを牢獄で聞き、ヨハネは自分の弟子二人を遣わし、
3 イエスに言った。「あなたが、来られることになっている方ですか、それとも私たちは別の人をさがすべきですか。」
4 イエスは答えて彼らに言われた。「行って、あなたがたが聞くこと、見ることをヨハネに報告しなさい。
5 盲人たちは見え、足の不自由な人たちは歩き、レプラ病14の人たちは清められ、耳の聞こえない人たちは聞こえ、死人たちは復活させられ、貧しい人たちは福音が説かれるのを聞いています。
6 そして、わたしのことでつまずかない人は、幸いです。」
7 さて、ヨハネの使者たちは去ると、ヨハネについてイエスは群衆に説き始められた。「あなたがたは何を見るつもりで、荒野に出て来たのですか。風で揺れる一本の葦ですか。
8 では、何を見に出て行ったのですか。柔らかい服を着ている一人の男ですか。見よ。柔らかい服を着ている人々なら王の家にいます。
9 では、あなたがたは何を見に出て行ったのですか。預言者ですか。そうです。あなたがたに言いますが、預言者以上の人です。
10 『見よ。わたしの使者をあなたの眼前に、わたしは遣わし、この人はあなたの道をあなたの前で準備する。』と、書かれている人がこの人だからです。
11 まことに、あなたがたに言います。女性から生まれた中で、浸礼者ヨハネより偉大な人は起きていません。しかし、天の王国の最も小さい人でも、ヨハネより偉大です。
12 そして、浸礼者のヨハネの日より今に至るまで、天の王国で暴力がふるわれ、また、暴力をふるう者たちは、王国を力で占領します。
13 ヨハネに至るまで、すべての預言者と律法は預言したからです。
14 そして、あなたがたがこれを受け入れる意志があれば、来ることになっているエリヤが彼なのです。
15 聞く耳のある人には聞かせなさい。
16 しかし、わたしはこの世代を何に例えましょうか。市場に座り込んで仲間を呼ぶ子どもに似ています。
17 その子どもたちは言います。『私たちは君たちのため、笛を吹いたのに、君たちは踊らなかった。私たちは君たちのため、死者を悲しんだのに、君たちは胸を叩かなかった。』15
18 なぜなら、ヨハネは来て飲み食いしなかったので、人々は言います。『あの者には悪霊がいる。』
19 人の子が来て、飲み食いすると、『見よ。大食いで、大酒飲みで、収税人や罪人の友人だ。』と人々は言います。しかし、知恵は、知恵の子どもたちによって義と認められます。」
20 そして、その町々は悔い改めなかったので、イエスは自らの力あるわざの大部分が行なわれた町々を責め始められた。
21 「コラジンよ、お前に災いあれ。ベツサイダよ、お前に災いあれ。なぜなら、もしお前たちの中で行なわれた力あるわざが、ツロやシドンで行なわれたなら、その町はきっと大昔に荒布を着て、灰で悔い改めたのです。
22 だが、わたしはお前たちに言う。裁きの日には、お前たちの裁きよりツロとシドンの裁きの方が耐えやすい。
23 そして、天へ上げられたカペナウムよ、お前は地獄に引きずり落とされます。なぜなら、もしお前の中で行なわれた力あるわざが、ソドム16で行なわれたなら、ソドムは今日まで残ったのです。
24 しかし、わたしはお前たちに言う。裁きの日には、お前たちの裁きより、ソドムの地の裁きの方が耐えやすい。」
25 その時、イエスは答えて言われた。「天と地の主である父よ。あなたはこれらのことを賢い人や理解力のある人から隠し、赤子に啓示されたことを、あなたに感謝します。
26 はい、父よ、なぜならそれはあなたの前で、大いに喜ばしいことでした。
27 すべてのものはわたしの父からわたしに渡され、そして父以外、誰も息子を完全にはわかりません。そして息子以外、また息子が啓示しようと決める人以外、誰も父を完全に知る者はいません。
28 すべて疲れた人たちや、重荷を背負う人たちよ、わたしの所に来なさい。そうすれば、わたしはあなたがたを休ませてあげます。
29 わたしは柔和で、心はへりくだっているので、わたしのくびきを背負って、わたしから学びなさい。そうすればあなたがたは魂に休息を見つけ出します。
30 わたしのくびきは背負いやすく、わたしの重荷は軽いからです。」

12章

その頃、イエスは安息日に穀物畑の中を通られた。そして、イエスの弟子たちは空腹であったので、穂を摘み始め、食べた。
2 そこで、これを見たパリサイ派の人たちは、イエスに言った。「見よ、あなたの弟子たちは安息日に、律法に反することをしている。」
3 しかし、イエスは彼らに言われた。「ダビデと供にいた人たちが空腹になった時に、ダビデが何をしたか、読んでいないのですか。
4 つまり、ダビデは神の家に入り、祭司たちだけに、食べることを許されている供えのパンを、ダビデにも供をしていた者にも、食べることが不法であった供えのパンを食べた事実を読んだことがないのですか。
5 または、安息日に、祭司たちは神殿の敷地で安息日を乱用しても、罪にならないことを、律法書で読んだことがないのですか。
6 しかし、わたしはあなたがたに言います。ここに全神殿より、偉大な人がいます。
7 でも、『わたしは犠牲ではなく、哀れみを望む。』とあなたがたがもしこの意味がわかっていたなら、あなたがたは罪のない人たちを罪があると断定しなかったのです。
8 人の子は、安息日でも主だからです。」
9 さて、イエスはそこを離れ、彼らのシナゴーグに入られた。
10 そして、見よ。そこに手のなえた男がいた。そこで、そこにいた人たちはイエスを訴えようと、イエスにたずねて言った。「安息日に治すことは、合法ですか。」
11 そこでイエスは彼らに言われた。「あなたがたの中に、一頭の羊を持っている男が、もしその羊が安息日に穴に落ちたなら、その羊を引き上げないのですか。
12 なおさらのこと、人間の方が羊よりはるかに価値があると、違いますか。したがって、安息日に善いことをすることは、合法です。」
13 とその時、イエスはその男に言われた。「手を伸ばしなさい。」それで男は手を伸ばした。すると、その手は治って、もう一本の手と同じように回復した。
14 そこで、パリサイ派の者たちは出て行き、イエスを抹殺する方法を、イエスに反対して企み始めた。
15 しかし、イエスはそれを知り、そこから退いて行かれた。そして、多くの群衆はイエスについて行った。そこで、イエスは彼らを全員治された。
16 しかし、イエスはご自身のことを明らかにしないよう、彼らに警告をされた。
17 これは、預言者イザヤを通して言われた御言葉が成就されるためである。すなわち、
18 「見よ、わたしが選んだわたしの僕、わたしのたましいが大いに喜ぶ愛しい人を。わたしはわたしの霊を彼の上に置く。そして、彼は異邦人に正義を宣言する。
19 その人は争いもせず、大声も出さず、人たちは広い道で彼の声を聞かない。
20 彼は、正義を勝利へ送り出すまでは、打ちすえられた葦を折らず、くすぶっている灯心を消さない。
21 そして、異邦人たちは彼の名によって望む。」
22 それから、悪霊に占領され、盲目で、口がきけない人がイエスの所に連れて来られた。イエスは彼を治されたので、この盲目で口がきけない人は話し、目は見えるようになった。
23 それで、群衆はすべて驚いて言った。「この方はダビデの御子息ではないでしょうか。」
24 しかし、パリサイ派の者たちはこれを聞き、言った。「悪霊の支配者、ベルゼブル17によらなければ、この者は悪霊を追い出しはしない。」
25 しかし、イエスはその人たちの思いを知られ、彼らに言われた。「すべてそれ自身が分裂し対立する王国は、廃墟になります。そして、それ自体が分裂し対立する町も家も立ちいきません。
26 もしサタン18がサタンを追い出せば、サタン自身が対立し分裂します。それでは、サタンの王国はどうして立つのですか。19
27 そして、もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとするなら、あなたがたの息子たちは誰によって悪霊を追い出すのですか。ですから、あなたがたの息子たちが、あなたがたの裁判官になるのです。
28 しかし、もしわたしが神の御霊によって悪霊たちを追い出しているのなら、もう神の王国は間違いなくあなたがたの所に来ています。
29 または、もしまず強い男を縛らない限り、どうして強い男の家に入り、財産を強奪できるでしょうか。その後で強い男の家の財産を強奪します。
30 わたしと共にいない者は、わたしに反対する者です。そして、わたしと共に集めない者は、散らしています。
31 ゆえに、わたしはあなたがたに言います。人たちのあらゆる罪や冒涜は赦されます。しかし、御霊に対する者たちの冒涜は決して容赦されることはありません。
32 そして、誰であれ人の子に逆らいの言葉を言う者は赦されるが、誰であれ聖霊に逆らいの言葉を言う者は、この時代でも、これから来る時代でもそれは容赦されることはありません。
33 その木を良しとしたら、その果実も良しとせよ。またその木を悪としたら、その果実も悪とせよ。木はその果実によって知られているからです。
34 マムシの子たちよ、お前たちは悪人なのに、どうして善いことが話せますか。心を満たしているものが口をついて出るのです。
35 善人は心の善い宝の蔵から善い物を出し、そして、悪人は心の悪い宝の蔵から悪い物を出します。
36 だが、わたしはあなたがたに言います。口にする、役に立たない一言一言のために、人たちは裁きの日にそれを清算することになります。
37 あなたは、あなたの言葉によって義と認められ、あなたの言葉によって不義と断定されるからです。」
38 そこで、ある律法学者とパリサイ派の人たちは答えて言った。「先生、私たちはあなたからのしるしを見たいのです。」
39 しかし、イエスは答えて彼らに言われた。「悪と姦淫の時代はしるしを求めるが、預言者ヨナのしるしの他は何のしるしもこの時代には与えられません。
40 つまり、ヨナは三日三晩、巨大な魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中20にいるからです。
41 ニネベの男たちは、ヨナの語ることで悔い改めたから、裁きの時に、ニネベ人は今の世代の人たちと共に立ち上がり、今の世代を糾弾します。そして見よ、ヨナより偉大なる人はここにいます。
42 あの南の女王は裁きで、今の世代の人と共に立ち上がり、今の世代を糾弾します。女王はソロモンの知恵を聞きに、地のはてから来たからです。そして、見よ、ソロモンより偉大なる人がここにいます。
43 それで、汚れた霊は人から出て行く時、休息を求めて乾燥地帯を通るが、見いだせません。
44 それで、その者は言います。『私は出て来た元の家に戻ろう。』そして、汚れた霊は帰ると、家は空っぽで、ほうきで掃かれ、きちんと整頓されていることに気がつきます。
45 それで、汚れた霊は行って、その霊自身よりも悪い、七つの霊を連れて来ます。そしてその霊たちは中に入り、そこに住みます。そうなると、その男の後の状態は、最初の状態より悪くなります。同様に、この悪い世代もそうなります。」
46 イエスがまだ群衆に話しておられる間、見よ、彼の母と弟たちは外に立って、イエスと話したがっていた。
47 そこで、一人の人がイエスに言った。「ご覧なさい、あなたのお母さんと兄弟たちが外に立って、あなたと話したがっています。」
48 しかしイエスは答えて、ご自分にそう言った人に言われた。「わたしの母とか、わたしの兄弟たちとは誰ですか。」
49 そこで、イエスはご自分の弟子たちへご自分の手を伸ばし、言われた。「わたしの母とわたしの兄弟たちをご覧なさい。
50 なぜなら、天におられるわたしの父のご意志を行なう人は誰であれ、わたしの兄弟であり、姉妹であり、母です。」

13章

さて、その同じ日に、イエスは家を出、海辺に座られた。
2 そこで、大群衆がイエスの所に集まったので、イエスは船に乗り、座られた。そして、群衆は皆岸に立った。
3 イエスは群衆に多くのことを例え話で話され、言われた。「見よ。種を蒔く人が、種蒔きに出かけました。
4 そして、その男が蒔くと、ある種は路肩に落ち、鳥たちが来てそれを食べ尽くしました。
5 また、あまり土のない岩地の上に落ちた種もあったが、そこは土が深くなかったため、その種はすぐ芽を出しました。
6 しかし、太陽が昇ると、それは焼けて、そして根がなかったため、枯れてしまいました。
7 そして、茨の中に落ちた種もあったが、茨が伸びて、種を覆い塞ぎました。
8 しかし、良い土に落ちた種は、あるものは百倍、あるものは六十倍、またあるものは三十倍もの実を結びました。
9 聞く耳のある人には聞かせなさい。」
10 そこで、弟子たちはイエスの所に来て、彼に言った。「なぜ例え話で彼らに話しをされるのですか。」
11 それで、イエスは答えて弟子たちに言われた。「あなたがたが天の王国の奥義を知ることは、許されているが、他の人たちには許されていないからです。
12 誰であれ、持っている人はもっと与えられ、あふれるほど持つが、誰であれ、持っていない人は、持っているものさえも、彼から取りあげられるからです。
13 彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、理解しないから、わたしは例え話で彼らに話すのです。
14 そして、イザヤの預言は彼らに成就されています。その預言は言います。『あなたがたはよく聞くが、決して理解せず、そしてよく見るが、気が付かない。
15 この国民の心は鈍感になり、その耳は聞こえなくなり、その目は閉じてしまったからである。これは、彼らは自分の目で見ず、自分の耳で聞かず、心で理解せず、引き返さず、わたしが彼らを治すことのないようにするためである。』
16 しかし、あなたがたの目は見え、あなたがたの耳は聞こえるから、あなたがたは祝福されています。
17 それで、真にわたしはあなたがたに言います。あなたがたが見ていることを、大勢の預言者や正しい人たちは見たかったが、見ていません。そして、あなたがたが聞くことを聞きたかったが、聞いていません。
18 したがって、蒔く人の例え話を聞きなさい。
19 王国の御言葉を聞いても理解しないとは、悪者が来て、その人の心に蒔いてある種を強奪します。これは、道端に蒔かれた種のことです。
20 それで、岩地で蒔かれた種とは、この人は御言葉を聞き、喜びを持ってすぐ受け入れます。
21 しかし、この人は自らの中に根を持っていないが、しばらくは耐えます。しかし、御言葉のために苦難や迫害が起こると、たちどころに、つまずきます。
22 それで、茨の中で蒔かれた種を受け入れたこの人は、御言葉を聞く人です。そして、今の世の不安と富の惑わしは御言葉を覆い塞ぎ、その人は実を結ばなくなります。
23 しかし、良い土で蒔かれた種は、御言葉を聞いて理解し、そして実を付け、稔る人です。ある人は百倍、ある人は六十倍、ある人は三十倍に稔ります。」
24 イエスはもう一つの例え話を彼らに口に出し、言われた。「天の王国は、自らの畑でよい種を蒔く人のようです。
25 しかし、皆が寝ている間に、彼の敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて去って行ってしまいました。
26 それで、麦が芽を出し、稔った時、毒麦も現われました。
27 そこで、持ち主の奴隷たちは来て、彼に言いました。『ご主人様、あなたの畑にあなたは良い種を蒔かなかったのですか。それでは、なぜ畑に毒麦があるのですか。』
28 主人は彼らに言いました。『敵のしたことだ。』それで、奴隷たちは彼に言いました。『それなら、私たちが行って、毒麦を集めることをあなたは私たちに命令されますか。』
29 しかし、主人は言いました。『いや、毒麦を集めながら、麦もいっしょに抜き取らないよう、
30 稔りの時まで両方を共に育つようにしなさい。そして、稔りの時に私は刈り取る人たちに言います。「まず毒麦を集めて、燃やすため束にしなさい。それから、麦を集めて私の倉に入れなさい。」』。」
31 イエスは例え話をもう一つ口に出し、彼らに言われた。「天の王国は、人が手に入れて、自分の畑に蒔いたからし種のようです。
32 その種はすべての種の中で本当に最も小さなものだが、成長すると、空の鳥たちが来てその枝に巣を作るほどになり、どの作物より大きな木になります。」
33 イエスはもう一つの例え話を彼らに話された。「天の王国は、パン種に似ています。女がこれを取り、三サトン21の粉の中に隠し入れて、全体が膨れたのです。」
34 イエスはこれらすべてのことを群衆に例え話で話された。そして、例え話によらずに群衆に話すことがなかった。
35 それは、預言者が言った言葉が成就されるためであった。すなわち、「わたしは例え話で口を開ける。わたしは、世の土台のころより隠されてきたことを声に出す。」
36 その時イエスは群衆を去らせ、家に入られた。そして、イエスの弟子たちは彼の所に来て、言った。「私たちに、畑の毒麦の例え話を説明してください。」
37 イエスは答えて彼らに言われた。「良い種を蒔く人は、人の子です。
38 畑は世界であり、良い種は王国の子どもたちですが、毒麦は悪者の子どもたちです。
39 それらを蒔いた敵は悪魔であり、稔りはこの時代の終わりであり、刈り取る者は御使いたちです。
40 したがって、毒麦は集められ、火で燃やされるように、この時代の終わりにも、そうなります。
41 人の子は自分の御使いたちを遣わします。そして、御使いたちは彼の王国からすべてつまずかせる者や不法をする者たちを集めます。
42 そして、そのような者たちを火の炉に投げ込んでしまいます。そこで彼らは泣き悲しみ、歯をかみならします。
43 その時、正しい人たちは、彼らの父の王国で、太陽のように光ります。聞く耳のある人には聞かせなさい。
44 また、天の王国は畑に隠された宝のようです。人がそれを見つけ、隠しました。そして、その人は自分の喜びのあまり、行って自分のすべての財産を売って、その畑を買います。
45 また、天の王国は、美しい真珠を探している商人のようです。
46 その人は、値段のとても高い一つぶの真珠を見つけ、行って、自分のすべての所有物を売り、その真珠を買ったのです。
47 また、天の王国は、海に投げ入れられ、いろいろな種類のものを集めた地引き網のようです。
48 網がいっぱいになったら、彼らは海辺に引き上げました。そして、彼らは座り、良いものを器に入れ、価値のないものは捨てました。
49 この時代の終わりもこうなります。御使いたちがやって来て、義人の中から悪者たちを分け、
50 彼らを火の炉に投げ込みます。そこで、泣いたり歯をかみならしたりします。
51 これらのすべてのことがわかりましたか。」とイエスは弟子たちに言われた。「はい、主よ。」と彼らはイエスに言った。
52 そこで、イエスは彼らに言われた。「したがって、天の王国について教えられたすべての律法学者は、自分の倉から新旧の宝物を出す一家の主人のようです。」
53 そうして、次のようになった。イエスはこれらの例え話を終えられ、そこをお離れになった。
54 そして、ご自分の故郷に来られ、彼らのシナゴーグで彼らを教えられた。すると、彼らは驚愕し、言った。「この人のこの知恵とこの力ある業は、どこからなのか。
55 これはあの大工の息子ではないのか。彼の母はマリヤと呼ばれ、兄弟たちはヤコブとヨセフとシモンとユダと呼ばれているではないのか。
56 そして、姉妹たちはみんな私たちといっしょにいるのではないか。だから、この人は、これらすべてのことは、どこからなのか。」
57 それで、彼らはイエスにつまずいた。しかし、イエスは皆に言われた。「預言者は、恥ずべき者とされないのは、自分の故郷と自分の家の外です。」
58 そして、イエスは、皆の不信仰のため、その町ではあまり多くの力ある業をなさらなかったのである。

14章

その時、領主ヘロデは、イエスのうわさを聞き、
2 そして、彼の家来たちに言った。「これは浸礼者のヨハネだ。彼は死人の中から復活したのだ。だから、こんな力が彼の中で働いているのだ。」
3 ヘロデはヨハネを捕まえ、縛り、自分の兄弟ピリポの妻、ヘロデヤのためにヨハネを牢に入れたからである。
4 これはヨハネがヘロデに、「あなたが彼女を所有するのは律法に反する。」と言ったからである。
5 また、ヘロデはヨハネを殺したかったが、群衆を恐れていた。群衆はヨハネを預言者として支持していたからである。
6 しかし、ヘロデの誕生日が祝われた時、ヘロデヤの娘は皆の前で踊り、ヘロデを喜ばした。
7 そこで、ヘロデは少女に、願ったものは何でも与えると誓って約束した。
8 それで、母にそそのかされた娘は言った。「ここに、盆に載せた浸礼者のヨハネの首をお与えください。」
9 すると、王は後悔した。しかし、誓いのため、また共に座っている人たちの手前、少女に与えるように命じた。
10 そして、人を遣わし、牢にいるヨハネの首をはねさせた。
11 それで盆に載せられたヨハネの首は持って来られ、少女に与え、そして、少女は母の所に持って行った。
12 そこで、ヨハネの弟子たちがやって来て、ヨハネの死体を持って行き、葬った。そして行って、イエスに知らせた。
13 イエスはこれを聞かれ、お一人でそこを離れ、寂しい所に船で去って行かれた。すると、群衆はこれを聞き、町々から徒歩でイエスについて行った。
14 そして、イエスが出て行かれると、大変な数の群衆をご覧になった。そして、哀れに思われ、彼らの病を治された。
15 さて、夕方になり、弟子たちはイエスの所に来て言った。「ここは寂しい所で、もう遅い時刻ですから、村に行き、食べ物を買うことができるように、群衆を去らせてください。」
16 しかし、イエスは弟子たちに言われた。「彼らは去る必要はありません。あなたがたが群衆に食べ物を与えなさい。」
17 すると、弟子たちはイエスに言った。「我々にはここにパン五個と魚二匹しかありません。」
18 イエスは言われた。「それらをわたしの所に持って来なさい。」
19 それで、イエスは群衆に草の上に座るようにと命じられた。そして、パン五個と魚二匹を手に取り、天を見上げ、祝福し、パンを裂いて、弟子たちに与えられた。そして、弟子たちは群衆に分け与えた。
20 そして、一人残らず食べ、満腹し、弟子たちは残った食べ物でいっぱいになった十二かごを手にした。
21 さて、食べた人たちは、女と子どもを除いて、およそ男五千人であった。
22 そして、イエスはすぐご自分の弟子たちを船に乗せ、イエスより先に対岸に行かせた。その間にイエスは群衆を去らせた。
23 そして、イエスは群衆を去らせ、祈るためご自身だけで山に登られた。そして夕方になり、そこに一人でおられた。
24 しかし、船はその時海の中ほどで、向かい風のため、波に激しく揺れた。
25 夜の第四時間目22に、イエスは海上を歩いて、弟子たちの所に行かれた。
26 すると、弟子たちはイエスが海上を歩いておられるのを見て、おびえて、言った。「幽霊だ!」そして、恐怖のために叫んだのである。
27 しかし、イエスはすぐ彼らに話しかけ、言われた。「しっかりしなさい。わたしです。恐れてはいけません。」
28 そうすると、ペテロはイエスに答えて言った。「主よ、あなたでしたら、水上を歩いてあなたの所に来いと、私に命じてください。」
29 そこで、イエスは言われた。「来なさい。」すると、ペテロは船を降り、イエスの所に行くべく水上を歩いた。
30 しかし、ペテロは強い風を見て、怖くなり、沈み出したので、叫んで言った。「主よ、助けてください。」
31 イエスはすぐ手をさし伸ばし、ペテロをつかまえ、彼に言われた。「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか。」
32 そして、二人が船に乗ると、風が凪いだ。
33 船の中にいる弟子たちは来て、イエスを拝み、言った。「まことに、あなたは神の御子息です。」
34 そして渡り終え、ゲネサレの地に入った。
35 すると、その地の男たちはイエスであると分かり、その周辺のすべての地に人を遣わした。そして、すべての病人をイエスのいる所に連れて来た。
36 そして、彼らはイエスの衣のへりを触れるだけと執拗に願った。そして、触れた人は誰であれ治された。

15章

さて、エルサレムから来た律法学者たちとパリサイ派の人たちが、イエスの所に来て言った。
2 「あなたの弟子たちはなぜ、長老たちの伝統をやぶっているのですか。というのは、彼らはパンを食べる時に、手を洗いません。」
3 しかし、イエスは答えて彼らに言われた。「あなたがたも、なぜあなたがたの伝統を理由に、神の命令をやぶっているのですか。
4 なぜなら、神は命じて言っています。『あなたがたの父と母に敬意を払いなさい。』そして、『父または母の悪口を言う者は、死に至らしめよ。』
5 しかし、あなたがたは言います。『誰でも父または母に、「あなたが私から受けたものは神への捧げ物です。」と言うその人は、
6 その人の父または母に決して敬意を払う必要はない。』それで、あなたがたは己の伝統のゆえに、神の命令をないがしろにしています。
7 偽善者たちよ。イザヤはあなたがたについて、適切に預言し、こう言っています。
8 『この国民は、口でわたしに近づき、唇でわたしに敬意を払うが、彼らの心はわたしから遠く離れている。
9 そして、この者たちは意味もなくわたしを礼拝して、人間の命令を教理として教える。』」
10 そして、イエスは群衆をご自分の所に呼び、言われた。「聞きなさい、そして理解しなさい。
11 人を汚すのは、口に入ってくるものではなく、人の口から出るもので、これこそが人を汚します。」
12 そうすると、イエスの弟子たちはイエスの所に来て、言った。「パリサイ派の人たちは、この言葉を聞いて、つまずいたのをご存じではないのですか。」
13 しかし、イエスは答えて言われた。「わたしの天の父が植えられなかった植物はすべて根から抜き取られてしまいます。
14 彼らはほっておきなさい。彼らは盲目で、盲人たちの指導者です。そしてもし盲人が盲人を導けば、二人とも穴に落ちます。」
15 そこで、ペテロは答えて、イエスに言った。「この例え話を私たちに説明してください。」
16 それで、イエスは言われた。「あなたがたもまだ分かっていないのですか。
17 口に入るすべての物は、腹の中に入り、そして排泄されるのを知らないのですか。
18 しかし、口から出るものは、心から出て来ます。そして、これらは人を汚すのです。
19 悪い思い、殺人、姦淫、性的な罪、盗み、偽証、悪口雑言は心から出るからです。
20 これらのことこそ人を汚すものだが、洗わない手で食べることは、人を汚しません。」
21 その後、イエスはそこを出て、ツロとシドンの国境地方に引き下がられた。
22 すると、見よ。その同じ地方から来た一人のカナンの女が、イエスに叫んで言った。「主よ、ダビデの御子息よ、私を哀れんでください。私の娘はかわいそうに悪霊に占領されています。」
23 しかし、イエスは一言も答えようとされなかった。それで、彼の弟子たちはイエスの所に来て、懇願して言った。「彼女を去らせてください。なぜなら、私たちについて来て、大声で叫ぶのです。」
24 しかし、イエスは答えて言われた。「わたしはイスラエルの家の消滅した羊たち以外に、遣わされたのではありません。」
25 しかし、女はイエスの所に来て、拝み、言った。「主よ、私を助けてください。」
26 しかし、イエスは答えて言われた。「子どもたちのパンを取って、小犬らに投げ与えるのは良くありません。」
27 すると、女は言った。「はい、主よ。でも、小犬らも、彼らの主人の食卓から落ちる食べくずを食べます。」
28 その時、イエスは答えて婦人に言われた。「婦人よ、あなたの信仰は偉大です。あなたの望むとおりになるように。」そうすると、彼女の娘はその時点から治った。
29 そして、イエスはそこを去り、ガリラヤの海のへりを行き、山に登り、そこに座られた。
30 すると、多くの群衆は、足のなえた人、盲人、口がきけない人、体に障害のある人、その他大勢の人たちを連れて、イエスの所に来た。彼らはその人たちをイエスの足下に横たえた。イエスは彼らを治された。
31 ろうあ者が話し、体に障害のある人は完全な者となり、足のなえた人は歩き、盲人は見えるようになったのを見て、群衆は驚き、イスラエルの神に栄光を捧げた。
32 そこで、イエスはご自分の弟子たちを呼び寄せて、言われた。「群衆はすでに三日間わたしと共にいます。食べ物は何も持っていません。だから、わたしは哀れに思います。途中で倒れてしまわないように、空腹のままで、わたしは彼らを去らせたくないからだ。」
33 それで、弟子たちはイエスに言った。「私たちは、この大群衆を満腹させるのに、この荒れ果てた所で十分なパンを手に入れることができるでしょうか。」
34 すると、イエスは弟子たちに言われた。「パンは何個ありますか。」弟子たちは言った。「七個、それから小魚数匹です。」
35 すると、イエスは地面に座るよう、群衆に命じられた。
36 そして、イエスはパン七個と魚を手に取り、感謝をささげ、それらを裂き、ご自分の弟子たちに与えられた。そして、弟子たちは群衆に与えた。
37 そこで、みんなは食べ、満腹した。そして、食べ残しでいっぱいになった七個の大きなかごを弟子たちは手にした。
38 さて、食べた人たちは、女と子どもを除いて、四千人の男であった。
39 そして、イエスは群衆を去らせ、船に乗り、マグダラの近郊に行かれた。

16章

さて、パリサイ派の人たちとサドカイ派の人たちがやって来て、イエスを試して、天からのしるしを見せるように願った。
2 イエスは答えて彼らに言われた。「夕方になると、あなたがたは言います。『空は赤いから、晴だ。』
3 また朝、あなたがたは言います。『空は赤くて不安だ。今日の天気は悪い。』偽善者たちよ。あなたがたは空の表情を判断する力がありながら、時代のしるしを判断する力がありません。
4 悪と姦淫の世代はしるしを求めるが、預言者ヨナのしるし以外、しるしは与えられません。」イエスは彼らと別れ、去って行かれた。
5 さて、イエスの弟子たちは対岸に来て見ると、なんと、パンを持って来るのを忘れていた。
6 そこで、イエスは彼らに言われた。「注意しなさい。パリサイ派とサドカイ派の者たちのパン種には気をつけなさい。」
7 そこで、弟子たちは自分たちだけで話し合い、言った。「私たちがパンを持って来なかったからだ。」
8 しかし、イエスはこのことに気づかれ、彼らに言われた。「信仰の薄い者たちよ、パンを持って来なかったことを、なぜあなたがただけで議論しているのですか。
9 五千人の五個のパン、それと何かごのパンを手にしたのか、まだ分からず、記憶にもうないのですか。
10 また、四千人の七個のパンと、大きなかごをいくつ手にしたのですか。
11 一体どうしてわたしの言うことが分からないのですか。パンのことをわたしは話したのではありません。パリサイ派とサドカイ派の者たちのパン種に注意しなさい、と言っただけなのです。」
12 それで、パン種のことではなく、パリサイ派とサドカイ派の者たちの教理に注意しなさいと、イエスは言われたのであると分かった。
13 さて、ピリポ・カイザリヤの地に入られ、イエスは弟子たちに尋ね、言われた。「人々は、人の子であるわたしのことを、何者だと言っているのですか。」
14 そこで弟子たちは言った。「浸礼者のヨハネだと言う人たちもいるし、エリヤと言う人たちもいるし、エレミヤとか預言者の一人だと言う人たちもいます。」
15 イエスは弟子たちに言われた。「しかし、あなたがたはわたしを何者だと言うのですか。」
16 シモン・ペテロは答えて言った。「あなたはあのキリストであり、生ける神の御子息です。」
17 そして、イエスは答えて彼に言われた。「シモン・バル・ヨナよ、あなたは祝福されています。肉と血の者ではなく、天におられるわたしの父はこれをあなたに啓示されたからです。
18 それで、わたしはあなたに言います。あなたはペテロ23で、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てます。そして、地獄の門はそれに打ち勝つことができません。
19 そして、わたしはあなたに天の王国の鍵を与えます。それで、あなたが地上で結んだものは、何でも天国ででも、もう結ばれ、地上で解くものは天国でもう解かれました。」
20 その時、イエスは弟子たちに、ご自分がキリストであるイエスだと、誰にも言わないように命じられた。
21 イエスはご自分がエルサレムに行き、長老たちと大祭司たちと律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、三日後に復活しなければならないと、この時から、弟子たちに示し始められた。
22 そして、ペテロはイエスを脇に来て頂き、非難しだし、言った。「主よ、哀れみがあなたにありますように。そんなことは決してあなたにおきません。」
23 しかし、イエスは振り向いて、ペテロに言われた。「サタン24よ、わたしの後ろに行け。あなたは神のことを考えず、人間のことを考えているから、わたしの妨害者です。」
24 ついで、イエスは弟子たちに言われた。「もし誰であれわたしの後について来たいのなら、自らを否定し、自らの十字架を担い、そしてわたしに従いなさい。
25 誰であれ、自らの命を救おうとする者は、命を失うが、誰であれ、わたしのために命を失う者は、命を見いだすからです。
26 なぜなら、もし全世界を獲得しても、自らのたましいを損じるなら、何の利益になりましょうか。あるいは、自らのたましいを、人は何と交換し得ましょうか。
27 なぜなら、人の子は将来、御使いたちと共に、自らの父の栄光のうちに来ます。そして、その時彼はそれぞれの人に、各自の行ないに応じて報いを与えます。
28 まことにわたしはあなたがたに言います。ここに立っている人たちの中で、人の子が彼の王国と共に来るのを見るまで、死を決して味わわない人たちがいます。」

17章

さて、六日後、イエスはペテロとヤコブとその兄弟ヨハネだけを連れ、高い山に登って行かれた。
2 そしてイエスは彼らの前で御姿を変えられた。御顔は太陽のように輝き、衣服は光のように白くなった。
3 そして、見よ。モーセとエリヤは彼らに現れ、イエスと話をしていた。
4 そこで、ペテロは答えてイエスに言った。「主よ、ここにいることは、私たちには、嬉しいことです。ご希望なら、私たちはここに三つの天幕を作りましょう。一つをあなたのため、一つをモーセのため、一つをエリヤのためにです。」
5 ペテロがまだ話している間に、見よ、明るく輝く雲が皆を覆った。そして、見よ、その雲の中からの声が言われた。「これはわたしの愛しい息子である。わたしは息子を喜ぶ。息子に耳を傾けよ。」
6 弟子たちはそれを聞くと、ひれ伏し、恐怖にかられた。
7 しかし、イエスは近づいて来て、彼らに触れ、言われた。「立ち上がりなさい。恐がってはいけません。」
8 そして、三人の弟子は目を上げて見ると、イエスのほか、誰一人として人は見かけなかった。
9 さて、イエス一行が山を下りている時、イエスは彼らに命じて言われた。「人の子が死人たちの中から復活するまで、見た光景を誰にも話してはいけません。」
10 それで、弟子たちはイエスに尋ねて言った。「では、なぜ律法学者たちは、エリヤは先に来なければならない、と言っているのですか。」
11 しかし、イエスは答えて弟子たちに言われた。「エリヤは間違いなくまず先に来て、すべてのものを元の状態に戻します。
12 しかし、わたしはあなたがたに言います。エリヤはもう来たが、人々はエリヤが分からず、勝手気ままにエリヤを扱いました。それで、人の子が彼らの手で苦しむ時が同様に来ます。」
13 それで、弟子たちは、イエスが彼らに浸礼者のヨハネのことを言われたと分かった。
14 さて、彼らが群衆の所に行った時、ある男がイエスの所に来て、御前にひざまずいて言った。
15 「主よ、私の息子はてんかんで、よく火の中や水の中へ倒れます。とても辛い経験をしています。ですから、息子を哀れんでください。
16 それで、私は息子をあなたの弟子たちの所に連れて来ましたが、弟子たちは治すことができませんでした。」
17 それでイエスは答えて言われた。「信仰のない、歪んだ世代の人たちよ、わたしはいつまで、あなたがたと共にいられようか。いつまで我慢するのか。その子をわたしの所に連れて来なさい。」
18 そして、イエスは悪霊を叱り付け、悪霊は子どもから出て、子どもはその時点から治された。
19 それで、弟子たちはひそかにイエスの所に来て言った。「私たちはなぜ悪霊を追い出せなかったのですか。」
20 イエスは彼らに言われた。「あなたがたの不信仰のためです。従って、まことにわたしはあなたがたに言います。もしあなたがたに、からし種一粒ほどの信仰があれば、あなたがたはこの山に、『ここから向こうに移動せよ。』と言えば、山は移動します。そして、あなたがたに不可能なことは何もありません。
21 しかし、この種のものは、祈りと断食なしには、出て行きません。」
22 さて、弟子たちがガリラヤに滞在していた時、イエスは弟子たちに言われた。「人の子は今に、裏切られ、人々の手に渡されます。
23 そして、人々は人の子を殺します。そして、人の子は第三日目に復活します。」それで、弟子たちは非常に悲しんだ。
24 さて、彼らがカペナウムに入った時、二ドラクマ25を受け取る人たちがペテロの所に来て、言った。「あなたがたの先生は、二ドラクマを払わないのですか。」
25 ペテロは「払います。」と言った。そして、ペテロは家に入った時、イエスは彼の先手を打って、言われた。「シモンよ、どう思いますか。地上の王たちは、誰から関税や税金を受け取りますか。自分の息子たちからですか、他人からですか。」
26 ペテロはイエスに言った。「他人からです。」イエスはペテロに教えられた。「では、息子たちはかかわりがありません。
27 しかし、彼らにつまずきを与えないように、海に行って、つり針を投げ入れ、最初に上がって来た魚を取りなさい。そして、その魚の口をあけると、一枚のスタテルのコインがあります。それを取って、わたしとあなたに代わって彼らに与えなさい。」

18章

その時、弟子たちはイエスの所に来て、言った。「では、天の王国では、誰が一番偉いのですか。」
2 そうすると、イエスは一人の幼児を呼び寄せ、弟子たちの中央に立たせ、
3 言われた。「まことにあなたがたに言います。あなたがたは回心し、幼児のようにならなければ、決して天の王国に入ることはありません。
4 したがって、この幼児のように、誰であれ自らへりくだる人が、天の王国ではもっとも偉い人です。
5 そして、このような幼児の一人を、わたしの名によって受け入れる者は、誰でもわたしを受け入れたことになります。
6 でも、わたしを信じるこの小さき者の一人を、つまずかせる者は誰であれ、石臼を首にぶら下げられて、海の深みに沈められた方がましです。
7 つまずきがあるから、災いは世界に来ます。なぜなら、つまずきは必ず来るけれど、つまずきを来させる人に災いが来るからです。
8 しかし、もしあなたの手または足があなたをつまずかせるなら、切り落としなさい。両手両足そろって、永遠の火の中に投げ込まれるより、両足が不自由、あるいは両手が不自由のままで、命に入る方が、あなたにとって優っています。
9 また、もしあなたの目の一つがあなたをつまずかせるなら、それをえぐり出し捨てなさい。両目そろって、地獄の火に投げ込まれるより、あなたにとって、片目で、命に入る方が優っています。
10 この小さき者たちの一人も、侮らないように気をつけなさい。なぜなら、あなたがたに言います。天国で彼らの御使いたちは、天国にいるわたしの父の顔をいつも見ています。
11 人の子は、失われた人を救うために来たからです。
12 あなたがたはどう思いますか。もし百頭の羊を持っている一人の男が、その中の一頭が帰る道を失えば、九十九頭の羊を残し、帰る道を失った一頭を探しに、山へ行くではありませんか。
13 また、まことにあなたがたに言います。もしその一頭を見つければ、迷わなかった九十九頭より、彼はその一頭を喜びます。
14 このように、この小さき者たちの一人でも滅びることは、あなたがたの天国におられる父のご意志ではありません。
15 また、もしあなたの兄弟があなたに対して罪を犯せば、行って、彼とあなたの間だけで、兄弟の非を認めさせなさい。もし彼があなたの言うことを聞けば、あなたは兄弟を獲得したことになります。
16 しかし、もし彼が聞いてくれなければ、すべての言葉は、二人か三人の証人の口によって立証できるよう、もう一人か二人をあなたと共に連れて行きなさい。
17 それでも、もし彼が証人たちを拒否すれば、教会に話しなさい。しかし、もし彼が教会も拒否すれば、あなたにとって異教徒、そして収税人のように扱いなさい。
18 わたしはまことにあなたがたに言います。あなたがたが何かを地上で結ぶなら、それは何であれ、天国でもう結ばれました。そしてもしあなたがたが何かを地上でほどくなら、それは何であれ天国でほどかれます。
19 また、わたしはあなたがたに言います。あなたがたの中の二人が、何の願い事であれ、地上で同意すれば、それは天国にいるわたしの父が彼らのためにそうされます。
20 わたしの名において二人もしくは三人集まる所に、わたしは彼らの真ん中にいるからです。」
21 その時、ペテロはイエスの所に来て、言った。「主よ、私の兄弟が私に対して罪を犯したら、私は何度彼を赦すべきですか。七度までですか。」
22 イエスは彼に言われた。「わたしはあなたに七度までと言わず、七度を七十倍するまでと言います。
23 このため、天の王国は、自分の僕たちと決済を求めた一人の王のようです。
24 王が決済を始めた時、一万タラント26の債務がある一人の僕が王の所に連れて来られました。
25 しかし、その僕は支払いができなかったので、彼は妻と子どもとすべての持ち物を売って支払うようにと、僕の主人が命じました。
26 そうすると、僕は主人の前に伏して、哀願して言いました。『ご主人様、ご勘弁ください。全額お支払いいたします。』
27 それで、その僕の主人は哀れんで、彼を解き、債務をゆるしました。
28 しかし、その僕は出て行って、百デナリ27を貸してある僕の仲間の一人を見つけ、その僕を捕まえ、彼の首を絞めて、言った。『貸した金を、全額払え。』
29 そうすると、その僕の仲間は彼の足下に伏して、懇願して言いました。『ご勘弁ください。全額お支払いいたします。』
30 しかし、彼はそのつもりがなく、行って、仲間の僕がすべての借りを払い終わるまで、牢獄に投げ入れました。
31 しかし、僕の仲間たちはその僕がした事を見ると、とても悲しみ、彼らの主人の所に行き、一部始終を述べました。
32 そこで、僕の主人は彼を呼びよせて、言いました。『悪い僕よ。お前は懇願したから、私はあの借金を全部ゆるした。
33 私がお前を哀れんだように、お前もお前の仲間の僕を哀れむべきではなかったのか。』
34 そうして、彼の主人は腹を立て、すべての借りを払うまで、彼を拷問役に引き渡しました。
35 だから、もしあなたがた一人一人、心よりあなたがたの兄弟の悪行を赦さなければ、天にいるわたしの父も同じ事をあなたがたにします。」

19章

さて、ことの次第はこうであった。イエスはこれらの話を終えられ、ガリラヤを離れ、ヨルダンの対岸、ユダヤの地方に行かれると、
2 大勢の群衆がイエスについて来たので、イエスはそこで彼らを治された。
3 パリサイ派の人たちもイエスの所に進み出て、イエスを試し、言った。「男がどんな理由でも、妻を離婚することは合法ですか。」
4 しかし、イエスは答えて彼らに言われた。「人間を造った方は、最初から『人間を男と女として造った。』と読んだことがないのですか。
5 そして、言われた。『このため、男は父と母を離れ、妻と結ばれる。そして、この二人は一つの肉体になる。』
6 したがって、もう二人ではなく、一体です。それで、神が結ばれたものを、人が離してはいけません。」
7 彼らはイエスに言った。「では、モーセはなぜ離縁状を与え、彼女を去らせよ、と命じましたか。」
8 イエスは彼らに言われた。「あなたがたの心のかたくなさのため、モーセはあなたがたの妻たちを離婚することを許しました。しかし、最初からはそうではありませんでした。
9 そこで、わたしはあなたがたに言います。性的な罪以外で、自分の妻を離婚して、他の女と結婚する男は、姦通を犯します。また、離婚された女と再婚する者も、姦通を犯します。」
10 弟子たちは彼に言った。「男と妻の関係がもしそういうものならば、結婚しない方がましです。」
11 しかし、イエスは彼らに言われた。「すべての人がこの言葉を受け入れるわけではありません。ただ、それを与えられた人たちだけです。
12 母の胎内からそう生まれた宦官もいれば、人たちに強制されて宦官になった人もいるし、天の王国のために、自ら宦官になった人もいるからです。これを受け入れることができる人は、受け入れなさい。」
13 その時、イエスに手を触れて祈っていただくために、人たちが幼い子どもたちをイエスの所に連れて来た。しかし、弟子たちはその人たちをたしなめた。
14 それでイエスは言われた。「幼い子どもたちを許し、わたしの所に来させなさい。さまたげてはいけません。天の王国は、このような者たちの所だからです。」
15 そして、イエスは子どもたちに手を置き、その場から去って行かれた。
16 さて、見よ、一人の男がイエスの所に来て、イエスに言った。「よい先生よ、私が永遠の命を受け継ぐには、どんなよいことをすればよいのでしょうか。」
17 そうすると、イエスはその男に言われた。「あなたはなぜわたしを『よい』と言うのですか。神一人以外、誰もよい人はいません。しかし、もしあなたが命に入りたいなら、命令を守りなさい。」
18 彼はイエスに言った。「どの命令ですか。」イエスは彼に言われた。「『殺人を犯してはいけない。姦淫をしてはいけない。窃盗をしてはいけない。偽証をしてはいけない。
19 あなたの父と母に敬意をはらいなさい。』そして、『あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさい。』」
20 若者はイエスに言った。「私はこれらすべてを青年時代から守ってきています。私のまだ足りないことは、何ですか。」
21 イエスは男に言われた。「もしあなたが完全になりたいなら、自分の持ち物を売り、貧しい人たちに与えなさい。そうすれば、あなたは天国で宝を手にします。そして来て、わたしに従いなさい。」
22 しかし、若者はその言葉を聞き、悲しみながら帰った。彼には多くの富があったからである。
23 その時、イエスはご自分の弟子たちに言われた。「まことに、わたしはあなたがたに言います。金持ちが天の王国に入るのは難しいことです。
24 わたしは改めてあなたがたに言います。金持ちが神の王国に入るより、らくだが針の穴を通る方が簡単です。」
25 イエスの弟子たちはこれを聞いて、驚愕していて、言った。「では、誰が救われることができましょうか。」
26 しかし、イエスは弟子たちをご覧になり、言われた。「人間には不可能ですが、神にとってすべては可能です。」
27 それで、ペテロは答えてイエスに言った。「ご覧下さい。私たちはすべてを捨て、あなたに従って来ました。それで、私たちはどうなるのでしょうか。」
28 イエスは彼らに言われた。「まことに、わたしはあなたがたに言います。人の子は自分の栄光の王座につく再生の時、わたしに従って来たあなたがたも、十二の座について、イスラエルの十二部族を裁きます。
29 そして、家、兄弟、姉妹、父、母、妻、子ども、土地をわたしの名のため、捨てて来たその者たちすべては、その百倍を受けて、永遠の命を相続します。
30 しかし、最初である大勢の人たちは最後になり、最後の人たちは最初になります。」

20章

「なぜなら、天の王国は、自分のぶどう園のために労働者を雇いに、朝早く出かけたある家の主人のようです。
2 そこで、主人は労働者たちと一日一デナリで合意し、彼らを自分のぶどう園へ送りました。
3 第三時間目28ごろ、主人は出かけ、市場に立って何もしていない人たちを見ました。
4 そして、彼らに言いました。『あなたたちもぶどう園に行きなさい。そうすれば私は正当な額を払う。』それで彼らは行きました。
5 彼はまた、第六時間目29と九時間目30ごろに出かけて、同じようにしました。
6 そして、第十一時間目31ごろ、彼は出かけ、市場で何もせず立っている他の人たちを見つけて、彼らに言いました。『何であなたたちは一日中ここに何もせず立っているのか。』
7 彼らは主人に言いました。『誰も雇ってくれなかったからだ。』彼は彼らに言いました。『あなたたちもぶどう園に行きなさい。そして、正当な額を受けとれる。』
8 そうして、夕方になり、ぶどう園の主人はその現場監督に言いました。『労働者を呼び、最後の者から最初の者に、報酬を与えなさい。』
9 それで、第十一時間目32に雇われた人たちが来て、一人一人、一デナリをもらった。
10 しかし、最初の人たちが来ると、もっともらえると思ったが、彼らも同じく一デナリずつもらいました。
11 しかし、それを受けとった人たちは、主人に苦情を言いました。
12 『この最後の人たちは一時間しか働かなかったのに、今日の重荷や暑さに耐えた我々と、彼らをあなたは同じに扱った。』と言いました。
13 すると、主人はその中の一人に答えて言いました。『仲間よ、私はあなたに悪いことはしていない。私と一デナリの合意をしなかったのか。
14 自分のものを持って行きなさい。この最後の人に同じ賃金を私は与えたいのだ。
15 私のもので、私のしたいことをするのは合法でないのか。それとも、私は善だから、あなたの目はよこしまなのか。』
16 このように、最後の人たちが最初になり、最初の人たちが最後になります。招かれる人は多いが、選ばれる人は少ないからです。」
17 さて、イエスはエルサレムに上る途中、自分たちだけで道ばたに寄せ、十二弟子たちに言われた。
18 「見よ、わたしたちはエルサレムに上り、人の子は祭司長たちと律法学者たちに裏切られ、その者たちは人の子を死に定め、
19 異邦人は人の子をあざけり、鞭打ち、十字架刑にするため、彼を異邦人に渡します。そして、人の子は三日目に復活します。」
20 その時、ゼベダイの息子の母が、彼女の息子たちと共にイエスの所に来て、ひざまずき、イエスに何事かを願った。
21 そこで、イエスは彼女に言われた。「あなたは何を願うのですか。」彼女はイエスに言った。「私のこの二人の息子を、あなたの王国で、一人はあなたの右に、もう一人はあなたの左に、座れますようお願いします。」
22 しかし、イエスは答えて言われた。「あなたがたは何を願っているのか自分でも理解していません。わたしが飲むカップを飲み、わたしの受けようとしている浸しを受けることができるのですか。」二人はイエスに言った。「私たちはできます。」
23 それで、イエスは彼らに言われた。「あなたがたはまことにわたしのカップを飲み、わたしの受ける浸しを受けます。しかし、わたしの右とわたしの左に座ることは、わたしが与えることではなく、それはわたしの父によって準備されたもので、定められた人たちのためです。」
24 そうすると、残りの十人はそれを聞き、二人の兄弟にとても腹を立てた。
25 しかし、イエスは弟子たちをご自分の所に呼び寄せて、言われた。「異邦人の支配者たちは、異邦人の上に君臨する、また偉い者たちは、異邦人の上に権力を振るうことを、あなたがたは知っています。
26 しかし、あなたがたの間ではそうはなりません。かえって、あなたがたの間では、大物になりたい人は、あなたがたの中の僕になりなさい。
27 そして、誰であれあなたがたの間で一番になりたい人は、まずあなたがたの奴隷になりなさい。
28 それと同じように、人の子は、仕えてもらうために来たのではなく、仕えるため、そして、自分の命を大勢の人のために身代金として、与えるために来たのです。」
29 さて、彼らがエリコを出た時、大群衆がイエスについて行った。
30 すると、見よ、二人の盲目の男が道ばたに座って、イエスが通りかかっておられるのを聞き、叫んで言った。「主よ、ダビデの御子息よ、私たちを哀れんでください。」
31 そこで、群衆は二人が静かにするよう警告したが、二人はさらに叫んで言った。「主よ、ダビデの御子息よ、私たちを哀れんでください。」
32 それでイエスは立ち止まり、盲人たちを呼び、言われた。「あなたがたのため、わたしに何をしてほしいのですか。」
33 二人はイエスに言った。「主よ、私たちの目が開かれますように。」
34 それで、イエスは盲人たちに同情し、彼らの目を触れられた。すると、たちどころに彼らの目は見えるようになった。そして彼らはイエスに従った。

21章

さて、イエス一行はエルサレムの近くに行って、ベテパゲに入り、オリーブ山まで来た。そこでイエスは二人の弟子を遣わされ、
2 二人に言われた。「向こう側の村に行きなさい。そうすると、あなたがたは繋がれているロバとそのロバの子をすぐ見つけます。解いてわたしの所に連れて来なさい。
3 もし誰かがあなたがたに何か言えば、『主がこれらを必要としているからです。』と言いなさい。すると、その人はすぐロバを送ってくれます。」
4 これらすべては、預言者を通して言われた言葉が成就されるために起こった。すなわち、
5 「シオンの娘に言いなさい。『見よ、あなたの王は、優しく、ロバに、すなわち荷を負うロバの子に乗って来る。』」
6 それで、弟子たちは出かけ、イエスが彼らに命じられた通りにした。
7 二人の弟子はロバとロバの子を連れて来て、その上に自分たちの服を敷き、イエスをその上に乗っていただいた。
8 そして、多くの群衆は彼らの服を道に広げ、また他の人たちは木から枝を切って、道に敷いた。
9 すると、先に行った群衆と後からついて来た群衆が叫び、言っていた。「ダビデの御子息に、ホサナ33。主の御名により来られる方に、祝福あれ。最高位のホサナよ。」
10 そして、イエスがエルサレムに入られた時、町中は動転し、言った。「これは何者か。」
11 それで群衆は言った。「これこそが、ガリラヤのナザレ出身の預言者イエスです。」
12 そこで、イエスは神の神殿の敷地に入り、神殿の敷地で売り買いしているすべての者たちを追い出され、また、イエスは両替人たちの卓と、鳩を売る者たちの床几をひっくり返された。
13 そして、イエスは商売人たちに言われた。「『わたしの家は祈りの家と呼ばれる。』と書いてあります。しかし、あなたがたはわたしの家を強盗の巣窟にしてしまった。」
14 すると、神殿の敷地で、盲人や足の不自由な人たちが、イエスの所に来たので、イエスは彼らを治された。
15 しかし、大祭司たちや律法学者たちは、イエスのなさるすばらしい業を、また、神殿の敷地内で、「ダビデの御子息にホサナ」と叫ぶ子どもたちを見ると、彼らは怒り、
16 そして、イエスに言った。「この者たちが何と言っているか聞いているか。」イエスは彼らに言われた。「しかり。あなたがたは読んだことがないのですか。『あなたは赤子や乳飲み子の口から出る賛美を、全うされた。』」
17 それから、イエスは彼らから離れ、町を出、ベタニヤに行き、そこに滞在された。
18 さて、朝になり、イエスは町へ帰られると、空腹であったので、
19 道端のイチジクの木をご覧になり、その木に行かれたが、探せば葉のほか、木に何も見あたらなかったので、イエスはその木に言われた。「今後お前は二度と果実が実らないように。」するとイチジクの木はたちどころに枯れてしまった。
20 すると、弟子たちはそれを見て、驚いて言った。「イチジクの木はどうして急に枯れてしまったのですか。」
21 イエスは答えて弟子たちに言われた。「まことにわたしはあなたがたに言います。もしあなたがたは信仰をもって、疑うことがなければ、このイチジクの木にされたしるしと同じことをするだけではなく、あなたがたはこの山に、『移動せよ、そして、海に投げ込まれよ。』と言えば、それは実現します。
22 そして、あなたがたは信じて祈れば、何であれ願うものを頂けます。」
23 さて、イエスは神殿の敷地に入られた時、大祭司や国民の長老たちが、教えておられたイエスの所に来て、言った。「お前は何の権威によってこれらのことを行なっているのか。そして、その権威を誰がお前に与えたのか。」
24 すると、イエスは答えて彼らに言われた。「わたしもあなたがたに一つ尋ねましょう。どれかとわたしに教えてくれれば、わたしも、何の権威によってこれらのことを行なうのかを教えましょう。
25 ヨハネの浸礼は、どこからでしたか。天からでしたか、それとも人間からでしたか。」大祭司たちと長老たちは自分たちの間で互いに言い合った。「もし我々が『天から』と言えば、イエスは、『それでは、あなたがたはなぜヨハネを信じなかったのか。』と私たちに言う。
26 そして、もし我々が、『人間から』と言えば、我々は群衆を恐れている。群衆は皆、ヨハネを預言者として認めているからだ。」
27 それで、彼らはイエスに答えて言った。「我々は知らない。」それで、イエスは彼らに言われた。「わたしも、何の権威によってこれらのことを行なうかと、言いません。
28 しかし、あなたがたはどう思いますか。ある男に二人の息子がいました。そして彼は長男の所に行って、言いました。『息子よ、今日私のぶどう園に行って、働いてくれ。』
29 それで、長男は、『行きたくない。』と答えて言ったが、あとで後悔して行きました。
30 次いで、次男の所に行って、同じように言いました。次男は、『主よ、ぼくは行きます。』と答えて言ったが、行きませんでした。
31 二人のうち、どちらが父の心を行ないましたか。」彼らはイエスに言った。「長男です。」イエスは彼らに言われた。「まことにわたしはあなたがたに言います。収税人や売春婦があなたがたより先に神の王国に入ります。
32 なぜなら、ヨハネは義の道であなたがたの所に来たが、あなたがたは彼を信じませんでした。しかし、収税人や売春婦はヨハネを信じたが、あなたがたはそれを見ても、最後まで悔い改めもせず、ヨハネを信じることがなかったからです。
33 例え話をもう一つ聞きなさい。ある男がいました。一家の主人で、ぶどうを植え、ぶどう園を作り、その周りに垣を作り、またその中に穴を掘り、ぶどうしぼり器を置き、塔を建てました。そして、彼は農夫たちに賃貸して、遠く旅に出ました。
34 さて、収穫時期が近くなった時、ぶどう園の収穫を受け取るために、主人は僕たちを農夫たちに派遣しました。
35 農夫たちは彼の僕たちを捕らえ、一人を何度も殴り、もう一人を殺し、もう一人も石を投げつけました。
36 再び彼は最初より多くの他の僕たちを農夫たちに派遣したが、彼らは同じようにあつかいました。
37 そこで、主人は最後に自分の息子を遣わし、言いました。『農夫らは息子なら敬意を払ってくれる。』
38 しかし、農夫たちは息子を見た時、互いに言いました。『奴は相続人だ。さあ来い、奴を殺して、相続する財産を取ろう。』
39 そこで、農夫たちは息子を捕らえ、ぶどう園から放り出し、そして殺しました。
40 それで、ぶどう園の主人が来ると、この農夫たちをどうしますか。」
41 彼らはイエスに言った。「主人はその悪い者たちを情け容赦なく殺し、季節になると成果を主人に返す他の農夫たちに、ぶどう園を貸します。」
42 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは聖書で読んだことがないのですか。『建築家たちが拒んだ石こそが、礎になった。これは主がなさったことで、私たちの目には、驚異である。』
43 そのためにわたしはあなたがたに言います。神の王国はあなたがたから取り上げられ、その実を結ぶ国に与えられます。
44 そして、この石の上に落ちる者は誰であれ破壊されるが、この石が上に落ち、下になった者は、石はその者を粉砕してしまいます。」
45 それで、イエスの例え話を聞いた時、大祭司たちやパリサイ派の人たちは、イエスは自分たちのことを話していると彼らが分かった。
46 しかし、大祭司たちとパリサイ派の人たちはイエスを捕らえようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者として認めていたからである。

22章

さて、イエスは答え、また彼らに例え話で話された。そして、言われた。
2 「天の王国は、息子のために結婚式を設けたとある王のようです。
3 招かれた人たちを結婚式に呼ぶため、王は僕たちを派遣したが、招かれた人たちは行きたくありませんでした。
4 もう一度、王は別の僕たちを派遣して言いました。『招かれた人たちに言いなさい。「さあ、私が自ら正餐を準備した。私の雄牛も太らせた家畜も屠殺され、すべてのものは用意されている。結婚式に来なさい。」』
5 しかし、招かれた人たちはこれを無視しました。ある男は畑に、ある男は商売にと、それぞれの道を行きました。
6 残りの男たちは王の僕たちを捕まえ、恥をかかせ、そして殺害しました。
7 それで、王はそれを聞いて、激怒し、彼の軍隊を派遣し、その殺人者たちを壊滅し、彼らの町を焼き尽くしました。
8 そして、王は自分の僕たちに言いました。『結婚式は準備ができたが、招かれた者たちはふさわしくなかった。
9 それで、大通りに出て行き、出合った人を全員、結婚式に招け。』
10 そこで、その僕たちは道に出て行き、善人でも悪人でも、出会った人たちを集めたので、結婚式場は食事をする招待客で満たされました。
11 しかし、王は招待客を見に入って来た時、そこに結婚式の衣を着ていない男を見かけ、
12 その男に言いました。『友よ、お前はなぜ結婚式の衣を着ないでここに入って来たのか。』しかし、彼は無言でした。
13 その時、王は僕たちに言いました。『この者の手足を縛り、運んで行き、外の暗闇の中に投げよ。そこは泣き、歯をかみならす所だ。
14 招かれる人は多いが、選ばれる人は少ないからだ。』」
15 その時、パリサイ派の人たちは行って、どうすればイエスの言葉でイエスを絡めとることができるかと計画を立てた。
16 パリサイ派の人たちは自分たちの弟子たちを、ヘロデ党の人たちと共に、イエスの所に送り、言わせた。「先生、あなたは真であり、また真理によって神の道を教えていることを、我々は知っています。そして、あなたは人の顔色を見ないから、あなたはえこひいきはしません。
17 ですから、あなたの考えていることを教えてください。カイザルに税金を納めることは、律法に叶っているでしょうか。叶っていないでしょうか。」
18 しかし、イエスは彼らの悪意を知り、言われた。「偽善者たちよ、なぜわたしを試すのか。
19 税用の硬貨を一枚わたしに見せなさい。」それで、彼らはイエスにデナリ一個をもって来ると、
20 イエスは彼らに言われた。「これは誰の像と銘ですか。」
21 彼らはイエスに言った。「カイザルのです。」それで、イエスは彼らに言われた。「それでは、カイザルのものはカイザルに返し、神のものは神に返しなさい。」
22 この言葉を聞き、彼らは驚き、イエスを離れ、去って行った。
23 その同じ日、復活がないと言うサドカイ派の人たちはイエスの所に来て、尋ね、
24 そして、言った。「先生、もし男が子どもがなく死ねば、その男の兄弟はその妻と結婚して、兄弟のために子孫を上げよ、とモーセは言いました。
25 では、私たちの仲間に、七人兄弟がいました。そして、長男は妻をめとり、跡継ぎがないまま、死に、妻を兄弟に残しました。
26 そして次男も、三男も、七人目さえそうなりました。
27 最後にその女も死にました。
28 それで、復活の時、この女はその七人の中、誰の妻になるのですか。なぜなら、七人ともこの女をめとったからです。」
29 しかし、イエスは答えてサドカイ派の人たちに言われた。「聖書も神の力も分かっていないから、あなたがたは間違っています。
30 復活の時、彼らは、めとったり、嫁がされたりせず、天国にいる神の御使いたちに似ているからです。
31 それに、死人の復活については、神により、あなたがたに言われたことを、読んだことがないのですか。神は言われています。
32 『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』神は死人の神ではなく、生きている者の神です。」
33 それで、群衆はこれを聞き、イエスの教えに驚嘆していた。
34 しかし、イエスがサドカイ派の人たちを黙らせたと聞いて、パリサイ派の人たちがイエスの所に共に集まった。
35 そこで、その中の律法の専門家の一人が、イエスを試して、尋ねて言った。
36 「先生、律法の中で、偉大な命令はどれですか。」
37 イエスは彼に言われた。「『あなたは、心のすべてを尽くし、たましいのすべてを尽くし、知力のすべてを尽くし、あなたの神であられる主を愛しなさい。』
38 これが第一であり、また偉大な命令です。
39 そして、第二の命令はこれに似ています。『あなたの隣人を、あなた自身のように愛しなさい。』
40 律法と預言者のすべては、この二つの命令にかかっています。」
41 パリサイ派の人たちが集まっている間に、イエスは彼らに尋ねられ、
42 言われた。「キリストについてあなたがたはどう考えていますか。キリストは誰の息子でしょうか。」彼らはイエスに言った。「ダビデの息子です。」
43 イエスは彼らに言われた。「それでは、ダビデはどういう理由で、霊によってキリストを『主』と呼ぶのですか。ダビデは言っています。
44 『主は私の主に言われた。「わたしがあなたの敵をあなたの足台にするまで、わたしの右に座りなさい。」』
45 もしダビデがキリストを『主』と呼んでいるのなら、キリストはどうしてダビデの子息なのでしょうか。」
46 すると、イエスに一言も答えることができる者はいなかった。また、その日から、イエスに尋ねる勇気のある者もいなかった。

23章

その時、イエスは群衆とご自分の弟子たちに話して、
2 言われた。「律法学者たちとパリサイ派の者たちは、モーセの席に座ります。
3 したがって、彼らが言う、守るべきことは何であっても守り、実行しなさい。しかし、彼らのすることを習ってはいけません。彼らは言うが、実行しないからです。
4 なぜなら、彼らは担いがたい重い荷を縛り、人々の肩に乗せるが、彼ら自身は指一本も使って動かそうともしません。
5 しかし、彼らはすべての行為を人たちに見られるためにします。彼らは聖句箱34を大きくして、衣のふさを長くします。
6 彼らは宴会の最上座、シナゴーグの最高の席、
7 また、市場での挨拶、人々に『ラビ、ラビ』と呼ばれることを好みます。
8 しかし、あなたがたは『ラビ』と呼ばれてはいけません。あなたがたの師は一人、つまりキリストで、あなたがたは皆兄弟だからです。
9 そして、地上の誰をもあなたがたの父と呼んではいけません。あなたがたの父は一人、すなわち天におられる方だからです。
10 また、師と呼ばれてはいけません。あなたがたの師は一人、つまりキリストだからです。
11 しかし、あなたがたの中でもっとも偉大なのは、あなたがたの僕になります。
12 そして、誰であれ自らを偉くする人は低くされ、自分を低くする人は偉くされます。
13 律法学者たちとパリサイ派の者たち、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。あなたがたは、天の王国を人たちの前で閉じ、また、自らも入らず、入ろうとする人たちを入らせないからです。
14 律法学者たちとパリサイ派の者たちよ、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたは、未亡人たちの家を食い尽くし、また、偽りで長い祈りをします。このため、あなたがたはもっと厳しい裁きを受けます。
15 律法学者たちとパリサイ派の者たちよ、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、一人の改宗者をつくるために、あなたがたは海と地を行き巡ります。そして、改宗者になった人を、あなたがた自身の倍の地獄の息子にするからです。
16 目の見えない案内者よ、あなたがたに災いあれ。あなたがたは言う。『神殿をさして誓う者なら、それは何でもない。しかし、神殿の黄金をさして誓う者は、それを負う。』
17 愚か者たち、盲人たちよ。黄金か、黄金を聖別する神殿か、どちらが偉大なのか。
18 また、あなたがたは言う。『もし誰か祭壇をさして誓えば、それは何でもないが、その上にある捧げ物をさして誓う者は、それを負う。』
19 愚か者たち、盲人たちよ。捧げ物か、捧げ物を聖別する祭壇か、どちらが偉大か。
20 それは、祭壇をさして誓う者は、祭壇とその上にあるすべての物をさして誓います。
21 神殿をさして誓う者は、神殿とその中に住んでいる神をさして誓います。
22 そして、天国をさして誓う者は、神の王座とその座に就いておられる神をさして誓います。
23 律法学者たちとパリサイ派の者たちよ、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたはハッカ、アニス、クミンの十分の一を捧げるのに、律法のもっと重要なこと、すなわち正義や哀れみや信仰を無視しました。これらは当然なすべきことであり、他の方も無視してはいけないことです。
24 目の見えない案内者たちよ。あなたがたはぶよを一匹こして取り、らくだを飲み込みます。
25 律法学者たち、パリサイ派の者たち、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたはカップと皿の外側を清潔にするが、内側は貪欲や自制心の欠如で満たされています。
26 盲目のパリサイ派の者よ、カップや皿の外側を清潔にするには、まずカップや皿の内側を清潔にしなさい。
27 律法学者たち、パリサイ派の者たち、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたは、外側は白い石灰で塗ってある墓にそっくりです。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨やすべてが不潔なもので満たされているからです。
28 このように、あなたがたも外面は人たちに正しく見えるが、中は偽善と不法で満たされています。
29 律法学者たち、パリサイ派の者たち、偽善者たちよ、あなたがたに災いあれ。なぜなら、あなたがたは預言者の墓を建て、義人たちの廟を飾り、
30 そして言う。『もし私たちが父祖たちの日に生きていたなら、父祖たちと共に預言者たちの血には関わらなかったでしょう。』
31 このように、あなたがたは預言者たちを殺した者たちの息子らであることを、あなたがた自らが証明しています。
32 それで、あなたがたの父祖たちの秤を満たしなさい。
33 蛇たちよ、マムシの子たちよ。お前たちはどうして地獄の裁きを逃げられようか。
34 それで、見よ、預言者たち、知者たち、律法学者たちを、わたしはあなたがたに遣わすが、あなたがたはその中のある者たちを殺し、十字架につけ、また、ある者たちをあなたがたのシナゴーグでむち打ち、町から町へ追い詰める。
35 それは、あなたがたの上に、地上で流されたすべての正義の血が来るためです。すなわち、正しいアベルの血より、あなたがたが祭壇と神殿の間で殺したバラキヤの息子ザカリヤの血までです。
36 まことにまことに、あなたがたに言います。これらすべてのことはこの世代の者の頭上に来ます。
37 エルサレム、エルサレムよ、預言者たちを殺し、あなたに遣わされた人たちを石投げの刑に処す者よ、めん鶏がひなを翼の下に集めるように、わたしは何度もあなたの子らを集めようとしたが、あなたがたは望まなかった。
38 見よ、あなたがたの家は、荒れ果ててあなたがたに残る。
39 なぜなら、わたしはあなたがたに言います。『主の御名によって来る方は、祝福される。』とあなたがたが言う時まで、あなたがたは決してわたしを見ません。」

24章

さて、イエスは出て、神殿の敷地から去って行かれた。そして、イエスの弟子たちは神殿の敷地内の建物を見せるために、イエスの所に来た。
2 しかし、イエスは弟子たちに言われた。「これらすべての物が見えないのですか。まことにわたしはあなたがたに言います。引き倒さずに、石一つとして重なって残されることは決してありません。」
3 そして、イエスがオリーブ山で座ると、弟子たちはひそかにイエスの所に来て、言った。「私たちに教えてください。そのことはいつで、あなたの来臨のしるしは、またこの時代の終わりのしるしは何ですか。」
4 それで、イエスは答えて彼らに言われた。「誰にも騙されないように気をつけなさい。
5 『私がキリストです。』と言って、多くの者がわたしの名を語ってやって来て、多くの人を騙すからです。
6 そして、あなたがたはこれから戦争や戦争の噂を聞きます。混乱に陥らないよう、気をつけなさい。これらのことはすべて起こらざるを得ないのですが、まだ終わりではないからです。
7 なぜなら、国家は国家に敵対して、王国は王国に敵対して立ち上がります。そして、各地で飢饉や疫病や地震が起こります。
8 これらすべては産みの苦しみの始まりです。
9 その時、人々はあなたがたを苦しませるために渡し、そして殺します。そして、わたしの名のために、あなたがたはすべての国に増悪されます。
10 その時多くの者たちはつまずかされ、互いに裏切り、互いに憎み合います。
11 そして、偽預言者は大勢立ち上がり、多くの者を騙します。
12 そして、悪行が溢れるから、多くの者たちの愛は冷たくなります。
13 しかし、終わりまで耐え抜く者、その者は救われます。
14 そして、すべての民族への証になるため、王国のこの福音は、地球のすべてで語られます。その時、終わりが来ます。
15 したがって、あなたがたは、預言者ダニエルが話した、荒らす忌むべき者が聖所に立っているのが見えれば、(読む人よ、理解しなさい。
16 その時は、ユダヤにいる人たちは、山地35に逃げなさい。
17 屋上にいる者は、自分の家から何かを取りに、下に降りるな。
18 また、野にいる者は、服を取りに戻るな。
19 そしてその日々の間は、身ごもっている者たち、乳を飲ませている者たちは、悲惨です。
20 しかし、あなたがたのこの脱出が冬でも、安息日でもないように祈りなさい。
21 その時、世の始まりから、今この時に至るまでない、また今後も決してないような大きな艱難があります。
22 そして、その日々は短くされることがなければ、救われる人は誰もいません。しかし、選ばれた人たちのために、その日々は短くされます。
23 その時、誰であれあなたがたに、『見よ、キリストは、ここにおられる、あそこにおられる。』と言っても、それを信じてはいけません。
24 偽キリストたちや、偽預言者たちが立ち上がって、大きなしるしや不思議な業を行なうからです。それが、もし可能であれば、そういう者は選ばれた人たちさえも、騙そうとします。
25 見よ、わたしは前もって、あなたがたに話しました。
26 したがって、もし人々があなたがたに、『見よ、彼は砂漠にいる。』と言っても、出て行ってはいけません。または、『見よ、彼は奥の秘密の部屋にいる。』と言っても、それを信じてはいけません。
27 なぜなら、稲妻は東から出て来て、西まで光るように、人の子の来臨もそのようになるからです。
28 なぜなら死体のある所は、どこにでも鷲36は集まるからです。
29 その日々の艱難の直後、太陽は暗くなり、月はその光を出さず、また、星は宇宙から落ち、天の力は揺れ動かされます。
30 そしてその時、人の子のしるしは、空に現われます。その時、地球のすべての部族はひどく嘆き、力と偉大な栄光を帯びて、空の雲に乗って来られる、人の子を人々は見ます。
31 そして、人の子はラッパの大きい音と共に、自分の御使いたちを遣わし、そして、彼らは人の子の選んだ人たちを、四つの風から、天の隅々から集めます。
32 そして、イチジクの木の例え話を忘れてはいけません。その枝はもう柔らかくなって、葉を出す時、あなたがたは夏が近いと分かります。
33 それと同じように、あなたがたもこれらすべてのことを見ると、来臨は近く、戸口まで来ていると理解します。
34 まことにわたしはあなたがたに言います。これらすべてのことが起こるまで、この時代は決して過ぎ去りません。
35 天も地も消滅します。しかしわたしの言葉、一つ一つは決して消滅しません。
36 しかし、その日と時刻は、わたしの父以外、天国の御使いたちでさえ誰も知りません。
37 しかし、人の子の来臨は、ちょうどノアの日々のようになります。
38 なぜなら、洪水前の日々、ノアが箱船に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、娶ったり嫁いだりしていました。
39 そして、あの洪水が来て、みんなを連れ去るまで、彼らは知らなかったからです。人の子の来臨も、そのようになります。
40 その時、二人は野良にいて、一人は連れ去られ、一人は残されます。
41 二人の女が臼をひいていて、一人は連れ去られ、もう一人は残されます。
42 したがって、警戒していなさい。あなたがたの主が来られる時を、あなたがたは分からないからです。
43 しかし、このことは覚えておきなさい。もし家長は泥棒が何時に来るかを知っていたなら、彼は見張りをし、家に押し入ることを許さなかったでしょう。
44 したがって、あなたがたも備えなさい。あなたがたの考えもしない時に、人の子は来るからです。
45 では、定められた時に、食事を与えるため、主人が、家人を支配する者にした、忠実で賢い僕は誰ですか。
46 主人が来た時、こうしている姿を、主人に見られる僕は、祝福されています。
47 まことにわたしはあなたがたに言います。主人はその僕を自分の全財産の支配者にします。
48 しかし、もしその悪い僕は心の中で、『私の主は遅れて来る。』と言って、
49 仲間の僕たちを殴り始め、酔っぱらいと共に飲み食いすれば、
50 その僕の主人が思いがけない日に、僕の気が付かない時に来て、
51 主人は彼を二つに斬り分け、僕の取り分を偽善者と同じにします。そこには泣きと歯の噛みならしみがあります。

25章

その時、天の王国は、灯りを持って、花婿を出迎えに出かけた十人の処女に似ています。
2 さて、五人は賢く、五人は愚かでした。
3 愚か者は自分の灯りを持って行ったが、油をたずさえて行きませんでした。
4 しかし、賢い五人は灯りと油を入れた器をたずさえて行きました。
5 さて、花婿が遅くなったので、彼女たちは皆うとうとし、眠ってしまいました。
6 そうすると、真夜中に叫び声が聞こえました。『見よ、花婿がやって来る。迎えに出なさい。』
7 それで、この処女たちは全員起き上がって、灯りを整えました。
8 愚か者たちは賢い者たちに言いました。『私たちの灯りは消えかけているので、あなたがたの油を少しください。』
9 しかし、賢い者たちは答えて言いました。『私たちとあなたがたの分には足りません。それより、売っている人たちの所に行って、自分たちの分を買いなさい。』
10 そこで、彼女たちが買いに出て行った間に、花婿が到着し、そして、準備ができた人たちは花婿と共に結婚式場に入り、戸は閉められました。
11 その後で他の処女たちも来て言いました。『ご主人様、ご主人様、私たちです。開けてください。』
12 しかし主人は答えて言いました。『まことに私はお前たちに言う。私はお前たちを知らない。』
13 したがって、あなたがたは人の子の来る日も時刻も知らないのですから、警戒していなさい。
14 それで、天の王国は、遠くへ旅をしようとしている人のようです。彼は自分の僕たちを呼び、彼の財産を彼らに預けました。
15 そして、一人に五タラント、37もう一人に二タラント、もう一人には一タラントを、各々の才能に応じて与え、彼はすぐ旅に出ました。
16 そこで、五タラントを受け取った人は行って、それで商売をし、さらに五タラントを儲けました。
17 同じように、二タラントを受けた人もさらに二タラントを儲けました。
18 しかし、一タラントを受け取った人は出かけ、地面を堀り、彼の主人の銀を隠しました。
19 さて、長い間経ってから、その僕たちの主人は帰って来て、彼らと収支決算をしました。
20 そこで、五タラントを受け取った人はさらに五タラントを持って来て、言いました。『ご主人様、あなたは私に五タラントを渡してくださいました。見てください。私はそのお金の他に、五タラントを儲けました。』
21 僕の主人は彼に言いました。『よくやった、良き忠実な僕よ。お前はわずかな物にも忠実だった。私はお前に多くの物を任せる。主人の喜びを共有しなさい。』
22 そして、二タラントを受け取った人も来て言いました。『ご主人様、あなたは私にニタラントを渡しました。見てください。私はそのお金の他に、二タラントを儲けました。』
23 主人は彼に言いました。『よくやった、良き忠実な僕よ。お前はわずかな物にも忠実だった。私はお前に多くの物を任せる。主人の喜びを共有しなさい。』
24 しかし、タラントを一つ受け取った人も来て言いました。『ご主人様。あなたは、蒔いたことのない所から収穫し、散らさなかった所から集める、厳しい方であると、私は知っていました。
25 だから、私は恐くなって、出かけて行って、あなたのタラントを地中に隠しました。見てください。あなたの物はあなたの物です。』
26 しかし、僕の主人は彼に答えて言いました。『邪悪で怠け者の僕よ。私は蒔いたことのない所から収穫し、種を散らしたことのない所から集めることを知っていたのに、
27 そうなら、お前は私の銀を銀行に預けるべきだった。そうしたら、帰ると、利息を含めて私の銀を受け取っただろうに。
28 だから、あの者からそのタラントを取り、十タラントを持っている僕に与えよ。
29 持つ人は誰でも、もっと与えられ、その人は豊かに所有し、持っていない者からは、持っている物さえ取り上げられるからだ。
30 そして、この役立たずの僕を外の暗やみに投げ捨てよ。そこには、泣くことと歯を噛みならすことがある。』
31 しかし、すべての聖なる御使いを従えて、人の子が自らの栄光に包まれて来る時、彼は自らの栄光の座に着きます。
32 そして、すべての国々は彼の前に集められ、羊飼いが羊を山羊から分けるように、彼は国を国から分け、
33 そして、彼は羊を彼の右手に立たせるが、山羊は彼の左手に立たせます。
34 その時、王は彼の右手にいる人たちに言います。『わたしの父に祝福された人たちよ、来なさい。世の土台を置いた時から、あなたがたのために準備された王国を相続しなさい。
35 なぜなら、空腹のわたしに、あなたがたは食べ物をくれ、のどの渇いたわたしに、あなたがたは飲み物をくれました。外国人であったわたしを、あなたがたは受け入れてくれたからです。
36 裸のわたしに、あなたがたは服を着せてくれ、病気のわたしを見舞ってくれ、牢獄にいるわたしの世話をしてくれました。』
37 その時、義人たちは彼に答えて言います。『主よ、私たちはいつあなたが飢えたのを見て食べ物をあげ、あなたがのどが渇いていたのを見て、あなたに飲み物をあげましたか。
38 そして、私たちはいつ外国人であるあなたを見て、受け入れ、裸のあなたを見て服を着せましたか。
39 またいつ、私たちは病気のあなたを見舞い、また牢獄にいるあなたの所に行きましたか。』
40 それで、王は答えて彼らに言います。『まことにあなたがたに言います。あなたがたはこれら、わたしの最も小さい兄弟たちの一人にしたほど、それをわたしにしてくれたのです。』
41 その時、彼は左手の者たちにも言います。『呪われた者たちよ、悪魔とその使いたちのために準備された、永遠の火の中に入り、わたしから離れよ。
42 なぜなら、空腹のわたしに、お前たちは食べ物をくれず、のどが渇いたわたしに、飲み物をくれず、
43 外国人だったわたしを、お前たちは受け入れず、裸のわたしに、服を着せず、病気や、牢獄にいた時に、お前たちはわたしの世話をしなかったからだ。』
44 その時、彼らは王に答えて言います。『主よ、私たちはいつあなたが飢えたり、のどが渇いたり、裸だったり、病気だったり、牢獄にいた時に、あなたに仕えなかったのでしょうか。』
45 その時、王は彼らに答えて言います。『まことにわたしはお前たちに言う。これら最も小さい人たちにしなかったほど、わたしにしなかったことになるのだ。』
46 そして、この者たちは永遠の罰の中に入り去るが、義人たちは永遠の命に入ります。」

26章

さて、ことの次第はこうであった。イエスはこれらのすべての言葉を言い終えると、ご自分の弟子たちに言われた。
2 「二日後に過越祭38が来るとあなたがたは知っています。そして、人の子は十字架につけられるために引き渡されます。」
3 その時、大祭司たち、律法学者たち、それに国民の長老たちは、カヤパという大祭司の屋敷の中庭に集まり、
4 そして、彼らは策略を用いてイエスを捕まえ、殺す方法を相談した。
5 しかし、彼らは言った。「民衆の間に騒動が持ち上がるから、祭りの日はまずい。」
6 さて、イエスはベタニヤにある、レプラ病39のシモンの家にいた時、
7 ある女が、とても高価な香油が入っている石膏のつぼを持って、イエスの所に来た。そして、彼女は食卓についておられるイエスの頭の上に注いだ。
8 イエスの弟子たちはこれを見ると、憤慨して言った。「なぜこんな無駄なことをするのか。
9 この香油を、多額の金で売れば、貧しい人たちに与えることができたのに。」
10 しかし、イエスはこれに気付かれ、弟子たちに言われた。「なぜこの女を困らせるのですか。わたしのためによいことをしてくれたのです。
11 なぜなら、貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいるが、わたしはいつもあなたがたと共にいる訳ではないからです。
12 わたしの埋葬のため、この香油をわたしの身体に注いだからです。
13 まことにあなたがたに言います。全世界のどこでも、この福音が説かれる所では、この女がしたことも、この人の記念として話されます。」
14 さて、その時、イスカリオテ・ユダという、十二弟子の一人が、大祭司たちの所に行き、
15 言った。「イエスをあなたたちに渡したら、何をくれますか。」そこで、彼らはユダに銀貨を三十枚数えて渡した。
16 こうして、ユダはその時からイエスを裏切る機会を狙っていた。
17 さて、種なしパンの祭りの日に、弟子たちはイエスの所に来て、言った。「どこで過越祭の食事を準備しましょうか。お望みの所はありますか。」
18 イエスは言われた。「町に入り、ある男の所に行って、彼に言いなさい。『先生は言います。「わたしの時は近づきました。わたしの弟子たちと共に、あなたの所で過越祭を守ります。』」
19 それで、弟子たちはイエスの言う通りにし、過越祭の準備をした。
20 夜になると、イエスは十二人と共に食卓につかれた。
21 さて、彼らは食べていた時に、イエスは言われた。「まことにあなたがたに言います。あなたがたの中の一人が、わたしを裏切ります。」
22 それで、彼らはとても悲しみ、一人一人イエスに言い始めた。「主よ、私ですか。」
23 イエスは答えて言われた。「わたしと共に深い皿に手を浸ける者が、わたしを裏切ります。
24 人の子について書かれているように、人の子は正に行くが、人の子を裏切るその者に、災いあれ。その男は、生まれなかったほうがましです。」
25 それで、イエスを裏切ろうとしていたユダは答えて言った。「ラビよ、私ですか。」イエスは彼に言われた。「あなたが言った通り。」
26 そして、弟子たちが食べている間に、イエスはパンを取り、それを祝福し、裂き、弟子たちに与え、言われた。「取って、食べなさい。これはわたしの体です。」
27 それからイエスはカップを取り、感謝を捧げ、弟子たちに与え、言われた。「皆、これから飲みなさい。
28 これは新しい契約の、わたしの血であり、多くの人々の罪の赦しのために、流される血であるからです。
29 しかし、あなたがたに言います。今からわたしの父の王国であなたがたと共にこれを新たに飲むその日まで、わたしはこの蔓の実からできたものを決して飲むことがありません。」
30 そして、彼らは賛美の歌を一曲歌ってから、オリーブ山へ出かけた。
31 そこで、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたは今夜、わたしのことで全員、つまずかされます。『わたしは羊飼いを殴り、そして、群れの羊たちは散らされる。』と、こう書いてあるからです。
32 しかし、わたしは復活させていただいた後、あなたがたより先にガリラヤに行きます。」
33 それで、ペテロは答えてイエスに言った。「全員はあなたのことでつまずいても、私は決してつまずきません。」
34 イエスはペテロに宣言された。「まことにわたしはあなたに言います。今晩、雄鶏が鳴く前に、あなたはわたしを三回否定します。」
35 ペテロはイエスに言った。「あなたと共に、たとえ死ぬ羽目になっても、私はあなたを決して否定しません。」弟子たちは全員そのように言った。
36 その時、イエスは弟子たちと共にゲッセマネという所に行かれ、弟子たちに言われた。「わたしがあそこに行って祈る間は、ここに座っていなさい。」
37 そして、イエスはペテロとゼベダイの二人の息子を連れて行かれた。すると、イエスは悲しく、また心が非常に重くなり出した。
38 それで、イエスは三人に言われた。「わたしの魂は、死に至るほどとても悲しい。ここにいて、わたしと共に警戒していなさい。」
39 そして、イエスはもう少し離れて行き、顔を地に付け、祈って言われた。「我が父よ、できることなら、このカップをわたしから取り去ってください。ただ、わたしが望むようにでなく、あなたの望むとおりにしてください。」
40 そしてイエスは弟子たちの所に来て、眠ったのを見つけ、ペテロに言われた。「こうして、あなたがたは一時間、わたしと共に目を覚ましている力がないのですか。
41 誘惑に陥らぬように警戒し、祈りなさい。心は遂行の意志があっても、肉は弱いのです。」
42 また、イエスは再び去り、祈って言われた。「我が父よ、もしわたしがこのカップを飲まなければ、カップはわたしから過ぎ去れないのなら、あなたのご意志が行なわれますように。」
43 そこでイエスは来られ、弟子たちが眠っているのを再度見つけられた。なぜなら、弟子たちのまぶたは重たかったからである。
44 イエスはまた彼らを残して行かれ、同じ言葉を繰り返して三度祈られた。
45 それから、イエスはご自分の弟子たちの所に来られ、彼らに言われた。「あなたがたは未だ眠って休んでいるのですか。見よ、時は近づき、人の子は罪人の手で裏切られているところです。
46 起きなさい。我ら全員行きましょう。見なさい。わたしを裏切る者が近づいて来ました。」
47 すると、イエスがまだ話しておられる間に、見よ、十二人の一人であるユダが近づいて来た。そのユダと共に、大祭司たち、そして国民の長老たちからの大群衆が、剣や棍棒を持って来た。
48 そこで、イエスを裏切ろうとしている者が群衆に合図を決め、言った。「私が口づけする人、それがその人だ。その男を捕まえなさい。」
49 そして、ユダはただちにイエスに近づき、言った。「今日は、ラビ。」そして、イエスに口づけをした。
50 しかし、イエスは彼に言われた。「友よ、あなたはなぜ来たのですか。」その時、群衆が来て、イエスに手をかけ捕らえた。
51 そして見よ、イエスと共にいた一人は、手を伸ばして、剣を抜き、大祭司の一人の僕を打ち、その男の耳を切り落とした。
52 その時、イエスは彼に言われた。「あなたの剣をもとの所に戻しなさい。すべて剣を取る者は、剣によって滅びるからです。
53 あるいは、わたしが父に今頼んで、十二レギオン40以上の御使いを、わたしに任せてもらうことができないとでも、あなたは思っているのですか。
54 それでは、この通りになるべきとある聖書は、どうして成就されるでしょうか。」
55 その時、イエスは群衆に言われた。「あなたがたは、強盗に向かうように、剣や棍棒を持ってわたしを捕まえに出かけて来たのですか。わたしが毎日あなたがたと共に座り、神殿の敷地で教えていたのに、あなたがたはわたしを捕まえませんでした。
56 しかし、これらすべては、預言者たちの書かれた聖書は成就されるために行なわれたのです。」その時、全員の弟子たちはイエスを捨てて、逃げ去った。
57 そこで、イエスを捕まえた者たちは、律法学者たちと長老たちが集まっていた、カヤパ大祭司の所へ、イエスを連れて行った。
58 しかし、ペテロは離れて、大祭司の屋敷の中庭までイエスについて行き、中に入り、終わりを見るために、役人たちと共に座った。
59 そして、大祭司たち、長老たち、それに全議会は、イエスを死刑にするため、イエスに対する偽証を求めていたが、
60 何も得られなかった。にせ証人は大勢進み出たのに、偽証は何も得られなかった。しかしその後、にせ証人が二人進み出た。
61 そして、彼らは言った。「この人は言いました。『わたしは神の神殿を破壊して、三日間でそれを建て直すことができます。』」
62 それで、大祭司は立ち上がり、イエスに言った。「お前は何も答えないのか。この男たちがお前にした証言は何なんだ。
63 しかし、イエスは黙っておられた。それで、大祭司は再びイエスに言った。「私はお前を生ける神を指して誓わせる。お前はキリストで、神の御子息なのか、私たちに言え。」
64 イエスは彼に言われた。「あなたの言ったとおりです。しかし、わたしはあなたがたに言います。人の子が力の方の右の座に座り、空の雲に乗って来る姿を、あなたがたはこの後で見ます。」
65 その時、大祭司は自らの服を裂き、言った。「この者は神の冒涜を口にした。我々はもうこれ以上、証人の必要があろうか。見よ。あなたがたは今この者の冒涜を聞いた。
66 そしてどう思うか。」彼らは答えて、「イエスは死に値します。」と言った。
67 それで、彼らはイエスの顔につばきをかけ、彼を殴った。そして、他の人たちは平手打ちして、
68 言った。「キリストよ、私たちに預言しなさい。お前を殴ったのは、誰だ。」
69 さて、ペテロは外で屋敷の中庭に座っていた。そして、一人の女奴隷が彼の所に来て言った。「あなたもガリラヤのイエスといっしょにいた人です。」
70 しかし、彼はみんなの前で否定して、言った。「私はお前の言っていることがわからない。」
71 それで、ペテロは門の外に出た時、もう一人の女奴隷が彼を見て、そこにいた人たちに言った。「この者もナザレのイエスといっしょでした。」
72 しかし、ペテロはもう一度否定し、誓って言った。「私はあの男を知らない。」
73 それから、少したち、そばに立っていた人たちがやって来て、ペテロに言った。「お前は間違いなく仲間の一人だと、お前の話し方でさえ、お前のことを明らかにする。」
74 その時、ペテロは悪態をつき、誓い、言い出した。「私はその男を知らない。」するとすぐ、雄鶏が鳴いた。
75 すると、ペテロは、「雄鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを否定します。」と言われたイエスの御言葉を思い出し、その場を離れ、号泣した。

27章

さて、朝になると、大祭司たち全員や国民の長老たちは、イエスを死刑にするために会議を開いた。
2 そして、イエスを縛り、連れ出し、ポンテオ・ピラト総督に引き渡した。
3 その時、裏切り者のユダは、イエスに有罪の判決が下ったことが分かり、後悔し、銀貨三十枚持ち、大祭司たちと長老たちに返しに来て、
4 言った。「私は罪のない血を裏切り、罪を犯しました。」しかし、彼らは言った。「それは私たちにとって何か。お前が片づけよ。」
5 すると、ユダはその銀貨を、神殿の中で投げ出し、そこを離れ、自ら首をつった。
6 しかし、大祭司たちは銀貨を取り、言った。「この銀貨は血の代価だから、これらを神殿の収入にすることは違法です。」
7 それで、彼らは会議を開き、外国人の埋葬のために、陶工の畑を買った。
8 したがって、その畑は今日まで、「血の畑」と呼ばれている。
9 その時、預言者エレミヤを通して言われたことは成就された。すなわち、エレミヤは言った。「そして、彼らはその銀貨三十枚、すなわちイスラエルの子らに値段をつけられた方の代価を受け取り、
10 主が私に指図されたように、陶工の畑のために彼らに与えた。」
11 さて、イエスは総督の前に立たれた。そこで総督はイエスに尋ねて言った。「お前はユダヤ人の王か。」それでイエスはピラトにはっきり言われた。「あなたはそう言います。」
12 それから、イエスは大祭司たちや長老たちに糾弾されている間は、何もお答えにならなかった。
13 その時、ピラトはイエスに言った。「あの者たちはお前に対してこんなに多くのことを証言しているのに、お前は聞いていないのか。」
14 それでも、総督がたいへん驚くほど、イエスは一言もお答えにならなかった。
15 さて、祭りで群衆が求める囚人一人を、総督が釈放する習慣があった。
16 それで、その時バラバという悪名高い囚人がいた。
17 したがって群衆が集まった時、ピラトは彼らに言った。「お前たちは、バラバか、キリストと呼ばれるイエスか、誰をお前たちに釈放してほしいのか。」
18 大祭司たちはねたみでイエスを引き渡したことを、ピラトは知っていたからである。
19 それで、ピラトは裁きの席に座っている間、彼の妻は人を派遣して、言った。「あの正しい人と、かかわりを持たないでください。私は今日、彼のことで、夢でいろいろと苦しんだからです。」
20 しかし、大祭司たちや長老たちはバラバを求め、イエスをぶち殺すようにと、群衆を説得した。
21 それで、総督は答えて、彼らに言った。「二人の内、お前たちは誰を釈放してほしいか。」彼らは言った。「バラバだ。」
22 ピラトは彼らに言った。「では、キリストと呼ばれるイエスを、私はどうしようか。」群衆は皆、総督に言った。「十字架刑にせよ。」
23 すると総督は言った。「なぜだ。この男は何の悪を行なったのか。」しかし、群衆はますます強く叫んで言った。「その男を十字架刑にせよ。」
24 そこで、ピラトは何も得ることができず、かえって騒ぎ出している群衆を見て、水を取り、群衆の前で手を洗って、言った。「私はこの正しい人の血に関して無罪だ。お前たちが片づけよ。」
25 それで、民は皆、答えて言った。「彼の血は、我々の上に、そして我々の子どもの上にありますように。」
26 それから、ピラトはバラバを群衆に釈放し、イエスをむちで打ってから、イエスを十字架につけるために引き渡した。
27 それで、総督の兵士たちは、イエスを宮殿の中へ連れて行き、彼のまわりに部隊41の全員を集めた。
28 そして、兵士たちはイエスの服を剥ぎ取り、真紅の上着を着させた。
29 そして、兵士たちは茨の冠を編んで、イエスの頭にかぶせ、右手に葦を持たせた。そして、彼らはイエスの前にひざまずいて、彼を馬鹿にして、「ユダヤ人たちの王サマ、ご挨拶申しあげます。」と言った。
30 そして、兵士たちはイエスにつばきをかけ、葦を取り、イエスの頭をたたいた。
31 次いで、イエスを馬鹿にしてから、上着を脱がせ、元の服を着せ、十字架につけるために連れ去った。
32 さて、彼らが出てきた時、シモンという名前のクレネ人を見つけた。兵士たちはシモンを強制し、イエスの十字架を背負わせた。
33 そして、ゴルゴタ、つまり「どくろの地」42と呼ばれている所に来た時、
34 彼らはイエスに苦い薬を混ぜた酢を与えた。しかし、イエスは味を見、飲もうとされなかった。
35 そこで、彼らはイエスを十字架につけ、くじを引き、イエスの服を分配した。これは預言者によって言われた言葉が成就するためであった。すなわち、「彼らはわたしの上着を自分たちの間に分けた。そして、彼らはわたしの服のためにくじを引いた。」
36 そして、彼らは座り、そこでイエスを見張った。
37 そして、彼の頭上に、「これがユダヤ人の王、イエスである。」と書いた罪状書きをかけた。
38 その時、右に一人、左に一人、二人の強盗が、イエスと共に十字架につけられた。
39 そして、通りかかった者たちはイエスを侮辱し、頭を振りながら、
40 言っていた。「神殿を破壊し、三日のうちに建てる者よ、自分自身を救え。もし神の御子息ならば、十字架から下りて来い。」
41 そして、大祭司たちも同様に、律法学者たちや長老たちと共に、イエスを馬鹿にして言った。
42 「あの男は他人を救ったが、自分は救えない。もし彼がイスラエルの王ならば、今十字架から下りて来てもらおう。そうすれば、私たちは彼を信じる。
43 彼は神を信頼した。もし神が望むなら、神が今彼を助けよう。なぜなら、彼は『わたしは神の子だ』と言ったからだ。」
44 イエスと共に十字架につけられた強盗たちでさえも、同じことでイエスを侮辱した。
45 さて、第六時間目43から第九時間目まで、全地上が暗くなった。
46 そして、第九時間目44ごろ、イエスは大声で叫んで言われた。「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ。」これはすなわち、「我が神、我が神、なぜわたしを見放したのですか。」という意味である。
47 すると、そこに立っていた者たちの中で、これを聞いたある者は、「この人はエリヤを呼んでいる。」と言った。
48 そして、その人たちの中の一人がすぐ走って行き、海綿を取り、それに酔い葡萄酒を十分含ませ、葦につけ、イエスが飲めるように差し出した。
49 残りの者たちは言った。「そのままほっておこう。エリヤが彼を救いに来るかどうか見ようではないか。」
50 それで、イエスは再び大声で叫び、ご自分の霊を差し出された。
51 すると見よ。神殿の幕は上から下まで真二つに裂かれ、地が震え、岩が裂かれた。
52 そして、墓は開けられ、眠っていた聖徒たち45の多くの身体は復活させられた。
53 そして、イエスの復活の後、その聖徒たちは墓から出て、聖なる都市に入り、多くの人に現われた。
54 それで、百人隊長と、イエスを共に見張っていた人たちは、地震が起こったのを見て、とても恐れ、言った。「本当に、この方は神の御子息でした。」
55 そして、ガリラヤからイエスに従い、イエスに仕えていた大勢の女が、そこから遠く離れて見守っていた。
56 その中に、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフの母マリヤ、ゼベダイの息子たちの母がいた。
57 さて、夜になると、アリマタヤから、彼自身もイエスの弟子であった、ヨセフと言う名前の金持ちの男が来た。
58 この男はピラトのもとに行き、イエスの遺体を願った。すると、ピラトは、遺体を彼に与えるように命じた。
59 そして、ヨセフはイエスの遺体を引き取り、清潔な亜麻布で包んだ。
60 そして、イエスの遺体を、岩に掘った自分の新しい墓に横たえ、大きい石を墓の入り口へ転がして置き、立ち去った。
61 そこで、マグダラのマリヤと、もう一人のマリヤはそこにいて、墓の反対側に座っていた。
62 さて、次の日に、つまり準備46の日の後、大祭司たちやパリサイ派の者たちはピラトの所で共に集まり、
63 言った。「総督様、ペテン師のあの男がまだ生きていた時、『わたしは三日後に復活します。』と言ったことを、私たちは思い出しました。
64 そのため、三日目になるまで墓を見張るように命令してください。そうしないと、もしかしてあの男の弟子たちが夜中に来て、彼を盗み出し、『彼は死人の中から復活された。』と、国民に言うかもしれません。これでは、初めの嘘より、後の嘘の方がもっとひどいことになります。」
65 ピラトは彼らに言った。「お前たちは番兵がいる。行って、知っている限りの方法で見張れ。」
66 それで、彼らは行って、墓を保全し、石の封印をし、番兵たちを配置した。

28章

さて、安息日の後の週の最初の日の夜明け、マグダラのマリヤともう一人のマリヤは、墓を見に来た。
2 すると、見よ、大きな地震があった。主の一人の御使いが天から降りて来て、石を入り口から転がして、その上に座っていたからである。
3 彼の姿は稲妻のようであり、またその服は雪のように白かった。
4 そして、番兵たちは御使いへの恐れで震え、死人のようになった。
5 しかし、御使いは答えて女たちに言った。「十字架刑にされたイエスをあなたがたが探していることを、私は知っているのだから、恐れることはありません。
6 ご自分で言われたとおりに復活されたので、イエスはここにはいらっしゃいません。来て、主が横になっておられた所を見なさい。
7 そして急いで行って、あの方が死人たちの中から復活されたことを、弟子たちに伝えなさい。見よ、イエスはあなたがたより先にガリラヤに行かれます。あなたがたはそこでイエスにお会いします。見よ、私はあなたがたに伝えました。」
8 それで女たちは恐れと大いなる喜びで急いで墓を出、イエスの弟子たちに伝えるために走った。
9 しかし、女たちがイエスの弟子たちに伝えに行く途中、見よ。イエスは女たちに会って言われた。「おはようございます。」そこで、女たちは近寄って、イエスの足を抱いて、拝した。
10 その時、イエスは女たちに言われた。「恐れてはいけません。行って、わたしの兄弟たちにガリラヤへ行くように伝えなさい。彼らはそこでわたしを見ます。」
11 それで、女たちが行っている間に、見よ。番兵の中のある者たちは町に入り、大祭司たちに、起きたことの一部始終を報告した。
12 大祭司たちは長老たちと集まって、相談し、多額の金を兵たちに与え、
13 言った。「人たちに言いなさい。『私たちが眠っていた時、イエスの弟子たちが夜間に来て、彼を盗み出した。』と。
14 そして、もしこれが総督の耳に入れば、私たちは総督を説得して、お前たちの安全を守る。」
15 それで兵たちは金を受け取り、指示されたとおりにした。この言葉は今日まで、ユダヤ人たちの間に言い広められている。
16 それで、十一弟子たちはガリラヤへ去り、
17 そして、イエスを見た彼らは、イエスを拝した。しかし、その中に疑う人たちもいた。
18 そこで、イエスは来て、彼らに説いて言われた。「天でも、地でも、すべての権威はわたしに与えられました。
19 したがって、行って、すべての国々を弟子とし、父と子と聖霊の御名47によって浸礼を授け、
20 わたしがあなたがたに命じた、すべてのことを守るように教えなさい。そして、見よ。いつの日にも、世の終りまで、わたしはあなたがたと共にいます。」アーメン。


  1. ギリシャ語のβαπτισμα(バプティスマ)の意味は、「浸し、浸すこと、漬けること、沈めること」である。(「新約聖書ギリシャ語小辞典」、織田昭編、58ページ)。  

  2. ユダヤ教の会堂。  

  3. 旧約聖書の十戒の引用。  

  4. ギリシャ語でサンヘドリン。当時のイスラエルの最高裁判所。  

  5. ローマ帝国の銅貨。  

  6. 約千五百メートルの距離。  

  7. ユダヤ教の会堂。  

  8. 毛皮、毛織物、羽毛などの食害をする虫。  

  9. 約四五センチ。  

  10. 律法学者たちは、旧約聖書の解釈書をそのまま知識として教えた。  

  11. 現代はハンセン病と言う。  

  12. この単語は、普通の僕ではなく、子どもである僕、あるいは、子どものようになった僕、という意味である。  

  13. エクロンという国の偶像で、「ハエの主」という意味である。  

  14. 現代はハンセン病と言う。  

  15. 当時の子供たちの遊び。  

  16. ソドムは旧約時代のもっとも悪い評判を持つ町であった。(ユダ書7節)  

  17. 「ハエの主」という意味で、悪魔を指している。  

  18. サタンとは、悪魔の長であり、名前は「敵」という意味である。  

  19. 参考(マルコ3章22、26節)  

  20. 直訳、心臓。  

  21. 四十リットルぐらい。  

  22. 三時ごろ。  

  23. ペテロとは、「石」という意味である。  

  24. サタンの意味は「敵」である。  

  25. 神殿の税金。  

  26. これはものすごい大金であった。  

  27. ローマ帝国の銀貨。一デナリは一般労働者の一日分の賃金。  

  28. 午前九時。  

  29. 正午。  

  30. 午後三時。  

  31. 午後五時。  

  32. 午後五時。  

  33. ユダヤ人が礼拝のため使う言葉、ヘブル語で、「お救いください」という意味である。  

  34. 経札とも言われる。  

  35. 原語では、山は冠詞付きの複数形である。  

  36. パレスチナの鷲は、時々死んだものの肉を食べる。  

  37. 一タラントは六千デナリで、かなりの大金であった。  

  38. ユダヤ人の祭りで、モーセがエジプトからユダヤ人を導いたことを記念する日である。  

  39. 現代はハンセン病と言う。  

  40. レギオンはローマ軍の六千人隊であった。  

  41. この部隊は大体六百人であった。  

  42. ラテン語で、「カルバリ』と言う。  

  43. 正午。  

  44. 午後三時。  

  45. 旧約聖書時代の信者たち。  

  46. 過越祭の準備の日。  

  47. この「御名」とは、ギリシャ語の単数であり、三位一体を示す。